7: 以下、5ちゃんねるからVIPがお送りします 2018/08/25(土) 01:13:04.047 ID:dTc7ECp30
そこはそんなに広くはなかった。べつに、狭いわけでもない。
本棚に、大きい机に、しかくい木のイスが並んでいる。人の姿はない。
部屋の半分くらいに西日が差し込み、壁の時計は止まっていた。
('A`)「・・・・・・」
適当なところに座り、大学受験の参考書を広げる。
8: 以下、5ちゃんねるからVIPがお送りします 2018/08/25(土) 01:13:18.636 ID:dTc7ECp30
どのくらい経ったのだろうか。
部屋は色合いを変え、おれは本を読むことにした。
ぐるぐるぐるぐる、本棚を回る。面白そうな本がいっぱいだ・・・。
そうしているうちに、あたりは薄暗くなっていった。
9: 以下、5ちゃんねるからVIPがお送りします 2018/08/25(土) 01:14:19.394 ID:vlZGoaUb0
支援あげ
10: 以下、5ちゃんねるからVIPがお送りします 2018/08/25(土) 01:14:39.309 ID:dTc7ECp30
埃をかぶった電気のスイッチは、案の定効かなかったので。
そろそろ、帰るか。
広げた参考書たちをカバンにしまい、部屋を出る。
また、明日も来よう。
がらがらがら。
すっかり暗く、静かになった校舎を足早に去る。
11: 以下、5ちゃんねるからVIPがお送りします 2018/08/25(土) 01:15:01.078 ID:dTc7ECp30
放課後。
またおれは、旧図書室に来ていた。
学校の隅にひっそりと佇んでいるような。
('A`)「はぁ・・・」
勉強するか、と準備を始めた時。
がらがらがら。
ドアが開き、誰かが入ってきた。
12: 以下、5ちゃんねるからVIPがお送りします 2018/08/25(土) 01:15:43.602 ID:dTc7ECp30
('、`*川「お、珍しい」
入ってきたのは、40,50歳くらいの先生だった。
なんだか若々しい、不思議な雰囲気。
('、`*川「勉強?」
('A`)「はい」
('、`*川「たいへんだねえ」
('A`)「まあ」
('、`*川「ちょっと、お茶でも入れてくるね」
('A`)「あ・・・」
そう言って、先生はカウンターの方へと消えていった。
13: 以下、5ちゃんねるからVIPがお送りします 2018/08/25(土) 01:16:03.148 ID:dTc7ECp30
('、`*川「どうぞ」
出されたのは、紅茶に、ビスケット。
先生は向かいに座る。
おれもいったん手を止め、一息。
('A`)「先生は何しに来たんですか」
('、`*川「んー、なんとなく、久しぶりに、来てみようかなって」
答えになってないような。若いころはさぞモテただろうな。
14: 以下、5ちゃんねるからVIPがお送りします 2018/08/25(土) 01:16:25.834 ID:dTc7ECp30
('A`)「そうですか」
('、`*川「まあでもこうしてドクオ君と会えて、良かったよ」
ビスケットに手を付け、紅茶を飲む。
ビスケットは、とくべつみたいな味がした。
('A`)「おれも、また先生に会えてうれしいっすよ」
('ー`*川「そう言ってもらえると、うれしいねえ」
やんごとなき会話が続く。
15: 以下、5ちゃんねるからVIPがお送りします 2018/08/25(土) 01:16:45.663 ID:dTc7ECp30
気がつくと、部屋は薄暗くなっていた。
('、`*川「それじゃ、わたしはお先に失礼」
('、`*川「辛いことも多いだろうけど、がんばってね」
がらがらがら。
先生は行ってしまった。
おれは、もう少し勉強してから帰ろう。
いつかに比べて、日も伸びたな。
16: 以下、5ちゃんねるからVIPがお送りします 2018/08/25(土) 01:17:02.452 ID:vlZGoaUb0
いい雰囲気だぁ
17: 以下、5ちゃんねるからVIPがお送りします 2018/08/25(土) 01:17:54.573 ID:sx1a3zoI0
期待
19: 以下、5ちゃんねるからVIPがお送りします 2018/08/25(土) 01:19:04.506 ID:dTc7ECp30
放課後。
いつものように、旧図書室で勉強。
いったいいつからあるのだろう。
そんなことも考えていると。
がらがらがら。
誰かが入ってきた。
20: 以下、5ちゃんねるからVIPがお送りします 2018/08/25(土) 01:19:30.361 ID:dTc7ECp30
(・∀ ・)「よお」
('A`)「おお」
そいつは、おれの親友だった。
(・∀ ・)「すげー、なんだこれ」
('A`)「読んで字のごとく」
参考書を見て目を丸くしてる。
そうだ、そういうやつだった。
21: 以下、5ちゃんねるからVIPがお送りします 2018/08/25(土) 01:19:54.899 ID:dTc7ECp30
(・∀ ・)「おー、ドクオが勉強かあ、すげえなあ」
('A`)「ふつうだよ」
(・∀ ・)「・・・おれにはさっぱりわからんよ」
('A`)「だろうな」
(・∀ ・)「おれ、学校の勉強はからっきしだからなあ」
そしてそいつは、それが誇りであるかのように笑う。
おれは、少し複雑だ。
22: 以下、5ちゃんねるからVIPがお送りします 2018/08/25(土) 01:20:20.600 ID:dTc7ECp30
(・∀ ・)「まあ、人には人の乳酸菌だ」
('A`)「おう」
(・∀ ・)「お互いそれぞれ、大変すぎるよなあ、人生」
('A`)「お、おうw」
(・∀ ・)「おれ、本当は吉祥寺大学生マンになりたかったんだよ」
('A`)「なんだよそれ」
こんな会話、いつぶりだろう。
23: 以下、5ちゃんねるからVIPがお送りします 2018/08/25(土) 01:21:06.048 ID:dTc7ECp30
(・∀ ・)「さて、おれもそろそろ行く」
('A`)「・・・おう」
(・∀ ・)「ゆくあてなんて無いけどさ」
('A`)「そりゃそうだろ」
また顔を見合わせ、笑う。
25: 以下、5ちゃんねるからVIPがお送りします 2018/08/25(土) 01:21:32.670 ID:vlZGoaUb0
青春ですなぁ
26: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします ◆DvUgCvOGFQ 2018/08/25(土) 01:22:56.784 ID:qk/CmLeB0
なんだこの死後の世界感は
28: 以下、5ちゃんねるからVIPがお送りします 2018/08/25(土) 01:24:02.503 ID:dTc7ECp30
(・∀ ・)「まあ、お互いがんばりましょう」
そう言い残して。
がらがらがら。行ってしまう。
相変わらず、へんなやつだった。
またおれは、ひとり残される。
まだ部屋は暗くないし。
いつものように、だるすぎる勉強を始める。
29: 以下、5ちゃんねるからVIPがお送りします 2018/08/25(土) 01:24:35.421 ID:dTc7ECp30
放課後。
旧図書室。
今日は、先客がいた。
30: 以下、5ちゃんねるからVIPがお送りします 2018/08/25(土) 01:26:03.434 ID:dTc7ECp30
川 ゚ -゚)「・・・・・・」
長い黒髪に、整った顔立ち
キャンパスノートに、なにか書いてるそのひとは。
おれの、好きな人だった。
31: 以下、5ちゃんねるからVIPがお送りします 2018/08/25(土) 01:28:34.486 ID:dTc7ECp30
川 ゚ -゚)「・・・・・・」
彼女はおれの方に目もくれない。
ちらりとノートを見ると、絵を描いているようだった。
おれは、彼女が見えない席に座り、受験勉強を始める。
32: 以下、5ちゃんねるからVIPがお送りします 2018/08/25(土) 01:29:02.705 ID:dTc7ECp30
日が暮れてきた。
少し勇気を出してみて、彼女の方を見てみる。
川 ゚ -゚)「・・・・・・」
入った時と変わらず、彼女はそこにいて、絵を描いているようだった。
見ているだけでおれは、胸が締め付けられるような、あたたかいような気持ちになる。
33: 以下、5ちゃんねるからVIPがお送りします 2018/08/25(土) 01:29:32.705 ID:dTc7ECp30
('A`)「・・・・・・よいしょ」
薄暗くなった部屋を、おれはいつもより早く出る。
がらがらがら。
彼女を見る勇気は、もう残っていない。
きっと、黙々と作業を進めているのだろう。
まだすこし、ぬくもりの残る校舎をあとにする。
34: 以下、5ちゃんねるからVIPがお送りします 2018/08/25(土) 01:30:48.788 ID:dTc7ECp30
放課後。
吹奏楽部や、教室でだべってる奴らを横目に、旧図書室へ。
寂しげな廊下が好きだった。
がらがらがら。
いつもどおり、そこは懐かしいような光に包まれている。
35: 以下、5ちゃんねるからVIPがお送りします 2018/08/25(土) 01:31:14.268 ID:dTc7ECp30
('A`)「はぁ」
席に着き、参考書を広げる。もう慣れてしまったよ。
ぼんやりした気持ちを引きずらながら、勉強を始める。
36: 以下、5ちゃんねるからVIPがお送りします 2018/08/25(土) 01:31:57.884 ID:dTc7ECp30
少しして、顔を上げると。
前の方に、スーツを着た男がいた。
机に足を乗っけて、窓のほうを向き、タバコなんかふかしている。
そいつは振り返り、おれを見た。
('A`)「よぉ、がんばってんな」
そんなことないけど。
37: 以下、5ちゃんねるからVIPがお送りします 2018/08/25(土) 01:32:26.951 ID:dTc7ECp30
('A`)「変わってやっても、いいんだぜ」
('A`)「おれはおれだし、遠慮しとくよ」
('A`)「自分に嫌気がさしてないってのは、いいな」
べつに自分は好きじゃないけど。
38: 以下、5ちゃんねるからVIPがお送りします 2018/08/25(土) 01:33:23.650 ID:dTc7ECp30
('A`)「まあ、まだ若いんだし、とりあえず勉強もいいんじゃないか」
('A`)「・・・どうだろうね」
('A`)「一段落したら、色々やってみな」
('A`)「そう」
('A`)「おう、好きなことを見つけろよ」
そういってそいつは、照れ臭そうに笑う。
なんか、うざい。
39: 以下、5ちゃんねるからVIPがお送りします 2018/08/25(土) 01:33:50.855 ID:dTc7ECp30
('A`)「じゃあ、俺は行くわ」
('A`)「おう」
('A`)「勉強がんばれよ」
がらがらがら。
行ってしまう。
40: 以下、5ちゃんねるからVIPがお送りします 2018/08/25(土) 01:34:30.591 ID:OQiE33q40
なんか哲学的
41: 以下、5ちゃんねるからVIPがお送りします 2018/08/25(土) 01:35:11.460 ID:dTc7ECp30
('A`)「・・・・・・」
勉強の続きをしようかと思ったけど、やめた。
はじめて入った時と同じ、寂しげな部屋の表情を眺める。
西日の差す机に人はおらず、日陰になってる本棚の本の色あせた背表紙。
カウンターには少し不思議な扉。先生が行く場所だ。
42: 以下、5ちゃんねるからVIPがお送りします 2018/08/25(土) 01:35:56.985 ID:dTc7ECp30
おれは光景を目に焼き付け、部屋を出る。
がらがらがら。
そして、ひとまずカギをかける。
カギはポケットの奥深くに。
('A`)「よし」
まだ、夕焼けの時間だ。
暗くなる前に、今日は歩いて帰ろう。
43: 以下、5ちゃんねるからVIPがお送りします 2018/08/25(土) 01:36:40.306 ID:vlZGoaUb0
雰囲気いいね
44: 以下、5ちゃんねるからVIPがお送りします 2018/08/25(土) 01:38:02.880 ID:dTc7ECp30
('A`)夕ぐれ図書室のようです
45: 以下、5ちゃんねるからVIPがお送りします 2018/08/25(土) 01:40:42.867 ID:YmODk+aUp
え、おわり??
46: 以下、5ちゃんねるからVIPがお送りします 2018/08/25(土) 01:41:19.861 ID:vlZGoaUb0
終わりかな…?
乙乙~雰囲気が凄く良かった
48: 以下、5ちゃんねるからVIPがお送りします 2018/08/25(土) 01:44:41.634 ID:sx1a3zoI0
乙です
51: 以下、5ちゃんねるからVIPがお送りします 2018/08/25(土) 01:52:35.204 ID:YLiGjLh10
風景描写が上手いや
52: 以下、5ちゃんねるからVIPがお送りします 2018/08/25(土) 01:53:07.476 ID:85eSzXi0x
良かった
乙