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魔王「この我のものとなれ、勇者よ」勇者「断る!」

2017年11月22日:22:00

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コメント( 36 )

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1: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/03(木) 16:35:56.40 ID:DdF333IT0
魔王と勇者、どっちを女で想像した?
管理人です!
今回のスレはかなり有名なので既にご存じの方も多いと思います。
『まおゆう魔王勇者』として書籍を始めアニメや漫画にもなっていますね。

~説明~
2009年9月3日にニュー速VIPに立て逃げされた『魔王「この我のものとなれ、勇者よ」勇者「断る!」』スレを乗っ取る形で連載開始。
当初からその面白さには定評があったが、2010年4月下旬にTwitter上で話題沸騰となり、読者を増やし続けている。

タイトルが長いため「まおゆう」という略称がよく用いられる。書籍版およびテレビアニメ版のタイトルは「まおゆう魔王勇者」。

http://dic.nicovideo.jp/a/魔王「この我のものとなれ、勇者よ」勇者「断る!」
https://ja.wikipedia.org/wiki/まおゆう魔王勇者




2: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/03(木) 16:36:17.49 ID:B0jnRddtO
どっちも

3: 鰐 ◆WANIvSPbAo 2009/09/03(木) 16:36:32.50 ID:+UEU+NCZ0 BE:297589032-2BP(5066)
魔王ですね

4: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/03(木) 16:37:57.59 ID:LTpYI0vmO
迷ったが、女勇者で頼む。

6: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/03(木) 16:38:13.58 ID:dpPFO8nMO
え?え?

9: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/03(木) 16:50:11.37 ID:s4r1gUtjP
魔王「どーしてもか?」
勇者「アホ云うな。お前のせいでいくつの国が
 滅んだと思ってるんだ」

魔王「南の森林皇国のことか?」
勇者「空は黒く染まり、人々は貧困にしずんでいった」

魔王「考え無しに森林伐採して木炭作りまくって
 公害で自滅したんだろう」

勇者「公害……?」
魔王「あー。えーっと。そうか、まだ判らないか」

勇者「誤魔化すなっ! 政王国の大臣憑依だって
 魔族の仕業じゃないかっ!」

魔王「欲の皮の突っ張った大臣が政権奪取と
 王族の姫君大集合ハーレムを作ろうとして失敗しただけだ。
 そもそも逮捕された後に魔族の洗脳とか言い出すのは
 人間の悪人の悪い習慣だと思うぞ」



10: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/03(木) 16:55:18.10 ID:s4r1gUtjP
勇者「ごまかすのか……許せん……」
魔王「誤魔化してない」

勇者「南部諸王国と戦争はどうなんだ。俺は戦場で
 何百という人間が魔族の軍勢に倒されているのを
 この目で見てきたんだ」

魔王「それで?」

勇者「は? 人間世界を侵略してきた魔王、貴様を
 許しはしない!」

魔王「どちらが侵略したかという点については見解の相違だ。
 こちらにはこちらの言い分はあるが、まぁ、戦争してるのは
 事実だなー」

勇者「貴様は悪だ」

魔王「じゃぁ、悪でも良いけど。当然私を殺した後には
 南部諸王国の王族も全部抹殺して回るんだろうな?」

14: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/03(木) 16:59:14.49 ID:s4r1gUtjP
勇者「は? 悪はお前だけだ」
魔王「人間が魔族を殺していないとでも?
 魔族は悪で人間が善だって誰が決めたんだ?」

勇者「……っ」

魔王「そこで『俺が法だ!』とか『俺が神だっ!』とか
 『俺がガンダムだっ!』とか云えたら、お前も
 もうちょっと生きるのが楽なのになぁ……」

勇者「うるさいっ!!」

魔王「勇者は好きだから、この話はやめてやる」
勇者「好きとか云うな」

魔王「この資料を見ろ」
勇者「なんだ、これ……羊皮紙じゃないのか?
 薄くて白くてつるつるだ……」
魔王「プリンタ用紙だ。それはどうでもいい。書いてある
 ことが重要なんだ」

勇者「……えっと、需要爆発……雇用? 曲線?
 消費動向……経済依存率?」

16: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/03(木) 17:06:53.97 ID:s4r1gUtjP
魔王「わかったか?」
勇者「なんだこれは。邪神の儀式か?」

魔王「違う。経済的視点から見た巨大消費市場としての
 戦争の効用だ」

勇者「……効用?」
魔王「そうだ」

勇者「戦争に意味なんてあるものかっ。
 貴様ら魔族が人間世界を滅ぼすための侵略だ」

魔王「勇者がどーシテもと云うなら、ちゃんと戦ってやる」
勇者「っ」
魔王「話によっては、討たれてやっても良い」
勇者「その首差し出せ」
魔王「だから、半日ほど話を聞け」
勇者「……」

魔王「これは100年ぶりのチャンスなのだ」

18: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/03(木) 17:11:55.79 ID:s4r1gUtjP
勇者「良いだろう、話せ」
魔王「じゃぁ、説明する。手元の資料の一ページ目を」

ぺらっ

勇者「表だ」
魔王「グラフというのだ。……これは中央大陸のこの
 50年の消費量と景気を可視化したものだ」
勇者「……え」

魔王「気がついたように、我らが戦争を始めた15年前
 から中央大陸の景気は上昇局面に入った」
勇者「……嘘だっ」

魔王「嘘ではない。2ページ目を見るが良い。
 こちらには各種統計資料が添付されている」

勇者「戦争で数多くの死者が……」

魔王「戦争を始めてから人間世界の人口は順調に増加を始
 めている」
勇者「そんなのは理屈で考えておかしいだろうっ。
 戦争で人が死ぬことはあっても、人が増える道理など
 あるものかっ」

19: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/03(木) 17:15:50.07 ID:s4r1gUtjP
魔王「まぁ、一般解はそうだな。
 しかし、この世界における戦前の常識では違う。
 戦前の――まぁ、この戦前は数百年続いたわけだが
 世界では、人間の死因は疫病と飢餓だったのだ」

勇者「……」

魔王「この二つは非常に強大な敵で
 人間はこの二つを結局500年以上克服できなかった。
 人口は増えるどころか、時に疫病が猛威を振るい
 国単位で滅亡することも少なくなかった」

勇者「疫病も飢餓も人間には御し得ないものだ。
 神が人間に与えた試練と行ってもいい。
 魔族の侵略と一緒にするなっ!」

魔王「まぁ、降りかかるについてはそうかも知れないな。
 しかし、だから克服できないとか、克服してはいけないと
 いうものでもなかろう?」

勇者「それは……」

20: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/03(木) 17:16:38.67 ID:FgcY1YL00
面白いな 支援

21: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/03(木) 17:16:57.45 ID:iSLHBLTp0

22: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/03(木) 17:23:52.82 ID:s4r1gUtjP
魔王「現に戦争が開始されてからこれら二つの
 原因にする死者は30%まで低下した」

勇者「理由は? ……なぜ?
 魔族の暴威を見かねた神の恩寵か」

魔王「私は結構長生きしてるが、神など見たことはないよ。
 理由は明白だ。最大の原因は中央大陸危機会議の設立だよ」

勇者「……?」

魔王「つまり、魔族との戦争に対して、人間の王国が
 連合を組んだからだ」
勇者「それで、なぜ死者が減るんだ……?」

魔王「食料の多い国が少ない国へ送ったり、医療の
 進歩した国や農業技術の進歩した国が指導を行なった
 からだな」

勇者「それこそ人間の手柄じゃないかっ!」

魔王「その程度のことも魔族と喧嘩しなければ
 実行できない人間が大きな事を言ってはいけないよ」

24: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/03(木) 17:29:42.30 ID:tjWFelAOO
勇者頭悪すぎだろ

25: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/03(木) 17:31:05.78 ID:s4r1gUtjP
勇者「……」
魔王「そんなに悔しがるな。魔族だって大差は
 ない事情だった」
勇者「そう……なのか……?」

魔王「戦国だったからな。地方豪族や領主が次々と
 王を名乗っては一族郎党血まみれの戦いを送っていた」
勇者「……」

魔王「まぁ、そんな事情で、戦争は人間と魔族を救った」
勇者「……」

魔王「そんなに唇をかむな。血が出てしまうぞ?」
勇者「触るなっ!」

魔王「……君が望まない限り、触れないよ」
勇者「……」

魔王「私の言い分も判ってくれるか?」
勇者「……」

27: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/03(木) 17:35:13.26 ID:s4r1gUtjP
勇者「戦争に意味が……結果的にあったかも知れない」
魔王「そう言ってもらえるとほっとするよ」

勇者「だが続けて良い理由にはなってない。
 初めて良い理由にもなっていない。
 お前は戦争犯罪人だ。いますぐ戦争を中止して
 戦争犯罪者として法廷に立つんだ」

魔王「んー」
勇者「私利私欲でやった訳じゃないってのは
 いまの話で、ちょっとだけ判った。
 俺が付き添ってやるから投降しろ」

魔王「それは難しいな」
勇者「なぜだ?」

魔王「理由は二つある。6ページ目の資料を見てくれ」

ぺらり

魔王「ここに消費市場としての『南部諸王国』と
 『中央大陸』の物流の関係が記してある」

29: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/03(木) 17:41:53.98 ID:s4r1gUtjP
勇者「物流……?」
魔王「まぁ、早い話、物の流れだ。食べ物や着るものや、
 生活用品から武器、鉄、木材に至るまで全てだな」

勇者「これは『南部諸王国』でどんどん使ってるのか?」
魔王「そうだ。戦争は何でも大量に消費されるからな」

勇者「……『南部諸王国』はどうやって支払ってるんだ?」
魔王「ん?」
勇者「だって物を買ったらお金が必要だろう?」
魔王「ああ、良いところに気がついたな。偉いぞ」

勇者「撫でようとするなっ」
魔王「うっかりだ。そう、許可がない限り触れない。
 私は契約を重視するタイプなのだ」

勇者「どうやって購入してるんだよ」
魔王「中央大陸危機会議決議による、戦時支援基金でだ」

勇者「……?」
魔王「わからないか。つまり、全世界が戦争中の
 『南部諸王国』に義援金を送ってるんだ」

勇者「そうだったのか!! 人間の善の心に祝福を!
 どうだ魔王、これが人間のもつ優しさだ」

30: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/03(木) 17:44:52.56 ID:tjWFelAOO
それ使ってハーレムか裏山

31: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/03(木) 17:46:14.18 ID:s4r1gUtjP
魔王「まぁ、そのお金で中央大陸の数多くの国は
 自分の国の品物を買ってもらってるんだ。
 つまり、お小遣いを上げて自分の店の商品を
 買わせているだけさ」

勇者「……?」

魔王「このランクの説明は多少難しいかな。……つまり、
 富をため込むってのは『お金持ち』にはなれても
 『豊か』にはなれないんだ。
 お金を渡して、使ってもらう。物もお金も流れが
 よどみなく太いことが豊かなんだよ」

勇者「……難しい」
魔王「まぁ、そう言う物なんだ。
 全部を自分でやったりせずに、得意な分野で協力する。
 これは理論的に正しいことだ。
 麦と塩、木材と鉄を交換することで国も人々の暮らしも
 豊かになる」

勇者「それはまぁ、何となく判る。王立広場の市場みたいな
 もんだろう?」

魔王「うん、そのとおりだ」

32: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/03(木) 17:49:18.57 ID:9ci+3Biw0
ラスボス戦でわかる戦争経済

33: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/03(木) 17:49:30.81 ID:s4r1gUtjP
勇者「でも、この場合、違うだろう」
魔王「違うとは?」

勇者「中央大陸の国家は、戦争で疲弊した『南部諸王国』に
 善意からお金を送ってるんだ。結果として、その物流?
 が良くなったとしても、送ったお金は自分の物じゃないか」
魔王「ふむ」

勇者「つまり特産品同士を交換してるわけじゃない」

魔王「してるんだよ」

勇者「与えているだけじゃないのか?」

魔王「『南部諸王国』は、中央大陸に安全を
 輸出しているんだ。つまり、戦争で血を流して
 人間世界を防衛することでお金を得ている。
 ――見たことがあるんだろう?
 人間世界の『全て』が戦火にまみれていたのかい?」

勇者「……」

魔王「新しく発明された馬車、豊かな光、豊富なご馳走
 毎晩のように舞踏会を開いている国はなかったかい?
 ブドウ畑で酔いしれている貴族はいなかったかい?」

35: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/03(木) 17:53:30.25 ID:s4r1gUtjP
勇者「……それは」
魔王「つまり、そういうことだ。人間社会は
 『南部諸王国』の巨大消費と防衛ラインという存在に
 現在依存しているんだ」
勇者「い、ぞ……ん?」

魔王「そうだ、頼っている。溺れているというような意味だな」

勇者「でも、大多数の人間は戦う力なんて持っていないんだ。
 そのためには、『南部諸王国』の戦士団や騎士団に
 守ってもらい、せめて食料を送るしかない。
 その何処がいけないって云うんだよっ!!」

魔王「まぁ、感情的にはそれが真実だろう。
 そこまで否定したりはしない。
 でも同時に、経済的にこの市場が無くなると
 人間社会の物流や為替が破滅するのも確かなことだ」

勇者「破滅……?」
魔王「そうさ。その資料にあるだろう? これだけの
 巨大消費がなくなったら、中央大陸の生産者は
 大ダメージを受ける。特に鉄鋼業や造船業がね。
 このダメージは波及して、数十万の死者がでる」

36: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/03(木) 17:56:58.63 ID:s4r1gUtjP
勇者「そんな……」
魔王「まぁ魔王の云うことだから嘘かも知れないけどね」
勇者「嘘なのか?」
魔王「少なくとも私は本気だ。もしかしたら避ける方法が
 あるかも知れないけれど、私は知らない」
勇者「……」

魔王「さて、この物流と依存型のいびつな経済構造が
 二つの理由のうち、一つだ」

勇者「まだ……あるのか」

魔王「もう一つは比較的簡単に説明できる」
勇者「……」
魔王「説明が簡単なだけで問題が簡単なわけではないが」

勇者「どういう理由なんだ?」

魔王「魔族との大戦争で人間社会は結束した。
 物流が改善されて、医療技術もひろまって
 疫病と飢餓は少なくなったと云っただろう?」

勇者「ああ、云ってたな」

38: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/03(木) 18:00:13.15 ID:s4r1gUtjP
魔王「アレは説明の半分なんだ。確かに物流が以前よりは
 活発になった。以前は国民の半分が餓死するような国の
 隣では大豊作の国があり、協力なんてしなかったからね」
勇者「うん……」

魔王「だが、物流が改善されたとはいえ、この世界の
 食料生産そのものが劇的に向上した訳じゃない」

勇者「……?」

魔王「判らないのかい? ……つまり、まだ餓死者は
 いるんだよ」

勇者「ああ。旅の途中でいくつもの村で、飢えた子供を見たよ」

魔王「そんな世界で、『大戦争による死者』が居なく
 なったらどうなる? 長い戦争で剣を振るう以外に
 生きる術を知らない何十万人もの人間が中央大陸に
 あふれるんだ。彼らは生きているから食料を必要とする。
 人間は増えるぞ? ――でも、食料はそこまで増えない。
 この世界にはまだ輪作の概念すらないんだ」

勇者「そんな……」
魔王「それが現実なんだ」

39: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/03(木) 18:03:12.31 ID:sHbYBGGTO
面白い

ゲーム化確定

40: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/03(木) 18:04:09.74 ID:INursCOY0
なるほど。
こういう視点でファンタジーを見るのもおもしろそうだな

41: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/03(木) 18:04:32.19 ID:s4r1gUtjP
勇者「だって、だって」
魔王「だいたい、何で君は1人でここにいるんだ?」
勇者「……へ?」

魔王「腐っても魔王城だぞ。そりゃ警備をくぐり抜けて
 こんな所まで来れちゃう君は突然変異というか、
 それこそ冗談みたいな奇跡だけど」
勇者「何を言ってるんだ?」

魔王「戦争を終わらせるのは、軍の仕事だろう?
 君は勇者じゃないのか?」
勇者「勇者だよっ。それが俺の天命だっ」

魔王「敵の王の命を単身仕留めるのは
 暗殺者の仕事じゃないのかい?」

勇者「……っ!?」

魔王「多分ね。……人間の王たちも判っているよ」

魔王「この戦争が終わったら、勝っても負けても
 人間は滅びてしまうって」

勇者「……」

魔王「だから君を1人で送り出したんだよ」

42: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/03(木) 18:05:47.02 ID:NsnMGxXP0
なにこのネ申スレ

43: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/03(木) 18:07:47.42 ID:hROtz5Pp0
>>1と書いてる人、別人なんだな

45: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/03(木) 18:11:57.67 ID:INursCOY0
>>43
え、じゃあ、これって書き貯めじゃないのか?

46: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/03(木) 18:13:18.95 ID:s4r1gUtjP
>>43
P2はスレ立て規制中なのだ。
だから空いてるスレに即興で書いてるのだお。
1が帰ってきたらいるでもやめるぽ。

48: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/03(木) 18:14:20.67 ID:JfwSSBtrO
>>43
今までこういうスレだと思って読み進めてたんだけど違うのか?

50: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/03(木) 18:18:46.41 ID:6RxRyL350
もうこういうスレでいいじゃん
魔王は屈強なおっさんを想像してた…

44: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/03(木) 18:07:55.85 ID:s4r1gUtjP
勇者「……」

魔王「一方的なことを云ってしまったけれど、それは
 魔族の側も事情は一緒でね。知っていると思うけれど
 一口に魔族といっても、その内情は様々なんだ。
 有角族や飛翼族、鉄蹄族。スライムや遊びコウモリ
 なんていう低級なヤツらも沢山いる。
 悪戯好きなだけの種族も多いけれど、有力な氏族は
 ひどく好戦的だし、種族中心主義だ」

勇者「そうなのか……」

魔王「うん、そうなんだ。
 私はね……見ての通り、腕も細いし、ひ弱で華奢だろ?」

勇者「魔法で戦うんじゃないのか?」
魔王「そりゃまぁ、使えるけれど。
 大魔法使いというほどじゃない」

勇者「なら、どうして魔王になれたんだ?」

魔王「要領とタイミングと、なんだろう。
 ……多分、偶然で」

49: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/03(木) 18:18:08.19 ID:s4r1gUtjP
魔王「私の一族は変わり者が多くて、魔界の端っこで
 長年研究をしていてね。私の専門は経済なんだ」

勇者「経済ってなんだ?」

魔王「信じられないなぁ、人間の文明の程度は」
勇者「なんかむかつく」

魔王「魔族も人のことは云えない。
 この戦争が終わったら、たとえ魔族の側が
 勝ち残ったとしても、前にも増した乱世が始まるよ。
 今度は人間の土地を舞台にして、奴隷を奪い合う
 恐ろしい時代が幕を開けるだろう。
 有力な魔族は人間の王国を次々と勝手に略奪して
 それぞれを自分たちの『植民地』と呼ぶ時代だ。

 裕福になった戦闘的な氏族は
 その富で弱小氏族を従えたり、より大きな戦力を
 調えて魔族統一を目指すだろうけれど
 いまよりもっと混沌とした魔界はたやすく統一なんか
 出来るわけが無くて、いまよりずっと多くの
 血が流れるだろうね」

52: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/03(木) 18:22:11.68 ID:s4r1gUtjP
勇者「植民地?」

魔王「他人の土地に攻め込んで支配して、
 自分たちの場所であるかのように利益を吸い上げること」

勇者「許されるわけ、無いっ」

魔王「人間が勝ったら魔族の土地に同じ事をするだろうね」

勇者「人間は、そんなことっ」

魔王「……」
勇者「……」

魔王「しないって、云えないだろう?」

勇者「……」

魔王「まぁ、いろんな世界がそうやって滅びていったんだ」
勇者「世界?」

魔王「ああ、それは私たち一族の研究だよ。
 気にしないで。でも、私は……」

53: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/03(木) 18:26:43.76 ID:s4r1gUtjP
魔王「私は、まだ見たことがない物が見たいんだ」
勇者「……」

魔王「勇者になら、判るかも知れないと思ったんだよ」
勇者「何を、だよ」

魔王「言葉では言い表せないけれど」
勇者「お前学者なんだろ?」
魔王「学者……? ああ、うん、そんな物だ」

勇者「じゃぁ、説明しろよ」
魔王「うーん、つまり」

勇者「……」

魔王「『あの丘の向こうに何があるんだろう?』って
 思ったことはないかい? 『この船の向かう先には
 何があるんだろう?』ってワクワクした覚えは?」

勇者「そりゃ……あるけど。わりと、沢山」

魔王「そうだろう? 勇者だものな!」
勇者「何でそんなに嬉しそうなんだよ」

54: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/03(木) 18:30:05.56 ID:s4r1gUtjP
魔王「だから、そう言う物が見たいんだ」
勇者「……勇者になりたいのか?」

魔王「近い。でも、違う。だって私は学者
 なのだろうし、いまのこの身は魔王だ……」

勇者「……」

魔王「やってて幸せとは云えないけれど
 責任を感じるし他の誰かに押しつける気はない。
 勇者じゃない私が、勇者になりたいなんて
 そんな夢物語で時間を浪費するつもりはないんだ。
 けれど」

魔王「見たことがない物は、見てみたい」

勇者「……そか」

魔王「だから、もう一度云う。
 『この我のものとなれ、勇者よ』
 私が望む未だ見ぬ物を探すために
 私の瞳、私の明かり、私の剣となって欲しい」

勇者「断る」

55: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/03(木) 18:31:56.02 ID:8SE1zQF00
ドラクエ1のエンディング詳細はこれだったのか!!!

109: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/03(木) 19:52:36.79 ID:yPDuc+cD0
せかいをはんぶんこ!

56: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/03(木) 18:32:17.06 ID:6RxRyL350
見てるよ見てるよ

57: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/03(木) 18:34:02.22 ID:s4r1gUtjP
魔王「だめか?」
勇者「だめ」

魔王「絶対か?」
勇者「絶対」

魔王「交渉の余地はないのか?」
勇者「ない」

魔王「……」
勇者「……ないぞ? ほんとだぞ」

魔王「あると見た」

勇者「くぁ、なんでそこで上目遣いなんだよ。
 学者がとって良い態度かよっ」

魔王「学者であると同時に私は経済屋なんだ。
 経済屋は決して諦めない。どんなことにでも
 妥協して明日を目指すんだ」

勇者「なんだか俺より勇者っぽい」

58: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/03(木) 18:34:38.17 ID:qOWxW7aqO
支援!おもしろいよ。

59: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/03(木) 18:39:17.01 ID:s4r1gUtjP
魔王「故事によれば『世界の半分』を交渉材料にするらしい」
勇者「へー」

魔王「余裕たっぷりだな」

勇者「そんなので転ぶ勇者がいるかよ。
 もしいたらそいつは勇者でも何でもない。
 1から出直せって話だ」

魔王「うん、私の知っている故事でも
 結末はそうなっていた」
勇者「ださっ」

魔王「私もそう思う。そもそもその魔王だって
 世界征服が終了していた訳じゃないだろうに。
 自分が所有していない物件の50%を譲渡するなんて
 商道徳にてらしても法的観点から見ても
 契約の有効性に疑問を持たざるを得ない」

勇者「そういう嘘つきだから勇者にふられるんだよ」
魔王「仰せの通りだ」

61: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/03(木) 18:44:23.58 ID:s4r1gUtjP
勇者「だからといって魔界の50%譲渡とか云ったって
 俺は絶対うんなんて云わないからな。
 そんな見知らぬ土地なんかもらったってちっとも
 嬉しくない。そもそも賄賂や金品で転ぶなんて
 勇者のすることじゃないぞ。
 人間ってのは、ベッド一個のスペースと、
 毎日腹が満ちる程度の雲のがあればそれで充分なんだ」

魔王「清貧の志だな」

勇者「貧しいとか云うな。魔王のクセにっ」

魔王「私としても領土の割譲をテーマに交渉する気はない」
勇者「そうなのか?」

魔王「領土割譲は、後世の統治から見た場合、
 民族問題やプライド城の問題があって、紛争の火種に
 なることもしばしばなのだ。眼前の交渉が重要とはいえ
 後世に禍根を残すのは気が進まない」

勇者「ふぅん……。そういうものなのか」

魔王「そうなのだ。それにだいたい『50%』という
 言い方が良くない。それでは結局『こちらとそちら』が
 再生産されるだけではないか」

62: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/03(木) 18:44:25.04 ID:tjWFelAOO
勇者がうざい

63: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/03(木) 18:48:30.93 ID:VDp+O7me0
なんという良スレ

64: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/03(木) 18:49:02.17 ID:wTnPTrp80
支援

65: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/03(木) 18:49:22.62 ID:0Tddc46GO
魔王は目元に憂いを湛えた大人の女性だな

66: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/03(木) 18:50:17.49 ID:s4r1gUtjP
勇者「どうゆうこと?」
魔王「つまり、世界を分割するのが問題だ、ということだ。
 その分割という発送は、結局現在の問題である
 『人間世界と魔族世界』という対立を
 『勇者の支配地域と魔王の支配地域』という対立に
 問題をすり替えただけだという話だ」

勇者「あー。もっともな話だ」

魔王「だろう? それは交渉でも妥協でもなく
 ただの時間稼ぎに過ぎない」

勇者「ふむ」

魔王「故にその種の論法は却下だ」
勇者「じゃぁ、交渉も失敗だな。時間もちょうど半日だ。
 ……戦闘するような気分じゃなくなっちゃったけれどさ」

魔王「いや、ちゃんと提案はある」
勇者「あるのか?」

魔王「半分などとけちくさいことは云わない。
 でも大地は私の物ではないから差し出せない。
 勇者が欲しい。代価は私にはらえる全て。
 つまり、私自身だ。
 これだけは私の意志で勇者に捧げられる。
 お願いだから私の物になってくれ」

67: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/03(木) 18:53:20.60 ID:oC5/O60WO
お金って何だろうって最近よく考える
よくインフレにも成らず、調整が出来てるよな。

68: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/03(木) 18:55:56.79 ID:s4r1gUtjP
勇者「……お、お、おまっ」
魔王「口をぱくぱくさせると間抜けに見えるぞ」
勇者「なっ何をっ」

魔王「交渉の提案だ」
勇者「何言ってるか判ってるのかっ?」

魔王「判っている」
勇者「しょ、正気かっ!?」

魔王「もちろんだ」
勇者「もうちょっと物考えて発言しろ!
 わ、わ、わ、わきまえろっ!!」

魔王「そんなに驚かないでも良いではないか。
 人間世界では15にもなれば農夫の息子だろうが
 宿屋の娘だろうが、そこら中でこのような睦言と
 甘やかな契約を交わして乳繰りあっていると聞く」

勇者「聞くなよっ」

魔王「正確には書物で読んだわけだが。
 ――読んだだけで実体は不明で経験もない。
 これも一つの『未だ見ぬ物』だな」

69: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/03(木) 18:56:00.06 ID:INursCOY0
魔王のイメージが色っぽい大人のお姉さんで固まった
なんという誘惑。ここで頷かなければ勇者は男じゃない

70: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/03(木) 18:58:44.10 ID:hROtz5Pp0
魔王-お姉さん
勇者-若造

71: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/03(木) 18:59:54.23 ID:s4r1gUtjP
勇者「何を」
魔王「優れた提案とは提案した時点で
 提案者の目的の一分を達せられるのだ。
 『純潔を捧げる願い』を告白するなどと
 私の人生に訪れるとは思っていなかった知見だ。
 精神的に平静ではいられないなんて貴重だな」

勇者「まるっきり平静に見えるよ」

魔王「ダメか?」
勇者「だっ、だめっ!!」

魔王「絶対か?」
勇者「ぜ、ぜ、ぜ」

魔王「前回よりもさらに余地があるように見える」
勇者「近寄るなっ」

魔王「許可無い限り触れたりしない。私は奥手なんだ」
勇者「契約主義者ってさっきまでは云ってたじゃないか」

魔王「それは真実だ。『奥手』というのは
 真実にかぶせる演出上の工夫だ」

75: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/03(木) 19:05:18.00 ID:s4r1gUtjP
魔王「勇者」
勇者「何だよっ」

魔王「んぅ。話づらいな」
勇者「あんだけ悲惨な未来をぺらぺら解説して
 やがったじゃないか」
魔王「あれは専門分野の講義だったから」

勇者「どんだけ死にものぐるいな専門分野なんだよ」
魔王「経済というのは血が流れない戦争なんだ」

勇者「おっかないよ。戦闘能力のない魔王を
 初めておっかないと思ったよっ」
魔王「怖がらせるのは本意ではないし……。
 混乱させたら申し訳ないと思うけれど」

勇者「……」

魔王「少しセールストークをする」
勇者「うー。押されてる」

魔王「私を独占すると色々便利だぞ?」
勇者「たとえば?」

魔王「家計簿を付けるのが得意だ。完璧を約束できる」

76: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/03(木) 19:06:40.52 ID:8SE1zQF00
意外に庶民的w

77: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/03(木) 19:07:18.30 ID:iSLHBLTp0
魔王のセールストークに思いっきりグラついたw
かわいすぎるだろwwwww

78: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/03(木) 19:07:25.36 ID:yPDuc+cD0
いいお母さんになりそうですw

79: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/03(木) 19:07:27.14 ID:zBdn+UA50
魔王結婚してくれ

80: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/03(木) 19:09:56.32 ID:s4r1gUtjP
勇者「なんだかなぁ。家計簿か」
魔王「それにね」
勇者「?」

魔王「この戦争の向こうに行ける」
勇者「それは出来ないって云ってたじゃないか」

魔王「もちろん、すぐには無理だ。人間の王たちも
 納得はしまい。私が投降しても、それは秘密裏に
 処理されて、偽魔王が立てられるだろう。
 それくらいこの戦争は、人間社会に必要になって
 しまっている」

勇者「……」

魔王「でも、だからこそ、それが『別の結末』を
 迎える事ができるのならば、
 それは私にとってだけじゃない。
 三千世界にとって『未だ見ぬ物』じゃないだろうか?」

勇者「……」
魔王「どうだ?」

88: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/03(木) 19:17:09.59 ID:s4r1gUtjP
勇者「それが」
魔王「ん?」

勇者「おまえなんだ」
魔王「うん、これが私なのだ」

勇者「ずっとそんなこと考えてきたんだ」
魔王「戦争を終わらせるのが軍だとすれば
 終わる着地点を模索するのが王の役目だ」

勇者「そのために俺を欲しがったのか?」
魔王「うん、まぁ。そうとも云える」
勇者「……」

魔王「いや、誤解しないでくれっ。
 勇者が欲しいのは本当だぞ?
 向こう側を一緒に見に行く連れが欲しいだろう?
 朝の散歩に一緒に出かけるような気分なんだっ。
 それから家計簿も本当だ。偽りはない。
 なんだったら賃借対照表や生涯賃金提案書も書けるぞっ。
 足りないかっ? 足りないのか?
 そうだな。……あまりにも粗末な粗品だが
 一緒にいるのも得意だ。私は静かな魔王だからな。
 部屋に置いておいても邪魔にはならないことに定評がある
 添い寝とかも多分役に立たないほど下手だろうが
 セット商品についている細々とした備品程度でいいならな
 付けることが出来る」

90: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/03(木) 19:20:55.82 ID:LTpYI0vmO
魔王可愛い

92: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/03(木) 19:24:09.48 ID:s4r1gUtjP
勇者「あー」

魔王「契約詐欺にならないようにあらかじめ
 告げておかなくてはならないのだが、
 私は料理は不得手だ。料理は科学なのだろう?
 わたしにはゲル化や乳化を行なうための
 洗練された手先の技術が欠けているようで
 調理に関して期待してもらっては困る」

魔王「それから、あー。
 世間の、ほら。大多数の一般的な性別において
 男性を有する成人の人間が望むような外見的
 肉体的な美しさには欠けていると思われる。
 運動不足だしな」

勇者「そうか? そ、そんなことないだろ」

魔王「いいや、そんなことはあるのだ。
 これは侍女たちの用意した魔王のお仕着せであって
 欠点が隠れて、と言うか、見えないだけで、
 二の腕とかつまめるのだっ」

勇者「泣きそうになるなよ」

魔王「ぷるぷるなのだぞ!?」

97: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/03(木) 19:29:31.81 ID:s4r1gUtjP
勇者「いや、その……大変美味しそうに見えます。
 ……特に胸とかおっぱいとか」

魔王「いや、いいんだ。無用な慰めだ。
 それに地味すぎて、こればかりは申し訳ない。
 思うに我が一族の頭部は長い伝統で
 見てくれよりも中身を重視してきたはずで」

勇者「そうか?」

魔王「私も娘時代、つまり150年ほど前だが
 その時代にもうちょっとこう、何というか
 身なりやお手入れに気を配っておけば
 こんな一世一代の交渉時、リコールにおびえる経営者の
 気分を味合わないで済んだはずなのに……」

勇者「用語が難しいな」

魔王「世の中は色々難しいのだ」

勇者「まったくだな」

98: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/03(木) 19:31:19.59 ID:0Tddc46GO
一瞬魔王の頭部が長いのかと思ったぜ…

101: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/03(木) 19:34:50.04 ID:tjWFelAOO
>>98 俺も焦ったわ

99: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/03(木) 19:31:33.06 ID:uUam7kAj0
巨乳お姉さんとな

100: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/03(木) 19:34:36.34 ID:s4r1gUtjP
魔王「とにかく、そう言った外見的な物については
 あまり満足のいく案件ではないのだが、経済を
 中心にした知識と……知識と……。
 それくらいしか誇れないのか、私は」

勇者「……」

魔王「あと誇ることが出来るのは、貞淑さくらいだ。
 私は長命種で、学者の家系の出だからな。
 それに純然たる契約主義者でもある。
 私にとっていったん締結されれば
 この種の契約は魂にまで食い込み
 過去も未来もその一転において鋼に勝る強度を持つだろう。
 ――側近く侍る。直ぐなる時も病める時も寄り添おう。
 それは約束できる」

勇者「……」

魔王「どうだ? 私の物にならないか?
 私はあんまり我が儘は言わないぞ。
 『丘の向こう側』に一緒に行ってくれれば
 それだけで満足だ」

103: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/03(木) 19:40:31.38 ID:s4r1gUtjP
勇者「沢山殺すことになるんだろうな」

魔王「ああ。……うん。誤魔化さない」

勇者「河が血で染まるほどかな」

魔王「うん、終わるまでは。手を血で汚さない約束は
 できない。私も、勇者も、非道なことを
 沢山することになるだろう」

勇者「裏切り者と呼ばれるかな」
魔王「それは、正体を隠すことも出来る。
 私の誇りにかけて、勇者の伝説は綺麗なままに
 出来るはずだ」

勇者「必要なのか?」
魔王「それは違う。このままワルツのように戦争を
 消耗を繰り返し、屍山血河の平和を享受することも
 この世界に許された選択肢の一つだ」

勇者「それはそれでおびただしい犠牲だろう」
魔王「でも勇者が直接的手を汚さないで済む」

104: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/03(木) 19:46:44.08 ID:s4r1gUtjP
勇者「なんだよ契約したくないのかよ」
魔王「騙して契約したくないんだ」

勇者「そか」
魔王「騙して手に入れたものは、一夜で失われる」
勇者「信義に厚いんだな」

魔王「善悪の話じゃない。ゲーム理論で証明された
 商道徳レベルでの話だよ」

勇者「よし、お前の物になる」
魔王「いいのか?」

勇者「いいんだよ。……あー、いっとくけどなっ」
魔王「?」
勇者「おっぱいのためじゃないからなっ!」

魔王「こんなものがいいのか?」 ふにふに
勇者「自分で揉むなっ」

魔王「勇者」
勇者「何だよ、魔王っ」

魔王「触れたい。触って良いですか?」

105: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/03(木) 19:47:15.39 ID:Nsb3gHws0
魔王は、FF8のイデアだ
異論は、認める

110: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/03(木) 19:57:12.81 ID:s4r1gUtjP
勇者「……」
魔王「信用してないな?」

勇者「口調がいきなり丁寧でびっくりしただけだ」
魔王「少しだけだから、触らせてくれ」
勇者「判った」
魔王「……」 おずおず

勇者「魔王、手がひんやりしてるな」
魔王「冷たいか? 済まない」
勇者「いや、気持ちよい」

魔王「私は、勇者のものだ」
勇者「俺は魔王のものになる」

魔王「契約成立だ」 勇者「契約成立だな」

魔王「嬉しいぞ」にこっ
勇者「……。くぁっ。は、はなれろっ」
魔王「そうか?」
勇者「で、最初の一手はどうするんだよ」

魔王「そうだな……まずは、麦から手を付ける」
勇者「麦か……。長い旅になるな」
魔王「もちろん。わたしは勇者と一生離れる気は
 ないんだからなっ」

111: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/03(木) 19:58:56.62 ID:INursCOY0
なんだ、もっと見ていたいんだが、もう終わりなのか…?

112: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/03(木) 19:59:34.85 ID:s4r1gUtjP
よし、良い区切りまで来たし、
いったんおわるんだぜ、べいべいぇー。
魔王と勇者は、このあと世直し旅? すんのかなー。
お腹減ったんだぜー。

113: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/03(木) 20:00:31.57 ID:vt5xegV+O
魔王が急に可愛くなった

114: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/03(木) 20:00:33.29 ID:FgcY1YL00
おつ!面白いから期待してるぜ

115: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/03(木) 20:01:30.74 ID:jRO4gQ6G0
ひとまず乙
経済なんたらかんたらの話面白かったよ
もっと読みたい

118: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/03(木) 20:11:23.91 ID:hZUXhspQ0
続けてもいいんじゃよ?

119: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/03(木) 20:23:35.09 ID:aUNI2KPT0
終わり?

121: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/03(木) 20:49:58.07 ID:tjWFelAOO
続きに期待

130: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/03(木) 22:54:12.52 ID:56Uu5Ef2O
保守

132: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/03(木) 23:28:25.44 ID:voFsT+3oO
ほあ

133: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/03(木) 23:39:08.74 ID:s4r1gUtjP
――冬越しの村

勇者「うぉ、寒くなってきたな」
魔王「これから冬に向かっていくからな」

勇者「こんな中途半端なところで良いのか?」
魔王「中途半端とは?」

勇者「いや、だからさ。魔王の話によれば
 いまの人間、中央大陸にとって麦は食料として大事だ。
 ってことを基本にしてるんだろう?」
魔王「ああ、そうだ」

勇者「だったら、もっと農業大国の湖の国とか
 紫旗女王国とかさ、そっちに行った方が良いんじゃね?」

魔王「話が聞いてもらえるならな」
勇者「あー」

魔王「勇者もしばらくは姿を見せない方がよいと思う」
勇者「そうか?」

魔王「ああ。あんな風に私の所へよこされたんだ。
 誰かが勇者を疎ましく思っていたのかも知れない」
勇者「んなことないって」

134: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/03(木) 23:39:32.45 ID:FgcY1YL00
おお まっていたぞ

137: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/03(木) 23:45:31.80 ID:s4r1gUtjP
魔王「それに何処に行って紹介するにしたところで
 説得力を出すためには実際の実験と資料が必要だ」
勇者「そりゃそうだ」

魔王「この村でそのための手はずを整える」
勇者「そう、なのか?」

魔王「うむ。手の者を忍び込ませているのだ」
勇者「手回しが良いな」
魔王「何事も根回しと調整が必要だ」

勇者「この村か」
魔王「ああ、何の変哲もない村だろう?」

勇者「うん、こんな村は沢山知っている」
魔王「『南部諸王国』辺境部では典型的な開拓村だな。
 複合的な大規模農業を中心に小作農や職人たちが
 緩やかな村を形成している」

勇者「魔王軍との戦いもあるだろうになー」
魔王「それでも大地にしがみついて生きてゆくんだ。
 人間はそこがすごいところだ」

139: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/03(木) 23:49:39.59 ID:s4r1gUtjP
勇者「で、手の者ってのは」
魔王「ああ。小さな一軒家を用意してもらってるんだが。
 どこなのだろうな。この村としか聞いてないんだが」

勇者「あー。そうなのか? 探せば判るんだろうけれど
 そろそろ陽も暮れるし、こんな寒い中をうろつき回るのは
 ぞっとしないなぁ」

魔王「うむ、もっともな指摘だ」
勇者「だよなぁ」

メイド長「まおー様ぁ~まおー様ぁ~♪」
勇者「ば、ば、ばっ」

魔王「おお。この声は」
メイド長「まおー様~♪」

魔王「おお、紹介しよう。勇者!」
勇者「この馬鹿っ。一応人間の村だぞっ!
 まおーまおー叫んでどうするっ!」

魔王「む。そう言えばそうだ。以後注意するように」
メイド長「はい、まおー様!」

142: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/03(木) 23:55:53.42 ID:s4r1gUtjP
魔王「まぁ、大丈夫だ。そんなに怒ってくれるな」
勇者「むー」
メイド長「怒りすぎると皺が取れなくなりますよ」なでなで

勇者「こいつは何なんだ?」
魔王「これは私の側近で、メイドを束ねるメイド長だ」

メイド長「ご紹介にあずかったメイド長です。
 まおー様のことは幼い頃から世話をさせていただいて
 おりますわ。この度は勇者様とまおー様のご結婚
 まことに喜ばしく、お見守りさせていただいてきた
 この身、この胸の内も震えんほどです」

勇者「突っ込みどころはたくさんあるんだけど、
 最大のものは結婚なんてしてないって事だぞ」

メイド長「そうなんですか?」

魔王「期間無制限の相互所有契約だ」
メイド長「あらあら、まさに結婚じゃないですか」

魔王「白詰草とクローバーほどに違う」
メイド長「それじゃ同じものじゃないですか」

145: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/04(金) 00:02:31.05 ID:AIDyRnsCP
魔王「あえて名前を変えることによる風情の違いがある」

メイド長「ああ、そうでしたか!
 メイドと召使いと側女と寝室奉仕奴隷のようなものですね」
魔王「それも風情か?」

勇者「……」

メイド長「風情は大事ですよ。男女間の機微の80%は
 風情で構成されていると言っても過言ではありません」
魔王「なんと! それでは殆ど具材がないではないか?」
メイド長「そこがミソなんですよ」

勇者「あのー。寒いんだけど」

メイド長「おやおや、まぁ!」
魔王「勇者が寒いと云っているんだ。どうにかならんか?」

メイド長「では、こちらへ。ご案内しますわ」
魔王「おお、守備はどうだ?」

メイド長「さほど大きくはありませんが、
 村はずれの古い館を改修してございます」

魔王「でかしたぞ、メイド長」

146: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/04(金) 00:09:14.85 ID:EUtQl2pV0
実に瀟洒

147: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/04(金) 00:12:08.05 ID:AIDyRnsCP
――古びた洋館

勇者「なんだよなんだよ。充分でかいじゃないか」
メイド長「とんでもない。魔王城の1/100以下です」

勇者「あれはダンジョンだろ。一緒にするな」
魔王「いや、私はあそこに住んでたんだがな」
勇者「ああ、そっか」

メイド長「こちらへどうぞ。
 ただいまお茶をお持ちしましょう」

魔王「すまんなー」
勇者「側近って、どんな関係なんだ?」

魔王「うむ。ああ見えてメイド長はわたしの親戚なのだ」
勇者「学者なのか?」

魔王「んー。学者というと語弊があるな。
 学者一族と云うより『好奇心を抑えられない一族』なのだ。
 しかも専門ジャンルを追求してしまう類の。
 彼女は、私から見ると年上なのだが、
 なんだか『メイド道』とやらに目覚めてしまってな」

勇者「ふむ……」

149: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/04(金) 00:17:39.88 ID:AIDyRnsCP
メイド長「殿方における騎士道と似たようなものですわ」
魔王「早いな」

メイド長「紅茶でございますよ。
 蜂蜜をたっぷり入れておきましたから」

魔王「まぁ、そんなわけで、ずっと一緒に育ったし
 魔王軍の指揮なんかを任せたこともある」
勇者「おいおい、メイドってそんなことも出来るのか!?」

メイド長「主人のどのような求めにも応える。
 それが私の『メイド道』ですわ」

151: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/04(金) 00:25:09.34 ID:xmRb8YGYO
メイドって凄い

152: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/04(金) 00:25:10.69 ID:AIDyRnsCP
魔王「これは、この館はどういう物件なんだ?」
勇者「そうだ、気になってた」
メイド長「さる貴族の別邸だったらしい建物でございます。
 その貴族……騎士家だったそうですが、その家そのものは
 跡継ぎを戦争で亡くされ、この館は手放されたとか」
魔王「正規の手段で手に入れたのだろうな?」

メイド長「ええもちろんです。
 修繕を依頼した職工の方々への支払いも現金で行ないました」
魔王「うむ」

勇者「……穏当だな、以外に」
魔王「いずれ実力行使でなければ意を通せない相手も出てくる。
 穏やかに通るところで無駄に暴力は使いたくない。
 ……嫌われると困る」

勇者「?」

魔王「なんでもない。
 ……で、我らはこの館に逗留して。んー身分は
 どうしたものかな」

153: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/04(金) 00:32:06.31 ID:AIDyRnsCP
メイド長「村長以下主立った方々へのご挨拶は
 すませております。聖王都の神学院で研究なされた
 高名な学者の姫君だと」

魔王「そんなんで通るのか」
勇者「格好さえどうにかすれば余裕だろう?」

魔王「この白衣とローブではだめかな」
勇者「ダメっぽいんじゃね?」
メイド長「ダメでしょうね」

魔王「着心地が良いんだが」
勇者「姫君ってのは着心地度外視で服選ぶんじゃねぇかな」
メイド長「そうですね。視線を意識せざるを得ない服で
 緊張感を維持しているのかと思われます」

魔王「緊張感がないと!?」
メイド長「そうは申しておりません。しかし……」

魔王「なんじゃ」
メイド長「お耳を拝借いたします」

魔王「ふむふむ……」

154: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/04(金) 00:33:27.02 ID:StalYhMD0
ずいぶん形から入るんだな

155: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/04(金) 00:35:13.37 ID:bh9onqb90
結局
魔王→女
勇者→男
で落ち着いてたのか

158: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/04(金) 00:35:41.98 ID:AIDyRnsCP
魔王「勇者、勇者」
勇者「どうした?」

魔王「緊張感のない肉は駄肉か?」 じわぁ
勇者「なんで半べそなんだよ」
魔王「そう言われたのだ」
勇者「あー」

魔王「駄肉か? 駄肉なのか!?」
勇者「あー。そのー」
メイド長「お茶のお代わりはいかがでございましょう?」

魔王「ゆるんでぷにってしまうのか?」
勇者「コメントしづらいな」
メイド長「冬場は特に運動が不足しますからね」
魔王「うううう」

勇者「……その、たまには着飾るのも良いんじゃないか?
 目先が変わって。その、風情とか云うヤツだ」
メイド長「さようでございますよ、まおー様」

魔王「そ、そうか……」

159: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/04(金) 00:40:22.91 ID:s4/0828FO
上手いこと誘導されとるww

160: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/04(金) 00:44:06.99 ID:AIDyRnsCP
勇者「で、挨拶がどうとか」
メイド長「ああ、そうでした。
 その学術の研究と、新しい農作指導のために
 この村に興味を持たれてやってくる、というような
 説明をいたしております」

魔王「そうか、話が早くて助かる」
勇者「そうだな、農業ともなれば時間がかかるものな」

メイド長「ええ。……まおー様」
魔王「ん?」

メイド長「魔王軍の方はいかがしましょう」

魔王「ああ。そうだな」 ちらっ

勇者「どうかしたか?」

魔王「勇者と私は、魔王の大広間で決闘をしたとしよう。
 そこで両者共に深い傷を負ったという噂を流せ。
 私はその傷を癒すために冥界温泉で療養中だ。
 勇者は生死不明、一説によると落ち延びたと」

メイド長「かしこまりました」

161: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/04(金) 00:44:30.85 ID:pYANVDFA0
魔王かわいいよ魔王

162: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/04(金) 00:48:41.23 ID:AIDyRnsCP
魔王「それでいいか? 勇者」
勇者「ああ。かまわない。俺はどうせ魔王のものだしな」

メイド長「あたあた、まぁまぁ」にこっ
魔王「からかうな」

魔王「この噂で、まぁ1年くらいの時間は稼げよう。
 魔王軍の急進派も何かの策略ではないかと見て
 しばらくは動きを控えるだろう」

勇者「1年か」

魔王「その他にも手は打つ。粘るつもりもあるが
 まぁ、3年と云ったところだろうな、猶予は」
勇者「……」

魔王「その間に『まだ見たことのない結末』を
 見つけなければならない」
勇者「見たいだけじゃなかったのか?」

魔王「……見つけ出さないと、私の持ち主に嫌われる」
勇者「あ、その。そ……そっか。そうだな」

164: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/04(金) 00:53:49.41 ID:AIDyRnsCP
魔王「それはいいとして、だ」
勇者「お、おう」

魔王「この地で結果を出したいのは、農法の改善だ」
勇者「のーほー?」

魔王「農業の方法だ」
勇者「農業の方法たって、
 種撒いて芽が出て収穫するだけだろ?」

魔王「その方法を改善する」
勇者「うーん。改善なんてあるのか?」

魔王「同じ土地で麦を収穫し続けると
 どんどん質がわるくなるのはしっているか?」
勇者「あー。聞いたことがあるぞ。
 大地の恵みみたいな物がなくなっちゃうんだろう?」

魔王「この辺りで広く行なわれているのは三圃式農業という
 もので、畑を3種類に分ける。
 それぞれ夏に使う、冬に使う、一年間お休みと分けるんだ。
 そしてローテーションさせてゆく」

166: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/04(金) 01:03:56.12 ID:TMJUmSgc0
三圃式農業とか久し振り聞いた
高校の地理以来か・・・

165: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/04(金) 00:59:01.92 ID:AIDyRnsCP
勇者「工夫してあるんだな。ふむふむ。
 いや、まてよ? そもそも何でローテーションするんだ?
 どんどん新しい畑を開拓すればいいじゃないか。
 新しい場所なら大地の恵みもたくさんある」

魔王「ばかもの。
 誰もが勇者のように化物じみた戦闘能力と体力と
 破壊魔法を使えると思ったら大間違いだ」
勇者「そ、そか?」

魔王「開拓には長い時間と労力がかかる。
 それにそうやって開拓範囲を広くすれば、
 収穫や種まきなどで移動しなければならない
 距離も広がるし、魔物や野生動物から防衛しなければ
 ならない敷地も広がってしまう」

勇者「そういえばそうか」

魔王「そこで3分割ローテーションを行なっているのだが」
勇者「ふむふむ」

魔王「この手法をより改善して、
 食料の供給量を増やすのが当面の目的だ」

167: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/04(金) 01:06:07.19 ID:AIDyRnsCP
勇者「目的は判った。けれど、具体的にはどうするんだ?」

魔王「輪作……つまりローテーションという概念は良いんだ。
 これを4回転式に改善しようと思う」

勇者「ふむふむ」

魔王「すなわち、大麦を作る畑、クローバを作る畑、
 小麦を作る畑、かぶを作る畑に4分割する。
 この四つをセットにして4年周期で畑を活用するんだ」

勇者「なんか、3ローテと大差がないように聞こえるな」

魔王「3ローテは1周期に一回お休みがあるだろう?
 こちらは4周期にお休みらしいお休みはクローバーだけだ」

勇者「それがそんなに大きい差なのか?」

魔王「差が出る秘密は、麦以外にある。それがカブだ」

勇者「シチューに入れると旨いけど、そんなに作っても
 飽きるだろう?」

169: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/04(金) 01:10:12.33 ID:AIDyRnsCP
魔王「もちろん人間が食べても良い。
 麦ばかりだと健康に悪いからな。だがこのカブは
 畜産の使うんだ。具体的に云うと豚の餌にする」

メイド長「豚、ですか?」

魔王「知ってるとおり、この寒くて貧しい地方では
 肉食というのは冬場の重要な栄養素だ。
 冬には充分な果物も野菜も採れないし、
 充分な穀物が無い事の方が多い。
 そこで豚を食べるわけだが、豚は生きているから
 活かしておくためには食料が必要だ。
 冬の間は人間の食糧すら不足するだろう?」

勇者「ああ、そうだな。だから豚は冬になる前に、
 最低限の数を残してしめちゃうんだ。
 それでソーセージやベーコンやハムにして、
 冬の間の食糧備蓄をする。南部諸王国じゃ
 何処でも見られる冬の始まりの風物詩って所だ」

魔王「冬場……つまり農作物が充分では無い時期の
 代替え的補助食料なのに、結局は農業と同じように
 季節に支配されている。これは非効率的なことだ」

170: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/04(金) 01:13:35.42 ID:MZUmdBBfO
おもしれぇ…

171: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/04(金) 01:14:22.20 ID:ymJMKDcU0
米みたいな連作に強い作物を作るって手もあるな

174: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/04(金) 01:21:22.41 ID:xmRb8YGYO
勇者で学ぶ農業

173: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/04(金) 01:17:28.72 ID:AIDyRnsCP
勇者「……云われてみれば、そうだな」

魔王「そこでクローバーとカブを使う。
 クローバーは夏場の間、豚や羊などの牧草になる。
 畜産をおこなえば肥料も出してもらえるしな。
 カブは冬の間に飼料として役立つ」

勇者「そうかっ!」

魔王「そうだ。この方法は『畑を休ませない』、
 『畑を痩せさせない』、『農作物以外も豊かにする』
 の三つのアイデアで出来ているんだ」

勇者「そこでこの村な訳か」

メイド長「どういう事ですか?」

勇者「この村みたいな、農業も畜産もやって、
 ある程度自給自足の体制の方がこの農法には都合が
 良いんだよ。データ採りの意味でも。
 都市部や、小麦ばっかりを大量生産している、
 それが出来ちゃうような温暖な地域では意味が薄い。
 東方の米みたいな穀物にも効果が薄い。
 『寒くて貧しい地域を救う』アイデアだから」

メイド長「そういうことでしたか!」

175: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/04(金) 01:22:32.70 ID:AIDyRnsCP
魔王「他にもいくつかある。北氷海の魚による肥料とか
 、農機具にも改良の余地がある」

勇者「へ? 色々あるんだな」

魔王「難しいのは、農地と村の統廃合だ。
 放牧地にした場合、羊などの動物はコントロールに
 難があるしな。いまの危険な時勢だと、この種の
 『開墾した権利』の縄張り争いは、たやすく利権の
 争いに変化してしまうのだ」

勇者「そうだな、それは予想がつくよ」

メイド長「でも、人間は土地を重視する、
 って、まおー様はいってましたよね。
 話し合いで解決するんですか?」

魔王「そこで魔族だ」
勇者「?」

魔王「魔族で村を攻める。
 どうせたいした守備軍もいないだろう?
 ちょっとした中隊規模で充分だ。
 脅して適度に放火でもしてやる。
 最悪の場合は主立ったものを殺すこともあるかもしれない」

勇者「……」

176: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/04(金) 01:23:52.47 ID:pYANVDFA0
高校で習った四輪作法とかいうの思い出した。
クローバーが土地の復活を早めるとか先生がいってた希ガス

177: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/04(金) 01:26:08.44 ID:AIDyRnsCP
魔王「村人が立ち退いたあとに、魔王軍は駆けつけた
 騎士団と一戦して引き上げる。開拓民は戻ってくる
 だろうが、それは領主の庇護下に入ってのことだろう。
 その状況なら、農地の整理や、村と村との統廃合も
 問題なく行くだろう」

勇者「……」

魔王「幻滅したか?」

メイド長「……まおー様」

魔王「むろん、手心は加える。そもそもこの手法は
 王国側、少なくとも騎士団には内通者というか
 こちら側の理解者が必要だ。
 だがこの種の作戦には事故がつきものだ。
 血が流れないと云うことはあり得ないだろう」

勇者「……」

魔王「だが、わたしは何かをすると決めたんだ。
 このまま、血まみれの夢に似た消耗戦を100年繰り返し
 取り返しのつかない停滞を過ごすつもりはない。
 わたしは『終わった後の物語』が読みたいんだ」

178: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/04(金) 01:31:23.17 ID:AIDyRnsCP
魔王「愛想が尽きたか?
 魔王なんて嫌いになったか?
 で、でもダメだぞっ。
 勇者は私のものだから。
 絶対に手放すつもりはないぞっ」

メイド長「……」

魔王「それとも、やっぱり魔王を退治するつもりになったか?
 それならそれで仕方がないが……。
 私は勇者のものだから
 その剣を避けるなんて出来ないけど……」

勇者「それでも……」
魔王「……」

勇者「それでも、救われる人はいるんだろう?
 この3年間の秘密休戦で救われる人はいるんだろう?
 それにその4ローテーションの工夫が上手く行けば
 毎年何万人もの飢えた子供たちが春を迎えられるんだろう?
 ――そして戦争を終わらせるための余裕が、
 人間の手に戻ってくるんだろう?」

179: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/04(金) 01:34:26.27 ID:AIDyRnsCP
魔王「そうだ」
勇者「なら俺はやっぱり魔王の剣だ」

メイド長「……」

勇者「俺は何をすればいい? 
……まぁ、うっすらと判っちゃいるんだが」

魔王「予想通りだ。
 勇者には『正義の味方』をやってもらう。
 攻め込んだ魔王軍を撃退する、南部諸王国領主の
 軍事的先鋒だ」

勇者「茶番だな」

魔王「うん。悪の首魁とこんな話をしているいま、
 それは限りなく茶番だろう」

勇者「100回地獄へ行っても救われないな」

魔王「判るなんて云わない」

勇者「でも『その役が』いないと始まらないもんな」

180: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/04(金) 01:34:43.49 ID:AvTxUljaO
勇者が少しずつ賢くなっていく

181: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/04(金) 01:36:08.31 ID:iyvdeica0
支援

240: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/04(金) 14:42:09.44 ID:AIDyRnsCP
――冬越しの村

魔王「思ったより難航しそうだな」
勇者「ああ、そうだな」
メイド長「あんなに分からず屋だとは思いませんでした」

勇者「仕方ないさ。俺たちにとっては挑戦だけど
 この村の人たちは、一年不作になっただけで人死が
 出るんだ」

メイド長「それはそうですが……」

魔王「考えてみると、この地よりも魔界の方が
 気候的には恵まれているな」

勇者「そういやそうだな」

メイド長「勇者様は魔界のあちこちに旅されたのですか?」
勇者「ああ、人間では一番の魔界通だと思うぞ」

メイド長「しかし、村長があの態度ですと
 農業技術の改良ですか? 難しいのでは……」

魔王「うむ。……露骨に断ってくるわけでもないので
 対処に困るな」
勇者「村長から見たら、魔王は貴族の令嬢に見えるんだ。
 正面から反対はできないさ」

243: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/04(金) 14:49:16.30 ID:AIDyRnsCP
メイド長「それならいっそ……」

魔王「却下」
メイド長「しかし、まおー様。目的のために手段は」

魔王「農地改革のために、細かい利権争いをする
 領主や地主を取り除くのはやむを得ない。
 生産性を上げるためには、必要なことだ。
 でもそれは、農業技術が発展して集約農業が
 可能になって初めて出来ることであって
 その技術的な先行試験場で、指導者を
 取り除くことには百害あって一理もない」

勇者「だよなぁ」

メイド長「困りましたね」

魔王「ん……。やはり教育程度がねっくなのか」
勇者「教育?」
メイド長「関係あるのですか?」

魔王「まぁ、いろいろとな。次の段階でと考えていたのだが
 あちこちに手を入れなければ物事が進まないようだ」

244: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/04(金) 14:53:13.70 ID:EUtQl2pV0
食糧調達したり闘ったりファンタジーの中の人も大変だな支

245: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/04(金) 14:54:32.24 ID:AIDyRnsCP
メイド長「何をするのです?」

魔王「考えても見ろ。私たちがこの村で生産性を
 向上させても。それを他の村や王国にも伝えて
 いかなければ、全体的な変化は望めない。
 でも私たちが一カ所ずつ教えて回るのは
 時間的に見ても経済的に見ても不可能だ」

勇者「道理だな」

魔王「だから、新しい技術を覚えて様々な国へ
 伝えるため専門の人員、まぁ、部下でも同盟者でも
 いいんだが、そういった人材も必要だ」

勇者「ふむ」
メイド長「それで、教育ですか」

魔王「ところで聞くが人間界の教育とはどうなってるんだ?」
勇者「そんなこと云われてもなぁ。そもそも教育って何だよ」

246: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/04(金) 15:00:09.67 ID:AIDyRnsCP
メイド長「……」
魔王「えーあー」

勇者「いやだからさー。当たり前みたいに
 難しい言葉を使われても」

魔王「つまり、知識を子供や年下の存在に伝えると云うことだ」

勇者「何だ、簡単な説明じゃないか。そんなのは
 人間社会にだって当然あるよ。そもそも教えなきゃ
 赤ちゃんは話せるようにだってならないだろう?
 このあたりじゃ、まずは子供はじいさんか
 ばあさんに預けられて、まとめて育てられるな。
 両親は畑や狩に出かけるから、同年代の複数の家の
 子供がまとめて面倒を見てもらう」

メイド長「効率的なんですね。お年寄りにも仕事が出来ます」

勇者「ある程度年甲斐ったら、農作業の手伝いをすることに
 なるな。魔王みたいな理屈での話じゃないけれど、
 いつ何処に何を作付けするかとか、天気の読み方だとか、
 獣の避け方だとか、そう言う知識は数年も働けば自然と
 身につくもんだ」

247: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/04(金) 15:03:00.78 ID:fPOGtycd0
支援

249: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/04(金) 15:24:38.66 ID:AIDyRnsCP
勇者「それから、この地方の冬は深いんだ。
 雪がどっさり降るし、冬には嵐がやってくることも多い。
 この地方のこんな村では、冬の間は殆ど家の中に
 閉じ込められるんだ。そんな間、農民たちは
 細かい工芸品を作ったり、羊毛で衣類をこしらえたりする。
 子供たちは長い冬の間、村の智慧者たちから
 いくつものお話を教わる。英雄譚や王の話、神々の話だな。
 あー、なんだ。魔族の話も出てくるぞ。
 それから、ちょっと目端の利く若者や村長の子弟は
 読み書きを習ったりもする」

魔王「ふむ」

勇者「都市部だとまた話が違うな。
 都市部で教育と云えば、教会でのミサと家庭教師だ。
 家庭教師ってのは、知ってるか?
 えーっと、物語や読み書きや算術を教えてくれる
 個人用の語り部みたいなものだ。
 裕福な商家や貴族の家では両親が家庭教師を雇って、
 自分の子供に様々な知識と技術を教えさせる」

メイド長「勇者様もその口ですか?」

勇者「まぁ、そうだな。とは云っても、俺の場合は
 剣の教師とばっかりつるんで遊んでいたようなものだけど」

250: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/04(金) 15:33:52.38 ID:AIDyRnsCP
勇者「どうだ? 教育ってこういう事の事じゃないのか」

魔王「いや、まさにそう言うことだ」
勇者「人間社会のことも任せておけっ」

魔王「まぁ、で、その人間社会の教育は未開なので」
勇者「未開っ!?」

魔王「む。表現が悪かった。『発展の過程における
 初期的な未発達の状態』だな」
勇者「同じじゃねぇか」

魔王「からかっただけだ」
勇者「くぅ」

魔王「だが、自然な教育だよ。無理がない」
勇者「……」

魔王「とはいえ、こちらは不自然な発展を望んでいるから
 不自然で気合いの入った教育をしなければならない。
 ……だがなぁ、教育って云うのは金がかかるんだ」

勇者「金かぁ。俺勇者だし、勇者の装備を売れば
 そこそこ金にならないか?」

251: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/04(金) 15:35:26.47 ID:ymJMKDcU0
支援

252: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/04(金) 15:40:23.28 ID:AIDyRnsCP
メイド長「えーっと、勇者の剣と勇者の盾、
 勇者の鎧ですか……38万Gくらいにはなりますね」

勇者「なっ? すげーだろ?」

メイド長「どれくらい必要なのですか」

魔王「むぅ。そうだなぁ、今年度の予算計画は
 流動的でいくつかのパターンを考えているのだが
 切り詰めた案で5600万G程度かな」

勇者「お、おれの……勇者の……装備が……」
メイド長「落ち込まないでください。勇者様」なでなで

魔王「メイド長。それ以上の接触は禁止だ」
メイド長「はい、まおー様♪」

魔王「なかなかに難儀な話だなぁ」
勇者「まったくだな」

メイド長「まぁ、そろそろ冬になりますし、
 どちらにせよ本格的な農業実験は春からでしょう?
 この冬を使ってゆっくり手を打てばいいですよ」

253: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/04(金) 15:41:17.45 ID:JYjbCoDA0
人間に知恵をあたえる。
まさに悪魔か。

支援

255: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/04(金) 15:44:13.69 ID:Lc0VoYEVO
>>253
蛇とリンゴってとこだろうな

254: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/04(金) 15:43:06.05 ID:AIDyRnsCP
魔王「そうは云っても」
勇者「気は焦るよな。3年しかないし」

メイド長「まぁまぁ、今日は豚肉とカブのシチューを
 作ってあるんですよ」

魔王「旨そうだな」
勇者「ああ、考えてても仕方ないか」
メイド長「では、調理の仕上げがありますので
 わたしはこれで。夕食はあと1時間ほどです。
 お呼びに上がりますので、暖炉にでも当たっていて
 くださいね」

魔王「ああ、頼んだぞ」

ぱたり

勇者「……ふぅー」
魔王「疲れたか? 勇者」
勇者「んー。身体は何も疲れてないんだけどな。
 普段考えないようなことを考えて、頭が疲れたよ」

魔王「ふふふ。そうだろうな」

256: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/04(金) 15:46:39.50 ID:AIDyRnsCP
魔王「なぁ、勇者」
勇者「ん?」
魔王「暖炉が暖かいぞ?」
勇者「おう。暖かいな。この地方の寒さも、暖炉の前だと
 多少許せるよな」

魔王「なぁ、勇者」
勇者「ん?」
魔王「そのぅ、良かったらなのだが。隣に来ないか?」
勇者「なんで?」

魔王「この角度が、暖炉が暖かくて気持ちよいのだ」
勇者「そなのか?」
魔王「そうなのだ。ほら、特等席だぞ」

勇者「ん。ほんとだ。あったけー」
魔王「どうだ?」
勇者「自慢そうな顔するなよ、魔王」

魔王「む。……まぁ、たしかに暖炉が暖かいのは
 私の手柄ではないがな」

257: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/04(金) 15:50:45.68 ID:AIDyRnsCP
魔王「……」
勇者「……」

魔王「勇者?」ぺ、ぺとっ
勇者「ん?」

魔王「さ、触って良いか?」
勇者「別に良いけど」

魔王「変な意味はないぞ。勇者の髪は暗い色だから
 ちょっと触れてみたくてな。ああ、つんつんしてるな」

勇者「ご先祖様にサムラーイがいたんだ」
魔王「なんだそれは?」

勇者「東方の戦士だよ。鎧も兜も真っ二つにする技が
 使えたんだとさ」

魔王「そうか、勇猛な戦士殿だったんだな」

勇者「一族全員戦いの家系なんだ」

魔王「そうか? それ以外にだって、
 勇者には素晴らしくて良いところが沢山だぞ?」

258: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/04(金) 15:52:39.99 ID:QUKYS0oU0
魔王デレの破壊力は正に魔王クラス

259: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/04(金) 15:54:50.43 ID:AIDyRnsCP
勇者「そうかなー」
魔王「そうだぞ、たとえば、私が側にいても怯えないとか」
勇者「魔王はひ弱だし、女の人じゃん。運動不足だし」

魔王「でも魔王だからな」
勇者「そう言うものかな」
魔王「そう言うものなんだ」

勇者「なんだかしおらしいな」
魔王「さ、作戦なのだ」
勇者「?」

魔王「これから勇者相手に交渉をだな、するのだ」
勇者「何の?」

魔王「それを云っては交渉にならんではないか」
勇者「云わないで伝わるものか」

魔王「事は微妙を要する問題なのだ。出来るだけ誤解を
 受けないようにきちんと説明をしたい」
勇者「話してみれば?」

261: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/04(金) 15:58:09.56 ID:AIDyRnsCP
魔王「つまり、外は寒いだろう? 冬の嵐到来だ。
 そしてここは暖かくて居心地がよい。
 じきに夕食のお迎えが来るまでは二人は暇で、
 さしあたってやることがないだろう?
 もちろん今後やるべき課題は山積みでそれらに対して
 考察を加えるという任務が巨大にそびえ立っているわけだが、
 勇者は現在頭が疲れているという状況にあり、
 効率的な作業は望めないわけだ」

勇者「あー」

魔王「もちろんこれはわたしの方で考えた草案というのも
 愚かな一私案に過ぎないわけだが勇者の現在の疲労状況を
 鑑みるにこのような俗説民間信仰の類も一概にその効能を
 否定するわけにも行かないのではないかと思えるのだ時に
 戦士はそのような蜜園で疲れを癒すと古書にもある勇者は
 そのような爛れた習慣はないというかも知れないが」

勇者「で、なにをどーしたいんだ?」
魔王「勇者に膝枕してみたい」

勇者「よしきた」ぼふんっ

魔王「あっ。あわっ。勇者……」
勇者「俺は魔王のものなんだ。遠慮は無用だぜ」

264: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/04(金) 16:02:58.41 ID:pr9Iy7N90
なんとなく、農業云々の説明してるときは
魔王=ハクオロ
勇者=エルルゥ
で再生されてしまう・・・

278: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/04(金) 16:29:09.13 ID:LVCofh7VO
>>264
俺も思った

265: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/04(金) 16:03:32.95 ID:AIDyRnsCP
魔王「勇者」
勇者「んぅ……」

魔王「勇者の頭、もふもふしてるぞ」
勇者「遊ぶなよ」
魔王「撫でているだけだ」

勇者「魔王も良い匂いだぞ?」
魔王「毎日ちゃんと湯浴みしてるからな」

勇者「真面目だな」
魔王「うむ、真面目なのだ。
 勇者のモノになって以来メイド長が容赦なくてな。
 以前は研究続きで一週間着替えないなんて事も
 少なくなかったんだが」

勇者「魔王は太ももすべすべだな」
魔王「そ、そうか? 太くないか?」

勇者「寝心地良いぞ」
魔王「そうか。救われる。勇者は本当に
 寛大な心の持ち主だな」

勇者「あーえーうー。……えろ欲求の持ち主ではあるんだが」
魔王「?」

266: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/04(金) 16:06:05.91 ID:ekUeP5Dz0
あぁ・・・いいなぁこういうの

272: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/04(金) 16:12:30.35 ID:AIDyRnsCP
魔王「その、勇者」
勇者「なんだー?」

魔王「さっきの、遠慮は無用というの」
勇者「?」
魔王「あれは本当か?」
勇者「うん、そうだぞ」

魔王「そ、そうなのか」おろおろ
勇者「……どした?」

魔王「う、うむ」
勇者「押し黙るなよ。怖いから」
魔王「私も自分がちょっぴり怖いぞ」
勇者「はぁ?」

魔王「いや、怯えてなどいられるか。
 『まだ見ぬものを求める』。
 それが私の生涯のテーマだったではないかっ」
勇者「??」

魔王「その、勇者……」じぃっ
勇者「何だよ、気軽に云えばいいぞ」

  ガ タ ン ッ

275: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/04(金) 16:24:44.37 ID:AIDyRnsCP
魔王「何だ、あの音は」
勇者「裏手? ……納屋かっ?」

ダダダッ

魔王「えいこれ! 待てと云うのだ!」


――納屋

勇者「ここかっ!」
魔王「真っ暗ではないか」

???「……。……」

勇者(人の気配?)
魔王「しばし待て、明かりの呪文を……」ぽわっ

姉 がたがたがた
妹 ぶるぶるぶるぶる

勇者「……なんだ? 子供だぞ」
魔王「どうしたのだ? 殆ど下着ではないか」

276: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/04(金) 16:28:14.97 ID:iyvdeica0
支援

279: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/04(金) 16:29:26.13 ID:AIDyRnsCP
メイド長「あらあら、まぁまぁ」
魔王「メイド長」

メイド長「また迷い込んできたのですね」
魔王「こやつらは何なのじゃ?」

メイド長「逃亡奴隷ですわ。この館は長い間無人でした。
 無人の割には廃墟ではありませんでしたし、
 周辺の村とは違う系統の権力に属していますからね。
 そう言う場所は逃げ込む先として使われてしまうんですよ」

勇者「奴隷?」
メイド長「ええ、そうですよ」

勇者「奴隷なんて、そんなのどこから来るんだよ」いらっ

メイド長「そこら中にいるではないですか?
 ここらにいる人間はその殆どが奴隷でしょう?」

勇者「ちがうっ。奴隷なんかじゃないっ!」

メイド長「あら。私の見当違いなのでしょうか」

勇者「奴隷制は野蛮だ。俺たちは許していない」

メイド長「そんなことをおっしゃられても」

280: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/04(金) 16:31:44.32 ID:4F4DnSRnO
しえしえ

281: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/04(金) 16:32:49.55 ID:Z+4MLga8O
( ´∀`)しえん

282: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/04(金) 16:33:04.54 ID:AIDyRnsCP
魔王「この者たちは、農奴なのだな」
勇者「農奴……?」

メイド長「やっぱり奴隷ではないですか」

魔王「農奴と奴隷は違う」
勇者「ほらみろ。この南部諸王国に奴隷はいないんだ」

メイド長「そうでしょうか?」

魔王「農奴は奴隷とは違い、個人財産が認められている。
 家も持てるし、農機具も自前のものがもてる。
 家族と一緒に暮らすことも出来るんだ」

勇者「まぁ、当たり前だな」

姉 がたがたがた
妹 ぶるぶるぶるぶる

魔王「その一方で、職業選択や移動の自由はない。
 主に荘園……地主の農地で、農作業を行なうための
 労働力として、選択の自由無く働かされる存在だ」

勇者「……」
メイド長「……奴隷とは違うのですねぇ。へぇ~」ふんっ

283: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/04(金) 16:38:20.18 ID:AIDyRnsCP
勇者「……」ぎりっ

魔王「メイド長、それ以上は云うな。奴隷制は悲劇的かも
 しれないが社会制度の中で経済的にも意味があったのは
 事実なのだ」
メイド長「そうでしょうか?」

魔王「メイド長っ」
メイド長「……差し出口を。申し訳ありません」

魔王「……」
勇者「……」

妹 ぶるぶるぶるぶる

姉「あ、あのぅ……。あ、あさにはでてゆきますっ。
 ごめ、ごめいわく……かけませんから…っ…
 どうか、ひとばんだけ」

メイド長「……」

魔王「メイド長。初めてではないのだろう?
 いままではどのように対処していたのだ?」

284: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/04(金) 16:41:05.44 ID:fPOGtycd0
しえん

285: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/04(金) 16:42:32.64 ID:AIDyRnsCP
メイド長「逃亡奴隷……農奴でしたか。それは重罪です。
 付近の有力者との関係も悪くなります。
 すぐさま通報して引き取りに来てもらっていました」

魔王「そうか」
勇者「……」

メイド長「勇者様、ご気分が優れないようですが?」
勇者「……厳しすぎないか?」

メイド長「自分の運命をつかめない存在は虫です。
 私は虫が嫌いです。羽をもがれたようで見るに堪えません」

魔王「……っ」
勇者「あのなぁ!」

メイド長「大事の前の小事ではありませんか?
 このような些末時で付近の有力者の方々の
 心証を悪くされても益のないことだと思いますが」

魔王「そう……だな……」
勇者「魔王……」

メイド長「では」
魔王「いや、連絡は明日の朝まで待つ。
 湯を沸かせ。もう少しましな衣服もあるだろう。
 反論は抜きだ。今回はそうする。もう、決めた」

286: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/04(金) 16:47:50.29 ID:AIDyRnsCP
――小さな部屋

魔王「あー。なんだ」
勇者「……歯切れ悪いな」

魔王「私は魔王であり経済屋だ。こういうのは苦手なんだ」
勇者「俺だって勇者で剣士なんだ。苦手だ」

姉「あの、ありがとうございます」
妹 おどおど

勇者「おう、気にしないで良いぞ」

姉「こんなりっぱなふく、はじめてです」
妹 こくり

勇者「そか? なんだかこの屋敷に残されてた古着だけど」
魔王「あー。腹はくちくなったか? 寝床は平気か?」

姉「はい。わらはふかふかで、
 あたたかくて、きれいなへやです」

勇者「こんな小汚い部屋でもか……」
魔王「そう言う境遇なのだろう」

289: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/04(金) 16:57:08.31 ID:AIDyRnsCP
姉「その、こんなによくしてもらったのですけど」

姉「あしたの、あさには、その……」

魔王「それは……」
勇者「……」

姉「おねがいです、つうほうしないでください。
 いえ、そうじゃなくて」
妹 じわぁ

姉「にげますから。ほんのすこしだけ。よあけから
 すこしのあいだだけ、まってください」

 ガチャリ

メイド長「何を言ってるんですか。ろくな靴もない。
 服も最低限。お金も道具も何もない。
 街へ行って乞食でもやるつもりですか?」

妹「あ、あぅぅぅ」

勇者「どうにか……。どうにかなんないのか?」

291: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/04(金) 17:02:44.67 ID:AIDyRnsCP
メイド長「なりません。奴隷の生活は惨めですよ。
 何も出来ない。何の希望もない。
 自分自身の罪でそう居続けるしかできないと
 自分で自分に言い聞かせながら生きてゆくのです。
 この世の地獄かも知れませんね。
 でもね」

姉「……」

メイド長「やっていることはメイドと代わりはありませんよ。
 主人の意を受けて、主人の言葉なら何でもしたがう。
 主人の夢を叶えるため、そのために命を捧げる。
 奴隷とたいした違いは有りはしません」

魔王「メイド長。私はお前を奴隷だなどと思ったことは
 有りはしないぞ」

メイド長「ええ、まおー様。
 私もそのような扱い、まおー様より受けた覚えはありません。
 でもだからより一層、正視に耐えません。
 私と同じ仕事をしながら、
 自らの手に運命をつかむことの出来ない
 その弱さは、灼かれて死んで償うべきかと思います」

妹「ちがうよっ!! ちがうもんっ!」

292: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/04(金) 17:07:38.70 ID:AIDyRnsCP
妹「ちがうよっ、めがねのおねえちゃんはいじわるなのっ。
 わたしたちはちゃんとにげてきたもんっ。
 なにもできないわけじゃないもんっ。
 みやこにいって、ふたりで、くらすんだもんっ」

勇者「……それは」

メイド長「何を夢物語を」

妹「でも、やるんだもんっ」

メイド長「百歩譲ってその熱意を努力と呼んでも
 良いでしょう。しかし、それをなすに当たって
 他者の家に忍び込み、あまつさえその厚意にすがり。
 そればかりか寝床と食事を与えてくれた
 その他者の立場を逃亡によってさらに悪くする。
 そのような方法を是とする。
 それがあなたたち農奴のやりようですか?」

妹「だって、だってぇ!」

メイド長「もう一度云います。
 自分の運命をつかめない存在は虫です。
 私は虫が嫌いです。大嫌いです。
 虫で居続けることに甘んじる人を人間だとは思いません」

姉「……」

293: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/04(金) 17:10:44.83 ID:ymJMKDcU0
なるほど
メイド長いい奴だ

294: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/04(金) 17:13:49.12 ID:AIDyRnsCP
メイド長「判りましたか?」
姉「はい……」

メイド長「謝罪を」

姉「このやかたのみなさま……きぞくさまには
 ご、ごめいわくを、かけました。ごめんなさい」

メイド長「よろしい」

姉「……」
妹「ひっく……う。うううぅ」

メイド長「……」 じぃっ
姉「……」

メイド長「……それだけですか?」

妹「やぁ……。もどるの、やだよぅ……こわいよぉ」

姉「……いもうと、しずかにして」

295: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/04(金) 17:14:21.93 ID:s4/0828FO
勇者甘ったれすぐる
気持ちは分からんでもないが

297: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/04(金) 17:17:39.30 ID:AIDyRnsCP
メイド長「……」

姉「わたしたちを、ニンゲンにしてください。
 わたしは、あなたがうんめい、だと――おもいます」

メイド長「頭を下げる時は
 そのように這いつくばってはいけません。
 せっかくスカートをはいているのですから
 指先で軽くつまみ、ドレープを美しく見せながら
 優雅に一礼するのです」

姉 ぺ、ぺこり

メイド長「……魔王様。この館は魔王城に比べれば
 掘っ立て小屋も同然ですが私1人ではいささか手が
 足りません。メイドを雇ってもよろしいでしょうか?」

勇者「いいのかっ? メイド長。あんなに嫌いだって
 いってたのに。許してくれるのかっ?」

メイド長「嫌いなのは虫です。メイドを嫌う人は
 この世界に存在しません。たとえそのメイドが
 新人であってもです」

魔王「許す。鍛えてやってくれ」

298: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/04(金) 17:19:09.04 ID:iyvdeica0
支援

299: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/04(金) 17:23:06.88 ID:0xwysVvQ0
こりゃたまらん
がんばれ

300: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/04(金) 17:23:34.01 ID:iyvdeica0
しえん

302: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/04(金) 17:27:33.55 ID:AIDyRnsCP
――雪の森の中

メイド妹「ゆーしゃーさまー。ゆーしゃーさまー」

メイド妹「ゆーしゃーさまーはどこですかー。
 おいしーパンを、おとどけですよ」

ヒュンッ!

勇者「おう、お使いお疲れ」
メイド妹「わっ。どこにいたの?」

勇者「転移魔法だよ。声、森の中に響いてたぞ」
メイド妹「へへーん♪」

勇者「まぁ、この辺はすっかり安全になったから
 平気だろうけどな。不用心なヤツだ」
メイド妹「ゆーしゃさまに、おとどけものです」
勇者「お!」

メイド妹「おひるごはんですー! クルミのパンと、
 タマネギとベーコンのオムレツですー」

勇者「旨そうだな」
メイド妹「おねーちゃんがつくりましたっ」

勇者「順調に仕事覚えてるな。感心感心」

306: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/04(金) 17:33:55.68 ID:AIDyRnsCP
メイド妹「おいしい?」

勇者「美味いぞ! 温かい紅茶がまた泣かせるな。
 走ってきたんだろう?」

メイド妹「うんっ」

勇者「一口飲め?」
メイド妹「うんっ!」

勇者「昼間とは云え、屋外作業は辛いなぁ。
 なんかこー滅入るよ、まったく」

メイド妹「あ、そだ。とうしゅのおねーちゃんから
 でんごんがあった」

勇者「何だ、先に云えよ」

メイド妹「『きょうは、いのしし6とうがのるまだ。
 くまならいのしし2とうぶんにかぞえても、よい。
 それから、かわのじょうりゅうをみてきてくれ。
 はんらんしそうなばしょがあれば、
 まほうでこわすか、なおしてくれ』」

勇者「人使い粗いな」

307: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/04(金) 17:39:27.05 ID:AIDyRnsCP
勇者「そういや、学校はどうした?」
メイド妹「ごごは、からだのたんれん」

勇者「お前は鍛錬良いのか?」

メイド妹「まだ、せいとすくないから。
 おなじ年のこ、いないの。ゆうしゃさまに
 ごはんをとどけるのが、ごごのうんどうー」

勇者「お。『年』っておぼえたのか」
メイド妹「とーしゅのおねーちゃんが、
 もじおしえてくれるんだよ」

勇者「忙しいクセにまめだな、魔王」

メイド妹「あと、さんすー」

勇者「算数か」
メイド妹「うまくやると、儲けでうはうは」
勇者「あの経済屋め。『儲け』だけは書けるのか」

メイド妹「損益分岐点、もかけるよ?」

309: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/04(金) 17:41:36.30 ID:M+qN/VAn0
損益分岐点wwwwwwwwww

310: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/04(金) 17:43:22.75 ID:AIDyRnsCP
勇者「あと、2匹か、イノシシ換算で」

メイド妹「なべー!」
勇者「突然どうした」

メイド妹「いのなべ?」

勇者「ああ、あれは美味いな!」
メイド妹「いのなべにしよー!」

勇者「お前は食い気ばっかりだな」
メイド妹「ゆーしゃさまが、ごはんとってきてくれる」にこっ

勇者「……ああ、そうだな」
メイド妹「ごはんいっぱいは、とても幸せだよ」
勇者「そだな」

メイド妹「けんかないもん。
 そんちょーのあとつぎさまにぺとぺととしなくていいの。
 まいにちあったかい。おふとんほかほか。
 ふくがきれい。おねーちゃんとふたりで
 ずっといっしょにいられる。それは幸せ」

勇者「……」

メイド妹「どうしたの?」

312: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/04(金) 17:47:21.28 ID:AIDyRnsCP
勇者「いや、勇者って相当に役に立たないなと思って」
メイド妹「?」

勇者「知識があるわけでもなければ、
 金勘定が出来るわけでもない。農業も動物の世話も
 出来ないし、先生は……出来るって云っても剣くらいだ。
 こうなってみるとつくづく思い知る。
 俺、口先ばっかり平和とか云ってたけれど
 平和ってどういうモノなのか、どうすれば平和になるのか
 平和になったらどうすればいいのかなんて
 ちっとも考えてなかったよ」

メイド妹「むずかしーね」
勇者「難しいな」

メイド妹「いのししべーこん、おいしいよ?」

勇者「あれ、好きなのか?」
メイド妹 こくん

勇者「気に入ったのか?」
メイド妹 うんうん

勇者「じゃ、勇者のお兄ちゃんとしては、もうちょい
 イノシシやっつけて、減らしてくるかね~」

316: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/04(金) 18:05:28.67 ID:AIDyRnsCP
――館の広間、授業中

魔王「……以上が南部諸王国の現在の経済状態から
 導かれる戦争の最大規模となる」

貴族子弟「……」めもめも
商人子弟「……えっとえっと」
軍人子弟「……」

魔王「私は専門ではないが、古来軍隊が壊滅すると
 されている損耗率は」

軍人子弟「……最後の一兵まで戦い抜くでござる」

魔王「おおよそ30%と言われている。3割だな。
 ゆえに、この常備軍および恒常的な傭兵戦力によって
 戦線維持は難しく、散発的な会戦と拠点防衛が
 現在魔王軍との戦闘の要旨となる」

魔王「ここまでで質問は?」

メイド姉「聖鍵遠征軍はどうでしょう?」

魔王「うむ、あれは例外だな」

317: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/04(金) 18:17:58.51 ID:AIDyRnsCP
魔王「聖鍵遠征軍について知っているところを述べよ」

貴族子弟「あっ。はい。聖鍵遠征軍は中央大陸の
 危機会議によって結成された、聖なる遠征軍です。
 目的は邪悪なる魔族を殲滅しこの戦争を終結させること。
 この15年の間に2回おこなわれました。
 南の極点にある魔界門から魔界へと侵攻して
 魔族の重要都市二つを破壊、魔王の都まで
 迫りましたが、神のご加護虚しく魔王の卑劣な
 補給線破壊行為により撤退を余儀なくされました」

魔王「おお。ほぼ満点だな。
 ――このような遠征軍は巨大な兵力を背景にして
 行なわれる。まず第一に必要なのは世界規模での
 戦争終結への熱意だ。ただ一度の大遠征で終戦が
 成し遂げられるのならば犠牲を払う価値があると
 世界中の人間が望んでこそ、その戦いに身を
 投じる参加者が生まれるわけだな」

魔王「もう一つは経済的バックアップだ。
 本講の授業で何度でも扱うが、経済の支援無くして
 社会も戦争行為も成り立たない。人間は食べなければ
 飢えて死ぬ生き物なのだ」

318: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/04(金) 18:19:09.55 ID:s4/0828FO
支援

319: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/04(金) 18:20:42.37 ID:BGZnVIV00
地理・経済系の学部卒か現役か
社会系の知識に明るい人が世界構成したファンタジー物は面白いんだよな

320: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/04(金) 18:21:32.36 ID:Ek59IbD40
勇者がどんどん成長していくな

321: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/04(金) 18:21:39.10 ID:AIDyRnsCP
貴族子弟「時には金や食料よりも重要なことがある」だむんっ
軍人子弟「算盤をはじいて戦など出来ないでござる。先生」
商人子弟「……そうでしょうか」

軍人子弟「飢えだなんて精神的な弱者の言い訳だ」
貴族子弟「そもそも領主が保護している人民に
 飢えなどは存在しないじゃないですか」

メイド姉「飢えたことがないんですね」

魔王「……次は、南氷海。すなわち南部諸王国と
 極点である、魔王の大陸を取り巻く海についてだ。
 この海は軍事的、経済的な意味で非常に大きな意味を
 もっている。現在魔王軍との戦いのおよそ25%が
 海を舞台に行なわれており……」

 ちりーん、ちりーん、ちりーん

メイド長「お嬢様、授業終了のお時間です」

魔王「もうそんな時間か。では、本日はこれで終える。
 明日はこの続きだ。それから、剣士様が明日の午後は
 手ほどきに来るそうだぞ」

軍人子弟「まっておったでござる」
貴族子弟「明日はあたりだな」

魔王「では、解散。わたしは長老の家に移動して
 夜間の農業講座をしなければならないのでな」

323: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/04(金) 18:36:03.83 ID:AIDyRnsCP
――館の廊下

勇者「よっ。お疲れ」
魔王「疲れた」
勇者「疲れた顔してるよ」

魔王「なぜ私は教育などと言い出したんだろう。
 人間の子供の相手をするのがあんなにも疲れるとは
 思わなかった。あれではまるで動物ではないか。
 理非も交渉も通じない」
勇者「あー」

魔王「なぜあの者たちはあんなにもプライドが高いのだ」
勇者「貴族や軍人や富裕層だからじゃないか?」

魔王「いっそ蛙に変えてしまうか」
勇者「冗談に聞こえないぞ」
魔王「冗談ではない」
勇者「止めておけ」

魔王「そうか」しょぼん
勇者「村長の家に向かうんだろう? 付き合うよ」

324: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/04(金) 18:36:39.61 ID:M+qN/VAn0
実はこのSSって
>>1じゃないんだよなぁ。
乗っ取ってるわけだが、興味深い。

326: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/04(金) 18:40:10.81 ID:Et3NhPyPO
支援

332: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/04(金) 18:43:21.00 ID:AIDyRnsCP
魔王「む。寒いな」
勇者「雪が降ってないだけましだ」

魔王「寒いぞ、勇者」
勇者「俺はその中で一日中イノシシを追っかけてたんだぞ?
 魔王は家の中にいたんだから文句言うな」

魔王「ちがう。寒いのだ」
勇者「……」

魔王「……だめか?」
勇者「わかった、ほら」ばふっ「これであったかいか?」
魔王「うん、あったかい」

勇者「ご機嫌か」
魔王「ふふん。悪くはない」
勇者「偉そうだな」

魔王「勇者を手に入れて本当に良かった」すりっ
勇者「あー。こほん」
魔王「?」
勇者「おたがいな」

334: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/04(金) 18:50:56.62 ID:AIDyRnsCP
魔王「まぁ、なんとか動き出したのだから
 文句を付けるのもおかしいのだろうな」

勇者「まぁなぁ」

魔王「悲しいほどに権威が物を言うのだな。
 貴族の子弟を受け入れて、箔がついたら農民も
 学んでも良いと言い出すのか。新しい農法も
 この春からそれなりの規模で実験開始だそうだ」

勇者「結果が出るのに、時間はかかるだろうな」

魔王「いや、来年からにでも結果は出す」
勇者「出来るのか?」

魔王「秘密兵器を手に入れたからな」
勇者「なんだそれは」

魔王 ごそごそ 「これだ」
勇者「なんだその固まりは?」

魔王「これは馬鈴薯という。作物だ」
勇者「??」
魔王「植物なんだ。こうやって掘り出しているが、
 この丸い部分は土中に出来る」

335: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/04(金) 18:52:06.96 ID:EUtQl2pV0
あまずっぱい勇者が憎い

336: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/04(金) 18:53:29.91 ID:Lc0VoYEVO
なんだかガイアの夜明けを見てる気分

339: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/04(金) 18:54:44.77 ID:AIDyRnsCP
勇者「ふぅん……」

魔王「これはなかなか美味で栄養価の高い食物なのだ。
 そのうえ、このような食用部分が地下に出来るために、
 鳥害を受けにくい。また、痩せた土地や寒冷地、
 固い地面でも成長できるという優れものだ。
 そのうえ、土地あたりの収穫量は、ざっと計算した
 ところ小麦の3倍に当たる」

勇者「まじかよっ!?」

魔王「ああ、大まじめだ」

勇者「神の食べ物か!?」

魔王「いいや、魔界の食べ物だ」
勇者「……」

魔王「異文化、異文明の接触というのは、
 このように大いなる恩恵を生むことがあるんだ。
 たとえ不幸な形の接触であっても、接触は接触だ」

勇者「複雑だなぁ」

340: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/04(金) 18:58:09.07 ID:Z+4MLga8O
しえん

341: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/04(金) 18:59:48.00 ID:AIDyRnsCP
魔王「もっともこの馬鈴薯にだって弱点がない訳じゃない」
勇者「なにがあるんだ?」

魔王「まず、毒性がある」
勇者「ダメじゃん!」

魔王「いや、強い毒ではないし、毒性が発生するのは、
 日光に当たって発芽しかけたものだけだ。
 収穫や保存においてきちんと管理すれば問題ない。
 むしろ冷暗所で保存すれば一年程度は持つはずだ」

勇者「ふむ……」

魔王「また、連作障害がある。この馬鈴薯という植物は
 条件さえ合えば、年に3回程度収穫できるのだが」

勇者「聞くだにすごいな。さすが魔界の植物だ」

魔王「ああ。だが、その分土中の栄養素、つまり
 いわゆる『大地の恵み』を多く消費してしまうんだ。
 必要な種類の恵だけ使ってしまうから、おなじ場所で
 作り続けると出来が悪くなって、病気にもかかりやすくなる」

勇者「ふむふむ」

343: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/04(金) 19:04:25.24 ID:TMJUmSgc0
ジャガイモは昔ドイツで悪魔の作物と言われていたとかなんとか
聞いたごとがあるな・・・

344: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/04(金) 19:06:00.60 ID:AIDyRnsCP
魔王「もうちょっと」
勇者「へ?」

魔王「もうちょっとくつくのだ。隙間があると寒い」

勇者「う、うん……。あー。くっつくとこっちが
 いろいろもにょもにょなんだけど」

魔王「……わたしの身体は気持ち悪いか?」
勇者「いやいや、そうじゃないんですが」

魔王「まぁ、とにかく。この食物も、寒冷地の
 飢饉対策に役立つはずなんだ。毒性の部分は
 気をつけていればさほど大きな問題にはならない。
 どちらかというと、連作障害の方が問題だろうな」

勇者「俺の理性の方にも問題が」

魔王「大地の恵みは時間がたてば回復するが
 それに対してこちら側からも働きかけを行なう方法を
 確立しないと、一カ所に留まって生産量を上げることは
 限界があるだろうな」

勇者「大地の神に祈祷でもするのか?」

345: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/04(金) 19:09:37.52 ID:IH+kRfza0
おもろい

346: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/04(金) 19:10:57.82 ID:AIDyRnsCP
魔王「そうだな。祈祷の一種だ」
勇者「無神論者じゃないのか? 魔王は」

魔王「私が無神論だろうと何だろうと、
 利用できるものは隙無く隈無く躊躇無く
 利用したおすのが経済屋というものだ」
勇者「ある種の悪魔だな、こいつ」

魔王「大地そのものに、契約の証として捧げ物をするんだ。
 この種の捧げ物は人間社会でも、経験的に行なわれている。
 焼いた食物や動物の遺骸、動物の糞尿や、食べかすなどだ」
勇者「ふむ。なんか捧げ物ってイメージじゃないけど」

魔王「期待しているのは南氷海の魚なんだがな」
勇者「なぜ?」

魔王「捧げ物には魚が良いんだよ」
勇者「買ってきてやろうか? 転移呪文でひとっ飛びだぞ」

魔王「ありがたいが、持って帰れる量ではないと思う。
 畑一つに月50匹。それも毎年だと云ったら驚くか?」

350: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/04(金) 19:17:55.33 ID:AIDyRnsCP
勇者「うっわ、そりゃ」
魔王「無理だろう?」
勇者「うん」

魔王「だが、それも問題が大きくてな」
勇者「なんだ? 南氷海に問題でもあるのか?」

魔王「ああ。二つある。
 一つは、勇者も知ってると思うが南氷将軍だ」
勇者「……あの親父か」

魔王「ああ、あの男、魔族の中でも強硬派だからな。
 魔王の私が伏せっているこの時期でも略奪行為を
 続けていると聞いている。銀鱗族、飛魚族、鉄亀族、
 巨大烏賊族、歌姫族を率いる、魔族でも指折りの
 実力者だ……」

勇者「何度か戦りあったことがある。
 ばかでかい図体で、すげー銛さばきだった」

魔王「南氷海で活動するからにはどうあっても
 利害が衝突するだろうな」

355: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/04(金) 19:27:04.00 ID:AIDyRnsCP
魔王「もう一つが『同盟』だ」
勇者「なんだそりゃ」

魔王「この話は、もうちょっと伏せておこうかと
 思ってたんだがな。良い機会だから説明しておこう」

勇者「うん」

魔王「正式には『南部独立都市および自由商人による
 経済同盟』と呼ぶ。まぁ、いまでは『同盟』で
 何処でも通じるな」
勇者「聞いた覚えはあるけど、それって有名なのか?」

魔王「名前だけは有名だが、実体をする人間は
 多くはないな。特に商人でない人間にとっては
 意味が薄い」

勇者「つまり、商人の寄り合い所帯だろう?」

魔王「まぁ、そうだ。
 50年ほど前に南部諸王国中心の街にうまれた団体だ。
 交易商人による団体で、団体構成員の交易特権を
 守るために生まれたのが発祥の契機だな」

357: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/04(金) 19:32:55.13 ID:AIDyRnsCP
勇者「交易特権?」

魔王「ああ。ある街から別の街に物資を持っていくと
 当然のように、許可が下りたり、降りなかったりするだろう」
勇者「あるな」

魔王「商人たちはその『許可』を求めるし
 手に入れれば守りたがったんだ。
 当たり前だな、その免許のあるなしで、
 商売が出来るかどうかが決まる。死活問題だ」

勇者「ふむふむ」

魔王「時代が下ると、税の機構が整備されて、
 おなじ許可でも税が重かったり軽かったりするようになった。
 こうして王族や貴族は税を通じて経済に接触できるんだ。
 しかしそれは逆に、経済の輩、つまり商人が
 貴族や王族といった支配階級に接触することをも意味する」

勇者「うへぇ、なんだか難しい話だ」

魔王「『同盟』はそういった商人の作った組織の中でも
 最大のものだよ。その規模は想像を絶する」

勇者「へー? どれくらいなんだ? 千人くらいいるのか?」

358: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/04(金) 19:36:33.89 ID:kGQHhrt80
支援

359: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/04(金) 19:38:05.19 ID:AIDyRnsCP
魔王「この場合、人数は問題じゃないんだ」
勇者「そうなのか?」

魔王「経済的な組織だからな。動かせる富の量や
 流通に介入する能力が彼らの武器だ。人数じゃない」

勇者「理屈で云えばそうなるのか。
 ……で、どれくらいなんだ?」

魔王「その商業範囲は、南部を中心にしてではあるが
 この中央大陸全土に及ぶ。
 主要な都市に『同盟』の出張機関がない場所はなく、
 『同盟』の支店がある場所こそがすなわち主要都市だ。
 『同盟』の総資産は誰にも判らないけれど、
 いくつかの歴史的な介入から私が試算する限り
 その総額は天文学的な規模にあがる」

勇者「……」

魔王「少なく見積もっても、南部諸王国全部を
 5回売り買いしてもおつりが来ることは確かだ」

勇者「!?」

360: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/04(金) 19:41:20.98 ID:DiSuZ9EY0
商人って凄いな

361: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/04(金) 19:41:56.86 ID:FXdf4v1B0
バブル期の日本を見てるようwww

362: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/04(金) 19:42:11.51 ID:AIDyRnsCP
魔王「そう言う組織なんだ」
勇者「なんだそりゃ!?」

魔王「こと、この南部地方に限って云えば、都市間の
 小麦の流通のおおよそ60%に同盟の息がかかっている。
 その気になれば、領主も王の首もすげ替えられる力を
 『同盟』はもっていることになるな」

勇者「化物かよ」
魔王「まごうことなき化物だ。
 人間の生活は化物の背に乗って行なわれている」

勇者「俺、そのなんとか同盟ってのに頼まれて
 何回か戦意高揚演説したことがあるぞ」

魔王「そうなのか?」

勇者「ああ。魔族を倒しに立ち上がろう、えいえいおー!
 みたいなやつ。そのあとひらひらしたドレスの
 姉ちゃんが出てきて、攻城塔の上でうたってたぞ。
 キラッ☆とかいって」

魔王「プロパガンダだな。数百万Gは儲けただろう」
勇者「おれには謝礼15Gだったんだぞっ!?」

363: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/04(金) 19:42:17.66 ID:2G93HqOeO
支援

365: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/04(金) 19:43:39.32 ID:DiSuZ9EY0
やっすいwww

368: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/04(金) 19:47:46.85 ID:AIDyRnsCP
勇者「うううう。俺は、俺ってヤツは……」
魔王「そんなに落ち込むな、勇者」

勇者「俺はそんなヤツらに騙されて……」
魔王「経済は君の専門じゃない。無理もないさ」

勇者「俺はそのお姉ちゃんに『憧れてますっ!』
 なんてキラキラ瞳で云われたせいで
 それだけで胸がいっぱいになって
 魔界へ飛び出しちゃうし」

魔王「……」

勇者「帰ってきたら祝勝パレードで
 良い感じのパーティーに招待しますからとか
 依頼してきた青年に言われちゃったりして、
 モテますねとか肘でつつかれて舞い上がったり……。
 いま考えるとあの青年も商人だったんだなぁ」

魔王「……」

勇者「うううう。俺はダメ勇者だ」
魔王「ふんっ。きつい教育が必要だな」

371: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/04(金) 19:55:05.85 ID:AIDyRnsCP
勇者「つまり、敵だな」
魔王「あ-。物騒なことを云うな」

勇者「いいや、敵だ。最上級撃魔封殺雷撃魔法で仕留める」
魔王「都市攻略術式を個人相手に使おうと考えるな」

勇者「だって騙したんだぞ」しくしく

魔王「子供か、君は。
 ……そもそも『同盟』には意志なんてないんだ。
 金儲けをするための商人が寄り集まって、
 知恵を出し合い、自分たちの身を守り成長することだけを
 願った組織。もはや肥大してしまって個人の思惑なんて
 欠片も差し挟めないほどに成立してしまった
 『概念』に近い存在なんだ。
 仮に勇者がだまされたとしても向こうに騙すつもり
 なんて無かったし、逆に言えば復讐したって
 痛みなんて感じる機能はない」

勇者「くぁ、余計むかつく」

魔王「敵でも味方でもない。獣みたいなモノなんだ」
勇者「……」

魔王(それでも、あるいは……)

372: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/04(金) 19:59:02.75 ID:AIDyRnsCP
勇者「むー。知らないことばっかりだ」
魔王「ぼやくな」
勇者「まぁ、いいけどさ。戦ってばかりいる時よりも
 前に進んでいる気がするから」

魔王「……ずっと側にいる」
勇者「うん。俺もだ」

魔王「あー。あー」あせっ
勇者「なんだ?」

魔王「ほら、もう村長の家だ。きょ、今日は
 クローバーによる土中の恵みの結晶化について話すのだっ」
勇者「そ、そか」

魔王「……その」
勇者「うん」

魔王「4時間ほどで、帰るから」
勇者「わかった」

魔王「い、いってくるからな」ぎゅっ
勇者「おう! 行ってこい!」ぎゅっ

374: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/04(金) 20:03:40.63 ID:AIDyRnsCP
ぽぽぽ。
切りが良いので、ここでQKしてまいります。
んがくっく。次の展開なんて何にも考えてないので
ヒロイン増やす希望どうぞ(いい加減)
全く何の責任も取れませんが。

375: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/04(金) 20:04:58.50 ID:Ek59IbD40
勇者は魔王一途が良いなぁ
おっさんが欲しい

376: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/04(金) 20:05:02.89 ID:FXdf4v1B0
あとは宗教が絡むと面白いかなとおもう
その辺からライバル的なやつお願いします

377: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/04(金) 20:06:02.61 ID:0xwysVvQ0
増やさないでいいので、講義をお願いします先生

379: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/04(金) 20:09:13.21 ID:xL/HlWluO
増やさない方向で

383: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/04(金) 20:12:32.50 ID:JKoKE5Vy0
追ヒロイン追加はいい、既存キャラのアクを強化で

387: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/04(金) 20:27:02.41 ID:RiPRwn/U0
これはしっかりと完結させてほしいな

391: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/04(金) 20:54:49.08 ID:DNZ5ZB5H0
おもすれー

394: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/04(金) 21:12:16.25 ID:xL/HlWluO

395: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/04(金) 21:17:48.44 ID:x59uavvi0

416: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/04(金) 22:38:43.77 ID:Et3NhPyPO
ほし

419: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/04(金) 22:46:44.67 ID:AIDyRnsCP
――湖の国、首都郊外

しゅんっ!

勇者「……いいぞ」きょろきょろ

魔王「む。便利なものだな、転移魔法というものは」
勇者「魔王だって使えるだろう?」

魔王「いや、個人長距離移動性能と、目的地の選択の
 関係でここまでの汎用性はない」
勇者「そうなのか」

魔王「術式が違うのだ。機会があれば研究したいが」
勇者「まぁ、いまは目的が先か」

魔王「うん。どこだ?」
勇者「あの丘の向こうだ。念のために顔は隠してな」

魔王「心得た。淑女の服に比べれば、変装の方が
 ずっと着心地が良いぞ」
勇者「あれはあれでよい物なんだがなぁ」

420: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/04(金) 22:48:18.48 ID:DNZ5ZB5H0
キタタタタタタタタタアタタアタタタ

421: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/04(金) 22:48:20.53 ID:Et3NhPyPO
支援支援支援支援

422: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/04(金) 22:53:25.47 ID:AIDyRnsCP
ざっざっ

魔王「あれか?」
勇者「ああ、あの石造りの建物が、このあたりの
 修道会を束ねる修道院だ」

魔王「宗教ばかりは私たちには判りづらいな」
勇者「俺だって説明しにくいよ。専門家じゃないんだし。
 まぁ、でも『同盟』が化物だとすると
 『教会』だって同じくらい化物だって事だ」

魔王「ふむ。用心するべきなのだな」
勇者「ああ、もちろんだ。お前は特に魔王なんだからな。
 危険人物リストのぶっちぎりナンバー1だ。
 なんせ神の敵だぞ」

魔王「ははは。神など恐れたことはない」
勇者「神の名を叫ぶ人間ってのは怖いんだぞ」
魔王「うむ、それは肝に銘じる」ぶるっ

勇者「さ、いくぞ。一応紹介の連絡だけは
 入ってると思うが……」

魔王「最悪魔法で逃げ出せばいいだろう」

勇者「悪い意味で場慣れしてきたな、俺たちも」

423: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/04(金) 22:59:20.74 ID:AIDyRnsCP
――湖畔修道会、内部

修道士「こちらでございます、お客様……」

魔王「静かだな」
勇者「うん」

修道士「我が修道院はただいま『沈黙の行』の
 時間です。どうかお気遣い賜りますよう……」

魔王「う、うん……」
勇者(雰囲気に飲まれてるぞ、魔王)

かつん、かつん、かつん……

勇者(独特の雰囲気があるな、修道会ってのは)

修道士「こちらが会議のための部屋となっております。
 もうしわけありませんが、我が修道院は
 午後の祈りを控えております。
 しばらくお待たせしてしまうのですが」

勇者「かまわない。案内ありがとう」

424: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/04(金) 23:04:27.16 ID:AIDyRnsCP
魔王「さて、と。潜入は成功だ」
勇者「あとは、院長に面会して交渉か」
魔王「うん」
勇者「今回は出たとこ勝負って事になるのか」

魔王「まぁ、いくつか交渉材料は考えてきてあるんだが。
 というか、そもそもこれは人間側のために考えた
 人間にメリットの多い企画なんだがなぁ」
勇者「相手は宗教屋だからな」

魔王「そういえば、この世界の人間は、なんと言ったっけ?
 その、光の精霊とかを信じているんだろう?」
勇者「ああ、中央大陸の主だった国は全て光の精霊信仰だ」

魔王「勇者はさっきから聞いていれば、
 涜神的な言動が多いが、信仰心は薄いのか?」

勇者「薄いというか、何というか。
 戦場に身を置いて、特に魔物なんかと戦ってると、
 精霊様ってのは身近に感じるんだよ」
魔王「ふむ」

勇者「信仰心が薄い訳じゃなく、友達感覚のつきあいなんだ」
魔王「そうなのか? それはまた珍しい気がするんだが」

429: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/04(金) 23:11:19.24 ID:AIDyRnsCP
勇者「まぁ、俺は特別だよ。
 夢のお告げなんかも聞いたりしちゃったしな」
魔王「神は実在するのか!?」

勇者「神じゃない、光の精霊だ」
魔王「ふむ……」

勇者「すごく善人なだけで、竜とか魔王とかと
 似たような存在なのじゃないかな? 光の精霊も。
 面倒くさいことが断れない気の弱い性格なんだと思うよ」

魔王「そんな存在でも、信仰の対象なのだろう?」

勇者「まぁな。それに信仰以外の所でも、
 『教会』ってのは社会の中で大きな意味を持ってるんだ。
 こんだけでかい組織だからなぁ。
 『同盟』なんか人数だけで云えば比べものにならない」

魔王「研究や学術の面でも、か」

勇者「ああ。この世界のそう言った知識は、
 殆ど教会の権力の下にあると云っても
 良いんじゃないかな。以前にも話しただろう?
 都市部の人々は、教会のミサで
 お話や読み書きを教えてもらうんだ」

430: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/04(金) 23:15:44.99 ID:ymJMKDcU0
これは気弱な光の妖精が押しかけてくるフラグか!

432: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/04(金) 23:17:41.52 ID:AIDyRnsCP
魔王「その組織に期待したいんだがな」

勇者「まぁ、今日のはとっかかりだし、
 失敗しても傷口は浅くて済む。
 『教会』は大所帯だから、内部ではいろんな
 派閥があるんだ。いまはその派閥が『修道会』という
 形で表に出てきている。様々な『修道会』が
 入り乱れているのが現状だ」

魔王「でも、すべて光の精霊を信仰しているのだろう?」

勇者「そうだよ。だから表向き、全ての『修道会』は
 友好的、と言う建前になっている。善の勢力ってことだな。
 でも実際には信仰の方法論が違ったり、過激さが違ったり
 もっと露骨に云えば信者の奪い合いでライバル関係で
 あることも少なくはない」

魔王「なんだか、魔界の部族の領土争いと変わらないな。
 破壊神と煉獄神と暗黒神とにわかれていたほうが、
 まだ判りやすいぞ」

勇者「そう言う宗教があるのか?」
魔王「あるぞ。でも、大半はただのファッションだ」

435: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/04(金) 23:22:45.56 ID:AIDyRnsCP
勇者「で、まぁ。この湖畔修道会は修道会の中でも
 実利的、かつ穏健でな」
魔王「ほう」

勇者「農民の生活援護みたいな事を主な活動にしているんだ。
 労働力の提供とか、ブドウ栽培の指導とか、
 戸籍の補完とか、そうそう、病院もやってるよ」

魔王「病院もか!」
勇者「つーか、病院ってのは教会の仕事だろう?
 もっとも病人は受け付けない教会も少なくないけどな」

魔王「……ふむ」
勇者「魔王?」

魔王「どうした?」
勇者「魔王は……。なんだかな、そのう。
 時々すごく寂しそうな顔をするよな。いまみたいな時」

魔王「そうか?」
勇者「ああ」

魔王「そんな自覚はないんだがな」
勇者「そうなのか? なぁ、魔王。魔王には
 どういう風に物事が見えて」

ガチャリ

437: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/04(金) 23:30:35.05 ID:AIDyRnsCP
魔王「あー。お初にお目にかかる」
勇者「はじめまして。紹介書は届いてるかと思いますが」

魔王「南部辺境で農業を中心に研究生活を送っている。
 紅の学士と云います。よろしくお願いしたい」

勇者「俺はその介添え兼護衛の白の剣士。
 修道院に入るのは気後れする粗忽者なのだが
 ご寛恕ください」

女騎士「……」

魔王「湖畔修道会に来たのは初めてですが
 立派な建物ですね、びっくりしました」

勇者「……あ」
女騎士「……白の剣士ですって?」

魔王「へ」
勇者「あー。それはな。えっと」

女騎士「ゆ う し ゃ ! あなたねっ!!」
勇者「うぁ」

438: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/04(金) 23:32:09.01 ID:7vh82bSHP
おやおや

441: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/04(金) 23:38:33.95 ID:AIDyRnsCP
女騎士「なにが『白の剣士』よっ。
 いままで何処ほっつき歩いてたのよ!
 もう一年よ!? 一年も音沙汰無しでっ!!」

魔王「どういうことなのだ?」
勇者「いや、その」

女騎士「あなたがあたしたちを放り出したんでしょっ。
 この先に進むのは一人で良いとか何とか
 適当なことほざいてっ!!
 あんな辺境の街で放り出された
 私たちの身にもなりなさいよっ。
 どんだけ心配したことかっ。
 ってか腹立たしかったか!」

魔王「あー」
勇者「だってさぁ」

女騎士「だってもクソもないのよっ!
 あっ。す、すみません。精霊様、クソなんて
 云ってしまいました。懺悔しますっ」

442: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/04(金) 23:42:50.89 ID:AIDyRnsCP
勇者「ううう」
女騎士「私はともかく、弓兵さんも、魔法使いちゃんも
 ものすごくへこんでたんだからねっ」

魔王「攻撃力過多なパーティーだな」
勇者「回復は俺と騎士でやりくりをね」

女騎士「話聞いてるのっ!? 勇者っ」

勇者「すんません」

女騎士「……ふぅ。で、いままで何してたの?」

魔王「あー」
勇者「そ、それは」

女騎士「ああ。済みませんでしたっ。学士様。
 席も勧めませんで、今すぐお茶を持ってこさせます」

魔王「は、はぁ」
勇者「どうしたもんかなぁ」

女騎士「わたしは、元聖銀冠騎士団所属の女騎士。
 ゆかりあって、いまはこの湖畔修道会で
 みんなの生活の向上のために勤めています」

444: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/04(金) 23:48:48.98 ID:AIDyRnsCP
――湖畔修道会、会議室

勇者「と、まぁ。そんな訳で。魔王にも手傷は
 負わせたんだけどさ。魔物総攻撃みたいな話になっちまって
 退却してきたって訳さ」

女騎士「そうだったの……。まさか、いままでずっと
 怪我の療養を?」

勇者「いや、それはないな。まぁ、色々事情があって
 表舞台には顔を出せなかったって云うか……」

女騎士「諸王国がそこまで手を回したのっ!?」

魔王「――」じぃっ
勇者「いや、なんだそれ?」
女騎士「ううん。いいんだけどっ。判ったわ」

勇者「そっちは何でこんなところで修道院長やってるんだ?」

女騎士「もうっ。
 私は元々の出身がこの辺なのよ。
 騎士の叙勲されたのも教会でだったし教会所属の騎士なの」

勇者「そーいやそうだったなー」

445: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/04(金) 23:51:12.65 ID:Z+4MLga8O
なにやら陰謀の匂い

446: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/04(金) 23:52:05.81 ID:AIDyRnsCP
女騎士「……実は、勇者が魔王城に向かってね。
 それを諸王国軍本部へと報告して、ひと月たった頃。
 特使が来てね。……勇者が出かけて、その身を顧みず
 魔王に一矢浴びせたって。そう言って、仲間全員に
 恩賞金が出たのよ」

魔王「ふむ」

女騎士「勘違いしないでよねっ。
 私は受け取ってないんだから。
 ……で、そのあとね。
 私たち三人はいままで大きな活躍をしてきたから、
 王国の要職に取り立てるって……」

勇者「そうだったのか」

女騎士「……それって、体の良い引退勧告だよね。
 私はイヤだった。勇者をだしにして出世するなんて
 イヤだったし。だから故郷に戻って、今度はみんなの
 ためになる仕事をしようと思って」

勇者「立派な志じゃないか。いや、女騎士は以前から
 やるときゃやってくれる男気あふれた仲間だと
 思ってたんだよ」

女騎士「…………はぁ」

447: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/04(金) 23:52:39.43 ID:iyvdeica0
支援

449: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/04(金) 23:53:22.81 ID:HWfr8FyM0
魔王様の嫉妬クルー?

450: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/04(金) 23:55:54.27 ID:AIDyRnsCP
勇者「で、あとの二人は?」
女騎士「……うん」

勇者「?」

女騎士「……弓兵さんはね。ほら、元々兵士だったでしょ?」
勇者「ああ、そうだな」

女騎士「だからね、諸王国軍に帰ったの。
 恩賞金ももらってた。連合参謀本部の諜報室に
 行くんだって云ってたよ。……その、ごめんね」

勇者「何で謝るんだ? 俺の活躍で報奨金が出たなら
 それってすごく良いことじゃないか。出世もしたみたいだし」

女騎士「……う、うん」

勇者「で、魔法使いは? あいつも金もらってただろ?
 ああ見えて守銭奴だからな。
 『東方の、魔道書、買った……』とか
 無表情のままぼそぼそーっとか云ってたろ?
 あいつは味わいのあるヤツだからなぁ」

女騎士「魔法使いちゃんは、1人で行っちゃった」
勇者「へ?」

女騎士「勇者を追って、魔界へ」

453: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/05(土) 00:07:26.45 ID:5kaffl9OP
魔王「……」
勇者「……」
女騎士「……ごっ、ごめんね」

勇者「止めたんだろ?」
女騎士「もちろんだよっ! でも、次の朝。
 荷物が無くなってて、多分……」

勇者「じゃ、仕方ない。気持ちはわからんでも無いけれど
 女騎士が気に病む事じゃないさ。もとはといえば
 俺が1人で突っ込んだせいなんだろうしな」

女騎士「……勇者」

勇者「それより、今日は交渉だの相談だのがあってきたんだ」
女騎士「紹介状にも書いてあったけど……」

勇者「ま……学士」
魔王「わたしだな。改めて挨拶させてもらおう。
 紅の学士と呼んで欲しい。学者だ」

女騎士「初めまして、勇者のもと仲間の女騎士です」

455: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/05(土) 00:10:43.85 ID:5kaffl9OP
や、わるい。リアルタイムで即興書きしてると
書く方に集中して投下を忘れたりする。
誤字の多さとかには目をつむっていただきたい。
1じゃない弊害だと思って。

458: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/05(土) 00:14:23.98 ID:5kaffl9OP
魔王「今日来たのは、この修道会のお力をお借りするためだ」
女騎士「うかがいましょう」

魔王「まず、これを見て欲しい」

 とさっ

女騎士「これは?」

魔王「馬鈴薯、と言う植物だ。くわしい情報はこちらの
 羊皮紙にもまとめてあるが、要点をまとめると
 寒冷地でも耕作可能な農作物で、単位面積あたりの
 収穫量は小麦の三倍に達する」

女騎士「っ!?」

魔王「もちろん、いくつかの注意点もあるが
 作物としては多くの優位性がある。栽培もけして
 難しくはない。お解りだと思うが」

女騎士「この作物は、多くの飢餓者を救える」

魔王「そうだ」こくり

461: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/05(土) 00:18:19.44 ID:5kaffl9OP
女騎士「どのような助力を当修道会にお望みですか?
 金銭ですか? それでしたらどのような手段を用いても、
 最大限出来うる限りの謝礼を用意させていただきます」

魔王「ほら見ろ、勇者。これがこの作物に対する
 智慧ある人物の対応だ」

勇者「わるかったなぁ、反応が鈍くて」

女騎士「……政治的介入や権力の行使をお望みなのですか?
 何らかの爵位や身分を? 申し訳ありませんが、
 当修道会は王族や貴族にそこまでの影響力は
 保持していないのです。お金の用意できる量も……」

勇者「いや、それはない。
 女騎士がそう言うの苦手なのはよく知ってるし」

女騎士「勇者じゃなくて、学士様と話してるのっ」

魔王「金銭的な援助は、それはあればあっただけ嬉しいが
 当面の目的はそうではない」

女騎士「どういったことでしょう?」

466: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/05(土) 00:23:11.70 ID:yHlGsg7q0
支援

467: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/05(土) 00:26:57.24 ID:5kaffl9OP
魔王「南部辺境に、冬越しの村という寂れた寒村がある」
女騎士「はい」

魔王「その村に修道院を建てて欲しい」
女騎士「そんなことでよろしいのですか?」

魔王「私ももちろんバックアップをしよう。その修道院を
 中心に、この馬鈴薯の栽培方法を農民に指導して欲しいのだ」

女騎士「それは願ったりというか、我が修道会の理念に
 乗っ取った行動ですが……。そんなことで良いのですか?」

魔王「うん。もちろん、馬鈴薯の栽培が成功した場合、
 付近の村や国に修道院を増やして、その栽培方法を
 広めてもらえないだろうか」

女騎士「その過程でこの修道会の影響も増えますから、
 それはこちらにとっては得ばかりの話ですが、
 学士様にとってはどのような得があるのですか?」

魔王「実はこちらの目的も、馬鈴薯の栽培方法の伝播でね。
 南方寒冷地の食糧事情の改善がされれば目的にかなう」

女騎士「そう……ですか」

468: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/05(土) 00:30:44.67 ID:5kaffl9OP
魔王「それに栽培したいのは馬鈴薯だけではない。
 農業の手法改革研究も進めている。
 従来の三圃式農業にかわる、新しい生産性向上の
 手法がある」

女騎士「そうなんですか!?」

勇者「なかなか優れものだぜ」

魔王「そう言った手法を実験的に行なっているのが
 くだんの冬越し村なのだが、成功したとしても
 私達だけでは広く伝えるための組織や人材が
 不足しているのだ。
 そう言った点で協力しあえればと考えている」

女騎士「あなたは、光の精霊様に使わされた
 御使い様に違いありませんっ」

勇者「それはどーかなー」
魔王「……」げしっ
勇者「痛っ!?」

471: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/05(土) 00:32:41.88 ID:HnbUmApdO
追い付いた支援
なんかわくわくするなこれ

472: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/05(土) 00:34:57.42 ID:5kaffl9OP
女騎士「そのようなことであれば、出来うる限りの。
 ええ、私自らが冬越し村へと赴き、修道会の
 総力を挙げて助力いたしましょう」

魔王「ご厚情痛みいる」
勇者「いや、それは……」

女騎士「何か文句あるの? 勇者」

勇者「いや、なんてーのかなぁ。ほら、えーっと」
女騎士「じれったいわね」

勇者「俺って昔から危険をはらんだニヒルな
 勇者じゃない? だから、ほら。
 近くにいると、無用の火の粉が……」

女騎士「そんなのずっと前から体験済みよっ。
 それとも私が冬越し村に行くと何かまずいわけっ?」

勇者「えーっと……それは、そのまおーとか……」

474: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/05(土) 00:38:15.85 ID:5kaffl9OP
魔王「協力してくださる修道会の長に
 失礼があってはいけないぞ、勇者」

勇者「ええーっ!?」

女騎士「……余裕がおありですね」めらっ

魔王「余裕など無い台所事情ゆえ、こちらの修道会に
 協力を求めてきたのだ。わたしは契約至上主義者ゆえ
 契約の相手には最大限の敬意を払うことにしている」

勇者(た、たすけてー)

女騎士「ともあれ、二度と会えないかと思った……。
 いえ、一年ぶりに会うことの出来た勇者と一緒に
 このような恩恵の食物をもたらしてくれた学士様も
 光の精霊のお導きというものでしょう。
 わが修道会の天命かと思います」

魔王「いいえ、魂持つものの努力です」

女騎士「……ええ、そうですね。その通りです」

478: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/05(土) 00:41:19.55 ID:5kaffl9OP
――湖畔修道会、前庭

女騎士「本当い良いの? 見送りは」

勇者「ああ、かまわない。部屋でも良かったのに。
 どうせ転移魔法なんだから」
女騎士「そりゃそうだけど」

魔王「では、冬越し村で会えるのを楽しみにしている」

女騎士「そうですね、冬の間はさすがに移動できませんから。
 この修道院の後任院長を決めて、春一番でそちらへと
 向かいましょう。修道院建築に関して、当地の領主や
 有力者との間に好意的な合意が出来れば良いのですが」

魔王「そちらに関しては、この冬の間に
 出来る限りの根回しをしておこう」
女騎士「ありがとうございます」

勇者「なんだか仲が良さそうに見えて怖い」
女騎士「何か言った?」

勇者「なんでもありません」

女騎士「では春に!」
魔王「ああ、春にお目にかかろう」

479: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/05(土) 00:45:53.44 ID:HnbUmApdO
まほうつかいたんは伏線かな……
切なすぐる…

480: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/05(土) 00:45:53.51 ID:xDyaaswtO
wktkとニヤニヤが止まらねぇ

482: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/05(土) 00:49:00.34 ID:5kaffl9OP
――冬越し村の春

小さな村人「うんわぁ、やっとこお日様が顔をだしたなや」
痩せた村人「だしたなやぁ。ああ、風がぬるくなってきた」

村の狩人「ほーい。ほーい」

小さな村人「どうしたー?」
痩せた村人「今日は良い天気だなやー」

村の狩人「そうだなぁ。今年はなんだか良い事が
 起きそうな気がするだなー」

小さな村人「さっそくかい?」

村の狩人「ああ、ウサギが4匹も捕れたよ。
 1匹は村長さんの所へ持っていく」

小さな村人「そりゃぁいいな!」
痩せた村人「今年はイノシシの塩漬けがまだたくさんあるしな」

村の狩人「ああ、びっくりしたなや」

小さな村人「これも村はずれの剣士様のお陰だなー」
痩せた村人「うちの息子が、斧を研いでもらっただよ」
村の狩人「熊もつぶしてくれたとかで、
 森の中も少し風通しが良いみたいだなや」

484: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/05(土) 00:56:04.90 ID:sOKMpZ9VO
わっふるわっふる

485: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/05(土) 00:56:25.53 ID:5kaffl9OP
メイド妹 ~♪ ~♪

小さな村人「おんや。噂をすれば、村はずれの館の姉妹だなよ」
痩せた村人「本当だ。ほーぅい、ほーぅい!」
村の狩人「どこへいくんだーい」

メイド姉「こんにちは、みなさん」ぺこり
メイド妹「あのねー。村長さんの所へ、木イチゴの樽付け
 を分けてもらいに行くんだよっ」

小さな村人「そーかそーか。えらいな」
痩せた村人「お客さんでもくるんかい?」

メイド姉「はい、そのようです」

村の狩人「そうかそうか。……ふむ。
 ようし、このウサギを、当主の学者様へと
 お届けしてほしいだなや」

小さな村人「おんや、太っ腹だな、狩人さん」
村の狩人「なんの。森を安全にしてくれた
 大恩あるおうちじゃないか。
 ウサギなんて春になったのだからまた取れるだな」

486: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/05(土) 00:59:34.36 ID:5kaffl9OP
メイド妹「ありがとー♪」

小さな村人「それもそうだ。
 これは沢で取れたクレソンだなや。
 ほら、分けてやるから持っていくと良い」

メイド姉「ありがとうございます、本当に」

痩せた村人「雪解けの屋根修理には是非呼んでくれだな」
村の狩人「そうだそうだ、是非お世話してやんねと」

メイド姉「はい。かならず当主に伝えます」

小さな村人「ええってええって」
痩せた村人「なんだ、みんなにこにこしてからに」
村の狩人「やぁ。やっぱりお屋敷詰めともなると
 本当に2人ともべっぴんさんだねぇ」

メイド姉「……」

小さな村人「ああ、本当だ。俺たちとは全然違うだなや。
 賢くて優しくてべっぴんで、俺たちは、みんな
 2人に憧れてるだなよ」

メイド妹「ありがとー」にこぉっ
メイド姉「……ごめんなさい」

492: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/05(土) 01:11:23.61 ID:5kaffl9OP
――村はずれの屋敷、深夜

勇者「よっ。ほっ」 ぎゅっ、かちっ
勇者「こんなもんか? 薬草もあるし、あとは
 現地でどうとでも奪えばいいか」

魔王「こんな深夜に完全武装か」
勇者「魔王……」

魔王「私の物のくせに」
勇者「あー。うん。……ごめん」

魔王「なんだその情けない顔は。勇者だろうに」
勇者「後ろめたいとどうしてもこういう顔になるんだよ」

魔王「私はお前の物なんだぞ。そしてお前は私の物だ」
勇者「ああ」

魔王「止められるとでも思ったか?」
勇者「……」

魔王「見くびらないでもらおう」
勇者「え? いいのかっ?」

493: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/05(土) 01:13:51.98 ID:Ix6X7znV0
支援

494: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/05(土) 01:15:01.77 ID:5kaffl9OP
魔王「ほら」

勇者「これは?」ずしっ

魔王「先々代だったか? の魔王が使ってたという、
 黒玉鋼の鎧兜だ。安心して良い。呪いの類は
 かかっていない」

勇者「……?」

魔王「魔王の私がいなくて、魔界の統治のたがが
 緩んできてるんだ。勇者はその粛正を適当にしてきてくれ」
勇者「お、おう」

魔王「こっちの紙に信用できそうな部族の族長のリストと、
 紹介状をしたためておいた。人捜しなら助力を仰ぐ
 必要もあるだろう」

勇者「いや、あいつはああみえて、その……。
 動じないヤツだから。
 きっと平気でけろっとしてると思うんだ」

魔王「だからといって探していけない道理もあるまい」

499: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/05(土) 01:18:26.71 ID:5kaffl9OP
勇者「魔王……」
魔王「私が寛大で感謝するんだぞっ」

勇者「もちろんだ。ありがとう」

魔王「……」じぃっ
勇者「?」

魔王「それだけか?」
勇者「なにが?」

魔王「ほら、そのぅ。人間には、その、何だ……
 親しい人と……というか親しい男女が別離をする時の
 特別な風習があるそうではないか」

勇者「えー。あ。ああ」
魔王「……駄肉だからダメか?」

勇者「何でこういうタイミングで
 じわぁって見上げるかなっ!?」

魔王「所有契約の項目外なのか?」 じわぁ

500: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/05(土) 01:19:33.26 ID:HOqJO4100
魔王のほうが背が高いイメージだったなぁ

502: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/05(土) 01:21:37.90 ID:DDOWIpgDO
>>500
ちょっとしゃがんで見上げてると考えれば良いじゃないか

501: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/05(土) 01:21:29.62 ID:5kaffl9OP
勇者「えー、あー。その」
魔王「やっぱりスキンシップが足りないのか」

勇者「なんでそうなる」

魔王「実は毎週メイド長に説教されるんだ。

 『まおー様はスキンシップが足りません。
 そもそも露出もかわいげも足りてないんですから
 スキンシップくらいケチってどうなります?
 いいですか? 戦争の基本は物量です。
 飽和攻撃で殿方の理性など崩壊させてしまえば
 戦術の必要性すらないのです』

 そう言われるんだ」

勇者「戦術論的には正しいんだが」

魔王「ダメなのか?」
勇者「そ、その。照れくさいぞ。
 そういうのはさ、ほら。
 もっと落ち着いた時にさっ」

504: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/05(土) 01:24:44.99 ID:5kaffl9OP
魔王「それで良く勇者が名乗れるな。
 それでは臆病者ではないかっ」

勇者「ば、ばか云えっ。俺は勇気にかけては
 世界公認の第一人者、それゆえ勇者ですよ!?」

魔王「では覚悟を決めるのだっ」
勇者「何で開き直ってるんだよ、魔王っ」

魔王「半年だぞ!? 雪の中にこもって
 生活してればアドバンテージが取れて当然だろうに
 なんだか流されるままにずるずると
 何の進展もなく半年もの時間を浪費してしまった事実が
 私を責めさいなんでるのだ。
 そんな状況下でそろそろ修道院の建築も始まり、
 夏の間には完成してしまう上に、
 私の勇者は昔の女を探しに行ってしまうわけで
 精神的に追い詰められない方がおかしいではないかっ」

勇者「あー」

507: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/05(土) 01:27:40.89 ID:k96/TBmJO
魔王可愛いすぎるな

508: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/05(土) 01:29:15.28 ID:5kaffl9OP
魔王「……」じぃ
勇者「まったくなぁ」

魔王「……」
勇者「……」 ちゅ

魔王「……むぅ」
勇者「なんだよその恨みがましい視線はっ」

魔王「おでこではないか」

勇者「おでこで悪いか。気に入らないなら返せ」

魔王「それはダメだ。勇者の全ては私に所有権がある。
 つまりこのおでこも私の私有財産だ。議論の余地はない」

勇者「むぅ……」
魔王「……」

勇者「残りは帰ってからっ!」
魔王「約束だぞ、勇者。かならずだぞっ!」

しゅんっ!

509: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/05(土) 01:29:34.95 ID:Ix6X7znV0
しえん

578: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/05(土) 14:14:24.81 ID:5kaffl9OP
――村はずれの屋敷、中庭

女騎士「さて、諸君らの手元にあるのは南部諸王国の
 軍において用いられる標準的な武器、ロングソードだ。
 この武器は威力、間合いにおいてバランスが良く、
 鉄の国おいて鋳造された製品で質も良い。
 重量バランス配分がこの種の武器の使い勝手を
 決めるので、手に持って馴染むかどうか、判断の
 参考にして欲しい」

貴族子弟「……」
商人子弟「……」
軍人子弟「ばからしーでござる」

女騎士「何か言ったか?」

貴族子弟「……」ぷいっ
軍人子弟「馬鹿らしいといったでござる。何で拙者が
 女如きに剣を教わらないといけないのでござるか」

女騎士「……」

軍人子弟「白の剣士殿から剣を教わったのは
 別に女に弟子入りするためではないでござるよ。
 女は家の中でケーキでも焼いていれば良いでござる」

581: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/05(土) 14:20:50.67 ID:5kaffl9OP
女騎士「おい、そこのデブ」
商人子弟「ひゃ、ひゃいっ!? ぼ、ぼく?」

女騎士「剣を両手に持って構えろ」
商人子弟「……ううう」

女騎士「はっ!!」 ギンッ!!

貴族子弟「!?」
軍人子弟「ッ!!」
商人子弟「けけけ、剣がっ!! ま、まっぷた、真っ二つ」

女騎士「はっ!!」 ギンッ!!
商人子弟「み、短くなったっ!?」

女騎士「その気になれば5cmずつ切り取ることも出来るんだぞ」

軍人子弟「ど、ど、どうしてっ」

女騎士「そこのゴザルに云っておく」

583: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/05(土) 14:25:44.21 ID:5kaffl9OP
女騎士「私は、湖の国の女騎士。かつて勇者と共に
 魔界で千の戦をくぐり抜けてきた女だ」

貴族子弟「ゆ、勇者っ勇者様のっ!?」
商人子弟「!?」
軍人子弟「ま、ま、ま、まさか『鬼面の騎士』!?
 『怪力皇女』!? 『石壁しぼりの女夜叉』!?」

女騎士「色々詳しいじゃないか、ゴザル」

軍人子弟「……」がくがくぶるぶる

女騎士「これは別に怪力じゃない。技だ。
 刃筋を安定させて、力を強度の低い場所に
 集中させれば諸君らでも実行可能だ。
 勇……あー。白の剣士は、素質がありすぎでな。
 なんでも『なんとなーく』でやってしまうので
 教師としては不適当なのだ」

商人子弟「もしかして、白の剣士殿は、女騎士殿の
 弟子だったのですか!?」

貴族子弟「そ、そうかっ!」
軍人子弟「そうでござったか……」

584: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/05(土) 14:36:22.66 ID:5kaffl9OP
女騎士「う、うむ。そういうような……。
 そ、そういうことだ。とっ、とにかく。
 白の剣士は、勅命を帯びて探索の旅に出ている」

貴族子弟「勅命……王のご命令ですか」
軍人子弟「探索の旅! 男子の本懐でござるな!」

女騎士「そう言うわけで、週に4回の戦闘訓練は
 しばらくのあいだ私が受け持つ」

商人子弟「は、はヒィ!」

女騎士「なに。私は白の剣士とちがって
 理論的かつ実戦的、基本に即した教練方法を
 採用するつもりだ。諸君らの武芸を必ずや
 実用の域まで高めよう」

貴族子弟「勇者の仲間の騎士様に
 剣を教授いただけるとは光栄です!」
軍人子弟「そこまで言われては仕方ない。
 拙者も剣の道を究めるとするでござる」

女騎士「では、手始めに北の森を、走り込みで三周。
 そのあと帯剣して素振りをしながら一周。
 小川へと移動したら、腰まで水につかって
 ロングソードの素振り500回だ」

三子弟「「「ひぃぃぃ!?」」」

587: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/05(土) 14:41:31.45 ID:5kaffl9OP
――村はずれの屋敷、初夏

 ひいぃぃぃ! ひぃぃぃぃ!

魔王「今日も元気だな」

メイド長「まったくです。でも、女騎士さんは
 あれで結構楽しそうですよ?」

魔王「そうなのか? 勇者がいなくなって
 お尻に矢が刺さったアナグマのように怒り狂って
 いたではないか」

メイド長「頼りにされると張り切ってしまう人
 なんでしょう。可愛らしい人ですよ」

魔王「む」
メイド長「まおー様より引き締まった身体ですし」

魔王「むぅ」
メイド長「いえいえ。まおー様もスタイルは
 悪くないんですよ? 出るべきところのボリュームは
 それはたいしたものです。えっちではしたない肉体です」

魔王「メイド長の言い方の方がはしたない」

588: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/05(土) 14:52:32.71 ID:5kaffl9OP
メイド長「しかし肉体性能は、お色気か癒し系ですのに
 ご本人の性格がお色気とも癒しともまるで無関係なのが
 まおー様の泣き所でしょうか?」

魔王「ほうっておけ」

 がきょ、がちょ

メイド長「なんですか? それ」

魔王「うむ。呼び寄せた職人に依頼していた試作品だ。
 実験して手直しして欲しい部分の指示を
 書き付けておかないとな」

メイド長「何に使う物なのですか?」

魔王「羅針盤といわれているものだ。いま作っているのは
 その改良だな。この二軸のシャフトと、大きなガラス球で
 内部の羅針盤を水平に保つのだ」

メイド長「ふむふむ。改良前はどうやっていたんですか?」

魔王「水の上に磁石を浮かべていたんだ。
 ほら、この内側の、内部に浮かんでいるのと
 おなじ構造だな」

589: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/05(土) 15:00:01.62 ID:5kaffl9OP
メイド長「だいたい判りました。でも、随分巨大化
 してしまったわけですね」

魔王「仕方ない。これは試作品だからな。
 実用化されれば、小型化のめども立つだろう」

メイド長「どういう改良なのですか」

魔王「うむ、羅針盤とは包囲を知るものだ。
 この内部の水の上に浮かべた磁石が回転して
 北の方角を教えてくれるわけだが……。
 そのためには水面が水平安定する必要があるな」

メイド長「はぁ」

魔王「方位を知りたがるのは船乗りだろう?
 揺れる船の上で、ましてや嵐なんか来たりした日には
 水に浮かべた磁石の方向を安定させるのは至難だ」

メイド長「じゃぁ、いままでどうやってたんですか!?」

魔王「根性だろ」

メイド長「……」
魔王「……」

メイド長「人間ってすごいですね」

591: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/05(土) 15:08:37.94 ID:5kaffl9OP
魔王「まぁ、この宙づり自由式であれば
 設置場所に難があるとは云え、揺れる船の上でも
 下部の釣り錘によって水平が保持される」

メイド長「ふむ。根性が無くても出来るわけですね」

魔王「いや。人間であるというのは根性は必須だと
 女騎士殿は云っていたから、根性はやっぱり
 必要なのだろう。
 この改良で軽減されるのは技能だ。
 羅針盤を扱うのは特殊な技術だったからな。
 この簡便な装置で技術者が増えるわけだ」

メイド長「でも、この村には海ありませんよ?」
魔王「うむ。この装置は、売りつける」

メイド長「買ってくれますかね?」
魔王「まともな目利きがあれば、家ほどの
 黄金でも積むだろうな。これで『同盟』と接触する」

メイド長「まおー様の専門ですから、お任せします」
魔王「まかせておけ」

メイド長「ところでお昼は馬鈴薯で?」
魔王「うむ、まことに馬鈴薯の揚げは美味なるぞ」にこっ

595: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/05(土) 15:18:25.86 ID:5kaffl9OP
――魔界、黒狼砦

黒狼鬼「うぉろろろ~ん」
黒狼鬼「ろろろぉ~ん」」

勇者「うお。何か集まってきたぞ」

黒狼鬼「うろろ~ん! がうっ! がうがっ!」
勇者「おまえらっ。怪我したくなきゃ、引いてろっ!」

 ザガッ! ガッ!!

黒狼鬼「ぎゃんっ!?」
黒狼鬼「はっ……はっ……はっ……ギャウッ!」

羽妖精「黒騎士サマー。コッチコッチ!」
勇者「判るのか?」

羽妖精「女王サマ、コッチコッチ」
勇者「まかせろっ! 爆砕呪っ!」

596: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/05(土) 15:24:56.97 ID:5kaffl9OP
羽妖精「上~コノ上~!」
黒狼衛兵「行かせぬっ」

勇者「なんだ、言葉がしゃべれるのもいるのかっ!?」

 ギンッ! ギギンッ!

羽妖精「黒狼族ノ成体ダヨォ。
 モット大キナノモ、イルヨォ」

黒狼衛兵「心配するな、貴様、ここまでだっ」

勇者「ほあちゃっ!!」

 ドビシィッ!!

羽妖精「デコピン!?」
黒狼衛兵「む、無念っ!」

 バタリ

597: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/05(土) 15:26:12.88 ID:avrTeHFJ0
衛兵涙目www

598: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/05(土) 15:29:24.66 ID:VABrqhi20
声のせいで一瞬にして勇者のイメージがブルース・リーになった

600: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/05(土) 15:34:16.55 ID:fT6E+J3H0
俺はケンシロウに

599: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/05(土) 15:30:57.33 ID:5kaffl9OP
勇者「切りがないな」
羽妖精「一杯来ルヨォ」

黒狼衛兵×15「ガフッ、ガフッ! オロローン!」

勇者「面倒くさいぞ、お前ら」
羽妖精「ダ、ダメッ! 塔ヲ壊シチャダメ!」

勇者「む、そうか。上に女王がいるんだっけ。」
羽妖精「ウンウンッ」

勇者「んじゃ、えいっ!」
黒狼衛兵「片手で岩扉をっ!?」
黒狼衛兵「に、逃げろっ」

勇者「ちょっと距離が必要なんだ、この技は。
 ……あんまりうろちょろするなよ、
 急所に当たると死んじまうぞ-。
 えっと、たしか、こうやって
 背中をひねる感じでぇ……」

羽妖精「眩シイヨッ」

勇者「光の精霊直伝、光の封印槍だっ」

601: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/05(土) 15:34:49.61 ID:5kaffl9OP
――魔界、黒狼砦の塔の上

 ドッゴォォーン

羽妖精「ケフッ。ケフッ」
勇者「悪いな」

羽妖精「ヒドイヨォ」

妖精女王「何事ですっ」
勇者「お。この人がそうかな?」

羽妖精「女王サマッ!」

妖精女王「羽妖精ではありませんかっ」
勇者「こんにちは、手荒な訪問で済みません」

羽妖精「女王サマ、コレハ人間ノ雄」
妖精女王「みれば判ります」

勇者「人間です」
羽妖精「アタシ頭イー♪」

602: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/05(土) 15:39:17.34 ID:5kaffl9OP
妖精女王「速く逃げてくださいっ。
 魔狼将軍が来るといけません」

勇者「倒した」

妖精女王「まさかっ? 人間にそのような力が。
 しかし、それだけではないのです!
 魔狼将軍の背後にはさらなる実力を持つ
 魔界でも高位の戦士、魔狼元帥が……」

勇者「それも倒した。先週」

羽妖精「!? あ、あなたは」
妖精女王「黒騎士人間ダヨ」

勇者「ああ。黒騎士だ。魔王の剣にして、
 絶対忠誠を誓う魔界の執行官」

羽妖精「カックイイヨネ」
妖精女王「そうですか、確かにその鎧の紋章は魔王様の物。
 いえ、もしやその鎧、魔王様ご自身の物では……?」

勇者「……その問いに答える言葉はないぞ」

羽妖精「カッコツケテルー」

603: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/05(土) 15:43:25.76 ID:WZjCWJepO
羽妖精かわいい

605: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/05(土) 15:44:54.63 ID:5kaffl9OP
妖精女王「魔王様の命令に背き、人間をさらっては
 無益な殺生と玩弄を繰り返す魔狼族を粛正されに
 きたのですね」うるうるっ

勇者「いや、ついカっとなっ」
羽妖精「……」じー

勇者「ごほん。そうである。魔狼族の横暴、目に余る。
 人間族に慈悲を掛けるわけではないが、魔王の
 命令は絶対である。逆らうことは許されない」

妖精女王「元は人間族でしょうに。何という忠誠心でしょう」

勇者「ふははは。我は黒騎士。絶対不破の魔王の剣」

妖精女王「魔王様の仰せの通りに」ふかぶかっ

勇者(なんか気分良いな! 魔王の部下も!!)

羽妖精「女王サマー」
妖精女王「何です?」

羽妖精「人捜シー」

606: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/05(土) 15:48:53.70 ID:5kaffl9OP
妖精女王「人捜し?」

勇者「ああ。そういえばそうだった。
 あーあー。
 魔王の命令により、我は1人の人間をさがすものなり」

羽妖精「女王サマノトコロニ来テタ人間女ー」

妖精女王「ああ。あの術士ですか……」
勇者「いまは何処に?」

妖精女王「素晴らしい魔法の素質を秘めていましたからね。
 彼女は妖精族の魔法を学ぶと、さらなる奥義を求めると
 云って旅に出ました」

勇者「旅? どこへ」

妖精女王「それは判りませんが……」

勇者「一体何処まで努力すれば気が済むんだ、
 あの無表情小娘。いまでも人間界最強のクセに」

妖精女王「そういえば……」

607: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/05(土) 15:50:01.22 ID:w80Qw7Qe0
それにしてもこの勇者ノリノリである

608: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/05(土) 15:53:16.00 ID:5kaffl9OP
勇者「そういえば?」
羽妖精「魔界の果て、時の砂の滝が落ちる滝壺に
 一つの古いベンチがあると。そのベンチに座った
 旅人は星の最果て、『外なる図書館』へ行くことが
 出来ると云われています。
 ――彼女は熱心にその伝承を調べていました」

勇者「『外なる図書館』だな? 判った」

妖精女王「しかしそれは伝説の場所。
 詳しい場所やたどり着く方法は妖精族でも知りません」

勇者「そのようなことは問題ではない。
 魔王の命にしたがいどのような場所であろうと
 必ず見つけ出す」

羽妖精「カッコイー!」

妖精女王「ご無事をお祈りいたします」

勇者「妖精族は元の領地に戻り、いままでと同じく
 その民を治めて暮らすようにとの魔王の仰せだ」

妖精女王「魔界を納める魔王様の治世に幸いあれ」

609: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/05(土) 15:54:27.84 ID:fT6E+J3H0
勇者かっくいいー

610: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/05(土) 15:57:46.97 ID:5kaffl9OP
勇者「えー、こほんこほん。
 魔狼族の生き残りにはきつく申し渡しておく。
 元来魔狼族は誇り高い自由不羈の民のはず。
 穏健派を中心に魔王の民として、その誇りを
 まもるような生き方にするが良いだろう」

妖精女王「妖精族は魔狼族からの迫害さえなければ
 異存はありませぬ。遺恨は伝えぬと誓約しましょう」

勇者「……その寛容、魔王に伝えよう。
 では、時間だ。我は探索の旅に戻らなければ
 ならない。縁があればまた逢おう」

妖精女王「このご恩、けして忘れません」

しゅんっ!!

羽妖精「カッコイー!」

妖精女王「妖精族は救われましたね。
 魔王様にあのような部下がいるとは……。
 ただのお飾り、柔弱で無能な王と云われてきましたが
 何かが変わり始めているのかも知れません。
 魔王様と云えば――あっ」

612: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/05(土) 16:01:44.28 ID:5kaffl9OP
羽妖精「ドシタノー?」

妖精女王「魔王様といえば……」

(時の砂の滝が落ちる滝壺――
 一つの古いベンチ
 星の最果て――
 『外なる図書館』――)

妖精女王「『外なる図書館』……」

羽妖精「?」

妖精女王「『外なる図書館』に引きこもる、
 魔族の中でも変わり者の一族がいると……。
 その一族は知識を求め、過去と未来を幻視し
 『外なる智慧』を身につけて、憧れに魂を燃やすと……」

羽妖精「?」

妖精女王「魔王様って、魔王って……
 何なのでしょうか……」

616: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/05(土) 16:11:56.87 ID:5kaffl9OP
――南氷海巨大湾岸都市、商業会館

青年商人「ふふぅん、こいつはたまげた。
 全く度肝を抜かれた、まいったな」

中年商人「よう。どうした、呼び出して」

辣腕会計「まだ夕食には早いでしょう?
 どうしたんです?
 湖の国のワインでも暴落しましたか?
 それとも聖王都の為替変動ですか?」

青年商人「まぁ、こいつをみてくれ。
 午前中に届いて、やっと組み立てたんだな、これが」

中年商人「――ッ!!」
辣腕会計「こ、これは……」

青年商人「まぁ、一目でわかるか」

中年商人「これは羅針盤だな? 見たことのない形状だが」
辣腕会計「ですが、見ただけで判ります」

617: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/05(土) 16:16:42.64 ID:5kaffl9OP
青年商人「何処のどいつの工夫だかは判らないが
 こいつはたいしたものだ。恐ろしいもんだ」

中年商人「ああ、頭を大石で殴られた気分だ」

辣腕会計「これは……二つの円環で、どんな場所に
 置いても水平が保たれるのですね? さらに
 この重りで安定させるわけですか……」

青年商人「ああ。理屈は見れば判る。
 特別な装置が使ってあるわけでもないが、すごい発明だ」

中年商人「これを見せれば、銅の国の技術士ならば
 もっと小型にも出来るだろう。やったな! おい!
 何処でこんな物手に入れたんだ。
 この功績の価値は、幹部候補生、いや、10人委員会に
 入るのも夢じゃないぞ、お前!」

辣腕会計「ええ、この発明は『同盟』に巨大な利益を
 もたらすでしょう、同志よ!」

青年商人「こいつは世界を変えるな」
中年商人「ああ、世界を変えてしまうだろうな」

618: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/05(土) 16:21:36.81 ID:53w24ShfO
さて…どうなる

619: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/05(土) 16:22:51.28 ID:XzT42IwVO
この展開はヤな予感がするよな

620: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/05(土) 16:24:36.89 ID:5kaffl9OP
青年商人「さぁて、なかなか」
中年商人「ふむ、たしかに」

辣腕会計「どうしたんです?」

青年商人「いや、なに。これがここにある、
 その意味合いをな」

中年商人「確かに巨大な利益は目の前だ。
 酒樽一杯の蒸留酒のような物。嬉しくてたまらんわな。
 しかし、その酒樽にはもう蒸留酒はのこっていないのかな?
 あるいは罠の可能性は?
 俺たちは商人だ。酔っぱらいじゃぁ、無い。
 そこんところを頭を使わないとな」

辣腕会計「そうですね、ふむ」

青年商人「まず、第一にこれを発明したのは俺じゃない。
 俺にこれをとどけた人間がいるんだ。
 そいつの思惑を考えなければいけないだろうな」

621: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/05(土) 16:25:42.42 ID:Ix6X7znV0
支援

622: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/05(土) 16:28:46.83 ID:5kaffl9OP
中年商人「身元はわかっているのか?」

青年商人「まぁ、本人からの手紙にはな。
 『紅の学士』とある。送り主は南部諸王国の西の外れ
 冬越し村というところだ」

中年商人「小さな寒村だな」
辣腕会計「目立った特産品はなかったと記憶していますが。
 ――いや、まてよ」

 がさごそ

青年商人「どうした?」
辣腕会計「確か、報告にその名前が……。
 ああ、ありました。この夏に、湖畔修道会の修道院が
 その村に建築されたようです」

中年商人「湖畔修道会? 湖の国の?
 もうそんな辺境まで勢力を広げたのか?」

辣腕会計「いえ、勢力範囲から遠く離れた場所に突然
 修道院をつくったようです。教化も進んでいないでしょう。
 ですから報告書に特記されていたのでしょうが……」

623: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/05(土) 16:32:33.94 ID:5kaffl9OP
青年商人「ふむ。黒だ」
中年商人「関係があると睨んで良いだろうな」

辣腕会計「接触ですか?」
青年商人「それはどうあれ、その必要があるだろう。
 『同盟』がこの羅針盤から得られる利益を
 最大化するためには、この工夫を独占しなければならない」

中年商人「だが、この工夫は、一目見ただけで
 その革新性が判る。革新性が判りやすいってのは
 売る時にはまたとない武器だが、
 真似して作るのも簡単だって云う弱点があるな」

辣腕会計「そのとおりですね」

青年商人「『同盟』がこの羅針盤を部外秘として
 『同盟』所属の船舶だけに装備し、交易優位性を
 あげるにしろ、全中央大陸国家に販売して利益を
 上げるにしろ。発明元のこの学士と交渉する必要がある」

辣腕会計「真似はできても、あちらが他の様々な
 組織や国家に同様の売り込みをしないとも限らない。
 ……そうですね?」

中年商人「場合によっては……」
青年商人「そう言うことにはならんで欲しいな。
 我らは商人なのだから」

624: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/05(土) 16:33:11.69 ID:Ix6X7znV0
しえん

625: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/05(土) 16:39:19.13 ID:5kaffl9OP
――冬越しの村、夏

小さな村人「ほーぅい、ほーぅい」
痩せた村人「ほーぅい」

小さな村人「なんて良い天気なんだろう」
痩せた村人「まったくだなや、大麦さんもそだっとるよ」

小さな村人「修道院が出来てから、色々教えてもらえるしなや」
痩せた村人「おや、修道士さんだべさ」

修道士「こんにちは、精が出ますね」
小さな村人「こんにちは」ぺこり
痩せた村人「こんにちはだなや」ぺこり

修道士「今日はどうされています?」
小さな村人「わしは川でマスを釣ってきただぁよ」
痩せた村人「わしは薪をつくってただぁ」

修道士「それは良かった」
小さな村人「修道士さんは?」

627: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/05(土) 16:42:35.55 ID:5kaffl9OP
修道士「ははは、実はですね。
 試しに作っていた作物が、早くも二回目の
 収穫を迎えたんですよ!」

小さな村人「なんだか、修道士さんも嬉しそうだなや!」

修道士「ええ、嬉しいです。大地が恵んでくださった。
 これは光の精霊様が頑張れとおっしゃってくれて
 いるわけですよ。それで、この収穫の報告に
 学士様への所へ行こうかと思いましてね」

小さな村人「そうかそうか、そうだったんだべ」

修道士「ええ。この作物、馬鈴薯というのですが
 甘くてほくほくして大層美味しいのですよ」

小さな村人「そうかぁ、一度食べてみたいだなやー」
痩せた村人「どんな味なんだろう」

魔王「招待するぞ?」
修道士「ああ、これは学士様!」

小さな村人「学士様、こんにちはですだよ」
痩せた村人「こんにちは、学士様。良い天気ですだ」

628: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/05(土) 16:43:53.23 ID:Ix6X7znV0
支援

629: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/05(土) 16:44:34.64 ID:5kaffl9OP
修道士「いま、ご報告にうかがおうかと」
魔王「ああ、ありがとう。そろそろかと思っていたのだ」

メイド姉妹 ぺこり

修道士「計画通りに取れました。いやいや、好調ですね。
 荷車二台分はたっぷりと取れたかと思います」

魔王「土壌採集は?」

修道士「指示通り、六カ所でそれぞれ
 樽一杯分づつを保存してあります。それにしても
 我が修道会も農業技術の集積は進めてきましたが
 前代未聞の方法ですね」

魔王「結果が出てくれれば嬉しいのだがな。
 ふむ、これか」

修道士「ええ、良く育っています」

魔王「よし、振る舞いをしよう」
修道士「振る舞い、ですか?」

魔王「こいつを広めるためには、何はともあれ、
 皆に食べてもらわねば始まるまい?
 それには、宴でも開いて振る舞うのが一番だ」

630: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/05(土) 16:47:57.94 ID:5kaffl9OP
小さな村人「ほんとうですか? 学士様」
痩せた村人「良いのでございますか」

修道士「どうです?」

魔王「もちろん本当だ。修道士どの、いかがだろう?
 修道院の前庭を借りることが出来ようか?」

修道士「もちろんですよ。でも、この馬鈴薯は売って
 資金に充てるのかと思っていましたよ」

魔王「金はもちろん欲しいが、独り占めするつもりはない。
 飢えなく、皆が豊かになる方法を考えないと、
 先が続かない。そのためには村の皆の手助けが必要だ」

小さな村人「うわぁ、食べてみたいですだ学士様」
痩せた村人「おらのところの畑でも作れるようになるですだ?」

修道士「ああ。もちろんさ。
 作ってみたが、小麦と比べて世話が大変と云うこともない。
 もちろんいくつか気をつけなければならないことは
 あるけれど、それは修道会で教えてあげることが出来る」

631: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/05(土) 16:50:22.32 ID:6J0pRaRl0
追いついた

632: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/05(土) 16:52:32.61 ID:5kaffl9OP
小さな村人「さっそく家内におしえてやらにゃぁ!」

魔王「おお、そうだ。宴の支度に手が足りないかも知れぬ。
 奥方の手が空いていれば来ていただけると助かると
 思うぞ。なあ、修道士殿」

小さな村人「あーれ。学士様。奥方なんて照れるだよ。
 うちのはただの母ちゃんだよ。でも、そう云われると
 なんだか母ちゃんも悪い気はせんかもなぁ。
 こっぱずかしいな。でも直ぐに行かせるから!」

修道士「そうですね、ご報告もしたということにして
 私も帰って他の修道士、騎士院長にも伝えて参ります。
 ああ、そうだ。その、料理はどうすればよいでしょう」

魔王「心配ない。いってくれるな?」

メイド姉「はい」ぺこり
メイド妹「いきまーっす」

修道士「それは助かります。まだこの馬鈴薯の調理方法を
 研究した訳じゃありませんからね」

魔王「あー。くれぐれも云っておくが、
 揚げ馬鈴薯だけは必ず作るのだぞ?」

636: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/05(土) 16:57:52.91 ID:5kaffl9OP
いい具合にシーンが途切れてネタも尽きたので
ここでQKしてまいりまふー。1よーい。
とうとう600越えちゃったよーい。
ほいでは、まったねー。落ちたらそのときはそのときでー。

649: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/05(土) 17:39:50.44 ID:GLAPPnLM0
追いついた
続きwktk

656: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/05(土) 18:47:14.56 ID:mixyKd1BO
ほしゅう

675: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/05(土) 20:18:50.82 ID:5kaffl9OP
――冬の国、王宮

王子「じぃ、じぃ~」
執事「なんでございましょう、若」

王子「若はやめろ。俺はもう二十歳だ」
執事「どうしたのでございます?」

王子「自慰は馬鈴薯なる物を知ってるか?」
執事「ははぁん。若も馬鈴薯を食べたので?」

王子「ああ、食べた。美味いな!」
執事「何でも旅の学者がこの地へもたらしたとか」

王子「うまいうえに、俺たちの貧しい国でも
 もっぎゅもっぎゅ……栽培できるらしいな」
執事「さようでございますなぁ」

王子「情報はあるのか?」
執事「ございますとも」

676: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/05(土) 20:21:56.16 ID:q4ITnw60P
ktkr

678: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/05(土) 20:24:10.25 ID:5kaffl9OP
王子「ふむふむ」
執事「こちらの書類は関連項目でございます」

ぺらり

王子「では、湖畔修道会が主導で栽培を
 推し進めているのだな?」

執事「そうなりますな。また、この湖畔修道会は
 合わせて様々な改良を施しているようで」

王子「ふむ、どのような?」

執事「まずは、四輪作といわれるものですな。触れ込みに
 よれば大地の恵みを目減りさせずに、四年周期で麦作を
 行なう手法です。以前の三輪作にくらべて、小麦はもと
 より豚や羊などを安定して供給できるようですな」

王子「冬のあいだにもか?」

執事「冬のあいだには、家畜にカブを食べさせるそうです」

680: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/05(土) 20:30:04.11 ID:5kaffl9OP
執事「それから、えー。農機具の改良、修道学院の設立」
王子「学舎か、ふむ」

執事「さらにこの度作られたのが、『風車』です」
王子「それはなんだ?」

執事「『水車』に似たものですが、川の流れではなく
 風の流れをくみとって、動力にしているようですな。
 修道会が雇い入れた船大工の一派が工夫して作った
 そうですが。我が国北部の高地には、充分な水源が
 ありませんから、普及すれば便利でしょう」

王子「……ふむ」
執事「お気になりますか?」

王子「まぁな。税収が上がっているのは嬉しいが……。
 まぁ、それで戦争を終わらせられるわけでなし。
 しょせんイモでは我が国を救うことも出来ないが
 ……まぁ、なんでも目は通しておかんとな」

執事「そうですね。税収は荘園ごと、村ごとに納め
 させますから、一概にどのくらいの効果があるかは
 判りませんが、修道会が関与すると5%ほど税収が
 上がるようですな」

王子「大きいな」
執事「小さく考えてはいけませんよ。1年足らずの
 あいだにそれだけの改革を見せたわけですから
 来年以降どうなるか判りません」

681: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/05(土) 20:32:31.44 ID:eUxoZCrw0
しえんた

682: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/05(土) 20:35:40.50 ID:5kaffl9OP
王子「冬小麦の収穫はこれからであるしな」
執事「その馬鈴薯なる食物は、年に数回収穫できる
 そうですな」

王子「そうなのか?」
執事「驚きですが、事実のようです」

王子「ふむ」
執事「税収の形には表れないものの、農民の暮らしには
 大いなる恩恵を与えていると云って良いでしょうな」

王子「じぃの云うことならば信じぬ訳にはいかないな」
執事「ありがたいことですなぁ」

王子「何らかの施策をするべきだろうか?」
執事「そうですなぁ。まだ始まったばかりのようですから
 傍観していても良いのではないでしょうか」

王子「ふむふむ」
執事「修道会はこの運動で、我が国を始め、南部諸王国に
 確固たる地盤を築く狙いがあると思います。
 運動の結果を出せれば、向こうから王宮に接触を
 持ってくるかと思いますな」

683: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/05(土) 20:41:15.79 ID:5kaffl9OP
王子「そうか。修道会の指導者は……」
執事「女騎士ですな」

王子「挨拶くらいしなくて良いのか? 顔見知りではないか」

執事「まぁ、向こうは現役の時から思い込んだら
 動かない高潔なる気位の持ち主でしたからなぁ。
 私も恨みに思われているでしょうな。
 いわば裏切り者ですから」

王子「そうか……。すまない」
執事「もったいないお言葉ですな、若」

王子「今年は魔族の動きが鈍い」
執事「おそらく、勇者の噂は真実でしょう」

王子「その勇者を、手を下したわけではないとは云え
 死地に追いやったのは我々だ……。
 勇者が生還したという情報はないのか?」

執事「ございませんな」

王子「この戦争、終わるわけには行かぬのか」

執事「いま戦争を終えれば、真っ先に消滅するのは
 我が国でしょう」

687: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/05(土) 20:46:23.82 ID:5kaffl9OP
王子「……」

執事「この冬の国、それをいえばおなじ南部諸王国である
 氷の国、白夜の国、鉄の国はそれぞれ気候も厳しく、
 充分な食料も取れません。最下層の国々です。
 いま現在は魔族との大戦争の前線として
 中央大陸全土からの資金援助と食料援助がとどいている。
 中央大陸の盾と云えば聞こえは良いですが
 詰まるところ走狗になっているに過ぎません。
 援助がとどこおれば、人々は全て飢えて死ぬでしょうな」

王子「しかし、それを知らせず、兵をただ消耗させるのは
 兵達に対する裏切り行為だ。茶番ではないか」

執事「ええ、茶番ですとも。
 しかし茶番をする存在が、王族です」

王子「……戦場で雄々しく散るのは良い。
 それは氷海の戦士の直系たる我が血にふさわしい。
 だが民を欺き、その命を代価にして生を購うのは……」

執事「若、辛抱ください。
 どうか、民を見捨てずにいてください」

689: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/05(土) 20:55:15.92 ID:5kaffl9OP
――魔界、紅玉神殿

勇者「……うー。疲れた。だるい。腹減った」
火竜大公「や、やるな。黒騎士よ」

勇者「いい加減タフだな、火竜大公」
火竜大公「……退くわけには、行かぬっ」

勇者「おまえ、十回くらいしっぽも腕も切られてるじゃん」
火竜大公「何度でも生やすまでだ!」

勇者「うぁー。どうすれば良いんだよぅ、この変態」

火竜大公「我が命を絶てば良かろう。
 その実力を持っているクセに何を悠長なことをしておる!」

勇者「別に殺したくてやってるわけじゃない。
 編成中の軍勢を退かせてくれれば済む話だろう」

火竜大公「それは出来ぬ。火竜の勇士によって
 『開門都市』は奪還する必要があるのだ」

勇者「あー。やっぱしそれかよぉ」

690: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/05(土) 20:55:39.67 ID:b66E+dbR0
しえn

691: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/05(土) 20:58:39.54 ID:5kaffl9OP
火竜大公「貴様もだ! 貴様も魔王様直属の執行官で
 あるのならば、人間どもに奪われた魔界の都市を
 奪い返すのが筋という物であろうにっ!」

勇者「それは云うとおりなんだけどさ」

火竜大公「何を躊躇う。人間を皆殺しにすべきではないかっ!」

勇者「とりあえず、魔王は『開門都市』奪還の命令を
 発してはいないんだよ」

火竜大公「魔王がふぬけなのだ!
 わが竜族から魔王が出ていれば、あのような柔弱な弱腰の
 魔王などいただかぬでもすんだろうにっ」

勇者「つまり、魔王に弓引くのか?」
火竜大公「……」

勇者「それは盟約に背くよな。さんざん諸侯が争って
 滅亡寸前まで何回も行った魔界が、なんとかやっと
 つくった協定らしき協定だもんな」

694: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/05(土) 21:07:55.39 ID:5kaffl9OP
火竜大公「魔王は『開門都市』奪還の命令を発してはいない」
勇者「うん」

火竜大公「だがしかし、禁止の命令を発したわけでもない」
勇者「あー。気がついちゃってるよ、このおっさん」

火竜大公「諸侯に檄を発して、魔王の名をかたり
 『開門都市』奪還を目指すなら、それは盟約に触れようが
 我が部族だけで向かうのであれば、
 それは王である私の決定だ。
 誰に口を挟まれる云われもないっ!」

勇者「俺に勝てればな」

火竜大公「ならば殺すが良いっ!
 魔界の溶岩の中で生を受けた火竜大公、逃げも隠れもせんっ!」

勇者「なんかもー。難しいなぁ。
 気に入らないヤツ、刃向かうヤツをかたっぱしから
 ぶっ飛ばせた勇者生活が懐かしい……。
 あの頃は殺さないように話をまとめる苦労なんて
 全然しなかったぞ……」

695: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/05(土) 21:09:31.26 ID:Ix6X7znV0
しえん

696: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/05(土) 21:13:25.75 ID:b66E+dbR0
しえn

697: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/05(土) 21:15:45.78 ID:5kaffl9OP
勇者「火竜大公」
火竜大公「何だ、黒騎士」

勇者「では、俺があの街に先乗りをしよう」
火竜大公「……」

勇者「あの街、『開門都市』は
 魔族があがめる片目の神の聖地だ。
 そこを人間に支配されるのは苦痛だろう。
 それは判る。しかしまた、その聖地の守りを忘れ
 人間世界を攻めるに酔っていた竜族の罪もあると知れ」

火竜大公「それは……」

勇者「言い訳無用。……人間が憎いのは判るが
 あの都市は彼らが戦争で奪ったのだ。
 争いの勝者は神聖だ。その魔界の不文律を忘れるな。
 特にその敗北が油断から成されたのなら、なおさらだ」

火竜大公「……ぐぐ」

698: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/05(土) 21:18:03.84 ID:katkt+uoO
あれ?勇者が大物っぽくみえる

699: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/05(土) 21:19:19.44 ID:AeLD3IDS0
火竜大公さんも魔王の側近とはいえ人間の、しかも元勇者の言うことよく聞けるな

700: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/05(土) 21:20:31.04 ID:QhSuuNTQ0
面白いよ。④

701: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/05(土) 21:21:37.65 ID:5kaffl9OP
勇者「それに、火竜大公の軍で攻めたところで
 あの街はこの魔界で唯一人間が暮らす街だ。
 たやすく奪還できるとはかぎらない。
 精鋭たる聖鍵遠征軍が守っているのだからな。
 悪くすれば、火竜の民は全滅だ。
 それを望むのか、火竜大公」

火竜大公「そのようなこと、やって見ねば判らぬ!」

勇者「次の春まで時間をくれ」
火竜大公「……」

勇者「黒騎士が、魔王の名にかけて誓おう。
 『開門都市』を取り戻し、魔王の直轄地とする」

火竜大公「魔王の、直轄地に!?」

勇者「火竜の一族の関心は誇りだろう?
 魔王の軍勢が取り戻し、直轄地になるのであれば
 問題なかろう。魔王はその柔弱という評判を払拭できる」

703: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/05(土) 21:25:30.11 ID:5kaffl9OP
火竜大公「しかし、もし約束をたがえれば」

勇者「そのときは魔王がまさに弱腰と云うことだろう」

火竜大公「容赦はせぬぞ?」

勇者「ああ、魔王は魔王にふさわしくない。
 そのときは魔王の位を譲り渡そう。黒騎士が約束する」

火竜大公「……」
勇者「どうだ?」

火竜大公「よかろう」
勇者「おー! よかった」

火竜大公「おぬしには男気がある! だれか、だれかある
 公女を呼んで参れ!」

火竜公女「おとうさま、私はここに」
勇者「えーっと」

火竜大公「約束を見事果たした暁には、この公女を
 くれてやる! 妻にでも妾にでもするが良い! がはははは」

718: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/05(土) 21:34:44.87 ID:5kaffl9OP
――冬越しの村、村はずれの屋敷

魔王「こっ、これでいいかの?」
メイド長「ええ。あらあら、まぁまぁ。見違えましたね」

魔王「何だ、そのコメントは」
メイド長「勇者様がいなくなってから
 まったくお召し物に頓着なさいませんでしたからね」

魔王「『いなくなって』などと不吉なことを云うな。
 ちょっぴり出張しているだけではないか」

メイド長「ええ、もちろん。まおー様が捨てられた
 女であるかのような印象を持たれてしまったのならば
 その誤解、このメイド長一生の不覚ですわ」

魔王「……」

メイド長「今日は綺麗ですよ、まおー様」
魔王「むぅ。釈然としない」

メイド長「とはいっても、交渉事ですからねぇ。
 多少は見栄えを良くしないと」

720: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/05(土) 21:41:44.31 ID:5kaffl9OP
魔王「それにしても、なんというか」
メイド長「?」

魔王「ちょっとビラビラしすぎではないか? このドレス」
メイド長「素敵ですよ?」

魔王「それに襟ぐりが随分深いような気がする」
メイド長「それくらいがお洒落なんですよ」

魔王「ううう」
メイド長「みっともない駄肉なので恥ずかしいですか?」

魔王「ええーい、うるさい! そ、そんなに駄肉ではない!
 女騎士殿もグラマーですとくれたし、みなそういってる。
 ちょっぴり母性的なだけではないかっ」

メイド長「人格的母性のない肉を駄肉というのです」
魔王「ううう。今日のメイド長は厳しい」

メイド長「ちょっと気が立ってるんですよ。
 警備体制を整える関係で」

魔王「どうなっている?」

722: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/05(土) 21:49:36.34 ID:5kaffl9OP
メイド長「妖霊と夜精霊を配置しています。
 まぁ、軍でも出てこなければ充分でしょうが……」

魔王「心配か?」

メイド長「相手が貴族や軍人ならばともかく、
 『同盟』の商人ですからね。その点に関しては
 まおー様におまかせするしかないわけで」

魔王「信用なさ過ぎだな、わたしなのか」
メイド長「いえ、お手伝いできないことが不安なのです」

魔王「しかたない。これは避けては通れない関門なのだ」
メイド長「せめて勇者様がいてくだされば」

魔王「勇者に役目が渡るとすれば、それは交渉が
 失敗した時だからな。そうなったら逃げる段階だ。
 だから意味はない」

メイド長「あんまり強がると殿方は不安だそうですよ」

魔王「へ?」

723: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/05(土) 21:54:04.49 ID:jbvzkNjh0
つ④

725: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/05(土) 21:55:31.94 ID:5kaffl9OP
メイド長「まぁ、それはいいですわ」ひらひら
魔王「あしらうな」

メイド長「そろそろでしょうか」

メイド妹「お客様を客間にお通ししました~。
 いまお姉ちゃんがお茶を入れてます~」

メイド長「語尾を不必要に伸ばさない」
メイド妹「はーい♪」

メイド長「まおー様? 準備はよろしいですか?」
魔王「ああ。このボタンをはめてはダメなのか?

メイド長「そのボタンは飾りボタンです。
 はめる目的ではありません」

魔王「上から実験用の白衣を羽織るとか! 学者らしく!」
メイド長「お笑い芸人じゃないんですから」

メイド妹「当主様、おっぱい格好いいよ♪」

メイド長「まったくこの娘は。さぁ、まおー様」
魔王「ああ、しかたない。出陣だ!」


727: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/05(土) 22:02:32.75 ID:5kaffl9OP
――冬越しの村、客間

 かちゃり

青年商人「やぁ、これは!」
辣腕会計「ほほう」

魔王「お待たせして済まないな。私がこの館の当主
 といっても無位無冠の学士だ。紅の学士と呼んでくれ」

青年商人「はじめまして。私は『同盟』の南氷海西方を
 担当しております青年商人です」

辣腕会計「今回のご挨拶に動向させていただいた
 会計でございます。以後、お見知りおきを」

魔王「いや、ご丁寧なご挨拶、痛みいる」

青年商人「正直驚きが隠せません! 学士にして発明家
 農業への造詣も深いとのことで、
 言葉は悪いですが、ご高齢の老師かと想像していたのですが
 こんなに麗しいご婦人にお目にかかる事ができるとは!」

729: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/05(土) 22:07:07.26 ID:ErgCyzUsO
かっけぇぇぇ

730: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/05(土) 22:08:18.18 ID:5kaffl9OP
魔王「そんなに褒められては何を話して良いのか、
 言葉を失ってしまいますな」

青年商人「いえいえ、学士様はその英知だけでなく
 美しさでも我らに光を与えてくれるようですよ」にこにこ

メイド長(商人のお世辞とはいえ、すごい威力ですね)

魔王「交渉を有利に進めようと思う女の浅知恵だ
 どうか笑って許して欲しい」

メイド長(おお。まおー様。気合いの入った防御ですねー)

青年商人「いえいえ。……あのような羅針盤を送られては
 駆けつけないわけには参りませんよ」

魔王「それにしては一月もの時間がかかったのは?」

青年商人「ははは。これはお恥ずかしい。
 私のような駆け出しの商人が、『同盟』において
 今回のような大規模な案件をこなすにあたっては
 様々に根回しが必要でして」

辣腕会計「お待たせして申し訳ありません」

731: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/05(土) 22:13:23.76 ID:juySu6mL0
面白い支援

732: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/05(土) 22:14:09.35 ID:5kaffl9OP
魔王「さて、では交渉に入りたいと思うのだが
 まずはこれを見て欲しい」

青年商人「これは……?」
辣腕会計「穀物ですか? 見たことはありませんが」

魔王「これは玉蜀黍という植物だ」
青年商人「ほほう」
辣腕会計「玉蜀黍、ですか」

魔王「この食物の特性については、
 こちらの書類にまとめてある。
 これはお持ち帰りいただいて結構だ。
 いまとりあえず、この場では口頭にて説明させて
 いただこう」

青年商人「窺いましょう、学士様」

魔王「この玉蜀黍は一年草でな。最大の特性は水が
 少なくとも順調な生育が望めることだ。むしろ水が多い
 場合は生育に悪影響がある。もちろん最低限の水分は
 必要だがな。発芽の温度として30度が必要となる」

青年商人「30度、ですか」
辣腕会計「かなり高い温度ですね」

734: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/05(土) 22:19:17.89 ID:5kaffl9OP
魔王「ああ、そうだ。小麦とはまったく栽培の思考を
 切り替える必要がある」
青年商人「ふむ」

魔王「つまり、この玉蜀黍は、いままで植物の耕作に
 適さないとされていた大陸中央部の荒れ地に
 ふさわしい作物なのだ」

青年商人「……」

魔王「食用として利用する場合は、完全に完熟させて
 乾燥させた粒を製粉してパンのようにすることも出来るし、
 饅頭のようにすることも出来よう。
 この粉には香ばしくてわずかな甘みがある。
 乾燥させることにより、貯蔵、保管にも優れている。
 畜産のための飼料としては、
 大麦やカブの数倍の効率が見込める」

魔王「また、食用外への利用も幅広い。
 油分の多いこの食物は、油を取り出すことが可能だ」

青年商人「……油ですか」
辣腕会計「……」

魔王「うむ。玉蜀黍馬車一台あたり、ビン二本ほどだがな。
 しかも、この油は製粉するのと同時にとることが出来る。
 つまり、両方取れると云うことだ。
 油は食用に用いることはもちろん、様々な用途で使えよう」

736: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/05(土) 22:25:56.13 ID:5kaffl9OP
青年商人「たしかに……。油の需要は年々増える
 傾向があります。『同盟』でもとりあつかっていますが」

魔王「商人どの、これは新しい商売の形だと考えて欲しい」

青年商人「……」

魔王「確かに巨大な資本が必要だ。
 その資本をもちいて、いまは全く役に立っていない荒野に
 人を送り、バックアップすることにより開拓を行なう。
 玉蜀黍を栽培するための開拓村だ。
 まったく開拓されていない場所は確かに開拓に
 手間も資本もかかろうが、その分、計画的に物事を
 行なうことが可能だ。整地して区画整理を行なった
 農地での大規模栽培は、現在中央大陸の各所で見られる
 ような小さな農地でモザイクになってしまったような
 農場による農業より遙かに集約的な体制での
 栽培を可能にするだろう」

魔王「しかも、そこで新しくできた開拓村は
 完全に『同盟』の影響下にある巨大な市場になるだろう。
 玉蜀黍以外の作物を始め、木材や塩、鉄、布、
 ありとあらゆる消費物を購入する新しい顧客となる」

青年商人「……」

737: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/05(土) 22:27:20.27 ID:Ix6X7znV0
支援

738: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/05(土) 22:27:29.90 ID:9wv/Gqon0
しえん

739: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/05(土) 22:31:01.22 ID:5kaffl9OP
青年商人「それは、つまり……」
辣腕会計「……」

青年商人「商品でも、栽培方法でもなく
 『同盟』に、新しい『概念』を売る、と?」

魔王「そうだ」

青年商人「判ります。私には。
 ……いまの話を聞きましたから、その価値が判ります。
 貴女の言葉は……。
 この中央大陸の都市の全てより……。
 いや、既知世界の全てよりも金になる」

魔王「あははは。良い顔だな」
青年商人「はい?」

魔王「女におべんちゃらを言っておる時より数段良い」

青年商人「そうですか? まぁ、しかし。
 いまの話を聞いては真面目にならざるを得ませんよ。
 しかし良いのですか?」

魔王「なにがだ?」

741: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/05(土) 22:35:38.45 ID:5kaffl9OP
青年商人「いまの言葉、そして送っていただいた羅針盤。
 すべて『考え方』を基本にしたものです。
 技術でも品物でもない。
 つまり、複製できない物ではない」

魔王「そうだな」

青年商人「私たちがそれらを複製して、貴方とは無関係に
 計画を進めるとは考えないのですか? 貴方の利益は?
 貴方の権利をどうやって守るつもりなのですか?」

魔王「それについては諦めておる」

青年商人「はい?」

魔王「技術も品物も素晴らしい。利益も結構。
 私もお金はあれば欲しい。
 研究したいことがたくさんあるからな。
 しかし、単一技術や独占可能な品物では、
 この世界に与える影響は限定されざるを得ない。
 必要なのは転換と突破だ」

辣腕会計「それは神学的な話でしょうか?
 複雑すぎて、判らないのですが」

青年商人「……」

742: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/05(土) 22:39:04.44 ID:5kaffl9OP
魔王「そちらの商人の方は判っているようだ」
青年商人「……」

魔王「どうした?」
青年商人「だとすれば……貴女は……」

魔王「……」

青年商人「選ぶ必要が、あると?」

魔王「選びに来たのだろう?
 交渉という言葉の意味はそれだと心得ている」

青年商人「しかし、それは。貴女は何を望んでいるんですか?」

魔王「戦争の早期終結」
青年商人「……」

魔王「しかも、その形は勝利でも敗北でもない
 形態でなければならない」

青年商人「……それは」

魔王「『同盟』が魔族との大戦における、中央大陸最大の
 スポンサーだと云うことは心得ている」

743: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/05(土) 22:40:46.31 ID:S6uLFnCsO
しえん

744: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/05(土) 22:43:56.82 ID:5kaffl9OP
青年商人「魔族は人類の敵です。魔族との戦いに
 人類陣営の一翼である我らが全てをなげうって
 協力するのは至極当たり前のことではありませんか」

魔王「それは公的な見解であろう」
青年商人「正式見解です」

魔王「高きと低きを、北と南を、炎と氷を、
 相容れない光と影を仲介し、妥協し、取引することで
 利益を上げるのがお主ら商人ではないか?」

青年商人「あ、貴女は……」

魔王「なんだろう?」

青年商人「『同盟』の味方ですか、敵ですか?」

魔王「取引相手だ」

青年商人「……っ」

メイド長(まおー様~っ! がんばって!)

745: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/05(土) 22:44:36.47 ID:aMEdTbSP0
邪が出るか蛇が出るかかだな…
支援

747: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/05(土) 22:46:26.26 ID:juySu6mL0
ここにきて緊張感が増したな

748: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/05(土) 22:51:13.55 ID:XnPMD4qOO
魔王かっけぇ

746: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/05(土) 22:44:58.29 ID:wVf6nrl+0
支援

749: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/05(土) 22:51:37.42 ID:5kaffl9OP
青年商人「私は二つの道のあいだで悩んでいます」ぎりっ
魔王「なにを?」

青年商人「人間として、貴女の先ほどの発言は
 裏切り行為です。教会の方針においても異端だ。
 私は貴女をこの場で断罪し、告発すべきかもしれない」

メイド長(まおー様、まおー様っ。森の中に
 黒装束に黒塗りの剣を持った傭兵団がっ)
魔王(控えておれっ)

魔王「敵と味方の2分割では、
 この世界はあまりにも惨めに過ぎよう」

辣腕会計「……部隊の配置が」
青年商人「良い。……試されてるんだね、僕らは」

魔王「……」

青年商人「この先もあると?」

魔王「もちろんだ。大陸中央部の乾燥地帯において
 水車の代わりに利用できる『風車』というものも
 開発してある。森林資源を消費してしまうが
 羊皮紙に変わる新しい筆記資材もめどは立った」

青年商人「貴女は何を見ているんですか?」

753: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/05(土) 22:57:23.24 ID:5kaffl9OP
魔王「私は学者だが、専門は経済学でな」

青年商人「経済……?」

魔王「耳慣れぬ言葉だろうな。
 物と金の流れ、利益と損害、
 魂持つものが生み出す社会において
 たゆまず流れる交流の歴史と未来がその専門だ」

青年商人「利益と損害、ですか」

魔王「そうだ、商人殿。
 商人殿とおなじものを見ているだけだよ」

青年商人「それをもって、人類全てを裏切れと?
 この戦争を終結させようとする
 貴女の見る夢がどのような色をしているか
 判らないわたしではないっ」

魔王「信じている」

青年商人「わたしの。……『同盟』の。
 我ら人間の、何を信じると言うのです?」

魔王「損得勘定は我らの共通の言葉であることを。
 それはこの天と地の間で二番目に強い絆だ」

756: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/05(土) 23:00:56.56 ID:5kaffl9OP
青年商人「あはははははは!」
辣腕会計「……商人っ」

青年商人「いや、いいんだ。
 そうだ。まさにその通りだ!
 人間である前に商人たれ。
 教会の敬虔な信徒である前に商人たれ。
 まさに『同盟』の訓辞通りじゃないかっ」

辣腕会計「それは……」

魔王「わたしは純粋な契約主義者なのだ」

青年商人「奇遇ですね、わたしもなんですよ。
 作りましょう。我らが未来を照らす光となる
 契約書を」

辣腕会計「……それでは」
青年商人「ああ、退かせてかまわない」

魔王「冷や汗が吹き出る思いであったよ。商人殿」

青年商人「いやはや。本場の東方商人と渡り合っても、
 これほどの緊張感を味わった事はありません。
 貴女が学士であり、商人でなくて本当に良かった」

757: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/05(土) 23:02:19.67 ID:aMEdTbSP0
まだどちらとも言えない…
邪なのか蛇なのか…

758: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/05(土) 23:07:17.43 ID:5kaffl9OP
魔王「私は無力で腰抜けの存在だよ」

青年商人「いえいえ、王侯貴族だってあそこまでの
 迫力はなかなかにある物じゃない」

メイド長(あったり前ですよ。まおー様は
 これでも王族なんですからねっ!)

青年商人「それにしても……二番目に強い絆、ね」
魔王「……」

青年商人「玉蜀黍の件はいつうごけます?」
魔王「すまないが、いくつかの実験と、苗の
 栽培を残している。動けて次の春から、だろう」

青年商人「充分に早いでしょう。私もこの計画を
 聞いたからには『同盟』内部での地盤を
 固めなくてはならない。
 この巨大利益です、動かすことはたやすいが
 コントロールが聞いてこその権力ですからね」

魔王「あの羅針盤が役に立ってくれれば良いな」
青年商人「せいぜい、利用させていただきましょう」

760: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/05(土) 23:12:13.90 ID:5kaffl9OP
――冬越しの村、村はずれの館、玄関

メイド長「日も傾いております、お気をつけを」
魔王「近くに隊商をまたせてあるのだろう?」

青年商人「“隊商”ね。ははは」
魔王「それがお互いのためだとしよう。わたしも
 警戒はしていた。お互い様だ」

青年商人「まったく、今日は驚きの連続だ」
魔王「心臓に悪い」

青年商人「そうそう。……二番目に強い、と
 おっしゃいましたね。一番はなんなのです?」

魔王「知れておる。愛情だ」

辣腕会計「――それは」
青年商人「あははははは。ああ! すごい!
 素晴らしいな。一日に二回も、こんな気持ちに
 させられるとはっ!」

魔王「子供でも知っておることだ」

青年商人「たしかに! 私はあなたに言いました。
 二つの道で迷っていると。
 あなたを殺すことはすっかり諦めましたからね。
 これはもう……求婚するしかありません」

765: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/05(土) 23:16:11.13 ID:5kaffl9OP
魔王「そ、そ、そ、それはなんだっ!?」

青年商人「なんだって。結婚の申し込みですよ」

魔王「なんて軽率なことを言うんだ。恥を知れ!」

青年商人「おやおや。貴女があまりにも明晰な
 思考をなさるんで、世間並みのたしなみを
 忘れてしまっていました。
 たしかに。持参金も贈り物も無しに求婚するなんて
 先走りすぎましたね」

魔王「わ、わ、わたしには、その」

青年商人「いえいえ。
 このようなことは腰をすえて取り組むタイプですからね。
 粘り強さは決断力とともに商人の重要な武器なのです」

魔王「いやっ。いくら時間をかけられてもそんな事はっ」

青年商人「では、またお会いしましょう!
 次は都か、船の上か。契約は急ぎお届けします。
 愛しの君よ。……そう呼ぶのはかまいませんかね?」

魔王「だ、ダメダメだーっ!!」

768: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/05(土) 23:18:36.46 ID:b66E+dbR0
しえn

770: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/05(土) 23:19:54.93 ID:V7Xbi26hO
まさかこっちが先に核心突くとは思わなんだ

787: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/06(日) 00:05:49.58 ID:eM9IQcE50
やっと追いついた

810: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/06(日) 02:03:26.96 ID:Lbanm5QNP
――冬越しの村、村はずれの館、小さな部屋

メイド妹「~♪ ~♪」
メイド姉「ご機嫌だね」

メイド妹「うんっ。みがくの楽しいねー」
メイド姉「そうね。こんなにあったかくて、
 きちんとした仕事があって。幸せね」

 きゅっきゅっ

メイド妹「そうだよねー。去年の秋は、毎日、
 夜が来るのがこわかったもんねっ」

メイド姉「うん」

メイド妹「あたしねー。今度は、せーれー様の本で
 勉強するんだよー」

メイド姉「そうなの? がんばってるね」

メイド妹「おねーちゃんもやった?」
メイド姉「やったわよ、結構難しい単語があるわよ?」

817: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/06(日) 02:10:38.23 ID:Lbanm5QNP
メイド妹「大丈夫だよぉ。
 ちゃんとした言葉を覚えるとモテモ? えっと……」
メイド姉「『殿方に好意を持っていただける』でしょ?」

メイド妹「うん、そうそう。それ!
 眼鏡のおねーさんがいってた」

メイド姉「メイド長様は、面倒見が良いから」

メイド妹「怖いよ? すぐ怒るよ」

メイド姉「怒ってないよ。叱っているだけ。
 本当はとっても優しい人だよ?」

メイド妹「そうかなぁ? お尻叩かれたとき、
 ひりひりして椅子に座れなくなったもん」

メイド姉「拾い食いなんかするからです」

メイド妹「昔はおねーちゃんもやってたくせに」
メイド姉「ご飯ちゃんと食べさせてもらってるでしょ?」

メイド妹「うんっ」
メイド姉「じゃ、恥ずかしいことは、しないの」

820: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/06(日) 02:14:40.19 ID:Lbanm5QNP
メイド妹「おねーちゃんは、年越し祭はどうするの?」
メイド姉「どうするって?」

メイド妹「村の真ん中で、踊るらしいよ?」
メイド姉「だれが?」

メイド妹「村の男の子と、女の子、たくさん」
メイド姉「私は良いわ」

メイド妹「そーなの?」
メイド姉「メイドの仕事があるもの」

メイド妹「でも、踊って来ていいって、
 眼鏡のおねーさんがいってたよ?」
メイド姉「そう……」

メイド妹「当主のお姉ちゃんも、元気ないね。
 勇者のおにいちゃん、帰ってくればいいのにね」
メイド姉「そうね。――そうだ」
メイド妹「?」

メイド姉「年越しの祭には、何かプレゼントを用意
 しましょうね。館のみんなに」
メイド妹「そうだねっ!」

822: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/06(日) 02:18:24.98 ID:Lbanm5QNP
――冬越しの村、村はずれの館、当主の部屋

魔王「えー『試験場の数を増やしたく思う。
 追加の人員の手配をお願いしたい。
 対価は西方貨幣で支払う用意あり』と」

メイド長「……」さらさら

魔王「これは蜜蝋で封をしてくれ」
メイド長「かしこまりました」

魔王「んー。これは?」

メイド長「狩人さんからの手紙ですよ」

魔王「おー。そうか、そうか。望遠鏡を渡したんだった」
メイド長「ええ」

魔王「なになに。使用するに便利、極めて快適か」
メイド長「役立っているようですね」

魔王「精度が低いかと思ったが、固定観測でないなら
 かえって手ごろのようだな」
メイド長「はい」

魔王「よし、では返信だ。『素早い報告、うれしく思う。
 森番の仕事、大変かと思うが、当家では付近の地図測量に
 興味あり。相談したきことがあるので、一度ご来訪願う』
 これで、よしっと」

823: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/06(日) 02:23:28.21 ID:Lbanm5QNP
メイド長「こちらもお願いします」
魔王「これは、うん。修道会からの報告か」

メイド長「あらあら、まぁまぁ」
魔王「馬鈴薯の収穫は順調に増加しているらしいな」
メイド長「そのようですね」

魔王「だが、土壌実験によれば
 そろそろ栄養枯渇の兆候が出るはずだ。
 そうなると抵抗力が低下して虫害が出やすくなる」
メイド長「ふむ……」

魔王「この件では修道会へ、再度警告が必要だな」
メイド長「お手紙にしますか?」

魔王「いや、次行ったときでよかろう。
 覚え書きに追加しておいてくれ」

メイド長「かしこまりました」さらさら

魔王「どうだ『紙』は」
メイド長「羊皮紙よりずっと書きやすいですね」

魔王「早いところ量産体制を整えないとな」
メイド長「作るのは簡単ですけれど、
 たくさん作るとなるとまた別問題ですからね……」

824: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/06(日) 02:27:28.86 ID:sqEI1zgt0
しえんぬ

826: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/06(日) 02:27:54.45 ID:Lbanm5QNP
魔王「うわ、なんだこの束は!?」

メイド長「そちらの束は、『同盟』からですよ。
 納品書、請求書、支払い所、明細書……」

魔王「あー。銅、鏡、ガラス、海砂?
 それに胡椒に、絹に、釘なんていうものもあるな」

メイド長「みんなまおー様が購入リストに入れたんですよ」

魔王「判っておる。
 ちょっと思い出せなかっただけだ。
 必要としているのは誰か判っているか?」

メイド長「それはまぁ、帳簿につけてありますが」

魔王「んー。しっちゃかめっちゃかだな、これは」
メイド長「まさかここまで仕事量が増えるとは」

魔王「しかたない。メイド姉にやらせよう」
メイド長「彼女にですか?」

魔王「無理か?」

828: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/06(日) 02:31:42.53 ID:Lbanm5QNP
メイド長「……いえ」
魔王「……」

メイド長「大丈夫です。彼女なら出来ます」

魔王「そうか」 にこっ
 「では、この書類整理は、今日からあやつの仕事だ」

メイド長「悪のメイド軍団が結成できそうな勢いですね」

魔王「どうかしたのか?」

メイド長「いえいえなんでも。……そうだ、
 お茶でも入れましょうか? 丁度、聖王都から
 オレンジの香りの葉がとどいたんですよ」

魔王「うむ、疲れた」
メイド長「でしょう」

魔王「私は疲れたのだぞ」
メイド長「そんなにつっぷして。どうしたんですか?」

魔王「むー」

829: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/06(日) 02:32:02.77 ID:O2NZm3MUO
支援

830: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/06(日) 02:34:56.75 ID:Lbanm5QNP
メイド長「膨れているんですか?」

魔王「もう秋だぞ」

メイド長「そうですねぇ、実りの季節です。
 栗がおいしいですねぇ。今年のベーコンも出来が良いようで」

魔王「秋なのに」
メイド長「はい?」

魔王「半年も音沙汰無しだぞ」
メイド長「あらあら、まぁまぁ」

魔王「ちょっと応えにくい会話だとすぐその決め台詞で
 流そうとするのは止めにしたらどうだ」

メイド長「これはメイドの特殊技能なんです」

魔王「連絡くらいくれても良いではないかっ!!」
メイド長「来てるじゃないですか」

魔王「そんなもの、妖精族を助けただの、
 鬼腕俗を討伐しただの、そんなことばかりではないか」

833: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/06(日) 02:39:54.63 ID:Lbanm5QNP
メイド長「無事で、活躍されているんですよ」

魔王「勇者なのだぞ。こうしている間にもあっさり
 美人が自慢の村娘とか……
 いや、歌姫族のハーピーあたりと
 いちゃいちゃしているかもしれんではないかっ!?」

メイド長「そうですか? 勇者様は童貞ですからね。
 童貞って言うのは変なところで義理堅くて夢見がち
 ですから、きっと大丈夫ですよ」

魔王「ちっとも安心できんではないかっ」

メイド長「そんなにいらいらしていると、
 眉間のしわが取れなくなってしまいますよ?」

魔王「ううう、そんなことになったら勇者に噛みついてやる」

メイド長「さぁさ。談話室の暖炉が暖められています。
 今日はこのあたりにして、甘い紅茶をおいれしますから。
 そちらの方でお待ちになっていてください」

魔王「しかしな」

メイド長「これ以上書類と根をつめていては
 それこそお身体を悪くしてしまいますよ?」

835: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/06(日) 02:43:31.93 ID:i7i6CqFD0
何この魔王かわいい

836: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/06(日) 02:44:28.80 ID:sqEI1zgt0
メイド長の言葉が突き刺さる
いいじゃないか夢ぐらい見させろよ!!

837: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/06(日) 02:45:30.54 ID:Lbanm5QNP
魔王「むぅ。判った。お茶を頼む」

メイド長「かしこまりました。まおー様♪」

 がちゃん。
 とっとっとっ……

メイド長「なーんて。……魔王様はおっしゃってますが?」
勇者「うわ、ばればれですね」

メイド長「メイドの勘です」
勇者「毎回ばれてるなぁ」

メイド長「今回のお手紙は?」
勇者「ここで書いていきます」

メイド長「では、こちらにもお茶をお持ちしましょう」
勇者「すんません」

メイド長「いえいえ。メイドの仕事ですから」

勇者「さってと、インク壷と~羊皮紙あっかな
 これでいーか」

840: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/06(日) 02:50:51.46 ID:Lbanm5QNP
――冬越しの村、村はずれの館、当主の部屋

ガチャリ

メイド長「おじゃまします。いかがですか?」

勇者「あ、報告は書き終えました」

メイド長「そうですか。……こちらはお茶と
 簡単な夜食になります。今回は馬鈴薯が
 ことのほかよく出来ておりますよ。
 これはクリームで甘く煮たものなのですが」

勇者「旨そうっすねー」

メイド長「……」

勇者「わ、熱っ。んまっ! 今回はぁ火竜族と
 なんとか手打ちで、でもそのためには『開門都市』
 をなんとか奪還しなきゃならなくてですね」

メイド長「……勇者様」

勇者「ん?」

メイド長「やはり今回も?」

841: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/06(日) 02:51:20.95 ID:sqEI1zgt0
会って話してやれよwww

843: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/06(日) 02:53:59.28 ID:Lbanm5QNP
勇者「あー。うん」
メイド長「魔王様を避けてますよね?」

勇者「うー」

メイド長「避けてらっしゃいますよね?」
勇者「うー、うん」

メイド長「……使用人の分際で差し出がましいかと思い
 今まで訊ねずに参りましたが、埒が明きません。
 魔王様には内緒にしておきますから
 何か問題があるのなら相談くださいませ」

勇者「うん……」

メイド長「煮えきらない態度ですね。
 あれですか。酒場の鳥娘に言い寄られたり
 半透明のスライム娘に告白されたり
 爆乳自慢の牛娘に婿宣言されたりしたんですか?」

勇者「うがっ!」

メイド長「どうなんですか?」

勇者「そのう、そういうのがないとは言いませんが」

850: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/06(日) 03:01:16.21 ID:Lbanm5QNP
メイド長「大体転移呪文があるのなら
 毎日は無理でも、毎週程度には帰ってこられますよね?」

勇者「うん」

メイド長「魔王様がそれに気が付かないくらい
 お間抜けで今回は助かっていますが……」

勇者「うん……」
メイド長「どういうことなのですか?」

勇者「いや、その。さ」
メイド長「はい?」

勇者「……魔王が、あんまりにも俺に頼らないから」
メイド長「……」

勇者「最初にさ、あの魔王の間で『我のものになれ』
 なんていわれてさ『まだ見ぬもの』なんていわれたからさ」
メイド長「……」

勇者「てっきり、勇者の力で、魔族の反乱分子を
 粛清してさ、たとえばゲートを閉じちゃったりして
 そうやって戦争を終わらせると思ってたんだよ」

851: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/06(日) 03:02:09.18 ID:6qNWCSqI0
これは最後まで見たい・・・が残りレス数から見て少し難しいか

853: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/06(日) 03:05:27.68 ID:Lbanm5QNP
勇者「そういう意味で、勇者の力が欲しいのだと」
メイド長「……」

勇者「なのに、あいつ、俺の戦闘能力は当てにしないでさ、
 それどころか、戦わないように戦わないようにしてさ」
メイド長「はい」

勇者「なんかまるで俺のことが大事みたいに
 ……好きみたいにさ。するから」

メイド長「……」

勇者「だって所有契約だろう?
 俺はあいつのものだしあいつは俺のものだ。
 気に入らなかったら命をとられてもいいんだ。
 そういう契約じゃないか」

メイド長「そうですね」

勇者「それなのにさー。あいつさ。挙動不審だし
 言い訳も説明も過剰だし、おっかなびっくりだしさ」

メイド長「……」

勇者「……上手く言葉にならねぇや」

854: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/06(日) 03:08:45.40 ID:Lbanm5QNP
メイド長「魔王様は、勇者様のことを――」

勇者「判ってるんだ。
 そこまで馬鹿じゃない。
 相手の好意が信じられないから、
 自分の好意を与えられないだなんて
 そんな腰抜けの言い訳じみたことを言うつもりはないんだ」

メイド長「では、なぜ?」

勇者「だって、俺、死んじゃうしさ」

メイド長「……」

勇者「今回のことがどう転ぼうがどう成功しようが
 それでも俺は人間だから、魔王よりも先に死んじゃうしさ」

メイド長「それはっ」

勇者「そんな俺が魔王と想いを重ねるって
 それはなんだかすげぇ不実な気もするんだよ」

メイド長「そんなことはありません」

勇者「そうかなぁ」

855: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/06(日) 03:08:46.60 ID:h/bohB9s0
支援

856: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/06(日) 03:12:06.98 ID:Lbanm5QNP
勇者「そりゃ、まぁ。本当かもしれないよ?
 終わりがない関係はないけれど
 終わるために出会うわけじゃないからさ」

メイド長「……」

勇者「でも、なんだかなぁ」

勇者「俺、最後のときに、魔王の困ったような
 泣きそうな顔ばっかり思い出す気がするんだよ」

メイド長「そんな」

勇者「これもびびってるっていうのかなぁ。
 でも、魔王がそういう顔すると思うとつらい。
 勇者って言うのはさ、
 もしかしたら幸せになっちゃいけない職業なのかも
 しれないって。そう思うんだよ」

メイド長「……」

勇者「今の俺は、あんまり勇者って感じじゃないなっ!」

857: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/06(日) 03:15:40.56 ID:Lbanm5QNP
メイド長「メイド如きに口を挟める問題でも
 ないのでしょうが、一つだけ」

勇者「うん」

メイド長「勇者様は、魔王様のもの。
 勇者様のすべては魔王様の、我が主の所有物」

勇者「ああ、そうだ」

メイド長「そのことをお忘れなきよう」

勇者「うん」

メイド長「だとすれば、
 勇者様の感じるためらいも思いやりも、
 押し殺している願いや
 憧れるような希望も、
 触れたいという祈りも。
 言葉にならない、魔王様への気持ちさえ。
 それらもすべて魔王様のもの」

勇者「……」

メイド長「それをお忘れなきように」

861: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/06(日) 03:21:20.39 ID:Lbanm5QNP
ほいではぽんで深夜の部終了ー。
ハレム? ハレムなの勇者?

時間も遅いので寝まするー。
支援してくれた人とか感謝!
オムレツサンドを進呈しよう!
ではではねー。

862: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/06(日) 03:21:55.62 ID:M6FiSiP70
>>861
乙!

863: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/06(日) 03:24:45.62 ID:KRpIBjWy0
>>861
おっつ~

864: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/06(日) 03:24:48.81 ID:i7i6CqFD0

もうだめだねる

868: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/06(日) 03:34:38.11 ID:r8oMC75+O
なんかもう俺最高に悶えてる

866: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/06(日) 03:29:00.13 ID:D81wkK5S0
もし次スレ立てるとしたら同じスレタイで頼んだ
管理人です!
この話はまだまだ続きます。
けっこう長いので不定期で更新していこうと思っています。

でも、有名すぎるので今更続きをまとめるまでもないかな。。。
コメントなどの反応を見ながら続きは考えたいと思います。

とりあえず、次回の更新まで暫くお待ち下さい。












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魔王「この我のものとなれ、勇者よ」勇者「断る!」

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コメント

1  不思議な名無しさん :2017年11月22日 22:20 ID:1DYpkzL00*
これまおゆうの元ネタ?
2  不思議な名無しさん :2017年11月22日 22:40 ID:NoQEv1kU0*
元ネタというかそれ自体でしょ
なんで今頃まとめたんや初めてみたけどさ
3  不思議な名無しさん :2017年11月22日 22:59 ID:EpDPn7t30*
面白いんだけどセリフだけだとやっぱ読みにくいわ
漫画版は絵も上手くて神がかってた
4  不思議な名無しさん :2017年11月22日 23:09 ID:KXNEgrlw0*
鰐おって草
5  不思議な名無しさん :2017年11月23日 00:00 ID:wF4YciS50*
勇者系ssなら、ひのきのぼうと、剣士が勇者を決めるトーナメントに参加するやつが好き
6  不思議な名無しさん :2017年11月23日 00:15 ID:uv7wJ7Gh0*
今まで何度かスレタイ見てもスルーしてたから、ちゃんと読んだの初めて
7  不思議な名無しさん :2017年11月23日 01:22 ID:J5JP..Vk0*
※2
そうなん?
良いこと聞いた。アニメ見てくる
8  不思議な名無しさん :2017年11月23日 02:17 ID:7mY95Qcv0*
まあ人それぞれだけど、これ面白いの?
9  不思議な名無しさん :2017年11月23日 03:01 ID:XC.oBvRm0*
続きが気になる
10  不思議な名無しさん :2017年11月23日 04:26 ID:OoN.meIc0*
続き気になり
11  不思議な名無しさん :2017年11月23日 05:54 ID:.FFoxdj00*
勇者「定食屋はじめました」のシリーズが好きだった
12  不思議な名無しさん :2017年11月23日 06:41 ID:Lp.qUvyD0*
まあ人それぞれだけど、これ面白いよ?
13  不思議な名無しさん :2017年11月23日 07:48 ID:tKcv3t7m0*
なんかオーバーロードを思い出す世界観。作者はコレを読んだのかな?
まおゆうの名前は知ってたけど、2ch発祥とは思わなかった。
ちなみにカブを動物に与える場合は要注意な。牛とかは喉に詰まらせる危険があるから。
14  不思議な名無しさん :2017年11月23日 08:17 ID:..59di8m0*
まおゆうのパクリかネタスレかと思って開いたらまおゆうそのものだった
15  不思議な名無しさん :2017年11月23日 10:37 ID:Yy5V90Xc0*
コミックは読んだからキャラもイメージ出来て楽しく読ませてもらっています
続きに期待
16  不思議な名無しさん :2017年11月23日 12:40 ID:sMOFgNrE0*
まおゆうのアニメ面白かったな
戸松のメイド姉の人間宣言も良かったし
続きが気になるアニメでした
2期を作って欲しい・・・
17  不思議な名無しさん :2017年11月23日 12:41 ID:yB5HGp7z0*
原典にして頂点というかー
諸悪の根元というかーw

作者、脱税しなけりゃログホライゾンまだやってたんだろうなあ
18  不思議な名無しさん :2017年11月23日 14:01 ID:r6NoTLiJ0*
続き!続き!
19  不思議な名無しさん :2017年11月23日 14:12 ID:H.Gz8Puy0*
久しぶりに見かけたから続きが見たいです
20  不思議な名無しさん :2017年11月23日 14:13 ID:onJGmawk0*
元ネタ始めてみたわ
管理人ありがとう
21  不思議な名無しさん :2017年11月23日 14:37 ID:A0wgHipx0*
脱税さえ無ければ...まおゆうもログホラも好きだったのに
22  不思議な名無しさん :2017年11月23日 18:04 ID:LbGL5hN00*
こんなの見たらアニメの中古探さざるを得ない
23  不思議な名無しさん :2017年11月23日 18:47 ID:5Dbz4LT70*
まおゆうって単行本にもなってなかったっけ?
24  不思議な名無しさん :2017年11月23日 20:32 ID:WYYYvakb0*
「まおゆう」自体初めて知ったので、出来れば続けて欲しい
25  不思議な名無しさん :2017年11月23日 23:16 ID:aPYSIaJu0*
エレ速とかゴールデンとか古参でSS扱ってるとこにあるから検索しておいで
…そして、他の作品集に触れて沼に嵌まるがよいw
26  不思議な名無しさん :2017年11月24日 03:27 ID:IYZ0xVa90*
まとめるにしてもくっそ長いのにどうすんの、まさか全部?
27  不思議な名無しさん :2017年11月24日 03:29 ID:IYZ0xVa90*
アニメmはアニマックスオンデマンドで見れるはず
28  不思議な名無しさん :2017年11月24日 07:52 ID:xXkccr.D0*
続きお願いします!
29  不思議な名無しさん :2017年11月24日 13:03 ID:rUufvVWW0*
書籍化されてるつってんのにここで続きをリクエストする意味がわからん
30  不思議な名無しさん :2017年11月24日 15:09 ID:zy0IRolt0*
続き見たい
31  不思議な名無しさん :2017年11月24日 19:45 ID:66LXthiI0*
続きお願いいたします
32  不思議な名無しさん :2017年11月25日 05:00 ID:coxIYcTI0*
このせいでSSにハマった俺
33  不思議な名無しさん :2017年11月27日 12:33 ID:BcF2xpVi0*
続き読みたいです
34  不思議な名無しさん :2017年11月28日 13:11 ID:mmfIbTb60*
これが原型か
35  不思議な名無しさん :2017年12月04日 21:34 ID:xGV2DY3G0*
面白かった。纏めてそうなSSサイトはいくつか出入りしてるんだけど、時期が悪くて読む機会がなかったので、できたらこのまままとめを続けて欲しい。
36  不思議な名無しさん :2017年12月08日 14:54 ID:FU2.bhoS0*
え?まおゆう?
そんな長編に手を出しちゃって大丈夫?

 
 
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