2: 風吹けば名無し@\(^o^)/ 2016/10/21(金) 20:38:05.50 ID:JgE32RjJ0
明けぬれば暮るるものとは知りながらなほ恨めしき朝ぼらけかな
夜が明ければやがて暮れるものとは知っていながら、やはり名残惜しく恨めしい夜明けであることよ。
3: 風吹けば名無し@\(^o^)/ 2016/10/21(金) 20:38:15.64 ID:JgE32RjJ0
嘆きつつひとり寝る夜の明くる間はいかに久しきものとかは知る
貴男が来ない寂しさを嘆きながら、独り寝る夜を過ごす私にとって、
夜明けまでの時間がいかに永いものか、貴男には分からない事でしょうね。
5: 風吹けば名無し@\(^o^)/ 2016/10/21(金) 20:38:26.92 ID:JgE32RjJ0
忘れじの行く末まではかたければけふを限りの命ともがな
忘れまいという誓いが、いつまでも変わらぬというのは難しい事なので、
そのように誓った今日を最後として、死んでしまいたいものですわ。
6: 風吹けば名無し@\(^o^)/ 2016/10/21(金) 20:38:37.29 ID:JgE32RjJ0
滝の音は絶えて久しくなりぬれど名こそ流れてなほ聞こえけれ
滝の水音が聞かれなくなって久しいが、その名声だけは今もこの世に伝わっている事だ。
7: 風吹けば名無し@\(^o^)/ 2016/10/21(金) 20:38:50.10 ID:JgE32RjJ0
あらざらむこの世のほかの思い出にいまひとたびの逢ふこともがな
私は死んでいる事でしょう。あの世への思い出として、今一度貴男にお会いしたいものですわ。
8: 風吹けば名無し@\(^o^)/ 2016/10/21(金) 20:39:01.26 ID:JgE32RjJ0
めぐり逢ひて見しやそれともわかぬ間に雲隠れにし夜半の月かな
久しぶりに巡り合った方が、幼馴染の貴女だとはっきり分からないうちに、
まるで雲に隠れる夜半の月のように、慌ただしく帰ってしまって、残念だこと。
10: 風吹けば名無し@\(^o^)/ 2016/10/21(金) 20:39:12.84 ID:JgE32RjJ0
有馬山猪名の笹原風吹けばいでそよ人を忘れやはする
有馬山から猪名の笹原に風が吹くと、そよそよと笹が音を立てますが、
そのように、私は決して貴男を忘れませんわ。
11: 風吹けば名無し@\(^o^)/ 2016/10/21(金) 20:39:24.39 ID:JgE32RjJ0
やすらはで寝なましものを小夜ふけてかたぶくまでの月を見しかな
ためらわずに寝てしまえばよかったものを、貴男をお待ちしたばかりに、
夜が更けて、山の端に月が傾くのを眺めてしまったことですわ。
14: 風吹けば名無し@\(^o^)/ 2016/10/21(金) 20:39:36.73 ID:JgE32RjJ0
大江山いく野の道の遠ければまだふみもみず天の橋立
大江山の生野を通って行く道が遠いので、まだ天橋立には行った事もございませんし、
母からの和歌の手ほどきの手紙なんか、受け取ったこともございませんわ。
16: 風吹けば名無し@\(^o^)/ 2016/10/21(金) 20:39:49.89 ID:JgE32RjJ0
いにしへの奈良の都の八重桜けふ九重ににほひぬるかな
太古の奈良の都に植わっていた八重桜が、今日は京の都の宮中に咲き誇っている事ですわ。
18: 風吹けば名無し@\(^o^)/ 2016/10/21(金) 20:40:01.86 ID:JgE32RjJ0
夜をこめて鳥の空音ははかるともよにあふ坂の関はゆるさじ
夜の明けぬうちに、鳥の鳴き声の真似をして私をだまして開けようとしたところで、
逢坂の関が、そんな不実を許すものですか。
19: 風吹けば名無し@\(^o^)/ 2016/10/21(金) 20:40:22.83 ID:JgE32RjJ0
今はただ思ひ絶えなむとばかりを人づてならでいふよしもがな
今はただ、貴女への思いは断ち切った、それだけを、人づてではなく、お会いして言える術があったならば。
20: 風吹けば名無し@\(^o^)/ 2016/10/21(金) 20:40:37.26 ID:JgE32RjJ0
朝ぼらけ 宇治の川霧 たえだえに あらはれわたる 瀬々の網代木
朝焼けに、宇治川にかかる霧がとぎれとぎれに晴れてきて、瀬という瀬の網代木が次々に見えてくることだ。
22: 風吹けば名無し@\(^o^)/ 2016/10/21(金) 20:40:50.15 ID:JgE32RjJ0
恨みわび乾さぬ袖だにあるものを恋に朽ちなむ名こそ惜しけれ
男の不実さを恨み嘆いて、涙の乾く間もない袖すらあるというのに、
恋に朽ちていく私の名誉が惜しい事ですわ。
24: 風吹けば名無し@\(^o^)/ 2016/10/21(金) 20:41:02.86 ID:JgE32RjJ0
もろともにあはれと思へ山桜花よりほかに知る人もなし
お互いに、懐かしく思いあおう、山桜よ。お前のほかには、私の心の内を知ってくれる人もいないのだから。
25: 風吹けば名無し@\(^o^)/ 2016/10/21(金) 20:41:16.39 ID:JgE32RjJ0
春の夜の夢ばかりなる手枕にかひなく立たむ名こそ惜しけれ
春の夜の夢のように儚い貴男の腕枕の為に、つまらなく浮名が立つのは残念なことですわ。
27: 風吹けば名無し@\(^o^)/ 2016/10/21(金) 20:41:29.16 ID:JgE32RjJ0
心にもあらでうき世にながらへば恋しかるべき夜半の月かな
心ならずも、この辛く苦しい世に生きながらえたならば、
今夜の月よ、その時はお前が恋しく思われるであろう事よ。
28: 風吹けば名無し@\(^o^)/ 2016/10/21(金) 20:41:42.03 ID:JgE32RjJ0
あらし吹く三室の山のもみぢ葉は竜田の川の錦なりけり
山風が吹き、三室山の紅葉の葉があちこちに散って、その有様は竜田川に錦がかかっているかのようだ。
29: 風吹けば名無し@\(^o^)/ 2016/10/21(金) 20:41:56.72 ID:JgE32RjJ0
さびしさに宿を立ち出でてながむればいづこも同じ秋の夕暮れ
寂しさに耐えかねて、家の外に出て眺めても、どこも同じく寂しい秋の夕暮れであることよ。
31: 風吹けば名無し@\(^o^)/ 2016/10/21(金) 20:42:12.81 ID:JgE32RjJ0
夕されば門田の稲葉おとづれて葦のまろやに秋風ぞ吹く
夕方になると、門前の稲葉をそよそよと鳴らしながら、芦で吹いた小屋に秋風が吹き渡る事だ。
33: 風吹けば名無し@\(^o^)/ 2016/10/21(金) 20:42:28.59 ID:JgE32RjJ0
音に聞くたかしの浜のあだ波はかけじや袖のぬれもこそすれ
高師の浜にかかる波のように、悪名高いプレイボーイでいらっしゃる貴男の求愛は受けません事よ。
波に濡れるように、涙で袖が濡れてしまっては困りますもの。
35: 風吹けば名無し@\(^o^)/ 2016/10/21(金) 20:42:47.66 ID:JgE32RjJ0
高砂の尾上の桜咲きにけり外山の霞立たずもあらなむ
高砂の、遠い峰のあたりに桜が咲いている。近くの山の辺りに、桜を遮る霞が立たないでほしい事よ。
36: 風吹けば名無し@\(^o^)/ 2016/10/21(金) 20:43:03.09 ID:JgE32RjJ0
憂かりける人をはつせの山おろしよはげしかれとは祈らぬものを
私につれなく振舞った人が、せめて私に優しくしてくれるようにと初瀬に祈ったのに。
初瀬の山を吹き下ろす風のように、その人がいよいよさらにつれなく振舞うようにとは祈らなかった筈なのに。
37: 風吹けば名無し@\(^o^)/ 2016/10/21(金) 20:43:18.40 ID:JgE32RjJ0
契りおきしさせもが露を命にてあわれ今年の秋もいぬめり
さしも草に滴る露のように、あなたが約束して下さった言葉を頼りにしていたのに、
悲しいかな、今年の秋も何の瑞祥もなく過ぎ去っていくらしい。
38: 風吹けば名無し@\(^o^)/ 2016/10/21(金) 20:43:33.00 ID:JgE32RjJ0
わたの原漕ぎ出でて見ればひさかたの雲居にまがふ沖つ白波
海原に舟をこぎ出して見ると、遠くの空に浮かぶ雲と見まごう沖の白波が見える事よ。
39: 風吹けば名無し@\(^o^)/ 2016/10/21(金) 20:43:47.46 ID:JgE32RjJ0
瀬を早み岩にせかるる滝川のわれても末に逢はむとぞ思ふ
瀬の流れが速いために、岩にせき止められた滝川が、二つに分かれても、
再び合流し一つの流れになるように、あなたとの仲が隔てられていても、いつか一緒になりたいと思う事だよ。
40: 風吹けば名無し@\(^o^)/ 2016/10/21(金) 20:44:10.80 ID:JgE32RjJ0
淡路島かよふ千鳥の鳴く声に幾夜ねざめぬ須磨の関守
淡路島をわたってやってくる千鳥の鳴き声を聞いて、須磨の関の守り人は、幾夜目覚めた事だろう。
42: 風吹けば名無し@\(^o^)/ 2016/10/21(金) 20:44:24.29 ID:JgE32RjJ0
秋風にたなびく雲の絶え間よりもれ出づる月の影のさやけさ
秋風にたなびく雲の切れ間から漏れ出る月の光の、何と清澄で美しい事か。
43: 風吹けば名無し@\(^o^)/ 2016/10/21(金) 20:44:36.51 ID:JgE32RjJ0
長からむ心も知らず黒髪の乱れて今朝は物をこそ思へ
末永く愛すると誓った貴男の心が測りがたいので、乱れた黒髪のように、
私の心も思い乱れ、今朝は思い悩む事ですわ。
44: 風吹けば名無し@\(^o^)/ 2016/10/21(金) 20:44:49.42 ID:JgE32RjJ0
ほととぎす鳴きつる方を眺むればただ有り明けの月ぞ残れる
ほととぎすが鳴いた方向を眺めれば、そこにはただ有明の月が空に残っているだけであった事よ。
45: 風吹けば名無し@\(^o^)/ 2016/10/21(金) 20:45:02.96 ID:JgE32RjJ0
思ひわびさても命はあるものを憂きに堪へぬは涙なりけり
思い悩み、それでも人は生き続けるものだが、その辛さを抑えられず、あふれ出るものは涙であることよ。
47: 風吹けば名無し@\(^o^)/ 2016/10/21(金) 20:45:18.11 ID:JgE32RjJ0
世の中よ道こそなけれ思ひ入る山の奥にも鹿ぞ鳴くなる
世の辛さから逃れる術もないのだなあ。
思いを決めて、深山に入ったが、その深山にも、鹿が悲しそうに鳴いている事だ。
49: 風吹けば名無し@\(^o^)/ 2016/10/21(金) 20:45:33.49 ID:JgE32RjJ0
ながらへばまたこの頃やしのばれむ憂しと見し世ぞ今は恋しき
生きながらえたならば、辛いと思っていたこの頃を懐かしく思い出すのであろうか。
辛いと思っていた昔の事が、今となっては恋しく思い出されるように。
50: 風吹けば名無し@\(^o^)/ 2016/10/21(金) 20:45:50.13 ID:JgE32RjJ0
夜もすがら物思ふころは明けやらで閨のひまさへつれなかりけり
一晩中思うこの頃は、夜もなかなか明けてくれず、閨の戸の隙間さえも、白んではくれぬ事だ。
51: 風吹けば名無し@\(^o^)/ 2016/10/21(金) 20:46:07.69 ID:JgE32RjJ0
嘆けとて月やは物を思はするかこち顔なるわが涙かな
思い嘆くがよい、と月は私に物思いをさせているのだろうか。
月のせいであるかのように、溢れては流れる私の涙よ。
52: 風吹けば名無し@\(^o^)/ 2016/10/21(金) 20:46:23.99 ID:JgE32RjJ0
村雨の露もまだひぬまきの葉に霧たちのぼる秋の夕暮れ
村雨のしずくが乾ききらない木の葉に、霧が立ちのぼってくる秋の夕暮れである事よ。
53: 風吹けば名無し@\(^o^)/ 2016/10/21(金) 20:46:45.36 ID:JgE32RjJ0
難波江の葦のかりねのひとよゆえみをつくしてや恋ひわたるべき
難波江の芦の刈り根の一節のように、たった一夜の契りのために、
澪標ではないが、命をかけて一生貴男を恋い慕う事になるのかしら。
54: 風吹けば名無し@\(^o^)/ 2016/10/21(金) 20:47:06.72 ID:JgE32RjJ0
玉の緒よ絶えなば絶えねながらへば忍ぶることの弱りもぞする
この命よ、絶えるものならば、絶えてしまいなさい。
これ以上生きていたら、心に秘めた思いを忍ぶ力が弱って、
この思いが人に知られてしまうかも知れないもの。
55: 風吹けば名無し@\(^o^)/ 2016/10/21(金) 20:47:22.59 ID:JgE32RjJ0
見せばやな雄島のあまの袖だにも濡れにぞ濡れし色はかはらず
貴男に見せたいものですわ、この袖を。
雄島の漁夫の袖すら、潮水に濡れても色は変わらぬというのに、私の袖は涙に濡れて色さえも変わっているのですもの。
56: 風吹けば名無し@\(^o^)/ 2016/10/21(金) 20:47:35.74 ID:JgE32RjJ0
きりぎりす鳴くや霜夜のさむしろに衣かたしきひとりかも寝む
こおろぎが鳴く、寒々とした霜の降りる夜、
むしろの上に片袖を敷いて、私は一人寝る事であるなあ。
57: 風吹けば名無し@\(^o^)/ 2016/10/21(金) 20:47:49.56 ID:JgE32RjJ0
わが袖は潮干に見えぬ沖の石の人こそ知らぬ乾く間もなし
私の袖は、すっかり涙に濡れてしまっている事ですわ。
潮が満ち引きしても見えないほど沖にある石が、人には知られることはないが、濡れて乾く暇もないように。
58: 風吹けば名無し@\(^o^)/ 2016/10/21(金) 20:48:02.70 ID:JgE32RjJ0
世の中は常にもがもな渚漕ぐあまの小舟の綱手かなしも
この世がいつまでも変わらないでいてほしい事だ。海に漕ぎ出す、漁夫が小舟の綱手を引くさまが、愛おしいから。
59: 風吹けば名無し@\(^o^)/ 2016/10/21(金) 20:48:16.22 ID:JgE32RjJ0
み吉野の山の秋風小夜ふけてふるさと寒く衣うつなり
吉野の山から秋の風が吹き、夜が老けて、旧都の里は寒く、衣を打つ音が響く事だよ。
62: 風吹けば名無し@\(^o^)/ 2016/10/21(金) 20:48:29.37 ID:JgE32RjJ0
おほけなくうき世の民におほふかなわがたつ杣にすみぞめの袖
身の程をわきまえぬ事ではあるが、辛い現世を生きる人々に、覆いかけましょう。
私が寄って立つこの比叡山から、墨染めの袖を人々にかけ、御仏の加護を祈りましょう。
63: 風吹けば名無し@\(^o^)/ 2016/10/21(金) 20:48:42.18 ID:JgE32RjJ0
花さそふ嵐の庭の雪ならでふりゆくものはわが身なりけり
花を誘って嵐が吹き付け、雪のように花が積もっているが、
その花ではないが、年をとっていくのは私自身である事だよ。
65: 風吹けば名無し@\(^o^)/ 2016/10/21(金) 20:48:56.32 ID:JgE32RjJ0
来ぬ人をまつほの浦の夕なぎに焼くや藻塩の身もこがれつつ
いくら待っても訪れてこない思い人を、いつまでも待ち続ける。
松帆の浦の夕凪時に、藻塩を焼くように、この身を焦がしながら。
66: 風吹けば名無し@\(^o^)/ 2016/10/21(金) 20:49:09.97 ID:JgE32RjJ0
風そよぐならの小川の夕暮はみそぎぞ夏のしるしなりける
楢の葉に風のそよぐ、奈良の小川の夕暮れは、まるで秋のように涼しいが、
人々のみそぎの姿に、夏であることを実感させられる事よ。
68: 風吹けば名無し@\(^o^)/ 2016/10/21(金) 20:49:25.42 ID:JgE32RjJ0
人もをし人もうらめしあぢきなく世を思ふゆえに物思ふ身は
他人が愛おしいとも、恨めしいとも思われることだ。
思い通りにならぬこの世をつまらぬものと思うゆえに、思い悩む私には。
73: これでおしまい、見てくれて有難う 2016/10/21(金) 20:49:47.71 ID:JgE32RjJ0
ももしきや古き軒端のしのぶにもなほあまりある昔なりけり
宮中の古い軒端に生える忍草を見るにつけても、偲びきれぬほどに、昔の天皇の御代が懐かしく思われる事だ。
74: 風吹けば名無し@\(^o^)/ 2016/10/21(金) 20:49:56.21 ID:JDbTher20
百人一首すこ