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    37

    十三年後のクレヨンしんちゃん『僕の名前はシロ』

    siro


    1: ◆TmK8dn3Gxg 2006/04/07(金) 01:41:45.75 ID:60VRmiQN0
    僕はシロ、しんちゃんのともだち。十三年前に拾われた、一匹の犬。
    まっ白な僕は、ふわふわのわたあめみたいだと言われて。
    おいしそうだから、抱きしめられた。

    あの日から、ずっといっしょ。






    5: ◆TmK8dn3Gxg 2006/04/07(金) 01:43:23.40 ID:60VRmiQN0
    「行ってきマスの寿司~~~~~~。」
    あいかわらずの言葉といっしょに、しんちゃんは家から飛び出していった。
    まっ黒な上着をつかんだまま、口に食パンをおしこんでいるところを見ると、
    今日もちこくなんだろう。
    どんなに大きな体になっても、声が低くなっても、朝に弱いのは昔から。
    特に今年は、しんちゃんのお母さんいわく『ジュケンセイ』というやつだから、
    さらにいそがしくなったらしい。
    たしかに、ここのところのしんちゃんは、あんまり僕にかまってくれなくなった。
    しかたのないことだとしても、なんだかちょっと、うん。
    さみしいかもしれない。

    6: ◆TmK8dn3Gxg 2006/04/07(金) 01:43:42.54 ID:60VRmiQN0
    せめてこっちを見てくれないかな、と言う気持ちと、がんばれという気持ち。
    その二つがまぜこぜになって、とにかく少しでも何かしたくなって。
    小さくほえてみようとしたけれど、出来なかった。
    なんだかとても眠たい。
    ちかごろ多くなったこの不思議な感覚、ゆっくりと力が抜けていくような。
    あくびの出ないまどろみ。
    閉じていく瞳の端っこに、しんちゃんの黄色いスニーカーが映って。

    ああ今日もおはようを言い損ねたと、どこかで後悔した。

    7: ◆TmK8dn3Gxg 2006/04/07(金) 01:44:22.87 ID:60VRmiQN0
    ぴたぴたとおでこを触られる感覚に、急に目が覚める。
    いっぱいに浮かんだ顔に、おもわず引きぎみになった。
    ひまわりちゃんだ。
    「シロー。朝ご飯だよ。」
    そう言いながらこちらをのぞき込んでくる顔は、しんちゃんに似ていて。
    やっぱり兄妹なんだな、と思う。
    「ほら、ご飯。」
    ひまわりちゃんは、片手で僕のおでこをなでながら、もう片方の手でおわんを振ってみせる。
    山盛りのドッグフード。まん丸な目のひまわりちゃん。
    あんまり興味のない僕のごはん。困った顔のひまわりちゃん。
    僕は、それをかわるがわる見ながら、迷ってしまう。

    お腹は減っていない。
    でも食べなければひまわりちゃんは、もっと困った顔をするだろう。
    でも、お腹は減っていない。

    8: ◆TmK8dn3Gxg 2006/04/07(金) 01:44:48.83 ID:60VRmiQN0
    ひまわりちゃんは、悲しそうな顔になって、僕の目の前にごはんを置いた。
    そして、両手でわしわしと僕の顔をかきまわす。ちょっと苦しい。
    「お腹減ったら、食べればいいよ。」
    おしまいにむぎゅうっと抱きしめられてから、そう言われた。
    ひまわりちゃんは立ち上がると、段々になったスカートをくるりと回して、
    そばにあったカバンを持つ。
    学校に行くんだ。
    いってらっしゃいと言おうとしたけれど、やっぱり言う気になれなくて。
    僕はぺたんとねころんだ。
    へいの向こうにひまわりちゃんが消えていく。
    顔の前に置かれたおちゃわんを、僕は鼻先ではじに寄せた。

    お腹は、ぜんぜん空いていない。

    10: ◆TmK8dn3Gxg 2006/04/07(金) 01:45:32.66 ID:60VRmiQN0
    ごはんを欲しいと思わなくなった。
    おさんぽにも、あんまり興味はなくなった。
    でも、なでてもらうのは、まだ好き。
    抱きしめられるのも、好き。

    『ジュケンセイ』っていうのが終わったら、しんちゃんは。
    また僕をいっぱい、なでてくれるのかな。抱きしめてくれるのかな。
    そうだといいんだけど。

    12: ◆TmK8dn3Gxg 2006/04/07(金) 01:45:48.60 ID:60VRmiQN0
    目を開くと、もう辺りはうすむらさき色になっていて。
    また、まばたきしているうちに一日が過ぎちゃったんだと思う。
    ここのところ、ずっとそうだ。何だかもったいない。
    辺りを見回して、鼻をひくひくさせる。しんちゃんの匂いはしない。

    まだ、帰ってきてないんだ。

    さっき寄せたはずのおちゃわんのごはんが、新しくなっている。お水も入れ替えられている。
    のろのろと体を起こして、お水をなめた。冷たい。
    この調子なら、ごはんも食べられるかと思って少しかじったけれど、ダメだった。
    口に中に広がるおにくの味がキモチワルイ。思わず吐き出して、もう一度ねころがる。
    夢のなかは、とてもしあわせな世界だった気がする。
    僕はまた夢を見る。

    しんちゃんと最後に話したのは、いつだっただろう。

    14: ◆TmK8dn3Gxg 2006/04/07(金) 01:46:14.94 ID:60VRmiQN0
    僕はしんちゃんを追いかけている。
    しんちゃんはいつものあかいシャツときいろいズボン。小さな手は僕と同じくらい。

    シロ、おて
    シロ、おまわり
    シロ、わたあめ

    『ねえしんちゃん。僕はしんちゃんが大好きだよ。』
    『オラも、シロのこと、だいすきだぞ。シロはオラの、しんゆうだぞ!』

    わたあめでいっぱいのせかいはいつもふわふわでいつもあったかで
    いつまでもおいかけっこができる

    いつまでも

    15: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2006/04/07(金) 01:46:49.98 ID:q4SEiyGF0
    シロ視点か。斬新だな

    16: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2006/04/07(金) 01:47:01.77 ID:ihxwusgI0
    。・゚・(ノД`)・゚・。

    18: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2006/04/07(金) 01:47:51.81 ID:VZ3kQA440
    これは、、、これはッ!!!

    20: 第二話(1/6) ◆TmK8dn3Gxg 2006/04/07(金) 01:48:48.90 ID:60VRmiQN0
    また朝がきた。
    でも、その日はいつもと違っていて。しんちゃんのお母さんが、僕を車に乗せてくれた。
    しんちゃんのお母さんの顔は、気のせいか苦しそうだった。

    車はまっ白なお家の前で止まって、僕は抱きしめられたまま下ろされる。
    そして一回り大きなふくろの中につめられた。まっくらだ。どうしようか。
    昔なら、びっくりしてあばれてしまったかもしれない。でも今は、そんな力も出ない。
    とりあえず丸くなると、体がゆらゆらとゆれた。
    それがしばらく続き、次にゆれが収まって、足もとがひんやりとしてくる。

    21: 第二話(2/6) ◆TmK8dn3Gxg 2006/04/07(金) 01:49:20.46 ID:60VRmiQN0
    いきなり辺りがまぶしくなった。
    目をぱしぱしさせていると、変なツンとした匂いがする手につかまれ、持ち上げられる。
    いっしゅんだけ体が宙に浮いて、すぐに冷たい台の上に下ろされた。
    まっ白い服を着た人が、目の前に立っている。そばには、しんちゃんのお母さん。
    二人が何かを話している。白い人が、僕の体をべたべた触る。
    しんちゃんのお母さんが、泣いている。

    22: 第二話(3/6) ◆TmK8dn3Gxg 2006/04/07(金) 01:49:54.03 ID:60VRmiQN0
    どうして泣いているのか解らないけれど、なぐさめなくちゃ。
    でも、体が動かない。またあの眠気がおそってくる。起きていなきゃいけないのに。
    なんとか目を開けようとしたけれど、ひどく疲れていて。
    閉じていく瞳を冷たい台に向ければ、そこに映るのはうすよごれた毛のかたまり。

    なんて、みすぼらしくなってしまったんだろう。

    23: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2006/04/07(金) 01:50:13.59 ID:ihxwusgI0
    やめろおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお

    24: 第二話(4/6) ◆TmK8dn3Gxg 2006/04/07(金) 01:50:16.79 ID:60VRmiQN0
    ああそうか、僕がこんなになってしまったからなんだ。だからなんだ。
    だからしんちゃんは、僕に見向きもしないんだ。
    おいしそうじゃないから。
    あまそうじゃないから。

    僕はもう、わたあめにはなれない。

    26: 第二話(5/6) ◆TmK8dn3Gxg 2006/04/07(金) 01:50:52.84 ID:60VRmiQN0
    わたあめ。
    ふわふわであまあまの、くものかたまり。

    いちど地面に落ちたおかしは、もう食べられないから。
    どんなにぽんぽんはたいても、やっぱりおいしそうには見えないよね。

    だけど、君はいちど拾っててくれた。
    だれかが落として、もういらないって言ったわたあめを。
    だから、もういいんだ。

    28: 第二話(6/6) ◆TmK8dn3Gxg 2006/04/07(金) 01:51:12.89 ID:60VRmiQN0
    何かにびっくりして、僕はまた戻ってきた。
    見なれた僕のお家。いつもの匂い。少しはだざむい、ゆうやけ空。
    口の中がしょっぱい。

    「なんで!!!!!!」

    いきなり、辺りに大声が響いた。びりびりとふるえてしまうような、いっぱいの声。
    重たい体をひきずって、回り込んで窓からお家の中をのぞきこむ。
    しんちゃんのお父さんとお母さん、ひまわりちゃん。
    そして、僕の大好きなしんちゃんも。
    みんなみんな、泣いていた。

    32: 第三話(1/4) ◆TmK8dn3Gxg 2006/04/07(金) 01:54:02.21 ID:60VRmiQN0
    「母ちゃんの行った病院は、ヤブだったに決まってる!! オラが、他の病院に連れてくぞ!!!」
    しんちゃんが、ナミダをぼろぼろこぼしながら、怒っている。
    ひまわりちゃんも、うつむいたまま顔を上げようとしない。
    「しんのすけ、落ち着け。仕方ないんだ。」
    しんちゃんのお父さんが、ビールの入ったコップをにぎりしめたまま呟いている。
    「仕方ないって、父ちゃんは…ホントにそれでいいの!!!???」
    「良いわけないだろ!!!!!」
    しんちゃん以上のその大きな声に、だれもなにも言わなくなった。
    その静かな中に、しんちゃんのお父さんの低い声が、ゆっくりひびく。

    33: 第三話(1/4) ◆TmK8dn3Gxg 2006/04/07(金) 01:54:26.96 ID:60VRmiQN0
    「しんのすけ、良く聞け。いいか、生き物は何時かは死ぬんだ。
     それは、俺たちも同じだ。……もちろん、ひまやお前の母さんもそうだ。
     それが今。その時が、いま、来ただけなんだよ。解ってたことだろう?」
    しんちゃんは、なにも言わない。しんちゃんのお母さんも、続ける。
    「あのね、ママが最初ペットを飼うのに反対したのはね、そう言う意味もあるの。
     しんちゃんに辛い思いをさせたくなかったから…ううん。
     私自身が、そんな辛いお別れをしたくなかったから。だから、反対してたの。
     でも、もうこうなっちゃった以上、仕方ないでしょう?
     せめて、最期を看取ってあげることが、私たちに出来る一番良い事じゃないの?」
    「最期って!!!」
    しんちゃんが泣いている。ぼろぼろ泣いている。手をぎゅっとにぎりしめて。
    僕よりもずっと大きくなってしまった手を、ぎゅっとかたく。

    34: 第三話(3/4) ◆TmK8dn3Gxg 2006/04/07(金) 01:55:04.41 ID:60VRmiQN0
    僕の体のことは、たぶんだれよりも僕自身が一番知っていて。
    でも、いいと思っていた。
    このままでもいいって。
    だって夢の中はあんなにもあったかくてあまくって。

    だからずっとあそこにいても、かまわないと思ってたんだ。
    それじゃだめなの?

    36: 第三話(4/4) ◆TmK8dn3Gxg 2006/04/07(金) 01:56:13.74 ID:60VRmiQN0
    しんちゃんがこっちを見た。
    しばらく目をきょろきょろさせたあと、僕を見付けて、顔をくしゃくしゃにさせる。
    「シロ。」
    名前を呼ばれた。本当に、ひさしぶりに。

    わん。

    なんとか声が出た。本当に小さくて、ガラスごしじゃあ聞こえないかと思ったけれど。
    でも、たしかにしんちゃんには届いた。
    しんちゃんが近付いてくる。窓を開けて、僕に手をのばして。
    「大丈夫、オラが、何とかしてやるぞ。」

    やっと抱きしめてくれたしんちゃんの胸は、いっぱいどくどく言っていて、
    夢の中の何十倍も、とってもあったかかった。
    ねえ、よごれたわたあめでも。

    38: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2006/04/07(金) 01:57:20.90 ID:0mPpFpCC0
    ヤバイ、涙出てきた。
    もっとお願いします。

    39: 第四話(1/6) ◆TmK8dn3Gxg 2006/04/07(金) 01:58:12.06 ID:60VRmiQN0
    僕は夢を見る。
    何度目になるかはわからない夢。でも、それは今までとはちがう夢。

    40: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2006/04/07(金) 01:58:25.06 ID:hy1U4LRA0
    よかった。しんちゃんが自閉症とかじゃなくて

    41: 第四話(1/6) ◆TmK8dn3Gxg 2006/04/07(金) 01:58:27.31 ID:60VRmiQN0
    僕は段ボール箱に入っていて、そのはじをしんちゃんがヒモで三輪車に結びつけている。
    三輪車がいきおいよく走る。
    箱ががたがたゆれて、ちょっときもちが悪い。
    ふいに、その箱から引っぱり出され、僕は自転車のかごに乗せられた。
    小さな自転車。運転しているのはしんちゃん。せなかにはまっ黒なランドセル。
    シロに一番に見せてやるぞって、嬉しそうにしょって見せてくれたランドセル。
    まだまだ運転は下手だったけど、とってもあたたかかった、春。

    42: 第四話(3/6) ◆TmK8dn3Gxg 2006/04/07(金) 01:59:03.35 ID:60VRmiQN0
    自転車のかごが一回り大きくなる。
    くるりとまわると、しんちゃんが今度は、まっ白なシャツを着ていた。
    自転車も、新しくなっている。もうよたよたしていない。スピードも、速い。
    そういえば、よくお母さんに怒られたとき、
    ナイショだぞって僕を、こっそりフトンの中に入れてくれたよね。
    もちろん次の日には、お母さんに怒られるんだけど、それでもやめなかった。
    二人だけのヒミツがあった、きらきらしてまぶしい、夏。

    43: 第四話(4/6) ◆TmK8dn3Gxg 2006/04/07(金) 01:59:41.64 ID:60VRmiQN0
    ぼんやりしていたら、ひょいっとかごから下ろされた。
    代わりに自転車を押しているしんちゃんのとなりに並んで歩く。
    しんちゃんはずいぶん背が伸びて、お父さんと変わらないくらいになった。
    お母さんといっしょに使っている自転車が、ぎしぎしと音を立てる。
    でも、どんなに大きくなっても、きれいな女の人に目がいくのは変わらない。
    こまったくせだなあと思いながらも、どこか安心してる僕がいる。
    いつまでも変わらないでいて欲しかった、少しだけ乾いた風が吹く、秋。

    44: 第四話(5/6) ◆TmK8dn3Gxg 2006/04/07(金) 02:00:07.68 ID:60VRmiQN0
    寒い冬。
    あんまり話してくれなくなった。
    おさんぽも、少なくなって。こっちを見てくれることも少なくなった。
    見えるのは横顔だけ。
    楽しそうな、悲しそうな。ぼんやりした、困った。怒っているような、悩んでいるような。

    そんな、横顔だけ。

    寒い冬。小屋の中で、ひとりで丸くなっていた、冬。

    45: 第四話(6/6) ◆TmK8dn3Gxg 2006/04/07(金) 02:00:29.17 ID:60VRmiQN0
    寒かった冬。でも、冬は春への始まり。あたたかな春への始まり。
    僕は丸まって、わたあめのようになって、あったかいうでの中で。
    春の始まりをまっている。

    たとえそれがほんのいっしゅんのものでも。

    46: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2006/04/07(金) 02:01:09.46 ID:kiGcI9gv0
    ああ…

    48: 第五話(1/6) ◆TmK8dn3Gxg 2006/04/07(金) 02:02:11.66 ID:60VRmiQN0
    かしゃん、という、なにかがたおれる音がして、僕は目を開けた。
    電灯がぽつりぽつりとついた、暗い道の真ん中で、見なれた自転車が横になっている。
    のろのろと首を上げると、しんちゃんの前髪が顔に当たった。
    道のはじっこのカベに、もたれかかるようにしてしゃがみ込むしんちゃん。
    その体はひっきりなしにふるえていて、とても寒そうだった。
    僕を抱きしめたまま、動こうとしないしんちゃん。
    しんちゃんに抱きしめられたまま、動くことができない僕。

    ああだれか僕の代わりに、しんちゃんを抱きしめてあげて。

    49: 第五話(2/6) ◆TmK8dn3Gxg 2006/04/07(金) 02:02:35.86 ID:60VRmiQN0
    「ごめんな、ごめんなシロ。オラ、何にも出来なかった。」
    ぽつりぽつりと、しんちゃんが話しかけてくれる。
    「いっぱい病院回ったんだ、でも、どこも空いて無くて。
     空いてるトコもあったんだけど、大抵シロを一目見ただけで…何も。
     あいつらきっとお馬鹿なんだぞ。お馬鹿だから、何にも出来ないんだ。」
    しんちゃん、泣いてるの? ねえ、泣かないで。
    「でも、ホントにお馬鹿なのは……オラだ。」
    しんちゃんなかないで。
    「オラっ……シロがこんなになってるの、気付かなくて…!!
     ずっと、一緒にいたのに…親友だって……思ってたのに、なのに!!!」
    なかないで、もういいから。
    「シロっ…………。」

    50: 第五話(3/6) ◆TmK8dn3Gxg 2006/04/07(金) 02:03:01.37 ID:60VRmiQN0
    しんちゃんが泣いている。僕はなにもできない。
    せめて元気なところを見せようと思って、僕はしんちゃんのほっぺたをなめた。
    しんちゃんのほっぺたは、少しだけ早い春の味。

    51: 第五話(4/6) ◆TmK8dn3Gxg 2006/04/07(金) 02:03:28.44 ID:60VRmiQN0
    僕がメスだったら、しんちゃんのために子供を作っただろう。
    僕が居なくなっても、寂しくないように。
    僕がわたあめだったら、しんちゃんのためにせいいっぱい甘くなっただろう。
    僕が食べられても、甘さが少しでも長く口にのこるように。
    僕が人間の手を持っていたら、しんちゃんを抱きしめただろう。
    僕がしんちゃんにもらった、温もりを返すために。
    僕が人間の言葉をしゃべれたら。

    きっと、いっぱいいっぱいのありがとうとだいすきを、君に。

    52: 第五話(5/6) ◆TmK8dn3Gxg 2006/04/07(金) 02:03:57.22 ID:60VRmiQN0
    ひっきりなしにこぼれるナミダをなめながら、僕はあることに気が付いた。
    僕はここを、今しんちゃんがすわりこんでいるここを、知っている。
    ここは、僕と君が初めて会ったところ。
    僕と君との、始まりの場所。

    54: 第五話(6/6) ◆TmK8dn3Gxg 2006/04/07(金) 02:04:19.48 ID:60VRmiQN0
    僕は待っていた。
    あきらめながらも、いつか。
    いつか、おっこちたわたあめでも。
    おいしいそうだって言ってくれる人が。
    ひろいあげて、ぱんぱんってして。
    まだ食べられるぞって、言ってくれる人が、来てくれるって。

    59: 最終話(1/3) ◆TmK8dn3Gxg 2006/04/07(金) 02:05:47.18 ID:60VRmiQN0
    「シロ。」
    名前をよばれて、僕は顔を上げる。しんちゃんが、笑っていた。
    まだまだナミダでいっぱいの顔で、それでも笑っていた。
    「シロ、くすぐったいぞ。
     そんなにオラの涙ばっか舐めてたら、しょっぱい綿飴になるぞ。
     しょっぱいシロなんて、美味しそうじゃないから。
     だからシロ、オラ、待ってるから。
     今度はオラが待ってるから。」

    しんちゃん。

    「だから、もう一度、美味しそうな綿飴になって。
     そんでもって、戻ってくるんだぞ。」

    だいすき。

    61: 最終話(2/3) ◆TmK8dn3Gxg 2006/04/07(金) 02:06:26.84 ID:60VRmiQN0
    ぼくはしんちゃんに抱きしめられながら、さいごの夢を見る。
    もういちど、わたあめになる夢を。
    もういちど、おさとうになって、とかされて。
    くるくるまわって、あまい、あまいわたあめになる。

    目ざめたときに、だれよりも、
    君がおいしそうだって言ってくれるわたあめになるために。

    ふわふわのわたあめ。さくらいろの、あったかなわたあめ。
    君が大好きだっていうキモチをこめた、君だけのわたあめ。

    62: 最終話(3/3) ◆TmK8dn3Gxg 2006/04/07(金) 02:06:58.49 ID:60VRmiQN0
    僕はシロ、しんちゃんのしんゆう。十三年前に拾われた、一匹の犬。
    まっ白な僕は、ふわふわのわたあめみたいだと言われて。
    おいしそうだから、抱きしめられた。

    僕はシロ、しんちゃんのしんゆう。
    今度はさくらいろの、ふわふわのわたあめになって。
    君に、会いに行くよ。

    63: ◆TmK8dn3Gxg 2006/04/07(金) 02:08:18.05 ID:60VRmiQN0
    勢いで此処まで書かせていただきました。
    至らない点も多かったと思いますが、ありがとうございました。

    67: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2006/04/07(金) 02:09:06.73 ID:v4jxAJCh0
    >>63
    すごい良かった。
    久しぶりに泣かせてもらったよGJ

    65: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2006/04/07(金) 02:08:38.74 ID:0mPpFpCC0
    >>1
    最高b

    66: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2006/04/07(金) 02:08:50.22 ID:HRfbLpOe0
    。・゚・(ノД`)・゚・。ブラボー

    76: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2006/04/07(金) 02:17:37.68 ID:pIlO2wTV0
    泣いた(´;ω;)

    84: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2006/04/07(金) 02:25:51.95 ID:5QOfOS/s0
    まじ泣いた。
    すげぇいいはなしをありがとう

    89: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2006/04/07(金) 02:29:25.35 ID:HQJWuGHAO
       感 動 し た !
    横向きで泣いてたら髪がびしょびしょだ

    93: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2006/04/07(金) 02:35:28.87 ID:6yV3KGNr0
    凄い心が
    あ っ た か く な っ た


    ありがとう!

    120: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2006/04/07(金) 03:07:43.70 ID:tidnPOwfO
    >>1
    良い話をありがとう。

    216: ねぎ ◆Rzw0sdTnPw 2006/04/07(金) 11:11:53.14 ID:GMVV1ECV0
    ◆TmK8dn3Gxg 先生の短編が読めるのはこのスレだけ!
    泣いた。
    しんのすけのいない夏
    http://world-fusigi.net/archives/8846906.html











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    1  不思議な名無しさん :2017年05月24日 23:08 ID:qc.Mm2WH0*
    一行目で死ぬとわかったから読んでない
    2  不思議な名無しさん :2017年05月24日 23:09 ID:KqDVYV3r0*
    今更
    3  不思議な名無しさん :2017年05月24日 23:11 ID:hrzHMG7u0*
    読んでないアピールすごーい!
    4  不思議な名無しさん :2017年05月24日 23:32 ID:kY.hyQpB0*
    不思議でもなんでもない
    5  不思議な名無しさん :2017年05月24日 23:33 ID:fydKfME60*
    なんで生き物っていつかは死なないとならないんだろ…
    6  不思議な名無しさん :2017年05月24日 23:35 ID:pUyZ.z.F0*
    長くて読んでないけど、シロかわいそう
    7  不思議な名無しさん :2017年05月24日 23:37 ID:ysBJid5b0*
    シロは野原家の一員だからね。
    それだけにこの手のスピンオフはちょっといただけない・・・。
    8  不思議な名無しさん :2017年05月24日 23:50 ID:G.YpAt1o0*
    シロ…こういうの弱いんだよやめてくれ…
    9  不思議な名無しさん :2017年05月24日 23:55 ID:Svg3TQHY0*
    泣けた(T_T)
    10  不思議な名無しさん :2017年05月25日 00:13 ID:9TKk.P..0*
    最近家の犬がしんだばっかりなのに読んでしまった
    映画やら小説やら、面白おかしい犬の話って少ないんだよな
    分かってるけど必ずしぬから辛い
    11  不思議な名無しさん :2017年05月25日 00:33 ID:i88c96Oh0*
    ながい
    12  不思議な名無しさん :2017年05月25日 00:41 ID:2NIpfD9R0*
    つい読んでしまったが…犬ネタはマジ駄目だ

    オレの部屋で毎日柴男も一緒に寝起きしているし
    いま隣でスヤスヤ寝ているわ
    13  不思議な名無しさん :2017年05月25日 00:46 ID:kbI.Y5Xh0*
    13年なら死んでるだろ、って思ったら本当に死ぬ話だったか。
    ペットの時間は速いからな。
    14  不思議な名無しさん :2017年05月25日 01:02 ID:H4QtPOA90*
    次は父ちゃんか母さん
    15  不思議な名無しさん :2017年05月25日 01:08 ID:Us.O0qv10*
    これ何年か前おーぷんで読んだわ
    この人他にものび太が成長したときのとか書いてて上手いんだよな
    16  不思議な名無しさん :2017年05月25日 01:28 ID:H6O8nlee0*
    まとめサイトが出始めた頃に一度読んだけど、初出は06年だったのか……
    ドラえもんの最終話を描いた同人誌が売れすぎた問題より前だったと思ったけど勘違いだったのか?
    17  不思議な名無しさん :2017年05月25日 01:45 ID:Xftkn2Rg0*
    どっちにしろ創作だから、勝手な妄想止まりなんだよな。
    18  不思議な名無しさん :2017年05月25日 03:12 ID:VK0Iyk.Q0*
    シロがワンって言った瞬間読むのやめた
    19  不思議な名無しさん :2017年05月25日 04:45 ID:Kx..ldlL0*
    13年後って事はしんのすけも高3だろうに、この口調や精神年齢の低さは…
    二次創作であまりキャラを変えるのは躊躇われるという気持ちも分かるけど
    この内容ならしんのすけも年相応に成長していた方が、よりしんみり感が増したんじゃなかろうか
    20  不思議な名無しさん :2017年05月25日 05:57 ID:RcyA3Ldx0*
    うんちぶりぶり
    21  不思議な名無しさん :2017年05月25日 06:14 ID:9A7Ww.nz0*
    これの初見はFlashだったな
    懐かしいわ
    22  不思議な名無しさん :2017年05月25日 09:51 ID:fYfCgT9.0*
    エモキモス
    23  不思議な名無しさん :2017年05月25日 11:12 ID:08SIR0db0*
    これ感動すんだろ?てどや顔で書いてたんだろうな
    24  不思議な名無しさん :2017年05月25日 11:56 ID:9BT5Qya80*
    動物飼ってるからつらい
    でもあたたかくていい話だったGJ
    25  不思議な名無しさん :2017年05月25日 14:36 ID:jZIgW1oo0*
    しんのすけがいない夏よりは文章になってる
    26  不思議な名無しさん :2017年05月25日 16:18 ID:a3I1m2.X0*
    あのくらいの大きさの犬ならもう少し長生きしそう
    27  不思議な名無しさん :2017年05月25日 16:53 ID:AsExxxG20*
    前に読んで泣いたけど、
    今回もまた読んで泣いた。
    28  不思議な名無しさん :2017年05月25日 22:33 ID:NKuWxul40*
    なつかしー
    29  不思議な名無しさん :2017年05月25日 23:13 ID:54qvcbha0*
    こういうの真面目に、読んで泣いたとか言ってる奴は病気だぞ

    30  不思議な名無しさん :2017年05月26日 00:29 ID:PThe8Cbi0*
    病気で結構
    感受性のない奴に何言われようが構わない
    31  不思議な名無しさん :2017年05月26日 09:55 ID:0bt4Tnhd0*
    やめろォ!
    こういうのは内容が泣けるのとか以前に、難癖付けてドヤってる奴が痛々しくなるんだよォ!
    32  不思議な名無しさん :2017年05月26日 20:20 ID:t7Q.wM4B0*
    おー、久しぶりに読んだ
    懐かしい
    (なぜ今さら?)
    33  不思議な名無しさん :2017年05月27日 11:49 ID:INKyn6mh0*
    2006年にこれ読んだ時2歳だった愛犬が今12歳
    元気だけど茶色だった顔は真っ白
    重なってしまう
    34  不思議な名無しさん :2017年05月29日 22:32 ID:qLDTXy.p0*
    悲しい、泣ける←わかる
    別に何とも思わない、だから?←わかる
    ながい、作者のドヤ顔←は?

    お前がどう思ったかは勝手だが、それを悪口に繋げる思考が理解できない
    35  不思議な名無しさん :2017年06月05日 17:17 ID:YzrT30Ug0*
    絵本の「いつでも会える」っぽい
    36  不思議な名無しさん :2017年08月13日 19:14 ID:JxA1byXi0*
    先代の犬を思い出して思わずうるっときた
    37  不思議な名無しさん :2017年08月31日 15:40 ID:.Vx.VUkG0*
    めちゃくちゃなつかしい

     
     
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