2:
名も無き被検体774号+
2013/05/19(日) 20:44:31.31
ID:FcsqQkDf0
男は十九年前にこのロビーで銃殺された。
強盗が入ったのだ。このホテルに。
何の目的があってこのホテルを選んだのかは知らないが。
そして、男と強盗は出会ってしまった。
運命の出会いというものは、すべてが幸せなものではないことを男はそのとき悟った。
そして彼は呆気なく、これでもかというほど単純に、簡単に殺されてしまった。
その日から、このホテルには男の幽霊が出るようになった。
3:
名も無き被検体774号+
2013/05/19(日) 20:46:51.17
ID:FcsqQkDf0
さて、本題に入ろう。
男は「参ったなあ」と言った。
男の足元には、これまた透けた猫。
この猫ももちろん幽霊だ。
4:
名も無き被検体774号+
2013/05/19(日) 20:52:49.99
ID:FcsqQkDf0
「助けて欲しいやつがいる」猫は単刀直入、やって欲しいことだけをすぱっとお願いした。
男は、世の中の人がみんなこう言う遠回しじゃない言い方ができればいいのにと思いながら、
「しかし、僕は幽霊だよ。何かに触ることができない」と言った。
「……でも、幽霊同士で触れ合うことはできます」幽霊猫はそう言った。
男ははっとした顔になる。
「もしかして、その助けて欲しいやつっていうのは……」
「そう。わたしやあなたと同じ、幽霊です」
5:
名も無き被検体774号+
2013/05/19(日) 20:56:42.72
ID:8+Pv8q3h0
はよ
6:
名も無き被検体774号+
2013/05/19(日) 20:57:44.15
ID:FcsqQkDf0
………
……
…
「これが、君の言った、やつ…?」
レストリント郊外にある、小さな山。
そこに、男と猫はいた。
「そうです。中々可愛いでしょう」
冗談で言っているのか本気で言っているのかが分からない。
助けて欲しいやつというのは、女の子らしい。
「わたし、ねてたら………そしたらね、きづいたらね、なんかこうなっちゃってたの……」
女の子はそう言った。
「ねえ、あたし、しんじゃったの?しんじゃったの?」
女の子の目が潤み始める。
「………いや、まだ死んではいない」
猫がそう言う。
「あなたにはまだ生の香りがする。大方、幽体離脱でもしてしまったのでしょう。幼い子には、よくあることです」
「ほんと!?…よかったぁ」
女の子が、本当に嬉しそうに微笑む。
7:
名も無き被検体774号+
2013/05/19(日) 21:04:22.54
ID:FcsqQkDf0
………
……
…
「………で」
ため息交じりに呟く。
「俺にこの子を運べ…と」
「そうだ」
幽霊猫は、どこか偉そうにそう言う。
きっと彼が人間だったら、腰に手を当て、えっへんと胸を張って言ったに違いない。
「まあ、やらなくちゃならない……よな」
そう言って男は女の子の目線まで腰をおろし、
「よし、君の本体まで俺が連れてってやるよ」
「ほんと!?やったあ!」
女の子がぴょんと飛び跳ねる。
「ふふ、まるで親子ですな」
そう猫が言ったが、気にしないことにする。
そして男は女の子を肩車して、彼女の本体へと向かうべく、山を降りて行った。
8:
名も無き被検体774号+
2013/05/19(日) 21:05:22.39
ID:XcVyGciS0
幽遊白書も最初こんなんだったよな
9:
名も無き被検体774号+
2013/05/19(日) 21:06:27.98
ID:FcsqQkDf0
………
……
…
「それで、君の本体がいる場所は?」
「うーんとね、たぶんあっち」
男は女の子の指差す方向に向かって歩いて行く。
(ここは、俺の家があったあたりじゃないか…)
男の脳裏に、生前の記憶が湧き上がってくる。
10:
名も無き被検体774号+
2013/05/19(日) 21:09:45.82
ID:FcsqQkDf0
幸せな家庭だった。
……そういえば、妻は元気でやっているだろうか。
息子や娘も、元気だろうか。
あの家で、元気に過ごしているだろうか…。
「ここ!ここだよ、あたしのいえ!」
女の子の声で、男の意識は現実に引き戻される。
「………え」
13:
名も無き被検体774号+
2013/05/19(日) 21:13:43.80
ID:FcsqQkDf0
思い出の中にある家と、自分の目の前にある家の姿が、重なる。
似ている…………いや、
同じだ。ここは。
ここは俺の家だ。
「ねえ、君。君の……お母さんの………名前は?」
震える声で、そう尋ねる。
「え?あたしのおかあさんのなまえ?……えっとね」
「………」
その名前は、確かに男の愛する妻のものだった。
「おかあさんはねー、おとうさんがいたんだよ」
女の子が勝手にしゃべり出す。
「でもおとうさんね、あたしが産まれるすぐ前にしんじゃったんだって」
「………!」
14:
名も無き被検体774号+
2013/05/19(日) 21:23:47.67
ID:FcsqQkDf0
(そうだったのか…)
「なあ、エミリー」
「!……どうして、あたしのなまえ」
(やっぱり……)
(俺の考えた名前を、妻は娘につけてくれた……)
「エミリー。俺は………いや」
そう言って男は一瞬、言葉をつまらせる。
15:
名も無き被検体774号+
2013/05/19(日) 21:27:27.62
ID:FcsqQkDf0
「お父さんは、ここからはもう行けない。ここからは、お前一人で行かなきゃな」
「え、ど、どういうこと…?」
女の子が首を傾げる。
「おとうさん…?ほんとうに、おとうさんなの……?」
「ああ、お前の、たった一人のおとうさんだ」
「………!…おとうさん……!」
女の子が、男の肩に抱きついてくる。
「おとうさん!あいたかった……あいたかったよぅ……」
女の子が、涙を流しそう言う。
「ああ…ごめんな、一緒にいてやれなくて……」
「でももう大丈夫だ。お前なら、大丈夫だ」
「さあ、もう家に帰りな。おかあさんが待ってる」
16:
名も無き被検体774号+
2013/05/19(日) 21:40:37.85
ID:FcsqQkDf0
「………うん」
そううなづいて女の子は、家に走って行く。
玄関まで来て、振り返り、
「また、あおうね!いつかきっと、あおうね!やくそく!」
そう叫んで、大きく手を振った。
「ああ、いつか……いつか………」
男はそう呟いて、小さく手を振り返しました。
次の瞬間には、男は消えていました。
17:
名も無き被検体774号+
2013/05/19(日) 22:00:40.63
ID:FcsqQkDf0
それから長い時が経ちました。
幽霊男がどうなったかは、分かりません。
幽霊猫がどうなったかも、分かりません。
でもあの女の子ーーエミリーは、毎日幸せに暮らしています。
おわり
18:
忍法帖【Lv=7,xxxP】(1+0:8)
2013/05/19(日) 22:02:01.62
ID:PcCAG8xq0
げんふうけい?
19:
名も無き被検体774号+
2013/05/19(日) 22:04:42.12
ID:wqlaAuSt0
げんふうけいじゃないよ
レベルが違う、陳腐な文章さ
21:
名も無き被検体774号+
2013/05/19(日) 22:13:38.04
ID:Eozh8g7D0
乙
22:
名も無き被検体774号+
2013/05/19(日) 22:25:33.18
ID:8+Pv8q3h0
タイトルの割にねこのキャラが薄い
23:
名も無き被検体774号+
2013/05/19(日) 22:32:31.79
ID:FcsqQkDf0
>>22すまぬ
24:
名も無き被検体774号+
2013/05/19(日) 22:59:03.53
ID:Rsj8peIt0
子供向け絵本みたいだな
25:
名も無き被検体774号+
2013/05/20(月) 00:14:54.16
ID:UvaxY7h10
途中オチがよめたけど
結構面白かった!
>>1乙
28:
名も無き被検体774号+
2013/05/20(月) 12:34:32.87
ID:aFzVUG/S0!
男が19年前に死んだと言うことは女の子は18歳くらいだよね?それにしては話し方が幼稚すぎる気がする
29:
名も無き被検体774号+
2013/05/20(月) 13:03:28.67
ID:k/89W2hv0
>>28
ID変わりましたが>>1です。
そうだった!!なんたる失態!!
30:
名も無き被検体774号+
2013/05/20(月) 13:04:22.10
ID:k/89W2hv0
脳内で大人言葉に直してお読みください…
31:
名も無き被検体774号+
2013/05/20(月) 13:26:07.65
ID:FROLI+Ys0
設定がちょっと甘かったけど
ほんわかして良かった
もっと色んな幽霊との話も読みたくなったから、また書いてね
32:
名も無き被検体774号+
2013/05/20(月) 13:45:50.69
ID:83u5CgW/i
娘がいつ死んだとは書いてないから
死んだ時の年齢まま幽霊化してたでいいんじゃ?
娘が幼いまま帰って来て母ちゃんはビックリするだろうけど
33:
名も無き被検体774号+
2013/05/20(月) 13:47:42.39
ID:k/89W2hv0
>>32娘しんでないです。幽体離脱しちゃっただけです
34:
名も無き被検体774号+
2013/05/20(月) 13:49:56.94
ID:k/89W2hv0
タイトルにゆうれいねこがいるのに幽霊猫の出番がほとんどなかったんで、幽霊猫の話書きます。
35:
名も無き被検体774号+
2013/05/20(月) 13:53:25.74
ID:k/89W2hv0
短めですがどうか読んでやってくだせえ
ゆうれいねこのはなし
これは幽霊猫が、幽霊男に会う少し前の話です。
その頃幽霊猫は幽霊猫ではなく、ただのどこにでもいる野良のトラ猫でした。
今回はそんなトラ猫の話をしようと思います。
36:
名も無き被検体774号+
2013/05/20(月) 13:57:05.08
ID:k/89W2hv0
前に話しそびれましたが、レストリントというのは大西洋に面した州の国にある、小さな田舎町です。
昔は石炭なんかがあったので、町はそこそこ栄えていましたが、今ではそれもなくなり、町は寂れていくばかりです。
おかげで人間は住みにくくなりましたが、猫には住みやすい所になりました。
なのでたくさんの猫が、隣の町からこちらの町に移動して来ました。
その中には、トラ猫もいました。
37:
名も無き被検体774号+
2013/05/20(月) 14:03:15.05
ID:k/89W2hv0
その頃この町の猫の間で、殺人……いえ、殺猫事件が起きていました。
犯人は多分、彼らと同じ猫。
何故なら全ての遺体は、猫の爪や牙によって殺された跡があったからです。
38:
名も無き被検体774号+
2013/05/20(月) 14:17:42.30
ID:k/89W2hv0
三毛猫「どうしよう……このままじゃ、被害者は増えてく一方だ」
黒猫「ならば、確保するしか……」
白猫「しかし、あれだけたくさんの猫が簡単に殺されたんだぞ……俺たちなんかに………」
タッタッタッタ……
39:
名も無き被検体774号+
2013/05/20(月) 14:41:52.71
ID:k/89W2hv0
ブチ猫「おーーーーい」
三毛猫「ブチ猫だ。どうしたんだ、あんなに急いで」
ブチ猫「また、殺された……!」
黒猫「………!」
白猫「今度は………誰……?」
ブチ猫「…シマ猫の……ルーラス……」
トラ猫「それって………」
ブチ猫「そう。ここいらで一番強いっていう………」
黒猫「そんな!それじゃあ……」
白猫「俺たちに勝ち目なんてないじゃないか!」
三毛猫「……となると、ここを捨てて隣町に移動するしか他はないのか……」
トラ猫「いや、待て」
全員「……?」
トラ猫「俺が行く」
40:
名も無き被検体774号+
2013/05/20(月) 15:56:20.16
ID:k/89W2hv0
三毛猫「待て!死ぬぞ!」
三毛猫「ルーラスがやられたんだぞ!……お前一人が……なんとかできるわけないだろう!」
トラ猫「でも……それでも……」
トラ猫「ここは俺たちの大事な場所じゃないか!第二の故郷みたいなものじゃないか!!」
トラ猫「今更ここを離れられるわけ……ないだろう…」
三毛猫「………」
黒猫「俺も、行くよ」
黒猫「俺にとってもここは、大事な場所だからな」
白猫「俺も行かせてもらう」
トラ猫「二人とも……」
三毛猫「………俺も」
ブチ猫「俺も」
トラ猫「………!」
トラ猫「ありがとう……みんな………」
41:
名も無き被検体774号+
2013/05/20(月) 16:27:35.67
ID:k/89W2hv0
誰も見てないようですが続けます。
………
……
…
人気のない道路。
電柱の弱い光が、時々消えたり、着いたりを繰り返している。
トラ猫「ここらへんで見たのか?奴を」
ブチ猫「あ、ああ」
ブチ猫「ここで、あいつが………」
ブチ猫は、その場面を思い出したのだろう。
青ざめた顔をして、口を閉ざしてしまった。
42:
名も無き被検体774号+
2013/05/20(月) 16:30:50.53
ID:VToqr3A+0
見てるぞ
43:
名も無き被検体774号+
2013/05/20(月) 16:34:49.36
ID:k/89W2hv0
???「………」
ふーっ、ふーっ、という荒い息。
ギラギラ光る、充血した瞳。
半開きの口からは、鋭い牙が見える。
涎が落ちる、ぽちゃんという音。
その音に五匹が振り向くと、そこには………
44:
名も無き被検体774号+
2013/05/20(月) 16:37:05.64
ID:k/89W2hv0
ブチ猫「あ………ああぁ!」
トラ猫「どうした!?」
ブチ猫「こ……こいつだ………こいつだ………!」
そう、この猫こそ、毎晩猫を殺していた犯人……。
黒猫「そんな………」
白猫「いきなりすぎるよ…」
???「………!」
ひゅん、と風を切る音がして、
三毛猫「が………っ!」
三毛猫は『奴』に噛みつかれていた。
45:
名も無き被検体774号+
2013/05/20(月) 16:41:39.57
ID:k/89W2hv0
トラ猫「三毛猫!」
三毛猫「はやく………!おれはいいから、はやくこいつを殺せ!」
トラ猫「そんな………」
トラ猫「できない……」
トラ猫「できるわけないだろ!仲間を見捨てるなんて!」
46:
名も無き被検体774号+
2013/05/20(月) 16:42:26.87
ID:k/89W2hv0
三毛猫「そんなんじゃみんな殺されちまうだろ!!」
三毛猫「俺一匹がこいつと死ねば………みんな幸せになれるだろ……!」
次の瞬間、『奴』は標的をトラ猫に変え、彼目がけて突進して来た。
トラ猫「あ………!」
奴「ぐううううううううううううう!!」
47:
名も無き被検体774号+
2013/05/20(月) 16:45:34.27
ID:k/89W2hv0
ブチ猫「………!」
ブチ猫「おい!おまえら!」
ブチ猫「車だ!車が来るぞ!」
トラ猫「なら、好都合じゃないか…!」
ブチ猫「なに……!?」
黒猫「まさかお前………!」
トラ猫「そう、そのまさかさ」
トラ猫「こいつと一緒に轢かれる」
白猫「だめだよ!そんな!」
48:
名も無き被検体774号+
2013/05/20(月) 16:49:28.47
ID:k/89W2hv0
トラ猫「へ、へへへ……しっかり噛みついてろよ………!!!」
トラ猫は、『奴』の頭をぎゅっとおさえ、離れられないようにする。
車のライトが眩しくて、目をつむる。
(さあ、おもいっきり来い!)
三毛猫「トラ猫おおおお!!!」
49:
名も無き被検体774号+
2013/05/20(月) 16:51:28.17
ID:k/89W2hv0
そうしてトラ猫は、『奴』と一緒に死んでしまいました。
そして彼は、幽霊猫になったのです。
………
……
…
「………」
「…懐かしいな」
「あいつら、元気にしてるかな」
「……おや、あんなところで女の子が泣いてる」
おわり
50:
名も無き被検体774号+
2013/05/20(月) 17:07:03.27
ID:83u5CgW/i
昔飼ってたサバトラ猫思い出して
ウルウルしちまったじゃねーか
51:
名も無き被検体774号+
2013/05/21(火) 19:59:35.65
ID:rwlGrlS/0
乙
殺猫犯はなんで同族殺ししてたの?
嫌悪感あるよ
怪我をさせられただけか
狂暴な野良犬とかの方がよかった
女の子は孫娘でもいいかもね
死に別れた頃の娘に似ていてお母さんの名前を聞いたら孫だってわかったとか
元ネタ:http://hayabusa3.2ch.net/test/read.cgi/news4viptasu/1368963746/
タイトル:ゆうれいおとことゆうれいねこ