1. 伝説の生き物
クランプスが子供をさらいにきた。現在でもヨーロッパ中部では、なまはげ的な感じでクリスマス行事として登場する。
2. 日常的に死が潜んでいる、という
メッセージだとか。それはわかるけどなぜクリスマスでやるんだ。
3. 鳥さん待って!それ飲まないで!
4. 強盗殺蛙からメリークリスマス
5. こんにちは。きたよ。
6. 牙をむくスノーマン
7. 擬人化も貝にまで及ぶ。
タンノくんどころではない。古いか。
8. 鳥の大行進。何が始まるっていうんです?
9. クワガタとカエルが仲良くダンス。盛り上げ役はバッタ。
10. 氷の上でこけまくっているカエル。ドリフか。
11. お肉にワイン、クリスマスの準備は完璧。……でもそれ、何の肉かご存知?
12. 花咲く可憐な少女。こればかりは文字通りにしない方がいいようだ。
うん。
どんなにカードに「Merry Christmas」と書かれていても、全然メリーしている気がしない。
一体なぜこんなことに……?
実はクリスマスカードがこんなに不気味になった理由は、
経済の変化と文化的背景にあった。
謎解明の鍵は産業革命と『クリスマス・キャロル』!?
イギリスにおいて1700年代後半から始まった
産業革命は、人々を村から都市へと移動させ、新しい中産階級を作り出した。人々の暮らしは大きく変化し、彼らの屋敷では新しい技術が取り入れられた家具が使用され始めた。
その一つがガス灯である。
Credit: etsy.comそれは度々、人々に
一酸化中毒による幻覚を引き起こし、数々の怪談を生み出した。ただでさえ新しいものに囲まれた新生活だ。普段正常な者が幻覚をみれば、たちまち幽霊話になったことだろう。この時代に語られた幽霊目撃談は、そのような新しい環境や技術による幻覚・幻聴の可能性も高かったという。
また書籍も大量に発刊できるようになり、ホラーは数あるジャンルの中でも、「短くても楽しめて」、「安価」、そしてこの時代に「一般的」で「反復的」であったので扱いやすかったそうだ。
映画『吸血鬼ドラキュラ』 Credit: indie-outlook現にブラム・ストーカーの『
吸血鬼ドラキュラ』や、メアリー・シェリーの『
フランケンシュタイン』はビクトリア朝時代の作品である。時代は完全にホラーブームであった。
では、それがなぜクリスマスと結び付けられたのだろうか。
幽霊史に詳しい
ロジャー・クラーク氏によると、イギリスにおけるクリスマスは長い間幽霊と関連付けられてきたという。
ただ1800年代初頭頃、クリスマスは今のように広く祝われていたわけではなかった。
「クリスマスを祝う」には、
前提として「キリスト教徒である」ということが求められるという風潮がその一因である。
ビクトリア朝を専門とする、リーズ・メトロポリタン大学の
ルース・ロビンズ教授は、チャールズ・ディケンズの
『クリスマス・キャロル』が、クリスマスを商業的に広める契機になったのではと分析している。
これは守銭奴の主人公が、クリスマス・イヴに幽霊に出会うなどの超自然的な体験を通じて、改心していくという非常に有名な物語だ。
そして『クリスマス・キャロル』が発表された1843年は、奇しくもクリスマスカードが商業的に生産された年でもある。ここから一気に「世俗的に祝うクリスマス」が認識され始めた。
『
The Ghost Story』の著者であるアンドリュー・スミス博士は次のように述べている。
『クリスマス・キャロル』挿絵「ディケンズは、
クリスマスにコミュニティの概念を復活させたかったのです。彼は興味深いことに、クリスチャンではありません。彼にとってクリスマスとは、宗教を問わず家族や貧しい人々を助け、人生を省みる瞬間なんです」
確かに今回挙げたカードにみられる、一見恐ろしい動物などの擬人化イラストは、宗教を問わない。
つまり、以前より親和性があったクリスマスとホラーに、
クリスマスカードや大衆的な物語をもって世俗的な雰囲気と接続させたのである。
こんなに不気味なクリスマス・カードも、実は遊び心や他人への慈愛に満ち溢れ、人類を別け隔てなく祝っている……ということにしておこう。
[via:
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