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    ブーンは歩くようです2『世界の終わりと、それでも足掻いた人間たちの話』

    PLGyeTT50


    1: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 2007/11/19(月) 01:03:04.66 ID:SVQcM/WG0
    ( ^ω^)ブーンは歩くようです

    【第一部】『かつての世界と、文明の明日に心血を注いだ天才の話』
    http://world-fusigi.net/archives/8873972.html

    【第二部】『世界の終わりと、それでも足掻いた人間たちの話』
    http://world-fusigi.net/archives/8873974.html←今ここ

    【第三部】( ^ω^)ブーンは歩くようです3『世界の始まりと、孤独に耐えられなかった男女の話』
    http://world-fusigi.net/archives/8873975.html

    【第四部】奉られた遺物と、神殺しに挑んだ男の話
    http://world-fusigi.net/archives/8893058.html

    【第五部】ツンドラの道と、その先に夢を見た男の話
    http://world-fusigi.net/archives/8893104.html

    【最終部①】古に続く伝統と、それでも足を欲しがった女の話
    http://world-fusigi.net/archives/8893105.html

    【最終部②】古に続く伝統と、それでも足を欲しがった女の話
    http://world-fusigi.net/archives/8893116.html

    ( ^ω^)ブーンは歩くようです エピローグ
    http://world-fusigi.net/archives/8893106.html

    【連結部】歩き続けた男と、これからも歩く女の話
    http://world-fusigi.net/archives/8893108.html






    4: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 2007/11/19(月) 01:07:17.85 ID:tqZX90Um0
    なんと!

    2: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 2007/11/19(月) 01:04:30.41 ID:tZnXwI7D0
    >>1ありがとうございました

    5: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 2007/11/19(月) 01:08:34.90 ID:tZnXwI7D0
    第二部  世界の終わりと、それでも足掻いた人間たちの話


    ― 1 ―

    (# ゚ω゚)「いったいどういうことだお! この国の役人どもは何をやっているんだお!
         流出経路は判明しているのかお!? 流出先は某国で間違いないのかお!?」

    川;゚ -゚)「流出経路は依然調査中らしい。流出先は某国で間違いない。
         それどころかやっこさんたち、すでに稼動基地の開発にも着手しているようだ。
         行政、軍事関係者たちがすでにブリーフィングルームに集まっている」

    (# ゚ω゚)「プロジェクトメンバーも直ちに全員ブリーフィングルームに集合させるお!」

    川;゚ -゚)「りょ、了解した!」

    研究所内の通路で怒鳴り散らしながら、僕はクーと一時別れてブリーフィングルームへと直行した。

    広々とした室内には、軍部、行政部その他大勢の政府関係者がすでにスタンバイしており、
    まもなくクーに連れてこられたプロジェクトチームの全員を交え、早急に事態の説明が始められた。

    6: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 2007/11/19(月) 01:11:35.65 ID:tZnXwI7D0
    (;´∀`)「こ、このたびはまことに遺憾な事態が発生しましたモナ。
          我々行政部も細心の注意を払っていたのですが、
          情報の流出を食い止めることが出来ませんでしたモナ」

    (# ゚ω゚)「あんたらはいったい何をやっていたんだお! それがあんたらの仕事だろうがお!
         しかも、流出先はよりにもよって某国かお!? 愚かしいにもほどがあるお!」

    この事態が重度の危険性を帯びた理由として、流出先が某国であることが挙げられていた。
    某国は極東に存在していた独裁国家で、国際社会から大いに孤立していた社会主義国家のことだ。

    追い詰められている以上、何をしでかすか予想がつかない。
    最も危険な国のひとつに数えられる国家だった。

    (;´∀`)「じゅ、重々承知しております! 
          しかし、細心の注意を払っていながら食い止められなかったということは、
          これはもはや、行政外部から漏れたとしか考えられず……」

    (# ゚ω゚)「この件は極秘中の極秘事項だお! 
         知っていたのは一部の行政、軍部関係者と僕たちプロジェクトチームだけだお!
         まさかあんた、僕たちから情報が流出したとでも言いたいのかお!?」

    7: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 2007/11/19(月) 01:13:11.04 ID:tZnXwI7D0
    (;´∀`)「いえ、そんなことは……」

    僕たちプロジェクトチームは、前述したように外界から完全に隔絶されていた。
    通信、連絡、行動のすべてが監視体制の下に置かれており、情報の流出などできようも無かった。

    ( ・∀・)「すると、我々軍部の責任だと?」

    (;´∀`)「い、いえ、そういうことも……」

    軍部高官の低い威圧感のある声。
    行政部の役人が額の汗を何度もぬぐいながら、しどろもどろで立ちつくす。

    僕の怒り、そして軍部の横槍が彼に向けられ、室内は恐々とした雰囲気に包まれていた。

    そんな室内に、静かなあの声が響いた。

    8: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 2007/11/19(月) 01:15:43.55 ID:SVQcM/WG0
    たまたま読んだら面白い
    支援

    9: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 2007/11/19(月) 01:16:11.08 ID:tZnXwI7D0
    あまりにも正論で、非の打ち所の無いクーの意見。
    室内が一気に沈黙した。

    彼女の言うとおり、終わった不祥事の原因を突き止めるよりも先に、
    その後起こりうる最悪の事態を未然に防ぐ手立てを話し合うことのほうが間違いなく急務だった。

    素直に彼女を見直した。下がり続けていた彼女の評価が一気に上がった。
    やはりクーは信頼にたる人物だ。

    そう考えを改めた僕の視界の先で、
    小柄な行政部の役人を押し退けるように大柄な体躯の軍部高官が壇上へと上がった。

    ( ・∀・)「では、解決策の話し合いに移りましょう。
         こちらが、我々軍部の衛星カメラが捉えた映像です
         以前の某国には無かった建造物が、まるで隠匿するかのように郊外の奥地に建てられております。
         発見が遅れた理由もここにあります。某国も自国の存続のために必死だということでしょうか。
         それで、内藤博士。これはあなたの提唱した新エネルギーシステムの稼動基地と見て間違いありませんね?」

    (;^ω^)「……間違いないお」

    ( ・∀・)「それと、あなたの新エネルギーシステム理論が軍事に転用される危険性はありますか?」

    10: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 2007/11/19(月) 01:18:48.38 ID:tZnXwI7D0
    (;^ω^)「……十二分に有り得るお」

    軍事に転用される危険性。これが今回の事態における一番の懸念事項だった。

    莫大なエネルギーを生み出しうる僕の理論。
    もし軍事に転用されれば、核兵器以上に恐ろしいものとなる。

    エネルギーシステムに限らず、
    人類に有用な発明は人類に有害な兵器として転用される危険性を内包している。

    ダイナマイト然り、原子力然り。

    その例に漏れず、僕が提唱した新エネルギーシステム理論もまた、その危険性を悲しいほどに内包していた。
    これはこの類の発明のどうしようもない性なのだ。

    ( ・∀・)「それでは、別の質問です。あの基地が仮に誤作動を引き起こした場合、
          その被害はどの程度のものと考えられるのでしょうか?」

    (;^ω^)「その質問はナンセンスだお! 
         誤作動の可能性が無いからこそ、僕はこの理論を提唱したんだお!」

    ( ・∀・)「それは重々承知しております。あくまで仮に、の話ですよ」

    12: >>9 訂正 2007/11/19(月) 01:21:12.20 ID:tZnXwI7D0
    川 ゚ -゚)「今は流出先の特定などどうでもいいでしょう。
        それよりも、今後、この事態をどうやって収拾するのかを話し合うべきだ」

    あまりにも正論で、非の打ち所の無いクーの意見。
    室内が一気に沈黙した。

    彼女の言うとおり、終わった不祥事の原因を突き止めるよりも先に、
    その後起こりうる最悪の事態を未然に防ぐ手立てを話し合うことのほうが間違いなく急務だった。

    素直に彼女を見直した。下がり続けていた彼女の評価が一気に上がった。
    やはりクーは信頼にたる人物だ。

    そう考えを改めた僕の視界の先で、
    小柄な行政部の役人を押し退けるように大柄な体躯の軍部高官が壇上へと上がった。

    ( ・∀・)「では、解決策の話し合いに移りましょう。
         こちらが、我々軍部の衛星カメラが捉えた映像です
         以前の某国には無かった建造物が、まるで隠匿するかのように郊外の奥地に建てられております。
         発見が遅れた理由もここにあります。某国も自国の存続のために必死だということでしょうか。
         それで、内藤博士。これはあなたの提唱した新エネルギーシステムの稼動基地と見て間違いありませんね?」

    (;^ω^)「……間違いないお」

    ( ・∀・)「それと、あなたの新エネルギーシステム理論が軍事に転用される危険性はありますか?」


    13: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 2007/11/19(月) 01:23:07.42 ID:tZnXwI7D0
    (;^ω^)「……」

    そうたずねて、ニヤリといやらしい笑みを浮かべた軍部高官。

    彼の笑みに嫌な予感が脳裏をよぎったが、
    確固たる拒否理由が無い以上、僕は答えないわけにはいかなかった。

    (;^ω^)「……大都市の二、三個は軽く消滅してしまう規模だお」

    ( ・∀・)「ほう? その程度の被害で済むのですね?」

    (; ゚ω゚)「その程度? 核兵器の数倍の規模だお!? あんたいったい何を考えているんだお!?」

    ( ・∀・)「なーに、簡単なことです。汚点は消してしまえばいいのですよ」

    14: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 2007/11/19(月) 01:25:30.91 ID:oCrmnF4RO
    支援

    15: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 2007/11/19(月) 01:25:37.55 ID:tZnXwI7D0
    (; ゚ω゚)「!!」

    予感という、非論理的な感覚が現実化してしまった。

    慌てて周囲を見渡してみたが、僕らプロジェクトチーム以外の行政、軍部関係者は、
    さも当然といった顔でその場に鎮座していた。

    おそらく、話はすでに決まっていたのだろう。
    このブリーフィングはあくまで形式上のものに過ぎなかったのだ。

    ( ・∀・)「もはやこれ以外の手立ては無い。これは我々が提唱する世界平和を脅かす事態なのです」

    (;´∀`)「わ、我々行政部も全力を持って外交等の対処に当たりますモナ! 事態は必ず収拾させますモナ!」

    ( ・∀・)「では、話し合いは以上で。内藤博士、何かご意見はございますか?」

    (  ω )「……そんな馬鹿な真似は止めるんだお」

    ( ・∀・)「ほう? それでは、何か代案があるとでもおっしゃるのですか?」

    16: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 2007/11/19(月) 01:27:47.10 ID:tZnXwI7D0
    (  ω )「それは……」

    ( ・∀・)「無いのですね? 天才でも考え付かないのであれば、これ以外の方法が有ろうはずが無い。
          この方法こそが最良なものであると、あなたは認めてくださったのですね? では、解散」

    (  ω )「……」

    軍部高官の皮肉を前に、僕は何も言えなかった。
    人類の未来のために苦労して作り上げたシステムが、こともあろうか間逆の事態を引き起こしたのだ。

    こんなときに何も言えなくて何が天才だ。そんな天才に、存在価値など微塵もない。
    なにより、動機はどうあれ現在の危機の根底を築いたのはこの僕だ。そしてこの国だ。

    ブリーフィングルームから次々と退出していく関係者たち。
    遠のいていく彼らの足音を耳にしながら、僕は負け犬の遠吠えとでも言うべき言葉をつぶやいていた。

    (  ω )「世界の危機を自分たちで作り出しておきながら、矛盾する理論でそれを解決しようとする。
          僕たちはいったい、何をやっているんだお……」

    17: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 2007/11/19(月) 01:29:32.14 ID:tZnXwI7D0
    プルプルと震えていた僕の肩。
    うつむいた顔を上げてしまえば悔しさに涙がこぼれ落ちそうで、それは叶わなかった。

    やがて誰もいなくなったのであろう、気味が悪いほどにしんと静まり返った室内。
    滲む視界が乾いたのを確認した僕は、ゆっくりと重い頭を上げた。

    目の前に一人だけ、部屋の真ん中で立ち尽くしている人物がいた。

    川 ゚ー゚)「研究者としての性なのか、はたまた天才としての性なのか。
         最悪の状況とはいえ、私たちの作り上げた理論が現実のものとなっているのを前にして
         嬉しいと感じてしまう自分がいるのが、私には憎らしくてしょうがないよ」

    川 ゚ー゚)「君も……そう思わないか?」

    依然としてスクリーンに投影されていた件の映像を見て、クーがぽつりとつぶやいた。

    その直後僕の方を振り返った彼女の顔は、泣き笑いのようなゆがんだ表情を浮かべていて、
    僕にはそれが悲しくもあり、なぜか美しくも感じられた。

    19: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 2007/11/19(月) 01:31:44.25 ID:tZnXwI7D0
    ― 2 ―

    それから一ヶ月も経たず、世界情勢は急転した。

    世界一の大国であった僕の国が、
    お得意の有りもしない大量破壊兵器の保有を理由として某国に宣戦を布告したのだ。

    自らの蒔いた危機という種を誰にも悟られずに回収するためには、どんなことでもやってのける。
    世界平和を謳う世界一の大国は、そんな国だった。

    そんな状況下でも、研究所に隔離されていた僕に出来る事は何もなかった。
    指をくわえながら、知らぬ間に流れていく世界情勢をただ眺める事しか出来ない。
    その根本を作り出した責任を肩に重く感じながら。

    もう、何かを考えることさえ億劫になっていた。
    それでも考えずにはいられなかったのは、天才としての悲しい性なのだろう。

    そんな日々の中で僕は、とんでもないことに気づいてしまう。

    20: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 2007/11/19(月) 01:33:53.24 ID:tZnXwI7D0
    (;^ω^)「……そんなはずはないお」

    川 ゚ -゚)「いや。そうとも言えんな」

    思わず漏らした声。いつの間にか背後に立っていたクー。
    驚いて振り返った僕を冷めた目で眺めた彼女は、言ってはならない一言を僕に放った。

    川 ゚ -゚)「某国に情報を流したのは、ツンだ」

    21: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 2007/11/19(月) 01:34:54.53 ID:tZnXwI7D0
    (; ゚ω゚)「ち、違うお!!」

    無意識に手が出ていた。

    ゴッと、骨と骨がぶつかり合う音がして。
    拳に走った鈍い痛みに顔をしかめて。

    痛みが引いて恐る恐る顔を上げれば、頬を腫らしたクーが相変わらずの冷めた顔で笑っていた。

    川#)ー゚)「君は……本当にそう思っているのか?」

    22: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 2007/11/19(月) 01:36:46.02 ID:tZnXwI7D0
    悔しいが、認めざるを得なかった。
    クーが放った言葉はすべて、僕の想いの代弁だったのだ。

    それからクーを睨みつけた後逃げるように自室へと戻った僕は、ツンに連絡を入れようと試みた。

    しかし電話はもちろん通じず、教えてもらっていたメールアドレスさえも
    彼女と別れて数日と経たず届かなくなっていた。

    それでも僕は、届くことの無いメールを送り続けた。電話をかけ続けた。


    (  ω )「ツン。君はいったい、今どこにいるんだお?」


    声が聞きたい。文章でもいい。どうにかして、彼女と連絡を取りたかった。

    23: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 2007/11/19(月) 01:39:18.49 ID:tZnXwI7D0
    ツンは行政部からの出向者、つまり研究所外部の人間だった。
    定かではないが、隔離されていたプロジェクトチームとは違い、彼女の隔離度は比較的緩いものだと想像された。

    そして仮に彼女が情報を流出させていたとしたら、ブリーフィングでの行政部のしどろもどろさにも上手く説明がつく。
    身内から出た不祥事を隠蔽しようとしていた。そんな役人根性が彼らの中にあったのではないのか、と。

    決定的だったことは、彼女が研究所を去ってからすぐに連絡が取れなくなってしまっていたこと。

    何度も行政部に問い合わせてはみたものの、『理由はお話できません』の一点張り。
    親しい間柄を築いていた身として、これは納得のいかないものだった。

    そして認めたくないが、彼女が『某国のスパイである』と想定した場合、これらの疑問が見事に解決されてしまう。
    素人さえ小説に用いないような稚拙な論理。しかし、そのときの僕はその嫌疑をどうしても拭い去ることが出来ないでいた。

    そんな、悶々とした日々。目を隠すほどまで伸びた自分の前髪の長さが鬱陶しかった。

    気分転換に散髪でもしようか。
    そんなくだらないことで気を紛らわそうとしていた最中、悲劇の日は突然にやってきた。

    緊急の報告を受けた僕は自室を飛び出し、研究所の中枢たるオペレーションルームへと駆け込み、そして唖然とした。

    24: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 2007/11/19(月) 01:40:11.52 ID:fxB8yA90O
    しえん

    25: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 2007/11/19(月) 01:40:24.65 ID:lcBgyqvbO
    支援

    26: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 2007/11/19(月) 01:41:32.06 ID:tZnXwI7D0
    (; ゚ω゚)「なんて愚かなことをしたんだお……」

    モニターに表示された映像を凝視する。
    某国が実現させた新エネルギーシステム理論の稼動基地を、僕の国がミサイル攻撃を行う。
    その中継だ。

    宣戦布告をしてからこれまで、僕の国は軍事力をちらつかせた圧力外交でことを解決しようとしていた。
    しかし一向に進まない交渉に業を煮やし、ついに武力行使に踏み切った。
    その瞬間を映像は映し出していた。

    雨あられのように降り注いでいくミサイル。それを迎撃しようと某国から放たれるミサイル。

    某国もしばらくは持ちこたえていた。
    しかし圧倒的な物量差は如何ともしがたく、ついに一基のミサイルが基地へと直撃した。

    その瞬間から、この世の地獄は始まった。

    27: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 2007/11/19(月) 01:43:59.66 ID:tZnXwI7D0
    まず、ミサイルが直撃で基地が爆発した。
    それも予想をはるかに超える規模で、だ。

    オペレーションルームにいたすべての人員が呆然としていた。
    映像は真っ白に染まるばかり。

    すぐに映像が望遠画像に切り替わったそのとき、
    爆発の規模を僕たちは嫌がおうにも見せ付けられた。

    (; ゚ω゚)「どういう……ことだお……」

    この被害規模はなんだ。
    都市の二、三どころではない。巨大な半島の四分の一が消滅していたのだ。

    おそらく、某国は僕の提唱した理論を弄繰り回し、
    発生可能なエネルギーを安全粋を超えて上昇させていたのだろう。

    即座に原因が思い浮かんだが、そんな思考に意味はかけらも存在しない。

    所詮傍観者に過ぎなかった天才に、出来ることなど何も無かった。

    32: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 2007/11/19(月) 01:46:07.61 ID:tZnXwI7D0
    しかし事態はそれだけでは済まなかった。
    基地の巻き起こした爆発は大事の前の小事に過ぎなかったのだ。

    突如繋がった回線に応対したオペレーターが、顔面蒼白となって叫び声をあげる。

    (;^^ω)「地下シェルターに避難してくださいホマ! 早くホマ!」

    オペレーターが何を言っているのか、僕たちは理解できなかった。
    立ち尽くす僕の脇を慌ててすり抜けて行った彼の後ろ姿を見てようやく、全員が恐々と避難を開始する。

    何が起こったのかは定かではなかったが、
    取り返しのつかないことが起こったといことだけは全員が理解していたらしい。

    33: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 2007/11/19(月) 01:47:15.59 ID:tZnXwI7D0
    地下深くに設けられたシェルターへと向かうエレベーターの中。
    僕はオペレーターに喰らいつく。

    (; ゚ω゚)「どういうことだお! 何があったんだお!!」

    (;^^ω)「か、核ミサイルが某国から発射されたと……」

    川;゚ -゚)「おい! 嘘だろう!?」

    聞いたことも無いクーの叫びがエレベーター内にこだまして、
    その場にいた全員がいっせいにオペレーターへと質問を飛ばす。
    オペレーターは数個の質問には丁寧に答えていたが、あまりの質問量に耐えかねたのだろう。

    (;^^ω)「僕だってそう思いたいホマ! だけど、向こうの声は尋常じゃなかったホマ!」

    悲痛な声で叫んで、それきりとなる。


    35: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 2007/11/19(月) 01:48:40.55 ID:tZnXwI7D0
    (  ω )「いや、ありえない事も無いお。某国は、
         どうせ滅ぶなら世界中の人間を道連れにしてやろうとでも思ったんだろうお」

    川;゚ -゚)「いたちの最後っ屁という奴か……なんと愚かな……」

    それきり、エレベーター内に声が響くことは無かった。
    やがて僕たちが地下へとたどり着いた直後、シェルターが強烈な揺れに襲われた。

    何度も、何度も、腹の底をえぐるような地響きは飽きることなく夜通し続く。
    ここまで眠れない夜は初めてだった。

    それがようやくおさまって一日ほど様子を見て、僕たちは再びの地上へと上がることにした。

    36: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 2007/11/19(月) 01:48:42.46 ID:SVQcM/WG0
    しえ

    37: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 2007/11/19(月) 01:50:30.10 ID:tZnXwI7D0
    幸いにもエレベーターは稼動してくれた。

    研究所も揺れで室内が荒れていた程度で、
    放射線による被害はおろか、これといって特筆すべき被害も無かった。

    研究所は郊外も郊外、山の奥の奥に設けられた極秘建造物であったため、
    某国のミサイルの標的にはなっていなかったのだろう。

    地上へと上がった僕たちはすぐさまオペレーションルームへと駆け込み、首都との回線を開いた。
    しかし返ってくるのは不快なノイズ音だけであり、
    続けて国内の主要都市との回線も開いてはみたものの、人の声が返ってくることは無かった。

    テレビジョンをつけてみても、国内チャンネルも国外の主要な衛星放送も砂嵐を映すだけ。

    しかし幸運にも、海外のラジオ放送を受信することに成功した。
    当時最も衰退していたラジオメディアからのみ情報を得られたというのは、なんとも皮肉な話だろう。

    ノイズ混じりの聞きづらい放送の中で、アナウンサーが冷静沈着に世界の情勢を伝えてくれた。

    情報に飢えていた僕たちは、一言一句聞き逃すまいと必死に耳を傾ける。

    39: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 2007/11/19(月) 01:52:14.72 ID:tZnXwI7D0
    『繰り返し、各国の現状をお伝えします。

    現在、先進国に代表される大国の首都、主要都市は一切の連絡が取れない状態にあります。
    某国の核兵器により壊滅的打撃を受けたとの情報もありますが、真偽のほどは定かではありません。

    なお、某国が核兵器を使用して以来、各国は依然として混乱した情勢におかれております。
    暴動が起きた地域も多々あるようで、その沈静のため軍を動かす国家も現れ、ますます事態は悪化しています。

    同時に一部国家が核兵器を使用したとの報道が一部メディアではなされていますが、確認は取れておりません。
    また、巻き上げられた砂埃が各地の上空を覆いつくしており、日の光が届かない地域が多々あるとの報告も出ています』

    40: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 2007/11/19(月) 01:53:57.26 ID:oCrmnF4RO
    支援

    41: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 2007/11/19(月) 01:54:37.78 ID:tZnXwI7D0
    川;゚ -゚)「そんな馬鹿な!」

    (; ゚ω゚)「クソッ!!」

    急いでベランダへと飛び出した僕が見たのは、限りなく黒に近い灰色の雲に覆われた空。

    普通の雲じゃない。
    粉塵や焦土が巻き上げられ幾層にも重なって初めて見ることの出来る、日の光さえ遮断してしまう分厚い雲だ。

    核の冬。そんな言葉が頭に浮かんだ。

    (; ゚ω゚)「これが世界中を覆い尽くしているのだとしたら……」

    日の光は数ヶ月、もしかしたら数年地表に届かず、気温は急激に下がり、生態系は破壊される。
    放射線に汚染された粉塵も風に乗り世界に降り注ぎ、その被害を存分に撒き散らすことだろう。

    この世の終わりだ。

    呆然と空を見上げていた僕の耳にラジオの音声がまた聞こえてきた。
    生涯忘れることのないであろう、断末魔のような叫び声が。

    42: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 2007/11/19(月) 01:55:46.01 ID:tZnXwI7D0
    『……な、なんだと!? それは本当か!? おい! 嘘だろう!?』


    (; ゚ω゚)「な、何が起こったんだお!」

    川;゚ -゚)「わからん」

    突然乱れたラジオの音声。

    その後、人々の遠い悲鳴や叫び声が聞こえて。
    轟音と甲高いノイズが響いて。

    それきり、そのチャンネルから人の声が流れることは二度となかった。

    44: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 2007/11/19(月) 01:57:32.97 ID:tZnXwI7D0
    以後、数日経っても何も情報が入ることは無かった。

    僻地中の僻地に建てられていた研究所。

    だからこそ核兵器の被害を受けないで済んでいたのだが、
    その通信手段はすべて国の首都に直結されていたため、
    首都が壊滅したと考えられる状況下では外部との更新は一切にわたり不可能だったのだ。
    中央集権のもろさが露呈した結果である。

    すぐに僕とクーが連絡方法の開発に着手したのだが、作業はなかなか進まない。
    いらだちや焦りから作業が右往左往するそんな状況の中で、無情にも一週間以上が経過した。

    そんなある日、文字通り暗雲のたちこめる外の世界から、一人の人物が車に乗ってやってきた。

    45: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 2007/11/19(月) 01:58:38.15 ID:tZnXwI7D0
    ξ;゚⊿゚)ξ「内藤! クー! 早くこの車に乗ってちょうだい!」


    ずっと会いたかった女性、ツン。

    突然現れたなつかしの彼女は、
    互いの無事と再会を喜ぶ暇も無く僕とクーを車に乗せると、行き先も告げずに走り出した。

    48: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 2007/11/19(月) 02:01:51.05 ID:tZnXwI7D0
    ― 3 ―

    ξ゚⊿゚)ξ「某国の基地が爆発したあの日から、世界は一気に混乱したわ。
        一番の誤算は爆発の規模があまりにも大きすぎたことと、基地の存在を私たちの国しか知らなかったこと。
        あの爆発を目の当たりにした各国は、私たちの国が新兵器を使用したと誤解したの。
        そこで動き出した国が、某国に隣接する社会主義国家と、私たちが冷戦時代に対立していたあの国よ」

    午後だというのに日の差し込まない暗闇の外を車は孤独にひた走る。

    フロントライトの光が砂利道の先を照らしている最中、
    ツンは僕たちの知りたがっていたことを真っ先に話してくれていた。

    49: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 2007/11/19(月) 02:02:47.16 ID:31VBQsVQ0
    支援

    50: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 2007/11/19(月) 02:03:39.36 ID:nxPv6JEXO
    しえを

    51: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 2007/11/19(月) 02:04:26.88 ID:tZnXwI7D0
    ξ゚⊿゚)ξ「基地の爆発を前にしたこの二国は、こともあろうか私たちの国を潰しにかかってきたの。
        あの爆発を私たちの新兵器によるものだと勘違いした彼らは、
        それで自分たちが潰される前に私たちの国を潰しておかなければって考えたんだろうね」

    ξ゚⊿゚)ξ「まもなくこの国の首都に無数の核ミサイルが打ち込まれた。当然この国は迎撃を開始したわ。
        たくさんの核爆発を関係の無いあちこちの国の上空で捲き起こしながらね。
        だけど、他を省みない身勝手な努力もむなしく、核ミサイルはこの国の首都に直撃したわ」

    ξ゚⊿゚)ξ「それからはもう滅茶苦茶よ。対立していた国同士がこの混乱に乗じて動き出した。
        民族紛争の燻っていた国では内戦が起きた。平和だった国でも民衆が暴れだした。
        極めつけは、核保有国が躊躇無く核を使い始めたことね」

    ξ゚⊿゚)ξ「禁忌が他人の手で破られれば、あとはその責を負わなくていいから使い放題って理屈よ。
        最も、前々から核兵器を使いたくてたまらなかったって理由もあるだろうけど。
        きっと、今もどこかで核兵器が使われているわ。もしかしたらこの近くでも……」

    52: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 2007/11/19(月) 02:05:42.83 ID:tZnXwI7D0
    と、ツンが言葉を継ごうとしたその直後、西の空が一瞬強烈に光り、
    しばらくして大きな地響きと野太い轟音、そして強烈な風が車を襲った。

    後部座席に座っていた僕とクーは、慌てて前部座席の背もたれにしがみ付いてその揺れに耐えた。
    それがようやくおさまった頃になって僕は尋ねる。

    (;^ω^)「い、今のも核かお!?」

    ξ゚⊿゚)ξ「多分ね。ここの最寄りの州都がやられたのかもしれない。
         どっちにしろ、もうこの国は……いや、世界はおしまいよ」

    声色も変えずにあっけらかんと言い放ったツン。

    「ツンらしくないな」と思った僕が見たのはバックミラーに映ったやつれ果てた彼女の顔で、
    それが彼女の言葉に妙な信憑性を塗布していた。

    53: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 2007/11/19(月) 02:07:08.94 ID:tZnXwI7D0
    川 ゚ -゚)「……それで、君は私たちをどこに連れて行こうというのだ?」

    それ以後会話の無かった車内に響いたのは、これまでずっと沈黙を保っていたクーの声だった。
    後部座席、僕の隣で腕組みをしていた彼女は、問いただすような強い口調で運転席のツンに尋ねた。

    ξ゚⊿゚)ξ「とある地下施設よ。あなたたちにはそこで眠ってもらうわ」

    川 ゚ -゚)「眠る? どういうことだ?」

    ξ゚⊿゚)ξ「そのままの意味よ。内藤。あんた昔、冷凍睡眠の基礎理論を提唱したわよね?」

    55: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 2007/11/19(月) 02:08:24.78 ID:tZnXwI7D0
    (;^ω^)「お? おお。確かにしたお」

    急に話を振られて、僕は単純な返事をすることしか出来なかった。

    二十代の前半の頃、僕は確かに冷凍睡眠の基礎理論を提唱した。
    その後の研究は僕の手からは離れていたけど、別の研究所で実用段階に入ったという話は耳にしていた。
    確か老年の博士が自らを実験台として、三年ほどの冷凍睡眠に成功していたはずだ。

    だけど、それとこれからの話と何の関係があるのだろう? 

    鈍っていた僕の脳みそはそんな簡単な問いの答えもわからないまま、
    次に発せられたツンの言葉に大いに驚くことになる。

    ξ゚⊿゚)ξ「それを使って、あなたたち天才に冷凍睡眠に入ってもらうの」

    56: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 2007/11/19(月) 02:09:36.03 ID:oCrmnF4RO
    支援

    57: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 2007/11/19(月) 02:09:45.49 ID:fxB8yA90O
    しえん

    59: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 2007/11/19(月) 02:11:17.82 ID:tZnXwI7D0
    (; ゚ω゚)「はぁ!? な、何を言ってるんだお!!」

    川 ゚ -゚)「……なるほどな」

    僕の声とクーの声が車内で交錯した。

    ことの事由に反論することなく納得しているクーを憎憎しげに一瞥した後、
    僕は身を乗り出して前を向いて運転するツンへと怒鳴る。

    (; ゚ω゚)「僕たちが冷凍睡眠に入ってどうなるんだお!
         それよりも危機に瀕している今こそ、僕たち天才の才覚の発揮どころだろうがお!」

    ξ゚⊿゚)ξ「あんたたち天才がどんな手をうったところで、世界はもうどうにもならないわよ」

    62: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 2007/11/19(月) 02:12:49.12 ID:tZnXwI7D0
    抑揚の無い声で淡々と続けたツンは依然前を向いたまま、
    僕の激昂を気にも留めない様子で運転を続ける。

    ξ゚⊿゚)ξ「行政部で外交官として世界各国に働きかけたけど、みんな聞く耳持たずよ。
         私たちこの国の役人の生き残りは、核の冬が訪れているって何度も他国に訴えたけど、
         どこも自分たちだけは助かるとでも思っているみたい。
         まあ、先に戦争を仕掛けたこの国の役人である私たちが言っても、何の説得力も無いんだけどね」

    (; ゚ω゚)「核の冬が現実化するくらいに、世界は核兵器を使いまくっているのかお?」

    ξ゚⊿゚)ξ「ええ。私たちの頭上に立ち込めている分厚い暗雲が世界中の空にも広がっている。
         私たちのしてきた温暖化防止の努力をあざ笑う勢いで世界の気温は下がっている。
         日光も届かず、放射能を含んだ死の灰を受けて植物も枯れ始めている。
         人間も自分たちだけが生き延びようとして、逆に自分たちの首を絞めているわ。
         もう何をしても無駄。だから私たちこの国の役人の生き残りは、一つの決断を下したの」

    63: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 2007/11/19(月) 02:14:24.87 ID:tZnXwI7D0
    絶望に絶望を重ねた言葉を並べる中で、
    ツンはここに来てようやく笑みを浮かべて、バックミラー越しに僕とクーの顔を見た。

    ξ゚ー゚)ξ「それは、この国にいるスポーツや学問の天才たちを
         核戦争の被害の届かない山奥の地下施設に眠らせ、未来に望みを託すということ。
         具体的には、核の冬が過ぎて、放射能汚染も消えて、
         状態が現状まで戻ると予測される二千年後まで、
         あんたたち天才に冷凍保存に入って生き延びてもらうの」

    66: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 2007/11/19(月) 02:16:55.48 ID:tZnXwI7D0
    (; ゚ω゚)「……」

    川 ゚ -゚)「……」

    ツンの言葉に沈黙を返すことしか出来なかった僕。
    車内がより深い暗闇と静寂に包まれた。どうやらトンネルか何かに入ったようだ。

    ξ゚⊿゚)ξ「東洋にこんな寓話があるんだけど、二人は知ってるかな?」

    前を向いたまま話を再開したツン。車のフロントライトがどこまでも続く暗闇を映し出している。
    走っている道は、トンネルというよりも洞穴に近い。それもどうやら地下へと続いているようだ。

    ξ゚⊿゚)ξ「遥か昔、高度な文明を持った宇宙人が技術を伝えに地球までやってきました。
         しかし、人類はまだサル同然の生活をしていました。
         そんな人類に宇宙人の技術はとうてい理解できそうも有りません。
         そこで宇宙人は、技術とその解説書が詰め込まれたカプセルを砂漠の下に埋め、
         人類が成長したときのための贈り物としました。
         しかし文明を発達させた人類は、核実験によってそのカプセルを燃やしてしまいましたとさ」

    69: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 2007/11/19(月) 02:18:30.03 ID:tZnXwI7D0
    川 ゚ -゚)「それと今の話に、どのような関係があるのだ?」

    ξ゚⊿゚)ξ「カプセルが冷凍睡眠装置で、その中身があなたたちってこと。例え話の結末はとんでもないけどね。
         だけど安心して。この話どおりにならないよう、間違いなくあんたたちを未来へ送り届けるから」

    川 ゚ -゚)「……ふむ」

    僕の隣に座るクーは、足を組んで納得したように一つうなずいた。

    車は洞穴の奥の奥、地下の道をさらに進んでいく。
    薄暗い車内。その中で僕は、精一杯の抗議を行う。

    (  ω )「僕が嫌だと言ったら、君たちの計画はどうなるんだお」

    ξ゚⊿゚)ξ「どうもこうもないわ。あんた一人が断ったところで、ほかの天才たちはすでに納得している。
         降りたければここで降りてもいいわよ。だけど、その後に待っているのは死だけだけどね。どうする?」

    70: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 2007/11/19(月) 02:19:28.96 ID:fxB8yA90O
    しえん

    71: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 2007/11/19(月) 02:20:30.43 ID:tZnXwI7D0
    (  ω )「……」

    ツンは卑怯だと思った。
    いや、ツンだけではない。この計画を立案した全員が卑怯だと思った。

    誰だって生きたいに決まっている。
    どんな奇麗事を並べようが、どんな醜い方法であろうが、人は生きたいに決まっている。

    僕は生きたい。
    だけど、こうやって皆に生かされることに抵抗を感じずにはいられない。
    けれど、やっぱり生きたい。

    葛藤にさいなまれる僕。そしてツンは、とどめの一言を僕に放ってくれた。

    73: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 2007/11/19(月) 02:21:51.37 ID:tZnXwI7D0
    ξ゚ー゚)ξ「それに、私はあんたたちに生きてほしい。
        それはあんたたちが私の友達ってだけじゃなくて、なんていうのかな?
        私を知っているあんたたちが生きてくれれば、後世にも私の生きた証が残る。
        ……そんな気がするの」

    ツンにそう言われて、嫌だと言えるはずが無かった。
    そしてまもなく車は止まる。

    車を降りると、白衣を着た科学者らしき人間に僕たちは迎え入れられた。

    74: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 2007/11/19(月) 02:22:04.81 ID:qW/IzMNK0
    面白くて寝れんwww
    駆逐以来の鬼才だと思ってる

    75: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 2007/11/19(月) 02:23:19.28 ID:fxB8yA90O
    しえん

    77: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 2007/11/19(月) 02:24:47.15 ID:tZnXwI7D0
    地下奥深くに存在するらしいこの施設は分厚い金属の壁に何層も覆われていて、
    確かに核兵器の直撃を受けても破壊されそうには無かった。

    水銀灯の照らす通路を僕たちは歩く。

    やがて巨大なシャッターの前に連れられて、そこで立ち止まったツンは、静かに笑ってこう言った。

    ξ゚ー゚)ξ「ここでお別れね。私は天才じゃないから、この先には入れない」

    淡白な台詞を残して小さく手を振った彼女は、きびすを返してもと来た道を戻っていく。
    そんな中、いまだに僕は迷っていた。

    生き伸びるべきなのか。
    それとも、ツンとともに戻るべきなのか。

    決められない。こんなに困難な決断を前にしたことはない。

    だから僕は時間稼ぎに、苦し紛れに、こんな質問で彼女を引き止めることしか出来なかった。

    80: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 2007/11/19(月) 02:27:15.98 ID:tZnXwI7D0
    (  ω )「ツン。最後にこれだけは教えてくれお」

    ξ゚⊿゚)ξ「……何?」

    (  ω )「新エネルギーシステム理論を某国に流出させたのは……君なのかお?」

    一瞬にして場が凍りついた。
    そんなことは覚悟していた。道を決める時間を稼げればそれでよかった。

    少しの沈黙。

    その間に、凡人ながらも頭の回るツンは、
    自分が疑われるべき状況であったのを理解したのだろう。

    小さくなった彼女の顔は、それでもはっきりとわかる寂しい笑みを浮かべて、言った。

    ξ゚ー゚)ξ「確かに私が疑われても仕方が無いわね。だけど、それは私じゃない。
        連絡を取れなかったのは、単に上層部に禁止されていたからよ。
        確固たる証拠も無いから信じてなんて言えないけど、私じゃない。
        私には……それだけしか言えない」

    83: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 2007/11/19(月) 02:29:33.32 ID:tZnXwI7D0
    僕のひどい質問に笑って返して、それからツンは僕を見た。
    僕は何も言えなかった。

    間違いなく、ツンは死ぬだろう。

    それなのに、僕はこれから二千年先の遠い未来で生きることが出来る。
    後ろめたくないわけが無い。

    ツンの姿が遠ざかっていく。
    白衣の科学者が僕とクーを施設の奥へと促してくる。


    僕は、どちらも選べない。

    84: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 2007/11/19(月) 02:31:00.65 ID:tZnXwI7D0
    川 ゚ -゚)「おい、内藤?」

    クーが呼ぶ声が地下の施設内に反響する。
    その声に反応して、小さくなったツンがこちらを振り向いたのが目に入った。

    振り向いたツンの顔は僕を諭すかのように小さく笑っていて、
    その笑みを目の当たりにした僕は、彼女へ向けて駆け出していた。

    88: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 2007/11/19(月) 02:33:08.74 ID:tZnXwI7D0
    (; ゚ω゚)「ツン、君も眠るんだお! 一緒に眠って、二千年後にまた会うんだお!」

    ξ゚ー゚)ξ「……ダメよ。冷凍カプセルの数が足りないもの」

    (; ゚ω゚)「そのくらい僕が作るお! 僕を誰だと思ってるんだお!? 
         世界に名をとどろかせた天才、内藤ホライゾン博士だお!!」

    叫びながら走って、ツンのもとにたどり着いて、
    彼女の細い肩を揺さぶって必死に声をかけた。

    けれども彼女は寂しげに笑ったまま、今にも泣き出しそうな声をあげる。

    ξ゚ー゚)ξ「ダメだよ……私なんかが生きても、何の役にも立たないよ。
         それに、私は最後まで足掻いてみたいの。この戦争を止めてみたいの。
         天才でもなんでもない私が世界を救えるか、試してみたいんだよ」

    (; ゚ω゚)「もう無理だお! そう言ったのは君だお! 
         有りもしない可能性にすがりつくのは愚行以外の何ものでもないお!
         悲劇のヒロインを気取るなんて君らしくないお!
         僕は君と生きたいんだお! 僕は君が……君が……」

    89: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 2007/11/19(月) 02:35:00.72 ID:tZnXwI7D0
    けれど、その後がどうしても出てこない。
    これが最後のチャンスだというのに、どうしても言葉が出てこない。

    小さい頃からずっと勉強ばかりやっていて、異性との付き合いに価値を感じていなかった僕。
    そんな僕にとって、その先の言葉を口にすることはどんな難しい数式を解くことより困難だった。

    うつむき続けて。なけなしの勇気を振り絞って。

    それからようやく口に出そうと顔を上げた先では、
    それでもツンは笑っていて、僕の目を見つめながらこう言った。

    ξ゚ー゚)ξ「……ごめんね。そんな風に思ってくれていたなんて、全然気づかなかったよ。
         うれしいよ。本当にうれしい。だけど……」

    90: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 2007/11/19(月) 02:35:18.39 ID:fxB8yA90O
    しえん

    91: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 2007/11/19(月) 02:36:54.94 ID:tZnXwI7D0
    (; ^ω^)「……だけど?」

    それからツンはうつむいて。
    伝えられた想いの答えを僕は聞きたくて。

    だからほんの数秒に過ぎなかったこの時間が、僕にはとても長く感じられた。

    それからしばらくして。
    いや、実際にはそう長くはなかったであろう間を置いて。

    顔を上げた彼女ははまるで天使のようで。

    これまで見たどんな光景よりも美しい表情で、笑っていた。

    92: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 2007/11/19(月) 02:37:23.59 ID:tZnXwI7D0




    ξ゚ー゚)ξ「……だからこそ、あなたは生きて」




    93: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 2007/11/19(月) 02:40:04.78 ID:tZnXwI7D0
    (; ^ω^)「……え?」

    次の瞬間、ツンの視線が僕から外れた。
    僕の肩越しに何かを見るような、そんな視線の動かし方だった。

    気になって僕が振り返ろうとしたのと同時に僕の首筋にチクリと小さな痛みが走って、
    気づけば僕は地面へ崩れ落ちていた。

    95: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 2007/11/19(月) 02:40:46.98 ID:tZnXwI7D0
    (; ゚ω゚)「あ……が……」

    体中に力が入らない。口が開ききって閉まらない。
    よだれが口の端からたれ落ちるのを自覚した。

    それでも視界だけははっきりとしていて。
    倒れた僕を覗き込むクーの顔が目の前を覆い尽くしていて。

    視界に捉えたクーの手には、注射器が握られていて。

    96: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 2007/11/19(月) 02:42:11.56 ID:tZnXwI7D0
    川 ゚ -゚)「内藤。あきらめろ。ツンは自分の意思で、この時代に残ることを決めたんだ」

    (; ゚ω゚)「……弛緩……剤……かお……」

    川 ゚ -゚)「ああ。先ほどの科学者に借りた。
         内藤。私もお前も、後の世のために生き伸びねばならんのだ。
         ツンの意思を尊重したければ、お前も笑って生きてみせろ」

    (; ゚ω゚)「……きさ……ま……」

    もう、声も声にならない。体は言うことを聞かず、指一本動かせやしなかった。

    この場でクーを殴り飛ばしたかった。ツンの手を握りしめて離したくなかった。
    だけど体は動かない。

    やがて遅れてきた科学者に担がれたらしい僕は、朦朧とする意識の中で、ツンの最後の声を聞いた。

    ξ゚ー゚)ξ「それじゃあ、バイバイ、内藤。あなたは私たちからの大切な未来への贈り物。
         どうか無事に届きますように。そして、人類をまた再興させてね」

    彼女を引きとめたくて伸ばそうとした僕の右手は力なく垂れ下がったまま。
    ただ遠ざかるツンの足音だけが、そこに響いていた。

    97: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 2007/11/19(月) 02:42:58.00 ID:fxB8yA90O
    しえん

    98: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 2007/11/19(月) 02:44:31.19 ID:tZnXwI7D0
    それからも僕は科学者に担がれたまま、せめてもの抵抗に意識だけは保っていた。
    口からよだれが出ても、緩んだ尿管から液体が流れていっても、それでも意識を閉ざすまいと必死だった。

    けれども動かない体では、それは何の抵抗にもなっていなかった。

    僕の想いなど関係なしに着々と冷凍睡眠に向けた検査や作業は進み、まもなくカプセル内へと入れられた僕。

    緩んだ体でも、緩んだ意識でも、自分が冷たくなっていくことだけはハッキリと感じられた。
    ただでさえ朦朧としていた意識が、もはや途切れようとしていた。

    99: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 2007/11/19(月) 02:45:05.08 ID:tZnXwI7D0
    そして、カプセルのふたは閉じられた。
    同時に力尽きた僕の意識は、それを最後にプッツリと途絶えた。

    けれど、最後の最後。

    僕の目じりから流れ落ちていった一筋の涙は、絶対に弛緩剤のせいではない。



    第二部  世界の終わりと、それでも足掻いた人間たちの話  ― 了 ―

    101: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 2007/11/19(月) 02:46:30.49 ID:fxB8yA90O

    102: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 2007/11/19(月) 02:47:04.56 ID:VedFns/00

    103: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 2007/11/19(月) 02:48:07.63 ID:31VBQsVQ0
    名作のヨーカン

    105: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 2007/11/19(月) 02:57:05.61 ID:tZnXwI7D0
    今週末までには続きを投下させてもらいます。
    読んでくれてありがとうございました。

    107: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 2007/11/19(月) 03:06:50.81 ID:XVBGv1K20
    おもすれぇ!!

    111: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 2007/11/19(月) 03:39:14.51 ID:siIr827oO
    乙!!

    113: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 2007/11/19(月) 05:36:21.88 ID:yElGl4Mn0
    乙でした

    115: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 2007/11/19(月) 07:53:23.17 ID:HR5nFEBzO
    乙!
    まいった。こういう作品が出てくるからブーン系小説はやめられない

    110: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 2007/11/19(月) 03:14:36.72 ID:yOpfqNLHO
    乙!続き待ってます
    ( ^ω^)ブーンは歩くようです

    【第一部】『かつての世界と、文明の明日に心血を注いだ天才の話』
    http://world-fusigi.net/archives/8873972.html

    【第二部】『世界の終わりと、それでも足掻いた人間たちの話』
    http://world-fusigi.net/archives/8873974.html←今ここ

    【第三部】( ^ω^)ブーンは歩くようです3『世界の始まりと、孤独に耐えられなかった男女の話』
    http://world-fusigi.net/archives/8873975.html

    【第四部】奉られた遺物と、神殺しに挑んだ男の話
    http://world-fusigi.net/archives/8893058.html

    【第五部】ツンドラの道と、その先に夢を見た男の話
    http://world-fusigi.net/archives/8893104.html

    【最終部①】古に続く伝統と、それでも足を欲しがった女の話
    http://world-fusigi.net/archives/8893105.html

    【最終部②】古に続く伝統と、それでも足を欲しがった女の話
    http://world-fusigi.net/archives/8893116.html

    ( ^ω^)ブーンは歩くようです エピローグ
    http://world-fusigi.net/archives/8893106.html

    【連結部】歩き続けた男と、これからも歩く女の話
    http://world-fusigi.net/archives/8893108.html










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    コメント一覧

    1  不思議な名無しさん :2017年07月09日 02:58 ID:DAtPAf8V0*
    東洋の寓話って星新一だったと思うがタイトルが思い出せない…
    2  不思議な名無しさん :2017年07月09日 20:08 ID:HgUD1E8P0*
    星新一の話だ
    なんていうやつだっけ
    3  不思議な名無しさん :2017年10月22日 01:18 ID:U7F.gx4l0*
    鬼才とか言われてるけどマジ??

    ここまで読んだけどあんまり引かれん
    ゾンビのとかと比べると何枚も劣る気がする
    詳しいこと忘れちゃったけどゾンビが文明築く奴

    ストーリーも言い回しも凡人が背伸びしてるようにしか…
    とりあえずもう少し読んでみるけど
    4  不思議な名無しさん :2018年03月14日 03:50 ID:bdVxoElB0*
    どこかの短編小説で、自然の動物が死に絶えて肉に飢えてた未来人が、未来に向けて冷凍睡眠した人間を見つけて喜んで食べたって話読んだ事あるなあ。

     
     
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