7:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/01/08(火) 15:40:32.80 ID:CVKn8iDV0
187 :4:2011/05/19(木) 23:31:00.69 ID:GMmQg5nH0
顧問の先生たちが外を見る頃には、ドアは閉じられ人影もなくなっており、
何事も無い林と、明かりもついていない家らしき建物が見えるだけだった。
当然先生たちは信じてくれなかったが、
ノリの良い若い先生2人が一応確認しに行ってくれることになり、合宿所の裏手へと回った。
俺達が窓から様子を見ていると、懐中電灯を持った2人が現れ、家の玄関のところで何かやっている。
どうやらドアが開くか調べているようだが、開かないようだった。
その後「誰かいますか~?」と声をかけたりしていたのだが、反応がないらしく、5分ほどで戻ってきた。
その後、何人かが携帯で撮影した画像も証拠として出したのだが、
所詮は携帯の画質、真っ暗な画像が映っているだけで何の証拠にもならない。
俺達は先生達に「さっさと寝ろ」とまくし立てられて、自分達に割り当てられた部屋へと戻った。
9:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/01/08(火) 15:41:45.08 ID:CVKn8iDV0
188 :5:2011/05/19(木) 23:31:56.64 ID:GMmQg5nH0
その夜、なんか中途半端でモヤモヤして寝れない俺達が、
これから確認に行くか、それとも昼間行くかを話し合っていると、
部屋の窓がドンドン!と叩かれた。
窓の外に人影も見える。
俺達はさっきのこともありビビりまくっていると、外から「おーい、あけてくれ!」と声が聞こえてきた。
カーテンをあけると、そこには昼間仲良くなった他校の生徒5人がいた。
やつらはどうも、窓の外にある20cmくらいの幅のでっぱりをつたって、俺達の部屋までやってきたらしい。
5人を部屋の中にいれると、どうもやつらも俺達と同じ話をしていたらしく、
これから例の家に行く事にしたので、俺達を誘いに来たらしい。
俺達もそれで決心が付いたので、これから肝試し?に行く事になった。
メンツは、うちの学校からは俺、A也、B太。
他校からは、C広、D幸、E介。
他のやつは、何だかんだと理由をつけて結局来なかった。
10:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/01/08(火) 15:43:06.67 ID:CVKn8iDV0
189 :6:2011/05/19(木) 23:33:14.99 ID:GMmQg5nH0
俺達は5人が通ってきた窓の出っ張りをつたい外にでると、
先生に見付からないように一端道路に出て、そこから大回りに問題の家へと向かった。
一応、家の周りは合宿所の2階廊下から丸見えなので、
残ったやつ何人かが、異常があれば廊下から懐中電灯で合図してくれる、という計画になっていた。
家の前につくと流石に不気味だった。
遠目には分からなかったのだが、壁には苔が生えているし、あちこちに蔦も絡まっている。
しかも、外から見える窓は全て板が打ち付けられていて、だいぶ長い事放置された場所のようだ。
最初C広とA也とB太が家の周りを確認しに行ったのだが、
俺が開かない事は分かっていたが、何気にドアノブを回すとすんなりとドアが開いてしまった。
急いで3人を呼び戻し、俺達は中へと入る事にした。
中に入ると、夏場という事もあり室内の湿気が凄くかび臭い。
家の中を探索してみると、埃っぽくカビ臭くはあるのだが、
室内は荒らされた様子も無く、家具も何も無いのでやたら広く感じた。
1階を探索していると、E介が「2階から笑い声しね?」と言い出した。
俺達は耳を澄ましてみたが、笑い声は聞こえない。
E介に「気のせいじゃないか?」といったのだが、E介は気になるらしく、「見に行きたい」と言い出した。
しかし、まだ1階の探索も終っていないので、
仕方なく3人ずつのグループに分けて、片方はそのまま1階を、もう片方は2階を探索する事にした。
グループわけは簡単で、
同じ学校の俺とA也とB太がそのまま1階を、別の学校のC広とD幸とE介が2階を探索する事にして、
何かあったら階段のところでおちあう事にして別れた。
11:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/01/08(火) 15:43:59.51 ID:CVKn8iDV0
190 :7:2011/05/19(木) 23:33:51.90 ID:GMmQg5nH0
暫らく探索していると、2階から突然、
「アハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハ!」
と、場違いに明るい笑い声が聞こえてきた。
そしてすぐに「おいE介?どうした?おい!」と、C広とD幸の狼狽した声が聞こえてきた。
俺達が大慌てで2階に上がると、一番奥の部屋に3人はいた。
笑い声の主はE介で、窓のほうを向いてまだ、
「アハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハ!」と大声で笑っている。
そしてその横にC広とD幸がいて、真っ青な顔でE介を揺さぶったり頬を引っ叩いたりしていた。
俺達もただ事では無いと、3人のところに行って前に回りこんでE介の顔を見たとき、
俺は今、自分たちが置かれている状況の深刻さに始めて気が付いた。
E介はほんとにおかしそうに笑い声を上げているのだが、
顔は無表情で、しかも目からは大粒の涙を流している。
それに何か臭いとおもったら、どうやら失禁しているらしい。
E介はまるで、俺達の事が見えていないかのように泣きながら笑い続けている。
俺達が狼狽してE介に呼びかけていると、その場で一番冷静だったB太が、
「とりあえずE介このままにしておけないし、合宿所まで運ぼう」と言ってきた。
12:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/01/08(火) 15:44:30.09 ID:CVKn8iDV0
191 :8:2011/05/19(木) 23:35:19.55 ID:GMmQg5nH0
そして、俺達はE介の手足と肩をもち、外へと運び出そうと1階までE介を運んだ。
が、そこで問題がおきた。
ドアを開けようとしたB太が、声を震わせながら大声で「ドア開かねーよ!」と言ってきた。
俺達はE介を廊下に降ろし、みんなでドアを開けようとしたのだが、
さっきは簡単に開いたのに今はびくともせず、
6人の中で一番体格の良いA也がドアにタックルしてみたのだが、それでもまるで開く気配が無い。
俺達は軽くパニックになり顔を見合わせていると、2階から微かに「ホホホ…ホホホ…ホホホ…」と、
まるで抑揚の無い機械的な声というか、音というかが聞こえてきた。
E介はまだ床に寝転がされたまま笑っている。
とにかく外にでないといけない、そう考えた俺は、
1階のリビングが、ガラスのサッシのみで割れば出れそうな事を思い出し、
4人にそれを伝えると、リビングへと向かう事にした。
その時、ふと俺は階段の上を見て絶句した。
階段の踊り場の少し上ところから、子供の顔がのぞきこんでいる。
月明かりが逆光になっていて、表情とかは何も分からないが、
顔のサイズや髪型からさっきの子供とわかった。
相変わらず「ホホホ…ホホホ…ホホホ…」という声も聞こえてくる。
どうやら声の主はこの子供らしい。
13:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/01/08(火) 15:45:00.88 ID:CVKn8iDV0
192 :9:2011/05/19(木) 23:36:01.72 ID:GMmQg5nH0
しかし何かがおかしい、違和感がある。
俺はすぐに違和感の正体に気が付いた。
子供は階段の手すりからかなり身を乗り出しているはずなのだが、なぜか頭しか見えない。
あれだけ乗り出せば、肩辺りは見えても良いはずなのだが…
俺がそんな事を考えながら階段の上を凝視していると、
C広が「おい何してんだ、早く出ようぜ、ここやべーよ!」と、俺の腕を掴んでリビングへと引っ張った。
俺には一瞬の事に見えたが、
どうも残りの4人がE介をリビングへ運び込み、窓ガラスを割り、打ち付けてある板を壊すまで、
ずっと俺は上の子供を凝視していたらしい。
俺は何がなんだか解らず、とりあえず逃げなければいけないと、皆でE介を担いで外へとでた。
外へ出ても相変わらず、「ホホホ…ホホホ…ホホホ…」という声は、家の中から聞こえてくる。
俺達はE介を担ぎ、D幸が合宿所へ先生たちを呼びに行った。
14:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/01/08(火) 15:46:08.35 ID:CVKn8iDV0
193 :2011/05/19(木) 23:38:00.38 ID:GMmQg5nH0
その後、E介は救急車で運ばれた。
俺達は先生方に散々説教をされ、こんな事件があったので合宿はその日で中止となった。
帰宅準備をしていた昼頃、十台くらいの数の車が合宿所にやってきた。
中から20人ほどのおじさんやおじいさん、あと地元の消防団らしき人が降りて、
顧問の先生たちと何か話しをすると、合宿所の裏に回り、
例の家の周りにロープのようなものを貼り、柵?のようなものを作り始めた。
俺達は何事なのかと聞いてみたが、顧問の先生たちは何も教えてくれず、そのままバスで地元へと帰った。
E介は2日ほど入院していたが、その後どこか別の場所へ運ばれ、4日後には何事もなかったように帰ってきた。
後から事情を聞いてみると、E介には、家に入ったところから昨日までの記憶が何もなかったらしい。
16:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/01/08(火) 15:46:38.68 ID:CVKn8iDV0
268 :本当にあった怖い名無し:2011/05/20(金) 21:00:48.42 ID:x83Y3WRH0
E介が帰ってきた日の夜、俺が自分の部屋で寝転がってメールしていると、一瞬、
「ホホホ…ホホホ…ホホホ…」という、あの声が聞こえた気がした。
びっくりして起き上がり、カーテンを開けて外を見たりしたが、いつもの景色で何も無い。
俺は「気のせいかな?」と、起き上がったついでに1階に飲み物を取りに行くことにした。
俺の家はL字型になっていて、自室は車庫の上に乗っかるような形になっている。
冷蔵庫からペットボトルのお茶を取り出し2階へ上がると、
丁度階段を上がったところの窓のカーテンの隙間から、僅かに自室の屋根の部分が少し見えた。
すると、屋根の上に何かがいる…
この前あんな事があったばかりなだけに、ビビりまくった俺が窓からカーテンを少し開けて外の様子をのぞくと、
屋根の上に和服を着た子供が、両手を膝の上にそろえて正座しているのが見えた。
それだけでもかなり異様な光景なのだが、それだけではなかった。
子供は体を少し前かがみにして、下を覗きこむような姿勢なのだが、
首のあるはずの部分から、細長い真っ直ぐの棒のようなものが1mほどのびていて、
その先にある頭が、俺の部屋の窓を覗き込んでいた。
17:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/01/08(火) 15:47:13.94 ID:CVKn8iDV0
269 :本当にあった怖い名無し:2011/05/20(金) 21:01:37.39 ID:x83Y3WRH0
即席aaで解り難いけど、こんな感じだった。
「ホホホ…ホホホ…ホホホ…」という声も、窓越しにわずかに聞こえてくる。
俺はあまりの出来事に声も出せず、そのまま後ずさりすると1階へ下りた。
寝ている親を起そうかとも思ったが、これで起してあれがもういなかったらそれこそ恥ずかしい…
その時なぜかそう思った俺は、そのまま1階のリビングで徹夜した。
たしか朝4時過ぎまで、「ホホホ…」という声は聞こえていたと思う。
翌朝、恐る恐る部屋に戻ってみたが、あれはいなくなっており、室内にも特に変わった部分は無かった。
その日の昼頃、自宅の電話に顧問の先生から電話があった。
この前の件で話があるからすぐに来いという。
昨晩のこともあった俺は、嫌な予感がして大急ぎで学校へと向かう事にした。
18:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/01/08(火) 15:47:44.62 ID:CVKn8iDV0
270 :本当にあった怖い名無し:2011/05/20(金) 21:02:19.49 ID:x83Y3WRH0
学校へ到着すると、生徒会などで使っている会議室に呼ばれた。
会議室に入ると、A也、B太、それにC広とD幸までいる。
更に、うちの学校とC広たちの学校の顧問の先生たち、それと見た事の無いおじさんたちも数人いた。
まず、顧問の先生のうち1人が話し始めた。
要約すると、E介にまた同じ症状だでたらしく、とある場所に運ばれたらしい。
そして、俺達に「昨夜おかしな事はなかったか?」と聞いてきた。
俺はすぐさま昨夜のあれを思い出し、
「あのー、深夜になんか変なのが俺の部屋を覗き込んでるのが見えて…」と事情を話した。
A也、B太、C広、D幸には特に異常はなかったらしい。
するとC広が、
「そういやお前(俺)さ、あの家の中で、階段の上眺めながらボーっとしてたよな?
あれ関係あるんじゃないか?」
と言い出した。
19:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/01/08(火) 15:47:56.74 ID:aow26l5T0
どんどん頼む
20:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/01/08(火) 15:48:15.72 ID:CVKn8iDV0
271 :本当にあった怖い名無し:2011/05/20(金) 21:02:59.21 ID:x83Y3WRH0
そういえば…
俺はあのときの事を思い出し、
皆に「あの時さ、変な笑い声みたいなのと、なんか子供の姿見たよな?」と聞いてみた。
しかしみんなは、声はずっと聞こえていたけど、
子供の姿は最初のドアのところで見ただけで、家の中では見ていないという。
俺達がそんなやり取りをしていると、さっきまで黙っていたおじさんが、事件の詳細を話し始めた。
非常に長い話だったので要約すると。
俺達がであったのは、『ひょうせ』と呼ばれるものらしい。
これはあの土地特有の妖怪のようなもので、滅多に姿を見せないが、
稀に妊婦や不妊の家の屋根に現れて、笑い声をあげるらしい。
そうすると、妊婦は安産し、不妊の夫婦には子供が産まれるという、非常に縁起の良いものだそうな。
ただし、理由は全く分からないが、
数十年に一度、なぜか子供を襲い憑り殺してしまうという、厄介な存在でもあった。
ちなみにあの家は、全くいわくも何もなく、ただ『ひょうせ』が偶然現れただけの場所なのだが、
『ひょうせ』が子供を憑り殺そうとした場合、それに対する対抗策があり、
『ひょうせ』が最初に現れた場所に結界を作り封じ込め、簡易的な祠をつくって奉ることで、
殺されるのを防ぐ事ができるらしい。
合宿所から帰る直前、俺達が見たのは、その封じ込め作業だったわけだ。
21:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/01/08(火) 15:48:49.96 ID:CVKn8iDV0
272 :本当にあった怖い名無し:2011/05/20(金) 21:03:29.67 ID:x83Y3WRH0
おじさんは続けて、ただ今回は何かおかしいのだという。
普通、祠をつくって奉ればそれで終るはずなのだが、今回はどういうわけだが逃げられてしまって、
E介がまた被害に会い、しかも俺のところにまで現れている。
それに、そもそも現れるだけでも珍しい『ひょうせ』が、
自分達の村とその周辺以外に現れる、というのも全く前例がないうえに、
『ひょうせ』が前回子供を襲ったのは20年ほど前で、早すぎるのだそうな。
ただ、おかしいおかしいといっても、現実に起きてしまっているのだから仕方が無い。
俺達は学校で、村から来たお坊さんに簡易的な祈祷をしてもらい、お札を貰って、
「君たちはこれで大丈夫だろう」と言われ帰された。
ちなみに、E介に関しては、暫らくお寺で預かって様子を見て、
その間にもう一度祠を建てて、『ひょうせ』を奉ってみるとの事だった。
学校から帰された俺達は、各々迎えに来ていた親に連れられて帰る予定だったのだが、
話し合って、ひとまず学校から一番近い俺の家に全員で泊まることにした。
安全と言われていてもやはり不安だし、全員でいたほうが少しは心細く無いと思ったからだった。
その夜、俺達が部屋でゲームしていると、
コン…コン…コン…コン…と、窓を規則的に叩く音がした。
22:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/01/08(火) 15:49:21.85 ID:CVKn8iDV0
273 :本当にあった怖い名無し:2011/05/20(金) 21:04:40.52 ID:x83Y3WRH0
さっき説明した通り、俺の部屋は車庫の上にあり、壁もほぼ垂直なので、よじ登って窓を叩くなどまずできない。
しかも、その窓は昨晩、例の子供が覗き込んでいた窓だ…
状況が状況だけに、全員が顔をこわばらせていると、
B太が強がって「なんだよ、流石に誰かの悪戯か風のせいだろ?」と、カーテンを開けようとした。
俺は大慌てでB太に事情を話し、カーテンをあけるのを踏みとどまらせた。
窓を叩く音はまだ続いている。
D幸が、「やっぱ正体確認したほうがよくね?分からないままのほうが余計こえーよ…」と言ってきた。
たしかに、何かその通りな気がした。
なんだか分からないものが一晩中窓を叩いている状況なんて、とても耐えられそうに無い。
俺達は階段のところまで移動し、カーテンを少し開けて、隙間から俺の部屋を見てみた。
いた…
昨日のあれが、やはり昨日と同じように首をらしき棒を伸ばし、窓から俺の部屋を覗き込んでいる。
そして時々、コン…コン…と頭を窓にぶつけている。
23:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/01/08(火) 15:49:54.09 ID:CVKn8iDV0
274 :本当にあった怖い名無し:2011/05/20(金) 21:05:45.22 ID:x83Y3WRH0
「ホホホ…ホホホ…ホホホ…」という、例の抑揚の無い笑い声のようなものも聞こえてきた。
音の正体はこれだった。
異様な光景だった。
そして、昨日は気付かなかったが、あれは子供と言うより、和服を来た人形のようだった。
頭が窓にぶつかる音も、人間の頭と言うより、中身が空洞の人形のような音だ。
C広が、「ひょうせって、今日もう一度封じ込めたんじゃねーのかよ…」と呟いた。
その時、俺の親父が騒ぎに気付いて、「お前ら何やってるんだ?」と階段を上がってきた。
その声にびっくりしたA也が、思わず腕を窓にぶつけて、ドン!と大きな音を立ててしまった。
24:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/01/08(火) 15:50:25.32 ID:CVKn8iDV0
278 :本当にあった怖い名無し:2011/05/20(金) 21:25:44.15 ID:x83Y3WRH0
"それ”の棒の先にある頭だけが、カクンッという感じでこっちを向いた。
俺達は顔をはっきりと見た。
"それ”はおかっぱ頭で、笑顔の人形だった。ただし、ただの人形ではない。
顔は人形特有の真っ白な肌なのだが、笑顔のはずの目は中身が真っ黒で、目玉らしきものが見えない。
口も同じで、唇らしきものもなく、そこにはやはりぽっかりと真っ暗な、三日月状の穴のようなものがある。
それでも、目や口の曲線で、『にっこり』と言う感じの笑顔だと分かるのが余計に不気味だった。
親父が、「だからお前ら何やってるんだ?」と、窓のところに来てカーテンを全開にすると、
それはサッ!と屋根の影に隠れて見えなくなった。
が、親父にも一瞬、何かがそこにいたのは分かったらしい。
親父は大慌てで1階に降りると、携帯でどこかに電話をし始めた。
どうやら、昼間祈祷をしてくれたおぼうさんや、おじさん達の連絡先を聞いていたらしく、
そこと顧問の先生のところに電話しているらしい。
その後、影に隠れたきり、"それ”は二度と姿を現さなかった。
25:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/01/08(火) 15:50:57.69 ID:CVKn8iDV0
279 :本当にあった怖い名無し:2011/05/20(金) 21:26:15.67 ID:x83Y3WRH0
朝になり、昨日のおじさんたちや顧問の先生などが俺の家に来た。
とりあえず異常事態ということで、全員を合宿所近くにあるお寺まで連れて行くという。
みんなの親たちも俺の家に来たのだが、
おじさんが「被害が更に拡大するといけないから、親御さんは来ないほうがいい」と言うことで、
行くのは俺達だけになった。
俺達は着の身着のまま車に乗せられ出発した。
昼前にお寺に到着した。
お寺に入ると、ジャージ姿でゲッソリとした感じのE介が、俺達を出迎えた。
E介によると、あれから色々あったが、なんとか今のところは助かっているらしい。
本堂に入ると、お坊さんと昨日のおじさんが、昨晩の出来事を詳しく教えてほしいと言ってきた。
俺達が順番に状況を話していると、人形の姿の説明のところで、
おじさんが「ちょと待った、人形?首が長い?何の話をしているんだ?」と驚いた顔で言ってきた。
そして、俺達が昨日みた人形の姿を改めて説明すると、
お坊さんと、
「いや、これはひょうせじゃないぞ、どうなってるんだ?」
「おかしいとおもったんだ。色々辻褄が合わない」
と、2人で話し合い始めた。
26:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/01/08(火) 15:51:28.41 ID:CVKn8iDV0
282 :本当にあった怖い名無し:2011/05/20(金) 22:02:49.91 ID:x83Y3WRH0
そして暫らく話し合った後、俺達に状況を説明してくれた。
結論から言えば、『ひょうせ』に憑りつかれていたというのは全くの勘違いで、
どうも俺達に付き纏っているものの正体は、全く別の何からしい。
俺は、今更それはねーだろ…と思った。
おじさんが続けた。
最初状況を聞いたとき、
・子供のような姿
・笑い声
・生徒がおかしくなって笑いながら泣いている
・村の近く
と言う状況から、『ひょうせ』だと思ったらしいが、
どうも今詳しく話を聞いてみると、『ひょうせ』のしわざと症状は似ているが、
姿形が、まるで伝承や過去の目撃証言と違うらしい。
そもそも『ひょうせ』というのは、子供くらいの姿をした毛むくじゃらの猿のような姿で、
服も着ていないしおかっぱ頭でもないし、当然、首ものびたりもしないようだ。
笑い声も、俺達の聞いたようようの無い機械的なものではなく、
笑い声といっても、猿の鳴き声に近いとの事だった。
28:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/01/08(火) 15:52:00.01 ID:CVKn8iDV0
283 :本当にあった怖い名無し:2011/05/20(金) 22:03:27.31 ID:x83Y3WRH0
俺達は途方にくれてしまった。
ぶっちゃけ、この寺に来れば全部解決すると思い込んでいたのに、
今更「なんだかわからない」では、どうしたらいいのか…
室内が重苦しい雰囲気になり、皆しばらく沈黙していると、お坊さんがこう言ってきた。
「とりあえず、何か良くないものがいるのは間違いない。
少し離れたところに、こういう事に詳しい住職がいるので、その人を応援に呼んでくる。
暫らく皆、座敷でまっていてほしい」
そういうと、車に乗りどこかへ行ってしまった。
俺達は座敷に通され呆然としていた。
おじさんはしきりにどこかへ電話をし、かなりもめているように見えた。
夕方になり、お坊さんが別のお坊さんを連れて戻ってきた。
お坊さんが戻ってくると同時に、さっきのおじさんが携帯を片手に「えらい事になった!」と、
お坊さんのところに走り寄って来た。
話を聞いていると、どうも村の子供が1人、E介と同じ症状でいるところを発見されたらしく、
これからこっちへつれてくるという。
この寺のお坊さんが俺達に、
「とりあえず後で話をするから、ひとまず君たちはさっきの座敷で待っていてくれ」
というと、大慌てで2人で本堂のほうへと歩いていった。
30:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/01/08(火) 15:52:35.78 ID:CVKn8iDV0
284 :本当にあった怖い名無し:2011/05/20(金) 22:03:57.88 ID:x83Y3WRH0
それから15分ほどすると、ワゴン車がやってきた。
車の中からは、E介のときと同じように、けたたましい笑い声がする。
車の扉が開き、中から数人の大人と、笑い声を上げる以外身動き一つしない中学生くらいの子供が運び出され、
本堂へと連れて行かれた。
暫く本堂の中から、
「アハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハ!」という、笑い声とお経を読む音が聞こえていたが、
それも10分くらいで収まり静かになった。
それから更に15分ほどすると、お坊さん2人が俺達のいる座敷に入ってきて、色々と説明し始めた。
さっきの子供のほうは消耗が激しいので、本堂に布団を敷いてそのまま寝かせているらしい。
応援でやって来たお坊さんによると、
どうも話を聞いた感じやさっきの子供の様子から見て、
幽霊や妖怪のようなものが原因ではなく、何かしらの呪物が原因ではないかという。
特に根拠があるわけではないけれど、感覚的にそう感じるらしい。
31:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/01/08(火) 15:53:08.95 ID:CVKn8iDV0
285 :本当にあった怖い名無し:2011/05/20(金) 22:04:37.89 ID:x83Y3WRH0
そして、呪物の類だとすると、と前置きし、
恐らく、祈祷で呪物と君たちの縁を切ってしまえば、なんとかなるのではないかと。
そして、できればその人形も供養してしまいたい、とのことだった。
とりあえずそういう話でまとまったという事で、俺達もそれで解決できるなら早くしてほしいと、話がまとまた。
と、その前に、俺はずっと我慢していたのだがトイレに行きたくなった。
事情を話し、「でも一人じゃなぁ…」と思っていると、他のやつも全員我慢していたらしく、
結局6人で連れションすることになった。
トイレからの帰り道、本堂へ続く廊下を歩いていると、
どこからか「ホホホ…ホホホ…ホホホ…」という、例の抑揚の無い声が聞こえてきた。
場所は分からないが、あれがすぐ近くにいるようだ…
C広が「近くにいるよな…」というと、
A也が「かなり近いぞ、やばくね?」と返した。
たしかにかなり近い。でも姿は見えない。
すると最後尾にいたE介とD幸が、
「やばい、早く本堂に逃げろ!」と、窓の上のほうを指差しながら叫んだ。
32:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/01/08(火) 15:53:41.07 ID:CVKn8iDV0
286 :本当にあった怖い名無し:2011/05/20(金) 22:06:20.82 ID:x83Y3WRH0
俺達が指差した方向へ振り向くと、それはいた…
前と同じように屋根から頭だけを突き出し、「ホホホ…ホホホ…ホホホ…」と笑いながら、
例の真っ黒な目と口の顔をこちらに向けながら、ニコニコと笑っている。
俺たちは全力で逃げ出した。
本堂に着くと、お坊さん2人とさっきのおじさんが待っていた。
今になって気付いたのだが、おじさんはどうもこの村の村長さんらしい。
俺達が事情を話すと、お坊さん達はすぐさま俺達を座らせ、お経を読み始めた。
暫らくお経を読んでいると、本堂の天井のほうから、
「ホホホ…ホホホ…ホホホ…」という例の笑い声と、
コツ…コツ…という、俺の部屋で聞いたあの音が聞こえてきた。
俺達はビビりまくって身を寄せ合っていた。
暫らくすると声が聞こえなくなった。
俺が「終ったか?」と言い切らないうちに、
今度は本堂の横の庭のほうから、「ホホホ…ホホホ…ホホホ…」という声が聞こえ始めた。
34:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/01/08(火) 15:54:11.74 ID:CVKn8iDV0
287 :本当にあった怖い名無し:2011/05/20(金) 22:07:05.17 ID:x83Y3WRH0
そして、薄暗くなり始めた本堂の障子に、夕日に照らされたあの人形のあたまが映し出された。
あたまはユラユラ揺れながら、相変わらずあんぽ不気味な笑い声で笑っている。
その時、俺は恐怖心と不安感と連日の寝不足で、もう耐えられなくなって、
ちょっとおかしくなっていたんだとおもう。
人形の影を見て、恐怖心よりもその姿にイラつきはじめた。
ユラユラ揺れている姿を見ると、とにかくなんだか良く分からないがムカついてきて、
とうとう我慢できなくなった。
俺はお坊さん達がお経を読んでいる横の鉄の燭台を掴むと、蝋燭もささったまま引き抜き、
周りが制止するのも振りきり障子を開けた。
目の前にあの人形の顔があった。
一瞬俺は恐怖心に襲われたが、怒りとイラつきが勝って、
そのまま燭台をぶら下がっている人形の頭めがけ、
「ふざけんなーーーーーーーーーー!」と叫びながら振り下ろした。
36:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/01/08(火) 15:54:45.42 ID:CVKn8iDV0
289 :本当にあった怖い名無し:2011/05/20(金) 22:08:42.37 ID:x83Y3WRH0
バキッ!という音がして、燭台の先端が人形の顔にめり込み、そのまま人形は地面に落下した。
俺は裸足のまま庭に下りると、更に燭台を振りかぶり人形に打ち下ろした。
すると、なにか頭の中に妙な感覚が芽生え始めた。
人形はそれでもなお、「ホホホ…ホホホ…ホホホ…」と無機質に笑っている。
俺はおかしくも無いのに笑いたくなり、なきたくも無いのに目からボロボロと涙が零れ落ちてくる。
明らかにE介たちと同じ状況になりつつあるのだが、
それでも俺は燭台を振りかぶり、人形に打ち下ろすのをやめなかった。
あとから話を聞くと、俺はゲラゲラと笑いながら、無表情でボロボロと涙を流していたらしい。
暫らくそんな状態が続いていると、
どうも燭台に残っていた蝋燭の火が人形の服に燃え移ったらしく、人形が煙を上げて燃え始めた。
友人たちによると、人形の「ホホホ…ホホホ…ホホホ…」という笑い声と、俺の絶叫が交じり合い、
薄暗くなり始めた周囲の雰囲気とあわさって、異様な状況だったという。
37:>>35 あと二つで終わる 選択ミスった:2013/01/08(火) 15:55:55.22 ID:CVKn8iDV0
292 :本当にあった怖い名無し:2011/05/20(金) 22:09:26.15 ID:x83Y3WRH0
それでも俺は、笑い泣きしながら殴り続けていると、
どこを殴ったのかよくわからないが、メキッ!という鈍い音がした。
その途端、俺の中の妙な感情が消えた。
消えたというか、急にシラケてしまったといえば良いのだろうか、
とにかく人形に対するイラつきも、笑いたいという気持ちも、泣きたいという気持ちも、
急になくなってしまった。
俺はその場にヘタり込み、友人たちやおじさんが「…大丈夫か?」と心配そうに近付いてきた。
人形はもう笑ってもいないし動きもしないが、燃えたままでは不味いので、
友人たちとおじさんが砂を掛けて消していた。
38:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/01/08(火) 15:56:31.50 ID:CVKn8iDV0
294 :本当にあった怖い名無し:2011/05/20(金) 22:11:59.67 ID:x83Y3WRH0
理由は分からないが、俺は何故か全て解決したような、そんな良い気分になっていた。
この騒ぎの中、お坊さん2人はずっとお経を読み続けていたらしい。
人形(もう殆ど残骸に近かったが…)の事は明日詳しく調べる事になり、
箱に入れてお札を貼り、本堂に安置する事になった。
俺達はお坊さんの好意で、そのままお寺に泊まることにした。
翌朝。俺達は本堂に呼ばれた。
どうやら、お経のお陰なのか、俺がぶち切れたのが原因なのか、理由ははっきりしないが、
どうも一応解決はしたらしい。
そして、人形はこのままこのお寺で供養する事になったのだが、
結局この人形が何なのか、その辺りは謎のままだった。
39:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/01/08(火) 15:57:52.70 ID:CVKn8iDV0
296 :ラスト:2011/05/20(金) 22:14:30.18 ID:x83Y3WRH0
ただ、燃え残った人形の胴体に、焼け焦げ消えかかった文字で、
『寛保二年』という記述と、完全に燃えて文字数しかわからない作者の名前6文字、
それと、はっきりとは分からないので、残っている文字の痕跡からの推測だが、
『渦人形』という単語が読み取れた。
お坊さんが言うには、とにかく正体は不明だが、何らかの呪物である事はまちがいないらしい。
燃え残った残骸に、頭と動を繋ぐ棒の部分があったのだが、
そこにびっしりと、何か呪術的な模様が書かれていた痕跡があるのが、確認できたとの事だった。
その後、今に至るまで、俺も含め当時のメンバーには、知る限り何も起こっていない。
お寺のお坊さんからは、人形の正体がわかったら連絡をくれるという話だったが、
あれから数年経つが、未だその連絡も来ない。
終わり
適当に取ったら長かったorz
82:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/01/08(火) 17:47:52.17 ID:Mb8tVkUU0
>>39
面白かったわ
ありがとう
8:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/01/08(火) 15:41:34.55 ID:v2tO5/hP0
東北の山中で私有地につき立入禁止という看板を無視して中に入ったときの話でもしますか?
33:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/01/08(火) 15:54:10.16 ID:v2tO5/hP0
山の道をを車に乗って3人で移動しているときに
錆びた鉄の柱に『私有地につき立入禁止』という看板が鎖で吊るされているのを見つける
かなり前からその場所にあるらしく苔だらけで緑色になっていた
隣に座っていた1人が中を見に行ってみようといい出して、鎖の下を潜って中に入ってしまう
止めても聞かないので残った2人で車で待つことにする
30分くらい経った頃 何かが叫んだり吼えるような声が聞こえてきた
43:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/01/08(火) 16:06:15.68 ID:v2tO5/hP0
その5分後くらいに茂みから次々と何かが飛び出してくる
危険を感じたので施錠して様子を窺ってみると猪と大型犬が5~6匹くらい走り回っていた
猪がそのままの勢いで突進して、全速力で車に衝突する
猪はすぐ別の方向に走って行って、犬もそれを追いかけていなくなった
それから更に30分後に看板の先へ行った1人が戻ってくる
犬に襲われて怪我をしたといって足を引き摺っていたので見てみると3~4cmくらい骨が見えていた
飼い主らしき男が来て助かったものの、2度とここへは来ないこと
もし次に見かけたら犬の餌になるか銃の的にするといわれて帰されたらしい
それから3年間その周辺の道は通らないようにしている
44:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/01/08(火) 16:12:54.04 ID:CVKn8iDV0
も、もう一人はどうなったの・・・・
46:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/01/08(火) 16:15:22.95 ID:v2tO5/hP0
>>44
運転していた1人と自分は車の中にいた
犬に噛まれたのは残りの1人
それと猪の牙で車体に相当深い傷が入った
47:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/01/08(火) 16:17:36.14 ID:ctxWPUUY0
俺はその日、山道を愛車で飛ばしていた
久しぶりに親元に顔を出してその帰り道、急ぐ用事も無かったし
まあドライブがてらちょっとだけ遠回りしてみたんだ。
平地じゃまだ夕方くらいの時間だけど山の中だと少し薄暗い。
俺は早めに車のライトを点けた。
その山道には頂上付近にトンネルがあり、地元では結構有名な
心霊スポットだった。
トンネル出口に電話ボックスがあり、そこに髪の長い女の幽霊が出るらしい。
そこを通り過ぎた時にその電話ボックスをちらっと見たが、
確かに少し不気味な感じだった。
山道を下ってる途中ふと気がつくと、すぐ後ろに車が一台張り付いてきてる。
ゆっくり走ってたつもりはなかったんだけどなぁ、と思いながら
スピードを上げると後ろの車も同じくスピードを上げてきた。
そんなに急いでるんなら道を譲ろうか、と、スピードを落として
車を脇に寄せると、後ろの車も同様にスピードを落とし、
さらにパッシングまでしてきた。
こいつよっぽど追い越しが下手なのか、と思い、
俺はハザードを点け、車を路肩に止めた。
すると、後ろの車もハザードを点けて車を止め、
中から男が出てきて、こっちへ歩いて来る。
この野郎なにか文句でもあるのか、と思い
俺も車から出た。
やってきた男は、青ざめた顔でふるえながらこう言った。
「今さっき、あなたの車のサンルーフから誰か入っていきましたよ…」
50:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/01/08(火) 16:24:01.40 ID:CVKn8iDV0
>>47
俺に山道のトンネルを走らせなくする気か
48:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/01/08(火) 16:20:11.74 ID:CVKn8iDV0
幽霊妖の類が出てくるまでもなく
普通にイノシシやクマやあるいは天候に殺される事あるよな山って
夜の山に突然一人で放り出されたら精神崩壊すると思う
51:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/01/08(火) 16:27:00.50 ID:CVKn8iDV0
ある日、地元から離れたとある山の中の神社に行った。急な石段を上がると神明造りの立派な社殿があり、俺のお気に入りの神社だった。
いつもの様に拝殿の前でお参りを済ませ後ろを振り返ると、目の前に人の顔があった。人差し指一本分の距離くらいで人の顔があったのだ。
あ、あ……っと、声にもならない声をあげつつ、俺は後ずさりした。
後ずさりして離れた位置からそいつを見ると、そいつの黒髪はスラッと長く、女物の服でスカートを履いた女だった。
女はさっきからずっと俺を見つめていた。
そして、俺に指を向けたかと思うと、口をパクパクさせながら、社殿背後の山の森の中へ裸足で去って行ってしまった。
女が履いていた赤い靴が、その場に残っていた。
その日以来、俺はあの神社には一度も行っていない。
今から三年前の体験。
52:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/01/08(火) 16:38:42.79 ID:LeD4HuTf0
こえぇよぉ(´・ω・`)
53:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/01/08(火) 16:38:56.66 ID:ctxWPUUY0
有名どころをひとつ投下
一週間前の話。
娘を連れて、ドライブに行った。
なんてことない山道を進んでいって、途中のドライブインで飯食って。
で、娘を脅かそうと思って舗装されてない脇道に入り込んだ。
娘の制止が逆に面白くって、どんどん進んでいったんだ。
そしたら、急にエンジンが停まってしまった。
山奥だからケータイもつながらないし、車の知識もないから
娘と途方に暮れてしまった。飯食ったドライブインも歩いたら何時間かかるか。
で、しょうがないからその日は車中泊して、次の日の朝から歩いてドライブイン
行くことにしたんだ。
車内で寒さをしのいでるうち、夜になった。
夜の山って何も音がしないのな。たまに風が吹いて木がザワザワ言うぐらいで。
で、どんどん時間が過ぎてって、娘は助手席で寝てしまった。
俺も寝るか、と思って目を閉じてたら、何か聞こえてきた。
今思い出しても気味悪い、声だか音だかわからん感じで
「テン(ケン?)・・・ソウ・・・メツ・・・」って何度も繰り返してるんだ。
最初は聞き間違いだと思い込もうとして目を閉じたままにしてたんだけど、
音がどんどん近づいてきてる気がして、たまらなくなって目を開けたんだ。
54:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/01/08(火) 16:41:39.81 ID:ctxWPUUY0
そしたら、白いのっぺりした何かが、めちゃくちゃな動きをしながら車に近づいてくるのが見えた。
形は「ウルトラマン」のジャミラみたいな、頭がないシルエットで足は一本に見えた。
そいつが、例えるなら「ケンケンしながら両手をめちゃくちゃに振り回して身体全体をぶれさせながら」向かってくる。
めちゃくちゃ怖くて、叫びそうになったけど、なぜかそのときは「隣で寝てる娘がおきないように」って変なとこに気が回って、叫ぶことも逃げることもできないでいた。
そいつはどんどん車に近づいてきたんだけど、どうも車の脇を通り過ぎていくようだった。通り過ぎる間も、「テン…ソウ…メツ…」って音がずっと聞こえてた。
音が遠ざかっていって、後ろを振り返ってもそいつの姿が見えなかったから、ほっとして娘の方を向き直ったら、そいつが助手席の窓の外にいた。
近くでみたら、頭がないと思ってたのに胸のあたりに顔がついてる。思い出したくもない恐ろしい顔でニタニタ笑ってる。
俺は怖いを通り越して、娘に近づかれたって怒りが沸いてきて、「この野郎!!」って叫んだんだ。
叫んだとたん、そいつは消えて、娘が跳ね起きた。
俺の怒鳴り声にびっくりして起きたのかと思って娘にあやまろうと思ったら、娘が
「はいれたはいれたはいれたはいれたはいれたはいれたはいれたはいれたはいれた」
ってぶつぶつ言ってる。
やばいと思って、何とかこの場を離れようとエンジンをダメ元でかけてみた。そしたらかかった。
急いで来た道を戻っていった。娘はとなりでまだつぶやいている。
早く人がいるとこに行きたくて、車を飛ばした。
ようやく街の明かりが見えてきて、ちょっと安心したが、娘のつぶやきが「はいれたはいれた」から
「テン…ソウ…メツ…」にいつの間にか変わってて、顔も娘の顔じゃないみたいになってた。
55:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/01/08(火) 16:42:54.04 ID:ctxWPUUY0
家に帰るにも娘がこんな状態じゃ、って思って、目についた寺に駆け込んだ。
夜中だったが、寺の隣の住職が住んでるとこ?には明かりがついてて、娘を引きずりながらチャイムを押した。
住職らしき人が出てきて娘を見るなり、俺に向かって「何をやった!」って言ってきた。
山に入って、変な奴を見たことを言うと、残念そうな顔をして、気休めにしかならないだろうが、と言いながらお経をあげて娘の肩と背中をバンバン叩き出した。
住職が泊まってけというので、娘が心配だったこともあって、泊めてもらうことにした。
娘は「ヤマノケ」(住職はそう呼んでた)に憑かれたらしく、49日経ってもこの状態が続くなら一生このまま、正気に戻ることはないらしい。
住職はそうならないように、娘を預かって、何とかヤマノケを追い出す努力はしてみると言ってくれた。
妻にも俺と住職から電話して、なんとか信じてもらった。
住職が言うには、あのまま家に帰っていたら、妻にもヤマノケが憑いてしまっただろうと。
ヤマノケは女に憑くらしく、完全にヤマノケを抜くまでは、妻も娘に会えないらしい。
一週間たったが、娘はまだ住職のとこにいる。毎日様子を見に行ってるが、もう娘じゃないみたいだ。
ニタニタ笑って、なんともいえない目つきで俺を見てくる。
早くもとの娘に戻って欲しい。
遊び半分で山には行くな。
56:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/01/08(火) 16:46:24.68 ID:CVKn8iDV0
ヤマノケは有名どころだけあってコンパクトにまとまってて怖くて面白い
58:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/01/08(火) 16:55:43.21 ID:aow26l5T0
もっと頼む
59:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/01/08(火) 16:57:15.05 ID:CVKn8iDV0
縦走登山3日目の出来事。この日たどり着いたのは稜線に建つ避難小屋。
日も暮れかけているのでこの小屋に泊まる腹を決めた。
重い戸を開けると黄色い寝袋にくるまって先客が寝ている。
「こんばんは。」声をかけたが返事はない。相当疲れて寝込んでいるんだろう、
そう思った俺は早々に夕食を済ませ、先客の隣に並んで眠りについた。
翌朝、俺が小屋を出るときも寝袋は昨夜のままである。
「お先に・・・」と声をかけて避難小屋を後にし山を下りかけた。
途中まで来ると山岳救助隊らしき一団が登ってくる。俺は聞いてみた。
俺:「事故があったんですか?」
救:「ウン、昨日この先の岩場で滑落死亡事故があってね。これからその遺体を収容しに行くところだ」
俺:「遺体って、どこに?」
救:「あんたは昨日どこに泊まったの?」
俺:「この上の避難小屋ですけど」
救:「じゃ見てるはずだ。あそこに黄色い寝袋があっただろう?」
61:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/01/08(火) 17:23:32.10 ID:LeD4HuTf0
もっともっと(´・ω・`)
62:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/01/08(火) 17:24:25.94 ID:0AMkIuY20
俺も好きなのをひとつ
698 名前: あなたのうしろに名無しさんが・・・ 04/03/29 03:01
漏れにはちょっと変な趣味があった。
その趣味って言うのが、夜中になると家の屋上に出てそこから双眼鏡で自分の住んでいる街を観察すること。
いつもとは違う、静まり返った街を観察するのが楽しい。
遠くに見えるおおきな給水タンクとか、
酔っ払いを乗せて坂道を登っていくタクシーとか、
ぽつんと佇むまぶしい自動販売機なんかを見ていると妙にワクワクしてくる。
漏れの家の西側には長い坂道があって、それがまっすぐ漏れの家の方に向って下ってくる。
だから屋上から西側に目をやれば、その坂道の全体を正面から視界に納めることができるようになってるわけね。
その坂道の脇に設置されてる自動販売機を双眼鏡で見ながら「あ、大きな蛾が飛んでるな~」なんて思っていたら、
坂道の一番上のほうから物凄い勢いで下ってくる奴がいた。
「なんだ?」と思って双眼鏡で見てみたら全裸でガリガリに痩せた子供みたいな奴が、
満面の笑みを浮かべながらこっちに手を振りつつ、猛スピードで走ってくる。
奴はあきらかにこっちの存在に気付いているし、漏れと目も合いっぱなし。
ちょっとの間、あっけに取られて呆然と眺めていたけど、
なんだか凄くヤバイことになりそうな気がして、急いで階段を下りて家の中に逃げ込んだ。
63:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/01/08(火) 17:25:28.06 ID:0AMkIuY20
700 名前: あなたのうしろに名無しさんが・・・ 04/03/29 03:03
ドアを閉めて、鍵をかけて「うわーどうしようどうしよう、なんだよあれ!!」って怯えていたら、
ズダダダダダダッって屋上への階段を上る音が。明らかに漏れを探してる。
「凄いやばいことになっちゃったよ、どうしよう、まじで、なんだよあれ」って心の中でつぶやきながら、
声を潜めて物音を立てないように、リビングの真中でアイロン(武器)を両手で握って構えてた。
しばらくしたら、今度は階段をズダダダダッって下りる音。
もう、バカになりそうなくらいガタガタ震えていたら、
ドアをダンダンダンダンダンダン!!って叩いて、チャイムをピンポンピンポン!ピポポン!ピポン!!と鳴らしてくる。
「ウッ、ンーッ!ウッ、ンーッ!」って感じで、奴のうめき声も聴こえる。
心臓が一瞬とまって、物凄い勢い脈打ち始めた。
さらにガクガク震えながら息を潜めていると、
数十秒くらいでノックもチャイムもうめき声止んで、元の静かな状態に……。
それでも当然、緊張が解けるわけがなく、日が昇るまでアイロンを構えて硬直していた。
あいつはいったい何者だったんだ。
もう二度と夜中に双眼鏡なんか覗かない。
68:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/01/08(火) 17:29:40.20 ID:CVKn8iDV0
>>62
何故かリアルに想像出来るから怖い
69:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/01/08(火) 17:31:05.73 ID:0AMkIuY20
412 名前:あなたのうしろに名無しさんが・・・ 投稿日:2001/02/20(火) 19:00
ある病院に残り三ヶ月の命と診断されている女の子がいました。
友達が二人お見舞いに来た時に、その子のお母さんはまだ、
その子の体がベットの上で起こせるうちに最後に写真を撮ろう
とおもい、病気の子を真ん中にして三人の写真を撮りました。
結局それから一週間ほどで急に容体が悪くなり、三ヶ月ともたずに
その子はなくなってしまいました。
葬式も終わり、多少落ち着きを取り戻したお母さんはある日、
病院で撮った写真の事を思い出しました。それを現像に出し取りにいって
見てみると、その写真が見つかりません。写真屋さんに聞いてみると、
「いや、現像に失敗して、、、」というそうです。不審に思ったお母さんは
娘の生前の最後の写真だからとしつこく写真屋さんに迫ったそうです。
写真屋さんもしぶしぶ写真をとりだし、「見ない方がいいと思いますけれど、
驚かないで下さいね。」と写真を見せてくれました。
そこには、三人の女の子が写ってましたが、真ん中の亡くなった女の子だけが
ミイラのような状態で写っていたそうです。
続きます。
70:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/01/08(火) 17:31:42.39 ID:0AMkIuY20
413 名前:あなたのうしろに名無しさんが・・・ 投稿日:2001/02/20(火) 19:07
続き
それを見たお母さんはとても驚きましたが、供養して
もらうといい写真を持ち帰りました。それにしても恐ろしい
写真だったため霊能者のところに供養してもらう時に
これは何かを暗示してしているのではないかとたずねました。
すると、霊能者は言いたがりません。やはり無理に頼み込んで
話を聞ける事になりました。その霊能者が言うには、
「残念ですが、あなたの娘さんは地獄に落ちました。」
今まで聞いた中で一番恐かった話です。
71:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/01/08(火) 17:33:17.92 ID:LeD4HuTf0
こえぇよぉ諤々ぶるブル((´・ω・`))
72:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/01/08(火) 17:34:56.25 ID:duVN3muc0
カレンダー見たらもう8日だったっつうのが一番怖い
74:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/01/08(火) 17:36:44.15 ID:LeD4HuTf0
>>72
オイ ヤメロ
73:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/01/08(火) 17:35:28.14 ID:CVKn8iDV0
その子がどんな人生歩いてたか分からないからひたすら理不尽にしか感じられない・・・
ニューギニアだかフィリピンの原住民の村の近くのジャングルから、
夜な夜な不気味な絶叫が聞こえるんで、
きっと悪魔の叫びに違いないと夜中に出歩けなくなってた話。
相談を受けた役人が一体どんな言葉が聞こえるのか聞いたら、
『イタイヨー、トツゲキ、バンザイ、シッカリシロ、カアサーン』っていう日本語だった。
戦後数十年も経過してるのに、日本兵の生き残りがいるわけないしでも、
一応付近の山を調べてみたら、誰も近づかない洞窟の中から大量の日本兵の遺骨が見つかった。
77:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/01/08(火) 17:42:42.57 ID:0AMkIuY20
会社の同僚が亡くなった。
フリークライミングが趣味のKという奴で、俺とすごく仲がよくて、家族ぐるみ(俺の方は独身だが)での付き合いがあった。
Kのフリークライミングへの入れ込み方は本格的で、休みがあればあっちの山、こっちの崖へと常に出かけていた。
亡くなる半年くらい前だったか、急にKが俺に頼みがあるといって話してきた。
「なあ、俺がもし死んだときのために、ビデオを撮っておいてほしいんだ」
趣味が趣味だけに、いつ命を落とすかもしれないので、あらかじめビデオメッセージを撮っておいて、万が一の際にはそれを家族に見せてほしい、ということだった。
俺はそんなに危険なら家族もいるんだから辞めろといったが、クライミングをやめることだけは絶対に考えられないとKはきっぱり言った。
いかにもKらしいなと思った俺は撮影を引き受けた。
Kの家で撮影したらバレるので、俺の部屋で撮ることになった。
白い壁をバックに、ソファーに座ったKが喋り始める
「えー、Kです。このビデオを見てるということは、僕は死んでしまったということになります。
○○(奥さんの名前)、××(娘の名前)、今まで本当にありがとう。僕の勝手な趣味で、みんなに迷惑をかけて本当に申し訳ないと思っています。
僕を育ててくれたお父さん、お母さん、それに友人のみんな、僕が死んで悲しんでるかもしれませんが、どうか悲しまないでください。僕は天国で楽しくやっています。
皆さんと会えないことは残念ですが、天国から見守っています。××(娘の名前)、お父さんはずっとお空の上から見ています。
だから泣かないで、笑って見送ってください。ではさようなら」
もちろんこれを撮ったときKは生きていたわけだが、
それから半年後本当にKは死んでしまった。クライミング中の滑落による事故死で、クライミング仲間によると、通常、もし落ちた場合でも大丈夫なように下には安全マットを敷いて登るのだが、
このときは、その落下予想地点から大きく外れて落下したために事故を防ぎきれなかったのだそうだ。
通夜、告別式ともに悲壮なものだった。
泣き叫ぶKの奥さんと娘。俺も信じられない思いだった。まさかあのKが。
一週間が過ぎたときに、俺は例のビデオをKの家族に見せることにした。
さすがに落ち着きを取り戻していたKの家族は俺がKのメッセージビデオがあるといったら、
是非見せて欲しいと言って来たのでちょうど初七日の法要があるときに、親族の前で見せることになった。
79:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/01/08(火) 17:44:15.22 ID:0AMkIuY20
俺がDVDを取り出した時点で、すでに泣き始める親族。
「これも供養になりますから、是非見てあげてください」とDVDをセット
ヴーーーという音とともに、真っ暗な画面が10秒ほど続く。
あれ?撮影に失敗していたのか?と思った瞬間、真っ暗な中に突然Kの姿が浮かび上がり、喋り始めた。
あれ、俺の部屋で撮ったはずなんだが、こんなに暗かったか?
「えー、Kです。このビデオを…るということは、僕は…んでしまっ…いう…ります。○○(奥さんの名前)、××(娘の名前)、今まで本…ありが…」
Kが喋る声に混ざって、さっきからずっと鳴り続けている
ヴーーーーーーという雑音がひどくて声が聞き取りにくい。
「僕を育ててくれたお父さん、お母さん、それに友人のみんな、僕が死んで悲しんでるかもしれませんが、どうか悲しまないでください。
僕はズヴァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア××(娘の名前)、お父さん死んじゃっヴァアアアアアアアアアアアアア死にたくない!
死にズヴァアアアアアアアにたくないよおおおおヴヴァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア、ザッ」
背筋が凍った。
最後の方は雑音でほとんど聞き取れなかったが、Kの台詞は明らかに撮影時と違う断末魔の叫びのような言葉に変わり、
最後Kが喋り終わるときに暗闇の端から何かがKの腕を掴んで引っ張っていくのがはっきりと見えた。
これを見た親族は泣き叫び、Kの奥さんはなんて物を見せるんだと俺に掴みかかり、Kの父親は俺を殴りつけた。
奥さんの弟が、K兄さんはいたずらでこういうものを撮るような人じゃないとなだめてくれたおかげでその場は収まったが、
俺は土下座をして、すぐにこのDVDは処分しますといってみんなに謝った。
翌日、DVDを近所の寺に持っていったら、処分をお願いしますという前に、住職がDVDの入った紙袋を見るや否や「あ、それはうちでは無理です」と。
代わりに、ここなら浄霊してくれるという場所を教えてもらい、行ったがそこでも「えらいとんでもないものを持ってきたね」と言われた。
そこの神主(霊媒師?)によると、Kはビデオを撮った時点で完全に地獄に引っ張り込まれており、何で半年永らえたのかわからない、
本来ならあの直後に事故にあって死んでたはずだと言われた。
81:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/01/08(火) 17:47:33.89 ID:zoeNPlWyO
>>79
今俺も貼ろうとしてた、地獄というとやっぱこれだよな
84:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/01/08(火) 17:48:02.91 ID:DVIBnR9G0
とりあえず脱いでおいたが
85:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/01/08(火) 17:48:10.67 ID:CVKn8iDV0
もう私いやです! 部屋に戻ります!
88:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/01/08(火) 17:49:07.99 ID:LeD4HuTf0
>>85
そんな事いうなよおおおぉ(´・ω・`)(´・ω・`)(´・ω・`)
86:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/01/08(火) 17:48:34.73 ID:LeD4HuTf0
よるお風呂入れないよぉおおおお(´・ω・`)
87:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/01/08(火) 17:48:57.20 ID:DVIBnR9G0
95:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/01/08(火) 17:58:09.35 ID:DVIBnR9G0
山仲間の話。
単独で入山中に、不思議な光景に出会した。
行く手の繁みの中で男性が二人、藪漕ぎしながら歩いているのだが、
ある程度進むとくるりと踵を返してから、元来た藪中を戻っていく。
そのまま50メートルほど戻ると、そこでまた180度回転し、
再びこちらへ向かって進んでくる。
その二人組は、そんなことを何度も繰り返していたのだ。
顰め面が見て取れるほどに近よってみたが、向こう側は彼のことが
目に入らないようで、気が付きもしない様子。
「あのー、何をしているんですか?」
流石に気になってそう声を掛けると、吃驚した顔で立ち止まった。
二人して安堵の息を吐きながら、こんなことを口に出す。
「あぁ良かった、人に逢えた。
僕ら、実は昨日からずっと道に迷ってて・・・。
ここがどこかわかりますか?」
「いや、あなた方、ずっとそこでグルグル行ったり来たりを繰り返して
いたんですけど?」
そう指摘された二人は、彼にからかわれたものと思ったらしく、
「何を言ってるんですかぁ」と苦笑しながらこちらに向かってきた。
97:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/01/08(火) 17:58:40.26 ID:DVIBnR9G0
(続き)
いきなり、前を歩いていた方が立ち止まった。
ギョッとした顔で足下を見つめている。
「ここ・・・昨晩僕らがテントを張った場所だ。
このペグの痕、見覚えがある。
・・・嘘だろ、ここから半日以上は歩いている筈だぞ」
そう呟くと顔を上げ、あれ?っという表情になる。
「何だ、ここ、○○峠に下りる途中道じゃないか!!」
「・・・本当だ。今まで嫌と言うほど通っているのに。
どうして気が付かなかったんだろう?」
どうやら後ろの男性も、現在地の特定が出来たらしい。
二人して顔を見合わせて、頻りに首を傾げている。
丁度、下りる先が同じだったので、彼も二人に同行することにした。
問題なく下山出来て、礼を言ってくる二人に別れを告げたのだという。
「あの二人組、揃って狐にでも騙されたのかね?」
そんなことを考えたそうだ。
しかしその三年後、彼もその藪で道に迷い、別の登山者に助けられた。
道を失ったのは、正にあの藪の中であったという。
「・・・あそこの藪って、何かヤバいモノでも潜んでいるのかな・・・」
以来、彼はそこの道を利用しないようにしているそうだ。
98:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/01/08(火) 18:00:51.86 ID:LeD4HuTf0
△ △
(´・ω・`)コンコン
99:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/01/08(火) 18:06:21.90 ID:CVKn8iDV0
171 本当にあった怖い名無し sage New! 2006/10/26(木) 05:11:25 ID:cQYTHW9f0
4~5年ほど前に、取引先の人から聞いた話。
その人が言うに、もうだいぶ前の出来事とのことだから、少なくとも10年以上前のことと思われる。
インドネシアにA氏(話してくれた人)、B氏、C氏の3人で仕事に行った。
仕事といっても、半分は遊びを兼ねたような旅行だったらしい。
そんなわけなので、仕事が終わってから10日近い暇ができ、最初の2~3日はのんびりと観光を
楽しんでいた。3人とも現地は初めてではないので、なんとなく退屈さを感じていたところ、
B氏が「ラフレシアを見てみないか?」と言い出した。
ジャングルに入るには、やはりガイドが要る。
C氏が伝をたどってガイドをさがしたところ、幸いにも引き受けてくれる人が見つかった。
翌日、3人はガイドのいる町へ向かった。そしてガイドと落ち合い、装備を調達すると、その町の
安ホテルで1泊した翌早朝、ガイドを含めた4人はジャングルへと分け入った。
念のためにラフレシアについて書いておくと、巨大な寄生花であるこの植物は、数が少ない上に
開花する時間も僅かで、なかなかお目にかかることは困難である。
ガイドにも「期待はしないほうがいい」と予め念を押された。
まずは蕾を探し出し、その蕾が開花するまで待って花を見るというのが普通だが、日帰りで
何日かジャングルに分け入っても、まず無理だろうとのことだ。
それでも、偶にはジャングル探検も悪くない、何かの話の種になるだろう。
3人はそんな気分であったということだ。
100:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/01/08(火) 18:06:54.38 ID:CVKn8iDV0
172 本当にあった怖い名無し sage New! 2006/10/26(木) 05:12:28 ID:cQYTHW9f0
1日目。何の成果もなく終わった。A氏はジャングルに分け入るということがこんなにも大変
だとは思わなかったという。何と言っても蒸し暑く体力の消耗が酷い。おまけに害になる生き物
にも常に注意を払わなければならない。
おそらく、他の2人も同じ気持ちであったろう。
2日目。昨日とは方向を変えたが、これまた成果無し。疲労困憊でホテルに帰る。
もう、いい加減嫌にはなっていたが、せっかく来たのだからと、明日もう一日がんばってみる
ことにした。
そして3日目。
当然、1日目、2日目とは方向を変えて分け入る。
しかし、やはりというか、蕾さえ発見できぬまま時間は過ぎてゆく。
幾分早い時間だが、かなり疲れもあって、諦めて戻ろうということになった。
ガイドにその旨を告げると、4人は道を引き返した。
2時間半ほど歩いたころ、列の最後尾にいたB氏が声をあげた。
B氏が指差すほうを見ると、遠くに何やら赤茶けた塊が見えた。「あれ、ラフレシアじゃないのか?」
ガイドは目を細めるようにして見ていたが、突然、顔を引きつらせた。
「急ごう!黙って付いてきなさい!」
ガイドは小走りに進み始めた。なおもそれを気にして足の進まない3人に振り向きざま言った。
「命が欲しいのなら、急ぎなさい!」
只ならぬガイドの雰囲気に、3人は慌ててガイドの後を追った。
101:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/01/08(火) 18:07:35.00 ID:CVKn8iDV0
173 本当にあった怖い名無し New! 2006/10/26(木) 05:13:09 ID:cQYTHW9f0
しばらくすると、生臭い臭気が漂ってきた。
ふと振り返ったA氏の目には、赤茶けた物体がさっきより確実に近いところにあるのが映った。
動いているのか?あれは!
この臭いがあの物体から発せられているとしたら、あれはラフレシアではない。
実際に臭いを嗅いだことはないが、ラフレシアは肉の腐ったような臭いのはず。なのに今漂っている
のは生臭さである。A氏はあれがラフレシアではないどころか、何か得体の知れない「嫌なもの」
であることを確信した。
自然に足が速まる。
ガイドはもちろん、B氏、C氏もそれに感づいたようで、自然と一行の足は速くなった。
生臭い臭気は、徐々に強くなっている気がした。
後ろを振り返ってみようと思うが、恐怖でそれもできない。後に続くB氏、C氏の2人もA氏を追い抜く
勢いでぴったり付いてくる。
普通の道ではないから、全力疾走というわけにはいかないが、可能な限り速く走った。
ようやく、自動車の通れる道が見えてきた。
ふと振り返ると、それはもう10メートルに満たない距離にいた。
その距離で分かったのだが、それは大きさは2メートル近く、直径70~80センチもある寸詰まりで
巨大なヒルのような感じであった。
道に出ると、ガイドが足を止め荒くなった呼吸を整えている。
3人も立ち止まった。
「もう大丈夫だと思います」ガイドが息を切らせながら言った。
A氏は安堵のあまり、その場に座り込んだ。他の2人も真っ赤な顔をしてしゃがみこんだ。
102:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/01/08(火) 18:08:05.95 ID:CVKn8iDV0
175 本当にあった怖い名無し sage New! 2006/10/26(木) 05:19:30 ID:cQYTHW9f0
落ち着いてみると、もうあの臭いはしない。ジャングルの中を見たが、木々が日光を遮っている
せいで、様子は分からない。
「あれは、何なのか?」
ガイドに尋ねたが、首を振っただけで何も答えてはくれなかった。
結局、ホテルに着いても「あのことは忘れてください。私も詳しくは知らないし、忘れたほうが
いいですよ」と、あれが何かは教えてもらえなかった。
後日、C氏が仕事でインドネシアに行ったとき、かなり方々でこの件を聞きまわったようで、
いくらかの情報を得ることができた。
それは「人を喰うもの」で、人をみつけると執拗に追いかけ、人が疲れて動けなくなったとき
襲い掛かってくるという。太陽の光が好きではなく、あのとき、もし早めに切り上げていなかったら、
ジャングルを抜け出しても追ってきて、逃げ切れなかったかもしれなかった。
それを見たら、現地で言うお祓いを受けなければならない。お祓いを受けなければ、それは追いかけ
た人間を忘れず、執拗に狙ってくる。3人はお祓いはしなかったが、すぐに日本に帰ったので難を
逃れたのではないか。
そして、その名前は分からない、というよりも口にしない、ということであった。
103:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/01/08(火) 18:12:10.95 ID:DVIBnR9G0
縦走登山3日目の出来事。この日たどり着いたのは稜線に建つ避難小屋。
日も暮れかけているのでこの小屋に泊まる腹を決めた。
重い戸を開けると黄色い寝袋にくるまって先客が寝ている。
「こんばんは。」声をかけたが返事はない。相当疲れて寝込んでいるんだろう、
そう思った俺は早々に夕食を済ませ、先客の隣に並んで眠りについた。
翌朝、俺が小屋を出るときも寝袋は昨夜のままである。
「お先に・・・」と声をかけて避難小屋を後にし山を下りかけた。
途中まで来ると山岳救助隊らしき一団が登ってくる。俺は聞いてみた。
俺:「事故があったんですか?」
救:「ウン、昨日この先の岩場で滑落死亡事故があってね。これからその遺体を収容しに行くところだ」
俺:「遺体って、どこに?」
救:「あんたは昨日どこに泊まったの?」
俺:「この上の避難小屋ですけど」
救:「じゃ見てるはずだ。あそこに黄色い寝袋があっただろう?」
104:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/01/08(火) 18:15:55.59 ID:LeD4HuTf0
きゃぁあぁぁ(´・ω・`)
おなじいいぃぃぃ(´・ω・`)
105:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/01/08(火) 18:22:34.24 ID:LeD4HuTf0
もう夜だよ…(´・ω・`)
109:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/01/08(火) 18:30:58.82 ID:3HtryDrg0
早くほかの貼れよ
111:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/01/08(火) 18:42:39.53 ID:0AMkIuY20
洒落怖から 『地下の井戸』
902 本当にあった怖い名無し 2008/01/21(月) 00:52:13 ID:wohjQNUp0
これを書いたら、昔の仲間なら俺が誰だか分かると思う。
ばれたら相当やばい。まだ生きてるって知られたら、また探しにかかるだろう。
でも俺が書かなきゃ、あの井戸の存在は闇に葬られたままだ。だから書こうと思う。
文章作るの下手だし、かなり長くなった。しかも怪談じゃないから、興味の湧いた人だけ読んで欲しい。
今から数年前の話。俺は東京にある、某組織の若手幹部に使われてた。Nさんって人。
今やそういう組織も、日々の微妙にヤバい仕事は、アウトソーシングですよ。
それも組織じゃなく、個人が雇うの。警察が介入してきたら、トカゲの尻尾切りってやつね。
その代わり金まわりは、かなり良かったよ。俺は都内の、比較的金持ちの日本人、外国人が遊ぶ街で働いてた。
日々のヤバい仕事っていうと、すごそうだけど、実際に俺がやってたのは、ワンボックスで花屋に花取りに行って、代金を払う。
その花を俺がキャバクラから、高級クラブまで配達する。
キャバクラ行くと、必ず花置いてあんだろ?あれだよ。で、花配りながら、集金して回る。
もちろん花屋に渡した代金の、3~5倍はもらうんだけどね。3万が10万、5万が25万になったりするわけよ。月に3千万くらいにはなったね。
俺がやるヤバい仕事ってのは、最初はその程度だった。それでも結構真面目にやってた。相手も海千山千のが多いからさ。
相手が若僧だと思うと、なめてかかって、値切ろうとするバカもいるんだよね。
その度に暴力沙汰起こしてたんじゃ、仕事になんないわけだ。起こす奴もいるけど。でも警察呼ばれたら負けだからね。
次から金取れなくなるから、組から睨まれる。タダじゃすまんよ。
そういう時、俺は粘り強く話す。話すけど、肝心なトコは絶対譲らない。一円も値切らせないし、ひとつの条件もつけさせない。
112:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/01/08(火) 18:43:58.31 ID:0AMkIuY20
903 本当にあった怖い名無し 2008/01/21(月) 00:54:00 ID:wohjQNUp0
前置き長くなったけど、まあうまくやってるってんで、Nさんの舎弟のSさん、Kさんなんかに、結構信頼されるようになった。
それで時々花の配達に使ってるワンボックスで、夜中に呼び出されるようになった。
積んでるのは、多分ドラム缶とか段ボール。荷物積む時は、俺は運転席から出ない事になってたし、後ろは目張りされてて、見えないから。
それでベンツの後ろついてくだけ。荷物を下ろしたら、少し離れたところで待たされて、またベンツについて帰って、金もらって終了。
何を運んでたなんて知らない。その代わり、1回の仕事で、花の配達の1ヶ月分のバイト代をもらえた。
ある夜、また呼び出された。行ってみると、いつもとメンツが違う。いつもはSさんかKさんと、部下の若い人だった。
ところがその日は、幹部のNさんがいて、他にはSさん、Kさんの3人だけ。
3人とも異様に緊張してイラついてて、明らかに普通じゃない雰囲気。
俺が着いても、エンジン切って待ってろって言ったまま、ボソボソ何か話してた。
「・・・はこのまま帰せ」
「あいつは大丈夫ですよ。それより・・・」
途切れ途切れに会話が聞こえてたけど、結局俺は運転していく事になった。何だか嫌な予感がしたけどね。
後ろのハッチが開いて、何か積んでるのが分かった。でも今回はドラム缶とか、段ボールじゃなかった。置いた時の音がね、いつもと違ってた。
重そうなもんではあったけど。
更に変だったのが、SさんとKさんが同乗した事。いつもは俺一人で、ベンツについてくだけなのに。しかもいきなり首都高に入った。
あそこはカメラもあるし、出入口にはNシステムもあるから。こういう仕事の時は、一般道でもNシステムは回避して走るのに。
114:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/01/08(火) 18:44:37.39 ID:0AMkIuY20
904 本当にあった怖い名無し 2008/01/21(月) 00:54:47 ID:wohjQNUp0
首都高の環状線はさ、皇居を見下ろしちゃいけないとかでさ、何ヵ所か地下に入るよね。
恥ずかしながら、俺は運転には自信あるけど、道覚えるのは、苦手なんだよね。方向音痴だし。
多分環状線を、2周くらいしたと思う。車が途切れたところで、突然Nさんが乗るベンツが、トンネルの中で、ハザード出した。
それまでSさんもKさんも、ひと言もしゃべらなかったけど、Sさんが、右の車線に入って止めろって。言われるままに止めたよ。
そこって合流地点だった。で、中洲みたいになってるとこに、バックで車入れろって言うから、その通りにして、ライト消した。
両側柱になってて、普通に走ってる車からは、振り返って見たとしても、なかなか見つけられないと思う。
まあ見つけたとしても、かかわり合いにならない方が良いけどね。Nさんが乗ったベンツは、そのまま走り去った。
SさんとKさんは、二人で荷物を下ろしてたけど、俺にも下りて来いって。
俺はこの時も、嫌な予感がした。今まで呼ばれた事なんて無かったし。
SさんとKさんが、二人で担ぎ上げてるビニールの袋。映画とかでよく見る、死体袋とかいう黒いやつ。
もう中身は、絶対に人間としか思えない。
116:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/01/08(火) 18:45:50.28 ID:0AMkIuY20
905 本当にあった怖い名無し 2008/01/21(月) 00:55:26 ID:wohjQNUp0
とんでもない事に巻き込まれたって思って、腰が痛くなった。多分腰抜ける寸前だったんだろう。
何で組の人じゃなくて、俺なの?ってその時は思ったけど、その理由も後になれば分かったんだけど。
で、Sさんがポケットに鍵があるから、それ使って、金網の扉の鍵開けろって言うから、言う通りにした。
金網開けて、5~6メートルで、また扉にぶつかる。扉というより、鉄柵って感じかな。
だって開ける為の把手とか無いし、第一鍵穴すら見当たらない。
どうすんだろうな~と思ったら、またSさんが別のポケットを指定。
今度は大小ひとつずつの鍵。コンクリの壁にステンレスの小さい蓋が付いてて、それを小さい方の鍵で開ける。
中に円筒形の鍵穴があって、それは大きい方の鍵。それを回すと、ガチャって音がして、柵が少し動いた。
右から左に柵が開いた。壁の中まで柵が食い込んでて、その中でロックされてる。鍵を壊して侵入は、出来ない構造らしい。
更に先はもう真っ暗。マグライトをつけて先に進んだけど、すぐに鉄扉に当たった。
『無断立入厳禁 防衛施設庁』って書いてあった。これは不思議だった。だってここ道路公団の施設だよね?
ていうか、こんなとこ入って、平気なのかなって思った。まあこの人たちのやる事だから、抜かりは無いとは思うんだけど、監視カメラとかあるんじゃないのって、不安になった。
まあ中に進んだら、もっと不思議なもんが、待ってたんだけどね。鉄の扉も、さっきの鉄柵と同じ要領で開いて、俺たちは中に入った。
117:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/01/08(火) 18:46:58.30 ID:0AMkIuY20
906 本当にあった怖い名無し 2008/01/21(月) 00:56:30 ID:wohjQNUp0
SさんもKさんも、うっすら汗かき始めてて、随分重そうだったけど、運ぶの手伝えとは言わなかった。
中に入るとすぐ階段で、ひたすら下に下りて行った。結構下りた。時々二人が止まって、肩に担ぎ上げた「荷物」を担ぎ直してた。
階段を下りると、ものすごく広い通路が、左右に伸びてた。多分幅10mくらいあったと思う。
下りたところで、ひと休みした。通路はところどころ電灯がついてて、すごく薄暗いけど、一応ライトは無しで歩けた。
俺たちは反対側に渡って(って言いたくなるくらい広い)、左手に向かって進んだ。
時々休みながら、どれくらい進んだかな。通路自体は分岐はしてない。ひたすら真っ直ぐで、左右の壁に時々鉄の扉がついてる。
ある扉の前でSさんが止まって言った。
「これじゃねえか。これだろ」
そこには『帝国陸軍第十三号坑道』そう書いてあった。
字体は古かったけど。信じられる?今の日本にあるのは、陸上自衛隊でしょ。何十年も前のトンネルなのか、これは?
SさんもKさんも、汗だくで息も荒くなってたから、扉を入ったところで、また「荷物」を下ろして、休憩する事にした。
二人とも無言だったから、俺も黙ってた。
しばらくして、Sさんがそろそろ行こうって言って、袋の片側、多分『足』がある側を持った。そしたら・・・
『袋』が突然暴れた。Sさんは不意を突かれて、手を放してしまい、弾みで反対側の袋の口から、顔が出てきた。
猿ぐつわを噛まされた、ちょっと小太りの男。
118:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/01/08(火) 18:47:31.97 ID:0AMkIuY20
907 本当にあった怖い名無し 2008/01/21(月) 00:57:16 ID:wohjQNUp0
どっかで見たことある・・・それもあるけど、分かっていながらも、袋からリアルに人が、しかも生きた人が出てきた事にビビッて、俺は固まってた。
SさんがKさんに
「おい何で目を覚ました!」
「クスリ打てクスリ!」
「袋に戻せ!」
とか言ってるのが聞こえた。
Kさんはクスリは持って無いとか、何とか答えてた。その間も『袋』は暴れてた。
暴れてたというか、体を縛られてるらしく、激しく身をよじって、袋から出ようとしていた。
するとSさんが、袋の上から腹のあたりを、踏んづけるように蹴った。一瞬『袋』の動きが止まったけど
「ウ~!」と、すごい唸り声を上げながら、また暴れ出した。
Sさんは腹のあたりを、構わず蹴り続けた。それでも『袋』は、暴れ続けた。やがてKさんも加わって、二人で滅茶苦茶に蹴り始めた。
パキって音が、2、3回立て続けにした。多分肋骨が折れたんだと思う。
『袋』の動きが止まった。その時なぜか、男は頭を振って、俺に気が付いた。
それまですごい形相で、暴れていた男が、急に泣きそうな顔で、俺を見つめた。
Sさんが「袋に戻せ」と言うと、Kさんが男の肩のあたりを、足で抑えながら、袋を引っ張って、男を中に戻した。
今でもその光景は、スローモーションの映像のまま、俺の記憶に残ってる。男は袋に戻されるまで、ずっと俺を見てた。一生忘れられない。
119:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/01/08(火) 18:48:04.65 ID:0AMkIuY20
908 本当にあった怖い名無し 2008/01/21(月) 00:57:44 ID:wohjQNUp0
Kさんが、袋の口をきつく縛るのを確認すると、Sさんは更に数回、袋を蹴った。
「これくらいかな。殺しちゃまずいからな」
Sさんはそう言って、俺を見た。
「お前、こいつの顔を見たか」
「いえ・・・突然だったんで、何が何だか」
そう答えるのが、精一杯だった。その時は本当に、どこかで見たような気がしたけど、思い出せなかった。
SさんとKさんは、再び動かなくなった『袋』を担ぎ上げた。それまでと違うのは、真ん中に俺が入ったこと。
もう中身を知ってしまったので、一連托生だ。
それからその13号坑道ってやつを、延々歩いた。今までの広い通路とはうって変わって、幅が3mも無いくらいの、狭い通路だった。
右手は常に壁なんだけど、左手は時々、下に下りる階段があった。幅1mちょいくらいの階段で、ほんの数段下りたところに、扉がついてた。
何個目か分かんないけど、Sさんがある扉の前で止まれって言った。そこもまた『帝国陸軍』。
『帝国陸軍第126号井戸』って書いてあった(128だったかも。偶数だった記憶があるけど忘れた)
それでSさんに言われるまま、中に入った。
中は結構広い部屋だった。小中学校の教室くらいはあったかな。その真ん中に、確かに井戸があった。
でも蓋が閉まってるの。重そうな鉄の蓋。端っこに鎖がついてて、それが天井の滑車につながってた。
滑車からぶら下がっている、もうひとつの鎖を引いて回すと、蓋についた鎖が徐々に巻き取られて、蓋が開いてく仕掛けになってた。
120:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/01/08(火) 18:48:55.06 ID:0AMkIuY20
909 本当にあった怖い名無し 2008/01/21(月) 00:58:23 ID:wohjQNUp0
オレは言われるままに、どんどん鎖を引っ張って、蓋を開けていった。完全に蓋が開いたとこで、二人が『袋』を抱え上げた。
もう分かったよ。この地底深く、誰も来ない井戸に、投げ込んでしまえば、二度と出てこないもんね。
でもひとつだけ分からない事があった。なんで「生きたまま」投げ込む必要があるの?
二人は袋を井戸に落とした。ドボーン!水の中に落ちる音が、するはずだった。
でも聞こえてきたのは、バシャッて音。この井戸、水が枯れてるんじゃないの?って音。SさんとKさんも、顔を見合わせてた。
Sさんが俺の持っているマグライトを見て顎をしゃくってみせ、首を傾げて井戸を覗けってジェスチャーをした。
マグライトで照らしてみたけど、最初はぼんやりとしか底まで光が届かなかった。レンズを少し回して焦点を絞ると、小さいけど底まで光が届いた。
光の輪の中には『袋』の一部が照らし出されてる。やっぱり枯れてるみたいで、水はほとんど無い。
そこに手が現れた。真っ白い手。さらにつるっぱげで、真っ白な頭頂部。あれ、さっきの『袋』の人、つるっぱげじゃ無かったよな。
ワケが分かんなくて、呆然と考えていたら、また頭が現れた。
え?2人?ますます頭が混乱して、ただ眺めてたら、その頭がすっと上を向いた。
目が無い。空洞とかじゃなくて、鼻の穴みたいな小さい穴がついてるだけ。
理解不能な出来事に、俺たちは全員固まってた。しかも2人だけじゃ無さそうだ。奴らの周囲でも、何かがうごめいている気配がする。
何だあれ?人間なのか?なぜ井戸の中にいる?何をしている?
121:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/01/08(火) 18:49:29.94 ID:0AMkIuY20
910 本当にあった怖い名無し 2008/01/21(月) 00:58:52 ID:wohjQNUp0
その時、急に扉が開いて、人が入ってきた。俺は驚いてライトを落として、立ち上がってた。
SさんとKさんも。入ってきたのは、Nさんだった。Nさんは俺たちを見て、怪訝そうな顔をした。
「S、もう済んだのか」
Sさんは少しの間、呆然としていたけど、すぐに答えた。
「済みました」
Nさんは俺たちの様子を見て、俺たちが井戸の中身を見た事を悟ったみたいだった。
「見たのか、中を」
俺たちはうなずきもせず、言葉も発しなかったが、否定しないことが肯定になった。
「さっさと蓋閉めろ」
言われて俺は、慌てて鎖のところに行って、さっきとは反対側の鎖を引いて回した。少しずつ蓋が閉まっていく。
「余計な事を考えるんじゃねえ。忘れろ」
そう言われた。確かにそうなんだけど、ぐるぐる考えた。殺しちゃまずいって、Sさんは言ってた。
Sさん自身も、なぜ殺しちゃだめなのか、知らなかったんだと思う。生きたまま落とした理由は?
生きたまま・・・・あの化け物のような奴らがいるところへ。考えたく無くなった。
俺たちは来た道を戻り、車で道に出た。今度はSさん、Kさんは、Nさんのベンツに乗っていった。
そしてそれが3人を見た最後になった。
122:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/01/08(火) 18:50:24.75 ID:0AMkIuY20
911 本当にあった怖い名無し 2008/01/21(月) 00:59:15 ID:wohjQNUp0
俺は思い出していた。あのとき『袋』に入っていた男の顔を。最近出所してきた、会長の3男だった。出来の悪い男というウワサだった。
ケチな仕事で下手を踏み、服役していたらしい。俺は2、3
回しか顔を合わせた事が無かったが、大した事無さそうなのに、威張り散らしてヤな感じだったのを覚えてる。
だからといって、会長の息子を殺すのはアウトだよ、死体を隠したっていずれバレる。
それでも出来るだけバレないように、俺を使って運んだんだろうけど。
あの出来事から2週間くらいして、Nさんが居なくなった、お前も姿をくらませって、Sさんから電話があった。バレたんだ。会長の息子を殺ったのを。
組から距離をおいていたのが幸いして、俺は逃げ延びる事ができた。SさんやKさんがどうなったのかは知らない。
あれから数年、俺は人の多い土地を転々としている。これはあるネットカフェで書いた。
もうすぐネットカフェも、身分証を見せないと書き込めなくなるらしい。これが最後のチャンスだ。
組の人たちがこれを知れば、どこから書いたのか、すぐに突き止めると思う。だから俺はこの街には、二度と戻ってこない。
誰かあの井戸を突き止めて欲しい。なぜあの井戸に、暴力団なんかが鍵持って入れるのか。
そうしたら俺の追っ手は、皆捕まるかも知れない。俺は逃げ延びたい。これからも逃げ続けるつもりだ。
123:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/01/08(火) 19:04:12.25 ID:CVKn8iDV0
さしものお前らもさすがにこういう仕事には就いてないよな な
こんな事全部嘘だよな な
124:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/01/08(火) 19:07:06.85 ID:DVIBnR9G0
学生時代、友人が所属していたT大学山岳部に、代々伝わるという話である。
ある年の三月、T大学山岳部は新人三人を連れて、東北のY岳で冬山訓練を行った。
三月といえば、平野ではそろそろ新芽も顔を出し、春の息吹が聞こえ始める季節だが、
高山はいまだ深い雪の世界である。
メンバーは新人が三人、リーダーと副リーダーの三年生が二人。
合計五名の雪山山行だった。
先頭に副リーダーが立って、膝まで埋まる雪をラッセルし、
真中に新人の三人を挟んでリーダーが隊列の最後尾についた。
新人三人も高校時代から山に通っており、高山ではないが冬山も経験していたので、
快調なテンポで五人は雪の尾根を登った。
ところが五合目を過ぎた辺りから灰色の雲が空を覆い始め、六合目を過ぎて雪が舞い始めた。
天気はなおも下るという予報もあったため、パーティは小休止を取り、先に進むかあるいは撤退するか、
リーダーと副リーダーがミーティングを行ったが、結局リーダーの判断でこのまま山頂を目指す事になった。
しかし、この後、雪は本降りとなり、八合目を過ぎた頃には猛烈な風も加わり始めて横殴りの吹雪になり、
一歩前に進むことも困難な状態に陥ってしまった。
125:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/01/08(火) 19:07:39.86 ID:DVIBnR9G0
前を歩く部員の姿も確認出来ないようなホワイトアウトに近い状態の中で、
リーダーは山頂を目指す決断をしたことに後悔しながらも、前を歩く新人たちに懸命に声を掛けながら前進を続け、
周りが暗くなり始めた午後の四時過ぎに何とかY岳の肩にある非難小屋に辿り着いた。
雪に埋まった扉を懸命にこじ開け、先頭を歩いていた副リーダーが雪崩込むように非難小屋の中に飛び込む。
わずかに遅れてふたり目… そして三人目…。
さらに五分ほどして、最後尾を歩いていたリーダーが、全身雪まみれになってが非難小屋に入ってきた。
「あれ? 小泉はどうした? 」
副リーダーが荒い息を吐きながら、防寒着の雪を払っているリーダーに聞いた。
「なに? やつは来ていないのか!? 」
副リーダーの顔を見返して、雪を払っていたリーダーの手が止った。
隊列の四番目、つまりリーダーの前を歩いていたはずの新人の小泉がまだ小屋に着いていないだ。
「ちくしょう!はぐれたか!? 」
そう叫ぶと、リーダーは座る間もなく再びピッケルを手にして小屋を飛び出した。
「俺もいくよ! 」
副リーダーが後を追おうとして腰を上げた。
「おまえは新人達の面倒をたのむ。なあに。ここに着くほんの十分くらい前に後ろから声を掛けて、
前に小泉がいる事を確認しているんだ。すぐに見つかるさ」
126:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/01/08(火) 19:08:45.76 ID:DVIBnR9G0
そう言って副リーダーを非難小屋に戻し、リーダーは目を開けるのも辛くなるような猛吹雪の中に姿を消した。
非難小屋に残った三人が一言も声を出す事もなく固唾を飲んでいると、
二十分程して小屋の入り口でドーンという大きな音がしていきなり扉が開き、
吹雪といっしょに白い塊が非難小屋の中に転がり込んできた。
それは新人の小泉だった。肩で荒い息をし、それでも自力で立ち上がり
「すみません。途中で道を逸れてしまったようです」と荒い息といっしょに吐き出すように副リーダーに言った。
小屋の中にホッとする空気が流れたが、それも一瞬のことだった。
「おまえ、リーダーに会わなかったのか?」
新人のひとりが小泉に聞いた。
「リーダーがどうかしたのか?」
小泉が聞き返す。
「さっき、おまえを探しに飛び出して行ったんだ」
「えっ!?」
ニ重遭難…。
四人の頭に不吉な言葉が浮んだ。
副リーダーと新人のひとりが装備を整えて、小屋の扉をこじ開ける。
ブワァァ~~~ッ!
もの凄い勢いで風と雪が小屋の中に吹き込み、目を開ける事もできない状況だ。
何より小屋の外は、すでに日が落ちかけていた。
「くそう…」
副リーダーは歯を食いしばって小さく唸ると、ゆっくりと小屋の扉を閉めた。
127:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/01/08(火) 19:09:33.71 ID:DVIBnR9G0
けっきょく、それきりリーダーは戻って来なかった。
県警、山岳部OBも加わって懸命に捜査を続けたにもかかわらず、
山に緑が戻り、山道にフキノトウが顔を出すころになっても、リーダーの遺体は見つからなかった。
特に非難小屋の肩から西に切れ込むK沢は入念に捜索されたが、
遺体はおろかその痕跡すら見つけることが出来なかったのである。
捜査が打ち切りになった翌年の三月、同じY岳でリーダーの追悼山行が計画された。
その年の冬は例年に比べ雪は多かったものの、天候は比較的安定していた。
その日も、見上げれば空は真っ青の快晴で、昨年のメンバー四人を含めた総勢八名のT大学山岳部員たちは
隊列を乱すこともなく、時間通り、昨年事故があった避難小屋に登り着いた。
登頂は明日果たす事とし、その日は避難小屋の中でリーダーの思い出話に、部員それぞれが花を咲かせた。
冬の山に夜の帳が下り、そろそろ寝ようかと部員達が目をこすり始めた午後の十時過ぎ、
非難小屋の外の様子が突然変わりはじめた。
風が非難小屋の板壁を叩きはじめ、その中に雪も混じリ始めたようだ。
「おかしいなあ。天気図を見ても今日明日、天候は崩れないはずなんだが」
そう言って立ち上がったひとりが、小屋の扉を薄く開けて叫び声を上げた。
「うわぁ!完全に吹雪いているよ」
慌てて扉を閉める。
「これは、明日は上まで登れないかもしれないな」
つぶやきながら白い息を吐き、ランタンを囲む車座の中に戻って来る。
その時…。
128:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/01/08(火) 19:10:21.45 ID:DVIBnR9G0
車座の中で酒を飲んでいたひとりがぽつりと言った。
「おい…。誰かこっちにくるぞ…」
今まで賑やかに語り合っていた部員達が口を閉ざし、いっせいに非難小屋の扉を見た。
すると…。
聞こえてくるのだ。
吹雪の音に混ざって、雪を踏みしめる山靴の音が…。
ザッ…ザッ…ザッ…ザッ…
夜の十時過ぎだ…。こんな時間に冬山に登ってくる奴などいるわけがない。
しかしその靴音はだんだんと大きくなり、そして小屋の前で止まったのである。
八人は声を出す事も出来ず、ただただ非難小屋の扉を見つめ続けた。
しばらく小屋の外は吹雪の音だけになった。
そしてまた聞こえ始めたのだ。山靴の音が。
ザッ…ザッ…ザッ…ザッ…
山靴が雪を踏みしめる音が、やがて非難小屋の周りを回り始めた。
ザッ…ザッ…ザッ…ザッ…
八人は肩を抱き合って非難小屋の真中に固まり、ただただ、その足音を耳と目で追いかけた。
非難小屋の中の空気が凍りつき、八人の歯のなる音が小屋の中に響く。
部員たちの吐く息が白い。
129:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/01/08(火) 19:11:34.71 ID:DVIBnR9G0
「…は…かあ…」
「おい…」八人のうちのひとりが震える声でつぶやいた。「何か言っているぞ…」
耳をすますと、雪を踏みしめ、小屋の周りを回り続ける山靴の音と、板壁を叩く吹雪の音に混じって、
微かに男の声が聞こえるではないか。
「…は…いるかあ…」
何かを叫びながら、山靴の音が小屋の周りを歩き続ける。
ザッ…ザッ…ザッ…ザッ…
「おい…」昨年、副リーダーだった四年生が、周りの部員の顔を覗きこみながら言った。
「あれって…リーダーの声じゃないのか?」
「小…泉は…いるか…あ…」
八人の耳に、今度ははっきりとその声が聞こえた。
それは昨年、この避難小屋に辿り着く直前に逸れた新人の小泉を探しに飛び出したまま、
冬のY岳に消えたリーダーの声だったのだ。
ザッ…ザッ…ザッ…ザッ…
「小泉は…いるか…あ!」
132:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/01/08(火) 19:13:09.05 ID:DVIBnR9G0
小屋の周りを回りながら、リーダーの声が吹雪の音に混じって叫んでいる。
そのうち、肩を抱き合う八人の中で、握り拳を作って懸命になにかに耐えていた小泉が、
堪え切れなくなって非難小屋の外に向かって叫んだ。
「僕は無事です! ありがとうございましたあ!」
その途端、小屋の外を回っていた山靴の音がピタリと止った。
そして、しばらく吹雪の音だけになったと思うと、
非難小屋の外の山靴の音はまたゆっくりと雪を踏みしめて歩き始め、
それは少しずつ小さくなっていき、やがて山の中へと消えて行った…。
しばらく呆然としていた八人は、やがて我に返り、
山靴の音が消えていった非難小屋の外に向かって無言のまま深く頭を下げ続けた。
昨年あれほど、捜索したにもかかわらず、その痕跡すら見つける事が出来なかったK沢上流で、
リーダーの遺体が発見されたのは雪がまだ残る五月の初めのことだった。
その遺体には不思議なほど傷みがなく、まるで何かに安心したかのように安らかな顔をしていたそうである。
130:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/01/08(火) 19:12:13.21 ID:CVKn8iDV0
リーダー大人しく成仏してくれさい
135:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/01/08(火) 19:17:07.24 ID:CVKn8iDV0
一年間ずっと後輩を探し続けていたんだな
お疲れ様でした
136:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/01/08(火) 19:19:44.09 ID:Mb8tVkUU0
いい話だ
137:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/01/08(火) 19:21:09.98 ID:0AMkIuY20
リーダーいい人
138:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/01/08(火) 19:22:40.29 ID:jl8QBN/UQ
あれ?怖い話っていうより普通にいい話じゃね?
143:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/01/08(火) 19:33:59.08 ID:DVIBnR9G0
山登りをするときに使う鞄を「アタックザック」と言います。
肩に背負うナップザックに似ているのですが、それよりも大きな鞄です。
ある日、何人かで登山をすることになりました。
ある程度登ったところで、日が暮れてきました。
そして、どこかでテントを張り、一晩過ごすことにしました。
そして何分か経ったとき、結構大きな広場のような物がありました。
そこにテントを張って寝ることにしたのですが、一つだけ気になることがありました。
アタックザックが広場のすみに一つ置いてあったのです。
初めは気にもとめてませんでしたが、夜になるに連れて、恐怖を醸し出すようになりました。
とりあえず寝ていれば気にならないと思ったので、寝ることにしました。
何時間か経ったときに、ある音で目が覚めました。
ザッ・・・ザッ・・・
山の奥だから、獣が居るんだろうと思ったのですが、どうしてもあのアタックザックが頭から離れないので、
何かあるんじゃないかと思った1人が、見に行くことに・・・
そこにはアタックザックがあり、そこから何かが出ようとしていました。
見てはいけない物を見てしまったと、1人は寝袋に潜っていました。それでも物音は消えません。
ザッ・・・ザッ・・・
144:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/01/08(火) 19:34:39.31 ID:DVIBnR9G0
怖いと思いながらも、その晩は寝てしまいました。
朝、みんなが起きたときにこのことを話したら、信じてくれませんでした。
結局、何も分からず写真を4枚ほど撮って、また頂上を目指すことに・・・
そして、家に着き、写真を現像したとき、
後ろにアタックザックが写っていることに気付きました。
確認してみたところ、まず1枚目は何の異常も無かったのですが、2枚目で変なことに気付きました。
そこに写っていたのは、アタックザックの中から出る頭。
少し悪寒が走りました。
3枚目では、既に手が出ていました。
4枚目では、胴体まで出ていました。
もし5枚、6枚撮っていたら、どうなっていたのでしょうか?
148:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/01/08(火) 19:50:34.79 ID:CVKn8iDV0
939 :雷鳥一号 :03/11/26 00:26
知り合いの話。
十年以上も昔のことだそうだ。
消防団員の彼は、行方不明者の捜索で秋口の山に入っていた。
四人一組で捜していたのだが、彼のチームが遺体を発見した。
発見したことを伝えるのと、担架の手配をするため、二人が麓の指揮所に戻った。
彼は残りの一人と一緒に、遺体の傍で番をする方に回った。
日が暮れて暗くなってきた時、目前の林から人に似た何かが姿を現した。
大きな身体に粗末な衣類をまとい、大きく開いた口元からは歯が覗いていた。
その肌は、頭の天辺から足の先まで真っ黒だった。
それは彼らを見つめると、「その死体を譲ってくれないか」と尋ねた。
「駄目だ」と答えると、二人を見つめて何かしら考えているようだった。
思わず二人とも、護身用に持っていた鎌を握りしめたという。
それはしばらく考えて諦めたのか、「残念だなあ」と言って山に戻っていった。
立っていた場所には、よだれが大量にこぼれて光っていたそうだ。
149:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/01/08(火) 19:55:49.86 ID:CVKn8iDV0
412 :雷鳥一号:03/12/01 00:55
知り合いの話。
夏休みに家族で、山へキャンプに行ったのだそうだ。
夜、ふと目を覚ますと父親がいない。
テントから顔を出すと、父親と灰色の影がぼそぼそと話をしていた。
彼女は父親がいることに安心して、そのまま寝てしまったという。
山から帰ってくると、父親はいきなり身の回りの整理を始めた。
遺言を書き、財産分けまで済ませてしまい、家族はずいぶんと驚いたらしい。
整理が終わるとほぼ同時に、父親は逝去した。心臓麻痺だった。
親族から、まるで自分の死期を知っていたようだと言われたそうだ。
彼女は、そのキャンプ場には二度と近づかないと言っている。
150:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/01/08(火) 19:56:37.42 ID:CVKn8iDV0
413 :雷鳥一号:03/12/01 00:56
知り合いの話。
仲間と二人で、冬山でのロッククライミングに出かけた時のこと。
天候が急に崩れ、岩棚の途中で数日足止めを食らった。
これは危ないかなと弱気になっていると、同行した仲間がさらりとこう言った。
「大丈夫、俺の寿命はまだあるから、ここは生還できるはずさ」
どういうことかと問うてみた。
聞くと昔、彼は山で出会った何者かに、自分の寿命を教えてもらったのだという。
それの正体が何なのかは分からないが、彼自身は不思議と信じているのだと。
次の日には吹雪は止み、彼らは怪我も無く下山できた。
彼の寿命がいつなのかということまでは、さすがに聞けなかったそうだ。
153:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/01/08(火) 20:04:02.96 ID:0AMkIuY20
個人的にトラウマな話。家族以外は知らないし、誰にも話したことない。
うちは転勤族で、子供の時は2~3年おきに引っ越ししてた。
小3~4年の時住んでたのは京都のとある市だったんだが、アパート(官舎?)の裏は山になってた。
近所の友達とよく裏山を探検してたんだけど、親から言われてたのもあってあまり奥までは入らなかった。
ある日、親たちには内緒で、友達3人くらいと裏山の奥まで入ったことがあった。
多分30分ほど適当に歩いてたら、廃屋があった。別に普通の廃屋だった。
俺たちはテンション上がって、廃屋の中に入って探索してた。平屋の3LKくらいの間取りだったと思う。
廃屋のリビングと思われる部屋にエ口本が数冊落ちてて、エ口ガキだった友達たちは歓喜してそれを読んでた。
俺はまだそこまで興味なかったから、適当に友達がエ口本読んでるのを後ろから見た後に別の部屋を探索した。
隣の部屋に入ったけど、特に家具とかは無かったと思う。押入れがあるだけだった。
俺は何となく押入れの襖を開けた。
154:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/01/08(火) 20:04:38.96 ID:0AMkIuY20
そしたら押入れの上段に、小太りのおばさん?が後ろ向きに、正座をちょっと崩した感じで座ってた。
あまりにも予想外すぎて、恐怖とか疑問より、その時の俺は怒られる!ってパニクった。
でも2~3秒してもおばさんはこっちに背を向けたままだったので、おばさんは俺にまだ気付いてなくて、
このまま静かに襖閉めればバレないんじゃないか、って思った俺は、静かに襖を閉めようとした。
で、襖に手をかけた瞬間におばさんが突然振り向いた。
今でもはっきり覚えてるが、おばさんの顔がヤバかった。
眼球が無くて、目の部分がぼっこりと黒い穴が開いてた。口開いてたんだけど、歯もなかった。
そして顔のいたる所から血が流れてた。
俺は叫んで一目散に家を飛び出た。友達を置いて。
帰り道の道中はよく覚えてないけど、何とか家まで帰ってきた。
もう走ってる最中ずっと泣きっぱなしだった。
家の前まで来ると幾分冷静になったんだけど、親に話そうか迷った。
話したら怒られると思ったから。「勝手に裏山の奥に行って!」って。
結局黙ってることにした。もう友達のことなんてすっかり忘れてた。
で、家帰って、怖いの払拭するためにファミコン始めた。確かDQ3だったと思う。
俺の家のFCがある部屋には襖がある。DQしてる途中に、襖の方から音が聞こえた気がして振り返ったら、
襖が少し開いてて、中からさっきの顔面ぐちゃぐちゃのおばさんが見てた。
俺また絶叫して、台所にいる母親に泣きついた。「押入れにおばさんがいる!」って伝えた。
母親が俺をなだめた後、ファミコン部屋の押入れを確認に行った。もう俺はただただ怖くて、台所で固まってた。
155:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/01/08(火) 20:05:11.66 ID:0AMkIuY20
すぐに母親が、「何もいないじゃない」って言ったから、恐る恐る確認に行った。
母親は襖を開けたまま「どこにおばさんがいるの?」って聞いてきたけど、
おばさんはまだ襖にいて、眼球ないのに俺の方を見てた。母親には見えてなかったみたい。
俺はそこで気絶したらしい。
それ以来押入れ(のある部屋)がダメになった。旅行先の旅館の押入れにもいた時はマジで困った。
今も押入れにまだおばさんがいるのかは分かんないけど、怖くて確認できない。てか、したくない。
今まで3回そのおばさん見たんだけど、見る度に少しずつ押入れから体を出してきてる気がするから。
157:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/01/08(火) 20:11:52.29 ID:DVIBnR9G0
厳冬期のH岳で消息を絶った大学時代の先輩の捜索を終えて、
松本から特急電車で東京へ戻る車中での話である。
先輩は単独で上高地からT岳に取り付き、そのままH岳を越えてN岳まで縦走し、
新穂高温泉に下山する予定になっていた。
しかし、M平でテントを撤収して、T岳に向かった姿を別の登山者に目撃されて以来消息が絶え、
下山予定日を二日過ぎても新穂高温泉に姿を現さなかった。
この時期、北アルプスの天候は比較的安定しており、気温こそ低かったが、青空が広がる日も多く、
悪天による停滞は考え辛い状況だった。
すぐに、家族からの捜索依頼を受け、現地の山岳救助隊が動いた。
同時に大学時代の岳友、OB達も上高地に入り、山岳救助隊と連携を取って捜索を開始した。
しかし、五日経っても先輩の消息は、ようとして知れなかった。
六日目の朝から天候が荒れ始め、ヘリコプターを使った空からの操作が出来なくなり、
また天気図を見る限り、この日を境に北アルプスは大荒れになることが予想された。
このままでは二重遭難の危険もある。
先輩が書き残した登山計画表によれば、食料は四日前にすでに尽きているはずだった。
山岳救助隊は、生きた状態での救出は不可能と判断し、捜索活動を断念した。
岳友達は、救助隊が去ってからも、さらに数日現地に留まりがんばったが、
やはり先輩の足取りはつかめなかった。
「春になり雪解けの時期を迎えたら、もう一度探しに来よう」
というOB達の提案に皆が黙って頷き、
岳友達は、後ろ髪を引かれる思いで、冬の上高地を後にした。
158:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/01/08(火) 20:13:01.79 ID:DVIBnR9G0
「先輩は、H岳までたどり着いたのかなあ」
特急電車の車窓から、純白に輝くK駒ヶ岳を眺めながら、杉本がぽつりと言った。
「天気も安定していたしな。先輩ならば問題なかっただろう。
俺はその先のG峰辺りで事故にあったんじゃないかと睨んでいるんだ」
タバコに火をつけながら、滝川が答える。
「先輩の技量ならば、G峰辺りで滑落するとは思えんがな」
「事故なんてものは、技量や場所には関係ないさ。
千メートルに満たない山で一メートル滑落しただけで死ぬことだったあるんだ」
私はふたりの会話をぼんやりと聞きながら、快活だった先輩の笑顔を思い出していた。
「それにしても、先輩は何故、M平にテントを張ったんだろうな。
T岳に取り付くのならM平の先のT沢に幕営した方が、翌日の行動が楽だったろうに」
「俺もそのことが少し気になっていたんだ。先輩はM平のテント場を嫌っていたしな」
滝川が投げかけた疑問に、初めて私は口を開いた。
そう。先輩はM平のテント場を嫌っていたのだ。
「それは初耳だな。確かにあそこはバスターミナルから距離もないし、河童橋から近いから、
登山客以外のハイカーも幕営して賑やかだが、明るくて良いテント場じゃないか。
ましてや、冬のM平だぜ。賑やかなハイカーもいないし、かえって快適だと思うがな」
滝川が私の顔を覗き込んで言う。
「昔、飲んでいる席で、先輩が突然、変な話をしたんだ」
159:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/01/08(火) 20:15:04.27 ID:DVIBnR9G0
「変な話? 」
「ああ。冬のM平に幕営した時は、あそこのトイレは絶対に使わない方がいいぞって言うんだよ」
「M平のトイレって、冬季用に開放されている、テント場の中間にある、あのトイレのことかい? 」
「そうなんだ。もしも冬に上高地に入ったら、あのトイレは使わないほうがいいって言うんだよ」
「そういえば、昔、悪天に見舞われた冬のH岳から、瀕死の状態で降りてきた登山者が、
あのトイレで暖を取ろうとして力尽きたって話を聞いたことがあるな。
まさか冬にあのトイレを使うと何かが出るとか? 」
「俺もまったく同じことを先輩に聞いたよ。でも先輩はこう言ったんだ。トイレじゃないよ。
トイレの入口に掛っている鏡に問題があるんだってね」
「鏡に何か映るのか? 」
「いや…映らないよ。そう…。映らないんだ…。あの時、そう言ってから先輩は、
コップ酒をひと口だけ飲んでから、俺に語り始めたんだよ…」
M岳の冬季に開放されるトイレの手洗い所。もちろん冬は水なんか出やしないんだが、
その手洗い所の壁に小さな鏡が建て付けてある。
あの鏡にはいわくがあるんだ。
おまえはさっき、鏡に何かが映るのかって言ったよな。
そうじゃない。映らないんだよ。
160:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/01/08(火) 20:16:50.57 ID:DVIBnR9G0
ある年の冬、大学は違うが山で知り合って以来、俺と仲の良かった大久保という、
H大学の山岳部に属していた男が、同じ山岳部の村越という男と厳冬期のM沢岳を狙って上高地に入ったんだ。
天気図と睨めっこした甲斐があったらしく、一月の北アルプスにしては珍しいほどの青空が広がっていたそうだ。
大久保達は、ヘッデンで足元を照らしながら、あの薄暗くて急勾配の釜トンネルを抜けて、
帝国ホテルの脇を通って河童橋を越えた。
当時は、帝国ホテルの前が雪崩の巣になっていて、彼らが通過した時も大きなデブリが張り出していて、
通過するのにだいぶ苦労をしたらしい。
河童橋から、梓川沿いに入ってM平のテント場についたのが、午後の三時頃だったそうだ。
この日の行動は、最初からM平までと決めていたから、時間的にもちょうど良かった。
担いできた日本酒で体を温めてから、早めに夕食を作って夕方六時には、
もうのんびりとテントの中でくつろいでいたらしい。
一月だからな。午後六時の上高地といえば、もう暗闇の世界だ。
その時、村越が、テントの中でごそごそし始めたと思ったら、ヘッデンを持って
テントのジッパーを下げて外に出ると、トイレに行ってくると言って、林の中に入っていった。
大久保は、「酒の飲みすぎだよ」などと相棒の悪口を言いながらタバコをふかしていたそうだ。
ところがしばらくして、その村越が血相を変えて、雪の上を走ってテントに戻ってきた。
何ごとかと思って大久保が村越をテントの中に招き入れると、彼は真っ青な顔でこう言ったんだ。
161:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/01/08(火) 20:18:42.65 ID:DVIBnR9G0
「首がない!」
こいつ何を酔っ払っているんだと大久保は思ったそうだ。
もともと村越はそんなに酒が強い方じゃなかったらしいしな。
ところが村越は、唇を震わせて話を続ける。
「用を済ませた後、トイレから出て入口の鏡を何気なく見たら、俺の首から上がないんだよ! 」
「いったいお前は何を言っているんだ? おまえの首はちゃんとついているぞ。
暗い中で見間違えたんだよ。飲みすぎだよ」
「俺だってそう思ったさ。でも、何度見直しても鏡に、俺の首から上が映らないんだよ! 」
「見間違いだって。気味の悪いこと言ってないで、いいから飲んで寝ちまえよ! 」
そう言って、大久保は村越のコッヘルに日本酒を注いで無理やり飲ませたそうだ。
とにかく早く寝かしつけちまおうと思ったんだな。
村越もそのうち落ち着いてきて、「そう言われてみれば、見間違いだったのかなあ」なんて言いながら、
あくびをし始めた。
その話は、それでしまいになって、その日はふたりとも高鼾で寝たそうだ。
翌朝は目がまぶしいほどの快晴だったそうだ。
膝上を越すラッセルに苦しんだが、それでも快調にJ岳を越え、そのままN岳までの縦走路に入ったのが
午前十一時だというから相当なペースだな。
どこまでも清んだ青空が、真っ白な縦走路を際立たせて、快適な山行になった。
運が良いことにほとんど風もない。
このペースで行けば、あと一時間もすればN岳を越せるだろうと、大久保が前を行く村越に目をやった時
信じられないことが起こったんだ。
162:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/01/08(火) 20:21:27.78 ID:DVIBnR9G0
それまで快調なペースでトップを行っていた村越が、細い馬の背でいきなり稜線を外れると、
東側の斜面の方にふらふらとよろめいたんだ。
そっちには雪庇が張り出している! 危ない!
声を掛ける間もなかったそうだ。村越は張り出していた雪庇を踏み抜き
「あっ! 」という声とともに東側の雪壁に落ちていったそうだ。
窮屈な体勢で村越が落ちた雪壁を覗き込んだが、彼の姿はまったく見えない。
しかし、険悪な白い垂壁の状態からみても、村越が絶望的な状況であることはすぐにわかった。
とにかく大久保は、すぐに無線で警察に連絡を取り、事故の状況を伝えた。
天候が良かったため、救助隊のヘリコプターがすぐに飛んで、奇跡的ともいえる早さで、
村越は稜線から二百メートル下の、岩が突き出た雪壁の途中で発見された。
何度か岩に打ち付けられて、壁から突き出した木に絡まって止まっていたそうだ。
もちろんすでに絶命していた。
しかしそれだけじゃない。
村越の遺体は、もっと悲惨なことになっていたんだよ。
岩に打ちつけられながら滑落した割には、村越の体はそれほど痛んでいなかったそうだ。
ただ一箇所を除いてね。
そう。ただ一箇所。
雪の断崖を二百メートル滑落し、木に絡んで息絶えた村越の体には、
首から上がなかったんだよ…。
164:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/01/08(火) 20:23:49.80 ID:DVIBnR9G0
その事故の後、M平の鏡の噂は一気に広まった。
しかし、何時の世にも豪気な奴はいるものだ。俺の当時の山仲間に神代という男がいてな。
M平の鏡の噂を聞いてこう言ったんだ。
「そいつは便利な鏡じゃないか。だってそうだろう。出発前にその鏡を覗いて、
自分の首から上が映らなかったらそれは警告と思って、山を下りればいいだからな。
逆にちゃんと姿が映れば山行は、予定通り完遂されるってわけさ」
その年の冬、神代は沢渡辺りに車をデポして、ひとり上高地に入った。M岳を狙ったそうだ。
ところが翌日、神代はきびすを返して上高地を下りたんだ。M岳に向かわずにね。
恐らく奴はM平のトイレの鏡を見たんじゃないかって、後々噂になったよ。
なぜ、本人に確認しなかったのかって?
確認しようがなかったんだよ。神代は死んでしまったんだ。
沢渡まで下り、デポしておいた車でS温泉に向かう林道で
車ごと谷に落ちて、あっけなく死んでしまった。
そして、車から放り出された形で、谷底から発見された神代の遺体には、
やはり首から上がなかったんだよ…。
「先輩から聞いた話はこれで終わりだ」
私は、すっかり静かになってしまった仲間の顔をひとしきり見渡してから、タバコに火を点けた。
「先輩はM平の鏡を見てしまったのかなあ」
杉本が車窓から、夕焼けに包まれ始めた南アルプスの峰々を眺めながらぽつりと言った。
「わからん。でもあれだけ、俺に見るなと言っていたんだからな」
私は、杉本の視線を追うように、山頂部を赤く染まる南アルプスに目を移した。
やがて春が過ぎ、北アルプスの沢が雪解けの清水でいっそう冷たくなった時期になっても
先輩の姿は発見されなかった。
今となっては、北アルプスに眠る先輩の体に、首から上がしっかりついていることを願うのみである。
165:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/01/08(火) 20:28:54.17 ID:CVKn8iDV0
乙
話の流れ見てればそんな鏡占い感覚で見に行くとかバカスとか思うけど、
実際目の前にそのトイレがあったら怖いもの見たさで覗いちゃうかもしれないから怖い
166:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/01/08(火) 20:36:46.10 ID:DljpA0PW0
ふぅ
167:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/01/08(火) 20:46:54.50 ID:DVIBnR9G0
168:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/01/08(火) 20:52:08.22 ID:A8ajvC3fO
山の天気はかわりやすいもので、今晴れていたと思ったら次に外にでると雪が積もったりとめまぐるしい。
車も通れないので、麓に置いて、徒歩で帰る。
そんな所に家があったので、よく、道に迷った客がやってきた。
生々しい話だが、送り出した客がそのまま行方不明になったりもしたので、最近はホテルのフロントのように名前を記入してもらうようにもなった。
その日もいきなり雷が鳴り出してから30分たっただろうか?客が戸を叩いた。
今日は25~30代の男5人のグループで、オレンジ色のジャケットをきた男が疲労憔悴した4人を抱えるように滑り込んできた。
玄関で名前を記入してもらい、事前に沸かしてあった風呂へ促し、
でてくると元気になったようで、粗末ながら手作りの料理でもてなし、酒をのみながらいい年した男がまるで修学旅行のように笑いあった。
169:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/01/08(火) 20:56:42.46 ID:A8ajvC3fO
気づくと朝で、やはり、昨日の雷が嘘のように木々から木漏れ日が降り注いでいた。
それから朝食を用意して客を起こすと不思議そうにみている。
酒で記憶を忘れたのか?と思ったが、どうやらそうではなく、なぜ5人分用意するのか?ということだった。
曰わく、「昨夜は主が召し上がるものと思っていましたが別個に用意しているし、不思議でならない」と。
しかし、確かに夜は5人いたのだが、彼らの言うように今みると自分を含めない限り5人ではない。
記憶をたどるとオレンジ色のジャケットをきて先頭にたって入ってきた男がいない。
訝しく思って、その人の特徴をいい、記入してもらった名前をみせると4人は驚き顔を見合わせ、それから各々で嬉しいとも寂しいとも言えない顔をした。
聞くと3年前に登山先で雷にうたれ、亡くなった共通の友人だったようだ。
実はぬかるみで前に進めない状態だった彼らがここにたどり着いたときも
雷が木を倒し丸太橋のようなようになりぬかるみがなくなった先に我が家をみつけたらしい
まるで雷と同化して降りてきたのだろうか?
定かではないが、見えていたかのようにあなた方5人は、楽しそうに飲み交わし語り合っていた事を伝えた。
173:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/01/08(火) 21:12:08.18 ID:zoeNPlWyO
おおいさんってのが何者なのかわからんけど、俺の地元のコンビニバイトの間ではかなり有名。
「おおいさんって名乗った客が来たら目を合わすな」
っていう先輩からの指示を受けてコンビニでバイトをしていた俺は、
それを数日間は覚えていたものの忘れてしまってた。
3ヶ月ぐらいたって結構慣れてきたときに、後輩が入ってきた。
後輩に仕事を教えて、結構楽できるようになった。
その後輩と二人で夜勤に入った日に、バックで俺はタバコを吸いながら廃棄予定の弁当を食べてた。
その時に防犯カメラの映像をみると、3人の中学生ぐらいのガキが立ち読みしてるのみで、
後輩はレジの前で、注意深くそいつらの動きを監視してた。万引きを防ぐ為に。
俺も3つある切り替えボタンを操作しながら、店内の様子を見てた。
すると後輩が、いきなりレジの前で誰もいないのにペコペコしてる。
何をしてるのか不思議に思っていると、バックに居る店員を呼ぶブザーを押した。
瞬時に俺は、『あ、万引きしたな』と察して、バックから出て行くと、レジの前におじさんが立っていた。
174:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/01/08(火) 21:13:13.09 ID:zoeNPlWyO
万引きの合図の後に来た客かな。と軽く考えつつ、「いらっしゃいませー」と大きな声で言うと、客がいきなり、
「こんにちはー、おおいさんです」と言い出した。
何言ってんだ?とは思うものの、後輩が手招きをしてくる。
近くまで行くと、
「おおいさん。出ましたね。店長が言ってた人ですよ。目をあわすなって」と言われて急に思い出した。
幸いおおいさんは、俺が後輩に呼ばれるまで後ろを向いてたので顔は見なかったが、
おおいさんは、
「えっとねー、マイルドセブンとー、あとー、このガムとー、から揚げ頂戴ー」と言って来た。
レジ打ちを後輩がしてる間に、俺はタバコを取ってから揚げをとって袋づめした。
するとおおいさんは、
「あとねー、どっちかの命ちょーうだーい」と冗談で言って来た。
こわ!と思いつつ、
「申し訳ございません、当店では取り扱っておりません」と頭を下げて、冗談を受け流すように言った。
すると、
「あそこの3人のうちの一人でいいよー。いのちちょうーだーい」と言い出した。
厨房3人は聞こえてないのか、雑誌を読みながらガヤガヤしてた。
175:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/01/08(火) 21:14:48.07 ID:zoeNPlWyO
俺と後輩はどうしていいのか分からずに、困ったなぁとお互いを見ながら、
「申し訳ございません、彼らは商品ではございませんので」と言うと、
おおいさんは笑いながら、
「ははは、じゃぁ、全部もーらーおっと」と言って、お金と変な針金細工を三つ置いていった。
次の日、店長と俺より前に入ったパートのおばちゃんにその話をしたら、
「なんてことを。おおいさん、何か置いてった?」というので、預かり品としておいた針金細工を持ってきた。
「これはおおいさんが次来たら返しなさい」ということなので、
それをバックに持っていって、分かりやすい位置に置いていた。
それから次の夜勤の日。
バックから涙目で後輩が出てきた。何事かと聞くと、針金細工がウネウネと動いているという。
そんなバカな話あるかwと見に行くと、3つともまるでミミズが這うかのように動いていた。
それは数日、しかも夜のみ動いた。他の夜勤の先輩達もそれを気持ち悪がった。
176:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/01/08(火) 21:18:59.91 ID:zoeNPlWyO
数日後に、一つのウネウネがピクピクと動きを弱めだした。
その日、近くの交差点でバイクと車が衝突事故を起こし、中学生が一人死亡した。
ニュースにもなったのだが、
車の運転手は、暴走行為をしていたバイクの前に誰かが立ったので、
バイクが急ブレーキをかけてこちらに突っ込んできた、と言っていた。
次の日の夜、先輩と店長が夜勤の日、おおいさんがきた。
それをきっかけに細工3つを返して、「もうしわけございませんが・・・・・・」と説明し返した。
その時の先輩の話では、おおいさんは少年の首を持って入ってきたらしい。
店長もそれを見てびびっていたらしい。
店長に言われてバックに針金細工を取りに行った先輩は、カメラに映る少年の体のみをみたらしい。
体はレジの前の下を、何かを探すように撫でていたらしい。
そして、カメラには店長以外には映ってなかったらしい。
他のコンビニで働いてる友人や、2時までやってるレンタルビデオ店でバイトしてる友人も、
おおいさんの話を知っていた。
どこのコンビニとかでも、こういう話ってあるのかね。
178:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/01/08(火) 21:21:43.21 ID:VGIdEych0
こわっ
正体がはっきりしないほうが怖いってあるよね
180:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/01/08(火) 21:29:10.05 ID:cVWbl0000
支援するよ
191:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/01/08(火) 22:06:48.75 ID:DVIBnR9G0
あおいさん初めて読んだけどなかなかだわ
ちょっと怖いやんけおう
190:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/01/08(火) 22:04:49.05 ID:babzeej4O
地元の山には重文に指定されてる古い寺がある。山自体も霊山と言われているが地元では行きたがらない人が多い
同級生一家は九州から転勤して来ており、件の山に他の転勤族家族と一緒にハイキングに来ていた。山には滝があり、そのすぐそばの涼しい河原で三家族が食事を楽しむことにした
滝について間もなく一家族の赤ちゃんが激しく泣き出して、その家族は滝では写真を撮っただけで少し離れた所で子供をあやすことになった
しばらくしてから同級生の姉が酷い頭痛を起こし座り込み、同級生も目眩が酷く立っていられなくなった。残る一家族の年長の男の子も熱を出したらしい
大人一同は熱射病だろうと結論づけて下山した。滝のそばは寒いぐらいに涼しく樹が茂っていたが、そうでもないと次々に体調が崩れた原因が説明がつかない
後日、焼き増しされた写真には滝の周りに立つたくさんの人影があった
197:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/01/08(火) 22:26:34.82 ID:DVIBnR9G0
開拓民として本州から渡って来ていた炭鉱夫Aさんは、爆発事故に見舞われた。
一命はとりとめたものの、全身ヤケドの重体だった。
昔の事とて、ろくな治療も施されず、全身包帯に包まれて、女房の待つ飯場の一部屋に担ぎこまれた。
付き添ってきた医者は、「大怪我だが、今夜を乗切れば命は助かるだろう。何かあれば呼びに来なさい」。
自宅の場所を教えて引き上げていってしまった。
その真夜中。ロウソク一本の薄明かりの下、枕元でひとり看病していた女房がふと気が付くと、
玄関に誰かの気配がする。
女房が出てみると、大勢の人間が立っている。
彼等の云うには、
「自分達はAさんと一緒に働いている仲間である。今日は大変な災難に会われて、お気の毒です。
すぐにでも見舞いに来たかったのだが、生憎我々も作業を中断するわけにいかず、
こんな非常識な時間になってしまった。
どうか我々にも、Aさんの看病の手伝いをさせて欲しい」
との事。
女房はひとりで心細かった処への、この温かい申し出に感動し、部屋に入りきれないほどの仲間達を迎え入れた。
それぞれ一人ずつAさんに話し掛け、励ましては部屋の中に座って、女房にも優しい言葉を掛けてくれる。
女房はすっかり安心してしまった。
198:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/01/08(火) 22:27:23.47 ID:DVIBnR9G0
その中の一人が、「自分は医術の心得がある、診察してやろう」と申し出た。
見れば、ボタ山で働いているとは思えない立派な紳士だった。誰かの知人なのだろうか。
彼は、
「これは酷いヤケドだが、私は幸いヤケドの治療法に長じている。今夜のうちに術を施せばAさんはすぐ治る」
と言った。
女房に否応が言えるはずもない。
やがて紳士による治療が、薄暗がりの中で始まった。
治療は荒っぽいものだった。
紳士は、「ヤケドには、焼けこげた皮膚を取り除いてやるのが一番の治療法だ」と説明し、
Aさんの身体を包んでいる包帯を取り除けると、やがてAさんの皮膚を無造作に剥ぎ取り始めた。
炭鉱夫仲間でも屈強な身体付きで知られたAさんも、これは堪らない。
Aさんはあまりの苦痛に絶叫し、「いっそ殺してくれ」と泣き叫んだ。
女房はおろおろする以外なにも出来ない。
あまりの凄まじさに、自分も耳を塞いで泣き叫び始めた。
紳士は「ここが辛抱じゃ。すぐ楽にしてやる」と声を掛けながら、眉ひとつ動かさず作業を続ける。
どれぐらい時間がたったか。
いつしかAさんの絶叫は治まっており、静寂が戻っている。
紳士は女房に、「心配かけたがもう大丈夫。すぐに元気になるよ」と声を掛け、席を立った。
女房は何度も何度も頭をさげながら、表まで紳士を見送った。
遠い空がうっすら明るくなっている。もうすぐ夜明けだ。
200:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/01/08(火) 22:28:45.26 ID:DVIBnR9G0
部屋に戻ると、さっきまで狭い部屋から溢れ出る程大勢いた見舞客が、ひとりも居なくなっている。
女房は不思議に思うより、不快に感じた。
帰るのだったら、一言くらい挨拶してくれても良いじゃ無いか。
疲れきった女房は、Aさんの枕元に腰を下ろし少し休もうと思ったが、Aさんの顔色をみて驚愕した。
夜明けの日差しの中で見るAさんの顔色。それはまるでロウのようだった。
女房はAさんに取りすがって、再び号泣するしかなかった。
騒ぎを聞きつけた隣人に連れてこられた医者は、Aさんを見るなり女房を怒鳴りつけた。
「誰が患者をいじった!」
Aさんを包む包帯の巻き方は、明らかに素人のものだった。
包帯を取り除けた医者は、Aさんの身体から目を背けた。
無惨に生皮を剥ぎ取られた遺体がそこにあった。
あまりの奇怪な事件に警察が呼ばれ、半狂乱の女房から何とか事情を聞き出した。
だが、その夜現れた男達も、例の紳士も、ボタ山はおろか近隣の町村にも、該当者はいなかったと云う。
話を聞いたある人が、「それはキツネの仕業だろう」と言ったそうだ。
キツネにとって、人間の瘡蓋や火傷瘡は霊薬になるとされ、
ある地方では、『火傷や瘡蓋のある者が山にはいるとキツネにだまされる』という言い伝えがあると云う。
女房は目の悪い女で、日頃から泣き腫らしたような瞼の持ち主だったという。
キツネはそれに付け込んだのだろうか。
残念ながら、女房がその後どうなったかまでは、この伝奇の採集者は伝えていない。
201:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/01/08(火) 22:34:02.57 ID:LeD4HuTf0
ちゃんと伝えなさい!(´・ω・`)
1001:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/01/08(火) 22:54:08.17 ID:Kjifosjoa