2: 名無しさん@おーぷん 2015/12/19(土)23:27:24 ID:9SS
彡(゚)(゚)「まあ夏目漱石は読みやすいほうやけど、これは3部作だし本読み慣れてないとちょっと長く感じるかもなあ」
(´・ω・`)「初心者におすすめのってなにかないの?」
彡(゚)(゚)「うーんせやなあ」
彡(゚)(゚)「桜の樹の下には死体が埋まってる」
彡(゚)(゚)「って聞いたことあるか?」
(´・ω・`;)「おにいちゃんまさか」
彡(゚)(゚)「何考えてるか大体わかるけどちゃうで、小説の話や」
3: 名無しさん@おーぷん 2015/12/19(土)23:28:17 ID:9SS
彡(゚)(゚)「あまりに見事に咲き誇る桜を見て狂った男が、きっと樹の下には死体が埋まってるに違いないと一人で延々とと語るんや」
彡(゚)(゚)「わずか4ページの梶井基次郎の名作やな」
(´・ω・`)「よ、4ページ?これならぼくでも読めるよ」
彡(゚)(゚)「まあそんな梶井基次郎の短編が収録されてる本の表題作があってな」
彡(゚)(゚)「檸檬っていうこれまたケッタイな名作やで」
(´・ω・`)「漢字が難しくて読めないよ」
4: 名無しさん@おーぷん 2015/12/19(土)23:28:56 ID:9SS
彡(゚)(゚)「ほんまお前アホやなボケカス(れもんって読むんやで)」
彡(゚)(゚)「まあこれも9ページと短いんやがな、これはワイが数ある小説の中で最も好きな作品のひとつや」
(´・ω・`)「どんな話なの?」
彡(゚)(゚)「大まかには話すけど、興味持ったら図書館で借りるなり本屋行くなりしたほうがええで。小説の醍醐味は文章やからな」
(´・ω・`)「わかったからあくしろよ」
5: 名無しさん@おーぷん 2015/12/19(土)23:30:12 ID:9SS
彡(゚)(゚)「得体の知れない不吉な塊がワイの心を始終抑えつけていた」
彡(゚)(゚)「焦燥と云おうか、嫌悪と云おうかーー」
彡(゚)(゚)「これはちょっといけなかった」
彡(゚)(゚)「肺尖カタルや神経衰弱、背を焼くような借金がいけないんやない」
彡(゚)(゚)「いけないのはその不吉な塊やな」
彡(゚)(゚)「以前ワイを喜ばせたどんな美しい音楽も、どんな美しい詩の一節も辛抱がならなくなったンゴ」
彡()()「何かがワイを居たたまれなくさせるンゴ…」
6: 名無しさん@おーぷん 2015/12/19(土)23:31:09 ID:9SS
彡(゚)(゚)「それで始終ワイは街から街を浮浪し続けていたんや」
彡(゚)(゚)「何故だか見すぼらしくて美しいものに強く惹かれるンゴねえ」
彡(゚)(゚)「風景にしても壊れかかった街だとか、汚い洗濯物が干してあったりがらくたが転がしてあったりするような裏通りが好きやで」
彡(゚)(゚)「時々ワイはそんな路を歩きながら、ふと其処が京都やなくて、何千里も離れた仙台とか長崎とか、そんな街に自分が来ているような錯覚を起こそうと努めるんや」
彡(゚)(゚)「できるならワイを誰一人知らないような街へ行ってしまいたいンゴ」
10: 名無しさん@おーぷん 2015/12/19(土)23:39:08 ID:9SS
すまんな>>6と>>7の間に入れるのひとつ忘れてたわ
脳内で補完してくれや
彡(゚)(゚)「第一に安静やな」
彡(゚)(゚)「がらんとした旅館の一室。清潔なふとん。いい蚊帳と糊のよくきいた浴衣」
彡(゚)(゚)「其処で一ヶ月ほど何も思わず横になりたいンゴ」
彡(゚)(゚)「ファッ!?ここがいつの間にかその街になってないか!?」
彡(^)(^)「あぁ^~ワイの錯覚と壊れかかった街の二重写しやで!現実のワイ自身を見失うのが楽しいんじゃ~」
7: 名無しさん@おーぷん 2015/12/19(土)23:31:54 ID:9SS
彡(゚)(゚)「ワイはまたあの花火という奴が好きや」
彡(゚)(゚)「あの安っぽい絵具で赤や紫や黄や青や、色んな縞模様があるンゴねえ」
彡(゚)(゚)「びいどろとかいう色硝子、ペロッ!w」
彡()()「あのびいどろの味ほど幽かな涼しい味があるものか、昔、口に入れてパッパやマッマに怒られた甘い記憶が落ちぶれたワイに蘇ってくるやで」
8: 名無しさん@おーぷん 2015/12/19(土)23:36:08 ID:9SS
彡(゚)(゚)「さて、まるで金は無いけどワイ自身を慰めるためには贅沢が必要やな…」
彡(゚)(゚)「以前は丸善によう行って、洒落た切子細工や典雅なロココ趣味の浮き模様を持った琥珀色や翡翠色の香水瓶。煙管、小刀、石鹸、煙草を見るのに小一時間も費やしてたなあ」
彡(゚)(゚)「結局一等いい鉛筆を一本買うくらいの贅沢しかしなかったけど」
彡(-)(-)「もう今は重苦しい場所にしか過ぎんな」
13: 名無しさん@おーぷん 2015/12/19(土)23:40:36 ID:9SS
彡(゚)(゚)「金が無いからトッモの下宿転々としとるけど、トッモが学校に行ってしまった後の空虚な空気のなかに一人残されるワイ」
彡(゚)(゚)「まーたそこから彷徨い出なきゃいかんのか」
彡()()「何かがワイを追い立てるンゴ…」
14: 名無しさん@おーぷん 2015/12/19(土)23:41:10 ID:Xa5
丸善って閉店しちゃったんだっけ
18: 名無しさん@おーぷん 2015/12/19(土)23:43:49 ID:9SS
>>14
京都本店のは閉店してないはずやで
16: 名無しさん@おーぷん 2015/12/19(土)23:42:40 ID:9SS
彡(゚)(゚)「とうとう二条まで来てしまったで」
彡(゚)(゚)「そこにある果物屋がワイの知ってる範囲で最も好きな店でな」
彡(゚)(゚)「決して立派な店じゃないんやが、果物屋固有の美しさが最も露骨に感ぜられたんや」
彡(゚)(゚)「果物はかなり勾配の急な台の上に並べてあって、その台というのも古びた漆塗りの板で」
彡(゚)(゚)「何か華やかな美しい音楽の快速調(アレグロ)の流れが、ゴルゴンの鬼面となってあんな色彩に凝り固まらせたかのような、そんな風に果物が並んでるンゴ」
20: 名無しさん@おーぷん 2015/12/19(土)23:46:38 ID:9SS
彡(゚)(゚)「 またそこの美しいのは夜やな、寺町通は賑やかなのにどうした訳かその店頭だけが妙に暗いんや」
彡(゚)(゚)「もしその果物屋が暗くなかったら、あんなにもワイを誘惑するには至らなかったやろな」
22: 名無しさん@おーぷん 2015/12/19(土)23:46:57 ID:9SS
彡(゚)(゚)「その日ワイはその店で買い物をした。その店には今まで見かけなかった檸檬が出ていたんや」
彡(゚)(゚)「一体ワイはあの檸檬が好きや。あのレモンエロウの絵具を固めたような単純な色、あの丈の詰まった紡錘型の格好」
彡(゚)(゚)「檸檬なんて珍しくもなかったが、結局ワイはそれを一つだけ買うことにしたんや」
彡(゚)(゚)「それからのワイは何処へどう歩いたんやろか」
24: 名無しさん@おーぷん 2015/12/19(土)23:48:12 ID:9SS
彡(゚)(゚)「おっ始終ワイの心を抑えつけていた不吉な塊がいくらか弛んできたな」
彡(^)(^) (ワイは街の上で非常に幸福だったンゴ)
彡(゚)(゚)「肺尖でいつも体に熱があるんやが、檸檬の冷たさが掌から染み透っていくのがぐう気持ちいいンゴ」
彡(゚)(゚)「鼻先に近付けて嗅いでみると、産地のカリフォルニヤが想像できるやで」
彡(^)(^)「ふかぶかと胸一杯に吸い込めば、ついぞ深呼吸なんかしたことなかった身体や顔には温い血のほとぼりが昇ってくるなあ」
25: 名無しさん@おーぷん 2015/12/19(土)23:49:53 ID:9SS
彡(゚)(゚)「実際あんな単純な冷覚や触感や嗅覚や視覚が、ずっと昔からこればかり探していたと云いたくなった程にしっくりくるなんて不思議ンゴねえ」
彡(^)(^) 「街を軽やかに闊歩するンゴ」
彡(^)(^)「この重さは全ての善いもの美しいものを重量に換算した重さである、なんて思い上がった諧謔心から考えてみるやで」
彡(^)(^)「あぁ^~幸福なんじゃ~」
彡(゚)(゚)「あれ、いつの間にか丸善の前にいるンゴ」
26: 名無しさん@おーぷん 2015/12/19(土)23:51:02 ID:9SS
彡(^)(^)「今日は一つ入ってみてやろう」
彡(^)(^)「あんなに避けてたのに易やすと入れるで。サンキューレッモン」
彡(゚)(゚)「ンゴ…」
彡(゚)(゚)「何だか憂鬱になってきたンゴ。歩き廻った疲弊が出てきたかもしれんで」
彡(゚)(゚)「いつもの画集の棚に行くか」
27: 名無しさん@おーぷん 2015/12/19(土)23:52:43 ID:9SS
彡(゚)(゚)「なんやこれ重スギィ!」
彡(゚)(゚)「一冊ずつ抜き出しては見るのを繰り返すけど、ちゃんと見ようとは思わんで」
彡(゚)(゚)「呪われたことにまた次の一冊を引き出すのをやめられん。一度バラバラやってみなくちゃ気が済まないんや」
彡(゚)(゚)「それ以上はたまらなくなって床へ置いてしまう。もとの位置に戻すことさえ出来ないンゴ」
彡(;)(;)「大好きだったアングルの橙色の画集さえまともに見れないンゴ…」
28: 名無しさん@おーぷん 2015/12/19(土)23:54:58 ID:9SS
彡(゚)(゚)「はあ。疲れてしゃーないから積み重ねた本の群を眺めてるやで」
彡(゚)(゚)「一枚一枚画集に目を通した後、さてあまりに尋常な周囲を見渡す時のあの変にそぐわない気持ちを、以前には好んで味わっていたのになあ……」
彡(゚)(゚)「あ、そうだそうだ」
“その時私は袂の中の檸檬を思い出した。
本の色彩をゴチャゴチャに積み上げて、一度この檸檬で試して見たら。”
彡(゚)(゚)「そうだ」
30: 名無しさん@おーぷん 2015/12/19(土)23:56:17 ID:9SS
彡(゚)(゚)「またさっきの軽やかな昂奮が帰ってきたで」
彡(゚)(゚) (ワイは手当たり次第に積み上げて、潰し、また慌ただしく築き上げた)
彡(゚)(゚) (奇怪な幻想的な城が、その度に赤くなったり青くなったりしたンゴ)
彡(゚)(゚) (やっとそれは出来上がった。そして軽く跳りあがる心を制しながら、その城壁の頂に恐る恐る檸檬を据えつけた)
彡(゚)(゚) (そしてそれは上出来だったんや)
31: 名無しさん@おーぷん 2015/12/19(土)23:56:56 ID:5so
梶井基次郎か、いいなあ
33: 名無しさん@おーぷん 2015/12/19(土)23:59:55 ID:9SS
>>31
同士がおって嬉しいやで!
34: 名無しさん@おーぷん 2015/12/20(日)00:01:42 ID:b0r
彡(゚)(゚) (周りのガチャガチャした色の階調をひっそりと紡錘型の身体の中へ吸収してしまって、カーンと冴え渡っていたんや)
彡(゚)(゚) (その檸檬の周囲だけ変に緊張してる気がしたンゴ)
彡(゚)(゚) (不意に第二のアイデアが起こって、それはワイをぎょっとさせた)
彡(゚)(゚) 「それをそのままにしておいてワイは、何喰わぬ顔をして外へ出るーー」
彡(^)(^) (ワイは変にくすぐったい気持ちがしたで)
彡(゚)(゚)「出て行こうかなあ。そうだ出て行こう」
35: 名無しさん@おーぷん 2015/12/20(日)00:02:20 ID:tYA
当時高校生のワイや友達はこの主人公はただのガイジにしか見えなかった
36: 名無しさん@おーぷん 2015/12/20(日)00:02:48 ID:v4G
店員「何やあのガイジ」
39: 名無しさん@おーぷん 2015/12/20(日)00:07:46 ID:b0r
>>36
>>37
まあ気持ちはわかるやで
行動だけ見たらガイジやししゃーない
38: 名無しさん@おーぷん 2015/12/20(日)00:04:51 ID:b0r
彡(^)(^)「そしてワイはすたすた出ていったンゴ」
彡(^)(^)「丸善の棚へ黄金色に耀く恐ろしい爆弾を仕掛けてきた奇怪な悪漢がワイで、」
彡(^)(^)「十分後にはあの丸善が美術の棚を中心に大爆発をするんだったら、どんなに面白いことか」
彡(^)(^)「そしたらあの気詰まりな丸善も木っ端微塵やのに」
彡()()「ワイは活動写真の看板画が奇体な趣きで街を彩っている京極を下って行った」
終
41: 名無しさん@おーぷん 2015/12/20(日)00:14:32 ID:0CY
これが元で未だに檸檬を置いてく場所があるんやっけ
43: 名無しさん@おーぷん 2015/12/20(日)00:24:43 ID:b0r
>>41
なんやそれ素敵やん
48: 名無しさん@おーぷん 2015/12/20(日)00:41:45 ID:0CY
51: 名無しさん@おーぷん 2015/12/20(日)00:44:21 ID:b0r
>>48
はえ~粋なことする人もおるんやねえ
行ってみたいンゴ
42: 名無しさん@おーぷん 2015/12/20(日)00:17:25 ID:aYn
高校の教科書に載ってたの思い出すンゴねぇ
44: 名無しさん@おーぷん 2015/12/20(日)00:26:47 ID:b0r
>>42
載ってたンゴねえ~
ワイは周りがやたら主人公馬鹿にしてたから悲しかったわ
46: 名無しさん@おーぷん 2015/12/20(日)00:28:52 ID:fel
檸檬の薫り嗅ぐところがぐう好き
50: 名無しさん@おーぷん 2015/12/20(日)00:43:29 ID:b0r
>>46
ぐうわかる
思わず深呼吸するよな
47: 名無しさん@おーぷん 2015/12/20(日)00:40:19 ID:b0r
彡(゚)(゚)「さて、こんな感じやけども」
彡(゚)(゚)「繰り返すけど興味持ったら実際に読んでみることオススメするで!
小説の醍醐味は文章やからな」
彡(゚)(゚)「村上春樹とか山田詠美もぐう面白い短編書いてるから見てみてや」
彡(゚)(゚)「それに短編といったら星新一は外せんな。大人が読んでも、というか実は大人向けの短編やなアレは」
彡(゚)(゚)「慣れてきたら長編に挑戦してもええかもな。一生のうち読み切れないほど名作は埋まってるで」
彡(^)(^)「少しでもこのスレが君の興味を本に向けてられたら幸いやで!」
引用元: ・彡(゚)(゚)と学ぶ日本文学「檸檬」