ダイオウグソクムシにそっくり!海の寄生虫ウオノエ
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ダイオウグソクムシを小さくしたフォルムを持つこの寄生虫、名前は
ウオノエと言います。釣り人の間では
「なんだまたこいつか」くらいポピュラーです。
Credit:
Wikipedia正面から見たダイオウグソクムシ。 ※クリックでモザイク無し画像へ
様々な魚の口内、またはエラにとりついて組織を溶かし自分のスペースを作ります。14本の足で見事におさまって宿主のおこぼれを食べたり体液を吸って生活し宿主が死んだら離れて別の宿主へ、というサイクルを持っています。
寄生された魚はウオノエを除去する事ができず、栄養失調や成長不良を起してしまいます。
魚にとってのメリットはまったくありません。
どうやって魚に入り込むのか、ウオノエの寄生方法について
ウオノエは寄生虫としては中々のサイズを持っていて成虫の体長は1〜3cm程度あります。線虫のように小さく細長いタイプでは無いのでこっそりエサに紛れ込むのも難しそうです。
ウオノエが魚に寄生する方法、それは
自身がエサとなることです。
小型のエビに紛れエサのフリをして一度食べられる事で宿主の口内に侵入します。途中で噛まれたり大型の魚に飲み込まれたりしたら失敗です。魚のエサになります。名前の由来は
魚の餌と書いてウオノエ、というわけです。
体表やエラにとりつくタイプのウオノエも居ます。海中でどのように取り付いているのかは分かりませんが、彼らには専門職があるらしく、
サッパの体表に寄生するウオノエはサッパヤドリムシという名前が与えられています。
他にも
イワシノコバンなど、ほとんどのウオノエは寄生する魚に合わせた名前を持っているので、宿主に応じてとりつきやすい生態を持っているのかもしれません。
性別転換!?謎の多いウオノエの生態
ウオノエは生態研究が進んでおらず、
江戸時代から謎に包まれたままの生き物です。
ウオノエ科の分岐は多岐に渡り、宿主の魚をどうやって選んでいるのか、種類は違うのかも曖昧です。記録されているウオノエの仲間は2,700種以上にのぼります。
岸から釣れるアジやサッパに寄生しているウオノエはエラや体表に付いているし、水深100m付近で釣れるマダイにはタイノエという舌に化けている寄生虫が居ます。
水深400m以上の深海で釣れる高級魚、
アカムツに寄生しているウオノエも見た事があるので海中の生態系内では比較的優位で、多様性に富んだ進化を続けた生き物であると考えられます。
情報の少ないウオノエですが、
繁殖方法は非常にユニークである事が分かっています。宿主の体内で生活している時点では性別が決まっていません。
同じ宿主に入ってきた2匹目と出会った時、メスになるそうです。2匹目はオスという事になります。繁殖に必要な器官の発達が止まるので一度性別が決まるとそのまま生涯を過ごすようです。
オスは終わったら出て行くのかな・・・2匹入っているのは見た事が無いので、とても珍しいと思います。
江戸時代では当たりとして何故か食べていた
マダイは赤く美しい姿で縁起物として結婚式などおめでたい場で用いられてきました。調理や魚に関する江戸時代の文献にも登場しています。
マダイに寄生するウオノエはタイノエという名前で鯛之福玉として大変縁起の良い大当たりである、とされ
味も良かったそうです。江戸時代の人達はあまりフォルムから連想する事が無かったのかもしれません。
現代の食べた方の感想によると
食味はシャコに似ているそうです。寄生虫というとイメージが悪いですが、そのような生態なのであって体の作りはエビ系ですね。
ほとんどの場合発見した時には過熱済みですし、食べても人体に害はありません。人間の舌に擬態して意思に反した言葉を口にする・・・このような害もありません。
観察できるかも!意外と身近なウオノエ
筆者は釣りが好きなのですが、甲殻類を捕食するマダイやカサゴは
15匹に1匹くらい寄生されている気がします。
特に船釣りで水深のある場所で釣った魚はヒット率が高いです。網を使った漁で取れた魚も同じくらいの確率で
ウオノエ付きであると考えられます。
流通の中でウオノエが自分で出て行く場合や関係者の手によって除去される場合が多いと思いますが、スーパーに並ぶ段階でも1日に1匹程度は混じっているのではないでしょうか。
基本的には舌に寄生するので頭の付いた状態で売られている魚でないとお目にかかれません。尾頭付きは面倒、という方が多いと思いますが関心のある方はこっそりチェックしてみてください。
あ、チェックする時は必ず心の準備をしてからにしてください。
http://red.ap.teacup.com/111962/timg/middle_1311763553.jpg目が合うので。