1. アヌシーの「ホーンテッド・アップル」-魔女の罠- (フランス)
1585年、フランス東部の街、アヌシーの橋で林檎が浮いているのが目撃された。数時間のあいだ、その林檎は大きな騒音をたてながら通行人を恐怖に陥らせた。
そこへようやく、棒のようなものを手にした勇気のある旅行者がやってきた。彼はなんと、林檎をその棒でぴしゃりと打ち、アヌシー湖の中へと落としたのだ。
当時の裁判官、ヘンリ・ボグート氏によると、「この林檎は、魔女が誰かに渡そうとして失敗したものであり、魔の林檎であることは疑いようもない」と判じ、住民に今後も注意を促したという。
(Cresit : midlandspie.org) この伝承について魔女や悪魔の専門家Darren Oldridge氏は、2006年に発刊した『
奇妙な歴史』という著書の中でこう解説している。
「魔女はこの地域では、汚れたものを食べた体に汚れた魂の種をまくとされていた。ここでの林檎は
明らかに汚れに対する種の意である。さらに言えば、林檎がエデンの園で人間の堕落を招く
禁断の果実であることが影響しているといえる」
やはり林檎といえば禁断の果実という感じで、聖書が影響していたらしい。奇妙な騒音をたて空中に浮く林檎を誰が食べようと思うのか、と考えると、魔女も意外と抜けているのか。Oldridge氏はこう続ける。
「当時のアヌシーの人々には、魔女が動物や植物に魔の種をまき、人間を堕落させようとするという
知識が事前にあったので、彼らとの肉体的接触を防げたのだ」

この時代の人々は常に魔女や悪魔の誘惑と戦っており、こういう超常現象は大抵彼らの策略だった。そうなると、人々も策をたてないといけない。この件で犠牲者がいなかったのは、アヌシーの人々の事前対策があったからなのだ。
日本でいえば、口裂け女に出会っても、
「ポマード」と三回唱えれば事なきを得る、と似たようなものだろう。
アヌシー湖は
世界一の透明度を持つとされている美しい湖だが、もし訪れた際は注意して欲しい。
魔女は常に人間を堕落させようと、動物や食べ物に身を変え、あなたを待っているのだから。
2. ダルへイムの蘇る少年-サキュバスの誘惑- (ルクセンブルク)
中世の時代には、悪魔は空気や色々な物質を充填することで人間の死体を生き返らせる力があると信じられていた。睡眠中の男性襲い精を奪うサキュバスもその一つである。 1581年、サキュバスはダルヘイムに住む一人の男に、彼自身の息子を殺せと命令した。彼が実際に息子を殺害してしまったと気づいた時、彼は深い悲しみに打ちひしがれた。 これは良いいたずらの機会だと思い、サキュバスは彼にこう言った。「私を愛せばお前の息子を生き返らせてやろう」と。 サキュバスの力を使って、少年は死から復活し、男は元の生活に戻った。しかし数年後、少年は突然予期せぬ病気にかかり、そしてゆっくりと崩れ落ち、死体へと戻っていった。 サキュバスの魔法による復活は幻想だったのだ。少年の体は空っぽのロボットであり、単に悪魔の限られた魔法の力で復活していただけにすぎなかったのである。
(Credit : ferrebeekeeper.wordpress.com)
なんとも居たたまれない話だが、1486年に書かれた『
魔女に与える鉄槌』という本によると、(やはり現代のように)サキュバスに抗いがたい魅力を感じる人もいたらしく、1468年のイタリアには、なんと
サキュバスの売春宿を経営した罪で処刑された男がいるらしい。さすがイタリア、奔放である。
「うちに泊まればサキュバスちゃんと会えるよー!」ということだろうか。想像が膨らむ。
ちなみに健全な良い子の皆様には、サキュバスを追い払う方法をご紹介しよう。
・アベ・マリアを歌う
・告解をする
・十字を切る
・新しい家に引っ越す
・司祭か聖職者を呼んで、追い払う
一番コスパがいいのは「十字を切る」や「アベ・マリアを歌う」だろうか。
音痴でも許されるのか問いたいところではある。
3. リヨンの飛行船の訪問者-UFO遭遇事件- (フランス)
9世紀初頭、リヨンの町に、3人の男と1人の女のグループが飛行船でやってきたと報告があった。群衆は彼らを、「邪悪な力で私たちの作物を荒らすやつらだ」と非難した。
しかし訪問者は、「私たちは君たちと同じ国の、いたって普通の平和的な人間だ」と主張した。驚くべきことに、彼らは魔法を使う男にマゴニアと呼ばれる天空の大陸に連れ去られていたのだという。 群衆が凶暴化しそうなところへ、アゴバルドという司教がやってきて、訪問者たちの話をただの空想だと切り捨てた。後にアゴバルドが評判の良い司教になると、町民は彼の懐疑論を受け入れ、訪問者たちのことに触れなくなった。 しかし、何人かのUFO研究者はこの話を真実だと主張しており、前近代の宇宙人によるコンタクトの一例だとしている。
マゴニアとはこの事件が起源の、伝説上の空中大陸である。後に、これはある種の雲のことで、船を破壊する暴風雨の前兆として現われるのものではないか、とされた。
お察しの通り、
ラピュタファンの間ではよく関連性を言及されている。
この真実性は措いて、1100年以上前からUFOに人間が連れ去られるというな事例がみられるというから驚きだ。オーパーツといい、
彼ら宇宙人は古代からずっと私たちを監視しているのかもしれない。
4. ミコノス島のブリコラカス-悲しき東欧の吸血鬼-
1700年頃、フランスの植物学者ジョゼフ・ピトン・ド・トゥルヌフォールは、ミコノス島を訪れていた間、夜になるたびに、ある死んだ農民が生者の世界に戻ってくる現象を知った。 トゥルヌフォールは、その農民が畑仕事中に何者かに襲撃された後、吸血鬼に似た東ヨーロッパのアンデッド・クリーチャー、ブリコラカスになってしまったのではないか、と推測した。
当初、ブリコラカスが行うとされる悪さは、家具を逆さまにしたり、人に後ろから抱きつくなど、ほぼ無害なものとされていた。しかしそんないたずらにもだんだんと島民のイライラが募ってくると、彼らはブリコラカスをおびき寄せ、彼の心臓を引き裂いた。
しかしこれではブリコラカスは死なず、だんだんと人々を殴ったり、屋根を壊したり、彼らのアルコールを盗んだりし始めた(地味にいやだ)。 トゥルヌフォールによると、何人かの人々は家から逃げ、そうでない者はブリコラカスの墓を一日中剣で攻撃したという。そんな状況にみかねて、ついに政府からブリコラカスに「その体が焼かれ滅びたセントジョージ島(アラスカ・ベーリング海の島)に戻れ」という命令が下された。
(Cresit : authorlyngibson.wordpress.com) なんだか少し
ブリコラカス側が可哀想になってくるお話だが、そもそもなぜ最後でブリコラカスを「退治する」などの方法をとらなかったかといえば、ずばり
死なないから。
ギリシャでは、元々吸血鬼とは
人狼の意味を含むブリコラカスという名であり、ヴァンパイアという言葉に統一されたのは
18世紀以後である。
よって可哀想にみえても、元が人間でも、
死なないし悪さもする吸血鬼なのだ。
以上、16世紀以前のヨーロッパで語り継がれてきた超常現象を紹介した。少し後ろが気になったり、寒気を感じたりし始めた方は十字を切ったり、アベ・マリアを歌ってみてはいかがだろうか。
[via : listverse]