2: 名無しさん@おーぷん 2017/02/28(火)20:03:07 ID:iFR
明日からは若菜つまむと標しめし野に昨日もけふも雪は降りつつ
明日から山菜を摘もうと思っていたのに、標野には昨日も今日も雪が降り続けている事よ。
3: 名無しさん@おーぷん 2017/02/28(火)20:03:15 ID:iFR
谷川のうち出づる浪も声たてつ鴬さそへ春の山風
お前に誘われて、谷の川から湧き出でる波が音を立てている。そのように、鶯を誘っておくれ、春の山風よ。
4: 名無しさん@おーぷん 2017/02/28(火)20:03:23 ID:iFR
鴬の鳴けどもいまだふる雪に杉の葉白き逢坂の山
鶯は鳴いているが、未だに降り続けている雪が積もるので、杉の葉が白くなっている。
ああ、逢坂の山よ。
5: 名無しさん@おーぷん 2017/02/28(火)20:03:32 ID:iFR
今更に雪ふらめやもかげろふの燃ゆる春日となりにしものを
今更、雪が降るというのか。陽炎の燃える春になったというのに。
6: 名無しさん@おーぷん 2017/02/28(火)20:03:40 ID:iFR
照りもせず曇りもはてぬ春の夜の朧月夜にしく物ぞなき
照り付けるわけでもなく、曇るというわけでもない。
春の夜の朧月夜に匹敵するものはない事だよ。
7: 名無しさん@おーぷん 2017/02/28(火)20:03:48 ID:iFR
うすくこき野辺の緑の若草に跡まで見ゆる雪のむら消え
あるところは濃く、あるところは薄い。
野の緑の若草の色の違いに、痕跡がはっきりと認められますわ。雪の消え方にむらがあるという事が。
8: 名無しさん@おーぷん 2017/02/28(火)20:03:58 ID:iFR
我が心春の山辺にあくがれてながながし日をけふも暮らしつ
私の心は、春の山の辺に惹かれて、今日も長い一日を過ごした事だ。
9: 名無しさん@おーぷん 2017/02/28(火)20:04:12 ID:iFR
百敷の大宮人はいとまあれや桜かざして今日も暮らしつ
宮中の貴人たちは、暇をもてあましていらっしゃるのだろうか。桜の花を飾って、今日ものどかに暮らしている。
10: 名無しさん@おーぷん 2017/02/28(火)20:04:22 ID:iFR
山桜散りてみ雪にまがひなばいづれか花と春に問はなん
山桜が散って、雪のように見えるので、どれが雪で、どれが花なのかしら、と春に尋ねてみたいものですわ。
12: 名無しさん@おーぷん 2017/02/28(火)20:04:32 ID:iFR
春雨はいたくなふりそ桜花まだ見ぬ人に散らまくも惜し
春の雨よ、そんなに降らないでおくれ。
桜の花を見ていない人がいるのに、散ってしまったら惜しい事だろう。
13: 名無しさん@おーぷん 2017/02/28(火)20:04:48 ID:iFR
ながむとて花にもいたく馴れぬれば散る別れこそ悲しかりけれ
眺めているうちに、花に親しみをおぼえたので、花が散ってしまって、その別れが悲しい事だよ。
14: 名無しさん@おーぷん 2017/02/28(火)20:04:56 ID:iFR
明日よりは志賀の花園まれにだに誰かはとはん春の古里
遷都するので、明日からは、滋賀の花園も、人の訪れが少なくなることだろう。
誰がお前を訪ねて行ってくれるのだろうか、春の古き都よ。
15: 名無しさん@おーぷん 2017/02/28(火)20:05:12 ID:iFR
うちしめりあやめぞ香る郭公鳴くや五月の雨の夕暮
ほんのりと湿り気を帯び、アヤメの花が香り、ホトトギス(※郭公とあるが、ここではホトトギスと解釈)が鳴く事だ。
五月の夜の雨降る夕暮れよ。
16: 名無しさん@おーぷん 2017/02/28(火)20:05:21 ID:iFR
道の辺に清水ながるる柳蔭しばしとてこそ立ちどまりつれ
道辺に、清水が流れている柳の木陰が趣深いので、しばらくの間そこにとどまっていた事よ。
17: 名無しさん@おーぷん 2017/02/28(火)20:05:30 ID:iFR
わくらばに天の川波よるながら明くる空にはまかせずもがな
たまにしか貴男にお会いできぬのですから、
天の川に波が押し寄せるように、ずっと夜のままであってほしいものですわ。
明けていく空に、時の流れを任せたくはのうございますわ。
18: 名無しさん@おーぷん 2017/02/28(火)20:05:38 ID:iFR
秋萩の咲き散る野辺の夕露にぬれつつ来ませ夜は更けぬとも
秋の萩が咲いては散る野辺の夕べの露に濡れながら、いらっしゃい。
夜が更けつつあるという事は気にせず、おいでなさい。
19: 名無しさん@おーぷん 2017/02/28(火)20:05:51 ID:iFR
さを鹿の朝たつ野辺の秋はぎに玉と見るまでおける白露
朝、雄鹿が佇んている野に生えている秋の萩の上に、
珠玉と見えるまでに、降りている白露よ。
20: 名無しさん@おーぷん 2017/02/28(火)20:06:00 ID:iFR
うす霧の籬の花の朝じめり秋は夕べと誰かいひけん
朝、薄い霧がかかって、垣根の花がほんのりと湿っている。
このように趣深い様子を見ると、秋は夕べに限ると、いったい誰が言ったものなのだろうか。
21: 名無しさん@おーぷん 2017/02/28(火)20:06:11 ID:iFR
にほの海や月の光のうつろへば浪の花にも秋はみえけり
琵琶湖よ、月の光がゆらゆらと揺れているので、波が咲かせた花にも、秋の風情を感じ取れる事よ。
22: 名無しさん@おーぷん 2017/02/28(火)20:06:19 ID:iFR
秋されば雁の羽風に霜降りてさむき夜な夜な時雨さへふる
秋が来たので、雁が羽を羽ばたかせて起こす風に霜が降りて、寒い事だ。
おりしも夜、晩秋の雨さえも降る事だよ。
24: 名無しさん@おーぷん 2017/02/28(火)20:06:49 ID:iFR
草葉には玉と見えつつ侘び人の袖の涙の秋の白露
草の葉の上に降りたならば、珠玉と見える事だろう。
悲しみに沈む私の袖の上では、涙でしかない、秋の白露よ。
25: 名無しさん@おーぷん 2017/02/28(火)20:06:58 ID:iFR
故郷は散る紅葉ばにうづもれて軒のしのぶに秋風ぞ吹く
さびれた宿に散っているもみじの葉に埋もれている軒先のノキシノブに、秋の風が吹く事よ。
26: 名無しさん@おーぷん 2017/02/28(火)20:07:07 ID:iFR
神な月風に紅葉の散る時はそこはかとなく物ぞ悲しき
10月、もみじの葉が散る時は、何とはなしに、もの悲しい事だ。
27: 名無しさん@おーぷん 2017/02/28(火)20:07:16 ID:iFR
月を待つ高嶺の雲は晴れにけり心あるべき初時雨かな
月が昇るのを待っていると、高嶺にかかる雲が晴れてくれた。
何とまあ、情緒を解する心のある晩秋の雨である事か。
28: 名無しさん@おーぷん 2017/02/28(火)20:07:25 ID:iFR
秋の色を払ひはててや久かたの月の桂に木枯の風
地上の紅葉をすっかり払い落として、
今度は大空の月に生えるという桂の木に吹き付けているのだろうか、
木枯らしは。
29: 名無しさん@おーぷん 2017/02/28(火)20:07:34 ID:iFR
霜枯はそことも見えぬ草の原誰に問はまし秋のなごりを
草原には、霜にあたって、枯れた草の跡が見えませんわ。
どなたにお尋ねしたものかしら、秋の名残を。
30: 名無しさん@おーぷん 2017/02/28(火)20:07:44 ID:iFR
野辺見れば尾花がもとの思ひ草枯れゆく冬になりぞしにける
野を見ますと、ススキの根元に生える、ナンバンギセルが枯れてゆく冬になった事ですわ。
31: 名無しさん@おーぷん 2017/02/28(火)20:07:54 ID:iFR
志賀の浦や遠ざかりゆく浪間より氷りて出づる有明の月
滋賀の浦よ、遠ざかってゆくとはいえ、はっきりと見える事よ。
波が凍り、その合間から姿を現してきた明け方の月が。
32: 名無しさん@おーぷん 2017/02/28(火)20:08:04 ID:iFR
この頃は花も紅葉も枝になししばしな消えそ松の白雪
この季節は、枝には花も咲かなければ、趣深い紅葉もない。
どうか、暫しの間、消えないでおくれ、花紅葉の如き松にかかる白い雪よ。
33: 名無しさん@おーぷん 2017/02/28(火)20:08:13 ID:iFR
君が代にあへるは誰もうれしきを花は色にも出でにけるかな
陛下の素晴らしい御代に居合わせたことが皆嬉しいので、
桜の花の色にも、その喜びがにじみ出ている事です。
34: 名無しさん@おーぷん 2017/02/28(火)20:08:24 ID:iFR
あはれなり我が身のはてや浅緑つひには野辺の霞と思へば
悲しい事ですわ。我が命もいつか尽きて、薄緑の野原の霞となってしまうのだと思いますと。
35: 名無しさん@おーぷん 2017/02/28(火)20:08:33 ID:iFR
みな人の知り顔にして知らぬかな必ず死ぬるならひありとは
人は皆、知った風なつもりでいるが、誰も知らないのだ。
誰もが必ず死ぬ宿命であるという事は。
36: 名無しさん@おーぷん 2017/02/28(火)20:08:41 ID:iFR
わが恋も今は色にや出でなまし軒のしのぶももみぢしにけり
我が恋も、とうとう色に出てしまったようだね。
ノキシノブさえも、紅葉しているのだからね。
37: 名無しさん@おーぷん 2017/02/28(火)20:08:50 ID:iFR
阿耨多羅三藐三菩提の仏たち我が立つ杣に冥加あらせたまへ
無数の仏たちよ、出家いたしました私にご加護をお与えください。
39: 名無しさん@おーぷん 2017/02/28(火)20:08:58 ID:iFR
ご覧になって下さってありがとう
〆は式子内親王ちゃんやで~
静かなる暁ごとに見わたせばまだ深き夜の夢ぞ悲しき
毎日の朝の勤行を終えて、
静かな暁に世を見渡してみたらば、
人々は深い迷いの夢からいまだ覚めずにいる。
悲しい事ですわ。