スタンド
ペンネーム:エスニ
昔バイトしてた貝のマークのガソリンスタンドでの話。
24時間営業のスタンドだったんだけど、東京の都心にあって、深夜でも結構利用者が多くて忙しい店だった。
ごく普通のスタンドなんだけど一つ変わったとこがあって、夜になるとラップ音っていうか家鳴りが凄かった。
店舗は2階建で一階がレジと物販、2階は洗車などで待ってる客用のスペースと事務所になってる。
セルフのスタンドだから深夜は基本一人体制、洗車も深夜は受け付けてないから2階には誰もいない。なのに2階から足音やドアを開け閉めする音がひっきりなしに聞こえて来た。
新人は最初は皆んな怖がって、本当に2階に誰かいると思って何回か見に行ったりしてた。で2階に上がってみると、いつも音はパタッと止んだ。
そんな状況でも1週間くらいやってると皆んな慣れるんだよね。上でバタバタとドアの音がしてても気にならなくなる。だって音がするだけでその他は何も変わったことは無いから。
自分がバイトを辞めるとき、皆んなが送別会を開いてくれて、スタンドの近くの居酒屋で飲んでた。そこでそのラップ音の話が出た。と言っても「あれ何なんだろうね」「明らかに人がいる音がするよね」とか言うだけで、結局あれが何なのかは皆んな分からないから大して広がらないんだけど。
解散した後、自分は後輩と二人で駅に向かって歩いてた。そしたら後輩が、さっき話してたラップ音のことをまた話してきた。
後輩「Aさん(←俺のこと)、さっき皆んなで話してた音のこと、実は俺知ってんすよね。」
俺「知ってるってなに?」
後輩「知ってるって言うか見たんですよ。皆んなには黙ってたんですけど、Aさんもう辞めるから言ってもいいかなと思って」
ちなみにその後輩は真面目な奴で、適当な嘘とか言うタイプじゃない。
後輩「一人で夜勤してるとき、事務所の方で物音がして、いつものことだったんですけど何か気になって、客が途切れた時に上に上がって見たんすよね。そしたら事務所のドアの方でガチャガチャ音がしてて、でも誰もいなくて、ドアの方に近づいて行ったんすけど、そこで見たんすよ、事務所のドアのノブに手首から先だけの手が捕まってノブをガチャガチャ回してるんすよ」
確かに、それを聞いたら夜勤出来なくなったかもと思った。
後輩にそんなの見てよく仕事続けられるね、って言ったら
「いや怖いのは怖いんすけど、こう言うの昔からよくあるんで、多少慣れてるんすよね」
て言ってた。
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国道沿いの霊
ペンネーム:オシッコマン
大学二年の春休み、ノリと勢いで自転車旅に出た。
ジーパンにパーカーで、ジャンパー羽織って財布とスマホだけ持って出発。
手袋とか帽子とか着替えとか必要なものは道すがら買い足しつつ、仙台から名古屋を目指した。
計画とか日程とかも全然考えてなかったから、日沈んでも目的地着かないとかザラ。
事が起こったのは確か出発から8日目だったと思うんだが、その日もなんやかんやあって夜中の12時ぐらいに静岡の国道沿いを走ってた。
目的地のネカフェまではあと10キロ。自転車ならゆっくり漕いでも一時間くらいで着く距離なんだが、昼に箱根越えした疲労と、若干上り坂になってる道が相まって段々スピードが落ちてきた。
で、ちょっと休憩でも入れるかと思って辺りを見回したら、店先にベンチと灰皿を置いてるラーメン屋を発見。
ラーメン屋自体はもう閉まってたが、こりゃ丁度いいやと思ってそこで一服させてもらうことにした。
誰もいない駐車場に自転車を停めて、ベンチに座ってタバコに火をつけた。
ゆっくりと煙を吐きながら、目の前の国道を走るトラックや乗用車をぼんやりと眺めた。
春先の生暖かい風が妙に心地よかった。
タバコを吸い終えて、さてそろそろ出発するかと立ち上ろうとしたとき、2、3m前方に人が立ってるのに気が付いた。
40代ぐらいの、これと言った特徴のないスーツ姿のおっさんだったと思う。
正直かなりビビった。まずこんな時間のこんな場所に人がいることにビビって、その後「もしかしてこの店の店長か!?怒られる!?」とか考えてさらにビビりまくった。
俺がビビって硬直してると、そのおっさんは突然拍手をし始めた。
その拍手のやり方がなんか変で、左右対称に手を叩いてたんだ。神社にお参りするときの柏手を高速でやってる感じ。
しかも、結構激しく拍手してるのに全然音が聞こえない。無音で手を打ち付けてる。
わけが分からなかった。俺は恐怖で泣きそうになった。
逃げようとしたが、金縛りにあったみたいに身動きがとれなかった。
そうこうしてる間に、おっさんの拍手はどんどん激しくなっていった。最初は神社のお参りみたいだったのが、最後にはチンパンジーのおもちゃみたく腕を伸ばしてバチーンバチーンって、でも音は鳴らない。
しかも、ゆらゆらと左右に揺れながらゆっくりと近づいてくる。
顔はぐにゃぐにゃ歪んでるし、足はぺらぺらの布みたいになっていって、もはやおっさんでもなんでもない化け物になってた。けど、胴体と腕だけは元のまま、ずっと拍手を続けている。
その状態のままゆっくりと、ゆらゆらと俺の方ににじり寄ってくる。
恐怖で膝がガクガク震えた。頭もクラクラしてきた。
気が付くと、さっきまでおっさんだったものはもう俺のすぐ目の前まで来ていた。
腕をぶんぶん振り回しながら、ぐにゃぐにゃの瞳で俺の顔を覗き込んできて、俺は怖くて息ができなかった。視界がホワイトアウトしかけた。
「あ、死ぬ」と思ったそのとき、ゴオッ!と大きな音がして、俺は現実に引き戻された。
10tトラックが国道を走り抜ける音だった。
化け物は消えていた。
俺は全身汗まみれで地面にへたりこんでいた。
一刻も早くその場を離れたかったが、腰が抜けてしばらくその場から立ち上がれなかった。
怖くてたまらなかったがどうにも動けなかったので、仕方なくその場で休むことにした。
その間ずっとスマホを弄って気を紛らせてたと思う。
10分ほど経ってようやく体が動くようになったので、俺は恐る恐る立ち上がって自転車にまたがった。
とりあえず300m先にコンビニがあることはスマホで確認したので、一旦そこまで避難しようと思い震える足でペダルを漕ぎだした。
そして、ラーメン屋の駐車場を出たその瞬間
パチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチ
後ろから、拍手の音が聞こえた。
俺は泣いた。小便も漏らした。放尿しながら全力でペダルを漕いだ。
300m先のコンビニを目指して、かつてないほどのスピードで自転車を走らせた。
そしたらポイ捨てされていた空き缶に躓いてこっぴどく転んだ。
めちゃくちゃ痛かったが、とにかく立ち止まるのが怖くて自転車を捨ててそのまま走った。
コンビニに辿り着いて、俺は安堵のあまりまた泣いた。若い男の店員がギョッとした顔をしていた。
血まみれの小便くさい大学生が息を切らして泣きながら入店してきたというのに、通報もせず見逃してくれたあの店員には感謝しかない。
俺の心霊体験はこれで終わりだ。
その後は朝までコンビニで時間を潰し、国道を走る車が増えてきた頃に自転車を回収に向かった。
自転車は問題なく動いたが、もはや自転車旅を続けられる心境ではなかったので最寄りのリサイクルショップに売り払った。
そして電車で名古屋に向かいフェリーで仙台に帰った。
あの拍手する霊ともそれっきりで、憑りつかれたとかは一切ない(多分)。
ただ、後日談として、あの一件以来俺に3つの変化が起こったということを書いておきたいと思う。
一つは、深夜の国道を異常に恐れるようになったこと。
もう一つは、空き缶のポイ捨てを見ると殺意が芽生えるほどに腹が立つようになったこと。
そして最後の一つは、野外放尿に快感を覚えるようになったことだ。
気を付けろ。国道沿いの霊は俺たちの性癖を開拓してくる。
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深夜の電車
ペンネーム:HAL
普段はあんまり自分語りとかをしないタイプなんだけど今回怖い話を応募してるらしく、いい機会だから俺に起きたちょっと怖い話を書こうと思う。
俺は最寄り駅まで自転車で行って、そこから電車で仕事先まで行っていく。自分が住んでいるところは始発駅から何駅か離れた、あんまり人が乗り降りしない無人駅で、毎日そこから仕事先がある終点駅まで乗っていた。仕事の関係上、終電で帰ることが多いんだけど、夜遅いから帰りの電車に乗ってる人はまばらで、1車両に2、3人乗っているか乗ってないか位が普通だった。
大体いつも乗ってるのは仕事終わりのサラリーマンか飲み会おわりの大学生くらいの奴が大半だった。でも時々変なやつもちらほらいて、人形を持ったゴスロリ姿の若い女やずっと独り言を言ってるホームレス風のおじさんなど漫画でしか見たことないようなおかしい奴も結構いて、どんな人が乗っているか見るのが楽しかった。
だから、いつも電車に乗ると自分の近くにどんな人が乗っている確認していた。確認といってもがっつり相手を見るわけじゃなくて、基本スマホを見ていて、首が痛くなったら首を回し、その際、周りを確認していた。
電車に乗る場所はだいたいいつもおなじで一番最後の車両のボックス席の隣にある2人席に座っていた。
こんな風に座席はなっているんだけど、黒丸が俺がいつも座っている席。そこに座っている理由は、単純にボックス席だと広すぎて落ち着かないってだけなんだけど、あの日もいつもの定位置に座っていた。
自分が出発までの間スマホを見ながら座っていると、女の足が見えた。
目の端で自分の左前に座ったのが見えた。どんな奴か見たかったが、目があってもいやだから電車が発車してしばらく時間が経ってから見ようと思った。
それから少しして電車が発車した。その時自分が乗ってる車両にはおそらく自分とその女しかいなかったと思う。発車してから5分くらい経ち、もう相手もスマホなり寝ているなり自分のことをしてるだろうなって思い、スマホから顔を上げ、首を回し、相手の顔を確認した。そしたらその女はじっと目を大きく開けてこっちを見ていた。
急に目があったから、俺は慌ててスマホに目をやった。その女は異常に肌が白くて、目が大きく、髪が長かった。例えるなら、昔テレビに出てた日本なんとか連合の色白のやつの髪が長いバージョンだった。
今までこんなにはっきり目があったことなんてなかった。気色悪くなって、できるだけ女の方を見ないようにした。気を紛らわすため、ノイズキャンセリングのイヤホンをつけ音楽に集中することにした。音楽を数曲聴き冷静になった頃、もう一度興味本意で同じように女を見ることにした。
首を回すと、女はさっきと全く同じ体勢でこっちを見て、にやっと笑っていた。すぐさまスマホに目を向けた。おそらくさっきからずっとこっちを見ていたようで、しかも今回は気色悪く笑っていた。もしかしたら乗ってきてからずっとこっちを見ていたのかと思ったら急に怖くなった。
気味が悪くなったから、他の車両に移動も考えたが、いままでの経験上、始発駅から終点近くまで乗っている人はほとんどいなかったため、音楽を聴きながらゲームでもしてあの女が降りるのを待つことにした。
この気持ち悪さを忘れるため、さっきより大音量で音楽流した。何駅か過ぎた後、自分側のドアが開いたときに人が出て行った気配がした。恐る恐る左前を見てみるとあの女がいなくなっていた。さっきの駅で降りていったようだった。心の底からほっとした。あの気持ち悪い女にはもう絶対会いたくないと思った。
精神的な疲れもあり急に眠くなった。最寄り駅まではあと1時間位あったため音楽を聴きながら、少し寝ることにした。
しばらくすると、最寄り駅の3駅前くらいで起きた。普段から乗っているため自然と起きることができた。残りの最寄り駅に着くまでの数分の間はネットサーフィンなどをして時間を潰した。
最寄り駅に着いた頃には11時半位となっていた。最寄り駅では自分が座ってた側のドアが開いた。ドアが開き、俺は改札のある右側へと歩き出した。普段、この時間帯に降りる人間は俺だけだった。
駅に誰も人がいないっていうのは以外と爽快なもので、無人駅とはいえ、それは例外ではなかった。誰もいない空間とイヤホンから流れるお気に入りの音楽によって清々しい気分になった。誰もいない改札口まで歩く途中でこの後自転車に乗るためことを思い出し、イヤホンを取った。
その時、誰もいないはずの駅に足音が聞こえた。明らかに俺のとは違う足音だった。背後からなっている。振り返るとあの女がいた。あの不気味な顔に笑みを浮かべてこっちにやってくる。瞬間的に俺は改札口までダッシュした。女も笑いながら俺を追いかけてきた。
財布の中にあるICカードを叩きつけるようにタッチし、すぐ近くにある自転車置き場まで走った。奴は改札を抜けた後も追いかけてくる。俺は急いで自転車の鍵を開き、とにかく遠くへ自転車を走らせた。自宅とは全然違う方向だったがあの駅前を通る勇気はなかったため、ひどく遠回りをして帰った。
家に帰った後もしばらくは震えが止まらなかった。頭が回らなかった。やつはたしかにあの時電車から出ていたのになんで俺と同じ駅にいたのか疑問だった。
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初めて幽霊を信じた日
ペンネーム:R
霊感のある人といると、近くにいる人も見える様になるって言うでしょ。
そんな話。
20さいの時に初めて出来た彼女は、8歳年上の自称霊感持ち。
その頃の僕は怖い話は好きだけど、霊の存在は半信半疑だった。
彼女の霊体験を少し話すと、友達の霊感持ち2人で猫の怖い話して、車で帰りの道中ネコの死体20匹見たとか。
車で入れる霊園に友達数人と肝試しに行って、体調悪いから一人で車で待ってたら、車が引きずられるとか、霊自体は見えないけど体感する感じらしい。
当時はへーとかふーん位に聞いていた。
夏のお盆時期が彼女の誕生日で、どこ行きたい?って聞いたら海って言ったので、海に行く事になった。
お互い、仕事とバイトなどがあったので時間が合わず、誕生日になる日の夜中に、千葉の御宿町に着いた。
夏だったので、花火をやってる人達が何グループかいて、僕らは花火をやってるグループから200メートル位離れて話していた。
タバコが吸いたくなったので、彼女から少し離れて吸っていると、花火をやってるグループが打ち上げ花火を始めた。
綺麗だなーって思いながら少し見ていて、戻ろうかなと思って海の方に目線を戻した時、
パァーン!
と花火の音が鳴ったので目線を花火の方に戻したその時。
目の前に2メートル位の身長で、水着を着て水泳キャップ、ゴーグルをつけた男性が立っていた。
全く気配もなく、砂を歩く音もしなくて、突然目の前に現れた感じ。
びっくりしているとその男性は海の方へ走って行き、沖の方へ泳ぎ出した。
ボー然としていると彼女がやってきて、何かを感じたのか帰ろうといい始めたので、帰る事に。
車に乗ったんだけど、車の中が凄い寒い。
外は蒸し暑くて、エアコンも切って窓全開にして運転していた。
それでも寒い。
500メートル位走った所で、先の方にコンビニが見えてきた。
彼女『コンビニで止めて』
俺『あーいいけど、何か買うの?』
彼女『いいからコンビニで止めて!』
彼女は凄く焦っている様だった。
コンビニについて、彼女はすぐに降りてコンビニの中に走って行った。
俺『どーしたの?体調悪い?』
彼女『ううん。違う。』
俺『何、ちゃんと話してよ』
彼女『車の中で肩掴まれた』
俺『えっ!!!!』
彼女の肩を見ると濡れた手型がくっきりとあった。
その後はコンビニで塩買って、車の中と外に撒きまくって帰ってきた。
今から15年位前の話で、毎年夏に『御宿町 心霊体験』って検索するけど、同じ様な話は出てこない。多分、当時の彼女が呼んだんだろう。
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恐山にて
ペンネーム:A,F
24歳の夏、避暑がてらに青森県の下北半島、恐山へ見物へ出かけた。
子供の頃からオカルト好きで興味は有ったが、そもそも退屈しのぎなので真剣味も無く、順路をぶらぶらと歩いているうちに退屈してきた。なんせ血の池地獄は赤く塗った風呂桶みたいだし、賽の河原の積まれた石から吹き出す硫黄の煙は、塩ビ管が見えている子供騙しだった。
入山するバスの道中で一瞬、冷気の壁を抜けたような気がしたものの、あれも気のせいかと思いすっかり嘗めきって歩いていると奇麗な場所に出た。眼前には輝く緑色の湖と白い湖畔。湖と同じ翡翠の色の、か細い羽虫の群れが霧のように湖面の上を舞い飛んでいる。湖の向こうには山々が等間隔に囲み連なり、空は抜けるように青く、その幻想的な光景に思わず足を止めてしゃがみこみ、景色を眺めながらも頭はろくでもない事を考えていた。
超恐がりな友人に、シャレにならない土産物を持って帰ってやろう。そして目の前に小さな石仏がある。それを拾って裏返してみると筆書きで日付と、同姓の男女の名前が書かれていて、それを読んだとき一瞬、頭の中に小さな黒い影が二つ浮かんだ。
魔が差したとしか言えないが、その石仏をバッグに放り込んで立ち上がり、さて行くか、、、と思う間もなく様子がおかしくなっていた。湖面を舞っていた羽虫の群れが消えている。そして周囲が異様に静かになっていて、耳鳴りがするほどの静寂を切り裂く様に、大きな蜂が頭上からまっすぐに飛んで来た。蜂は目の前五センチ程にビタリと空中で止まり、激しい羽音で睨みつけてくる。
これは確実に石仏が原因。そう思い元の場所に戻し、手を合わせて謝り、その場を離れようと振り向き一歩踏み出すと、左半身を体内から激痛が襲った。歩くたび動くたび、体の左側にちぎれるような痛みが走るが、ここから離れて山を下りるのが先決だと思い、必死で進んだ。
順路の坂を、左半身を引きずるようにして歩く。見ると腕の血管が糸の様に細くなり黒ずんで、肌は真っ白になっていた。日差しも強く、急な坂道と激痛、それにここ数日は毎晩まともに寝ていなかった。朦朧としながら登っていると右の耳元で少女の声が聞こえた。
『ほら。ここを降りればすぐだよ』
見ると眼下に下山バスが見える。まだ遠いがここから降りればすぐだ。そう思いふらふらとそっちに進むと、背後から女の叫び声が聞こえた。振り向くと若い男女が青ざめた顔でこちらを見ていて、男の方が焦りながら、ちゃんと歩けだの何やってるんだのと言っている。何の事かと思ったが、いつの間にか順路の柵をまたいで崖っぷちに立っていて、危うく岩の斜面を転げ落ちるところだった。
もう一心に前を見ながら坂を上っていると石碑があり、色とりどりの弔いの布がその周囲に巻き付けられていた。体力も限界に近く、ほんの少しでもと傍らのベンチに腰掛けると赤い布がぱたぱたと、風になびくのが目に止まった。布の端は焼け焦げていて、筆書きでこう書いてあった。
『○○ちゃん ○○ちゃん 熱かったでしょう苦しかったでしょう 天国でどうか 』
そこまで読んで目を離した。
石仏に書かれた男女の名前だった。
その後は必死で坂を下って何も見ずに進み、ようやく下山バスに乗り込んだ。乗客は少なく中程に座り、早く発車してくれと願う。こちらを見た乗客のひそひそ話が聞こえる。「あのひと大丈夫?」
バスが発車して、山道を降りる。登るときに見た霊場入り口の看板、そこに差し掛かった時に異様な感覚に襲われた。後ろから見えない両手で頭を掴まれ後ろに引っ張られているようで、車窓の景色が止まって見えるがバスのエンジン音は聞こえている。一瞬の出来事だったが、体から意識が剥がされるようだった。それに強く抵抗しながら、なんとか霊場を抜けた。
麓の町に着いてバスを降りる際、男女の職員が乗客を迎えていて、自分が降りると男が言った「ありゃあ、すごいのが来たな」女は言う「大丈夫ですか?」
さも心配そうだった。大丈夫だけど少し休ませてくれと言って近くのベンチに横たわるうちに夕方になり、歩ける気力ができた。左半身は痛むが先ほどまででは無く、山を離れて逃れられたとその時は思った。
ホテルに戻り浴槽に浸かりながら考えたのは恐山での一連の出来事で、温かい湯でまどろみながらじんわり痺れる左半身と共に、考え方もゆるくなってきた。あの出来事は本当に怒れる霊の仕業なのか、それとも連日の寝不足と、快晴の真夏の登山が招いた幻覚なのか、フロントの対応も普通だったし、、などと思っていると左側で男の子の声が聞こえた。
『おねえちゃん ぼく こいつのひだりがわ ぼろぼろにしてやったよ』
そして笑うように
『のこりのはんぶんは おねえちゃんにあげる』
幻覚などでは無い。確信してひたすらに謝った。後にも先にもあれほど本気で謝った事は無く、それほど必死で謝罪の文句を並べ立てる中で急に意識を失った。
気がつくと風呂の湯は冷めきっていて、身震いすると左半身の痛みが薄れている。
受けたダメージは変わらないが新しい痛みは無くなっていて、許してくれたのだと思う。
だが反省していたし、その後も半年ほど、左半身の痛みが残った。
いずれ改めて、二人に謝罪しに行こうと思っている。
正直、怖いのだが、、、
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夢の中で百物語
ペンネーム:桜
あれは私がまだ十代の頃。
高校中退後、観光ホテルの客室清掃のバイトを始めたのですが、そこは何かと怖い話があるホテルでした。
例えば
・A階は使用してないのにTVが勝手に点いてた。
・スイートルームのあるB階のとある部屋の洗面所の扉が目の前で勝手に閉まった。
・B階の上記と同じ部屋、奥まった和室に黒い影が入っていった。
・清掃中、制服のキュロットを誰かに引っ張られた。
・一人で作業中、遠くの方で誰かが名前を呼んできた…等々。
…下の3つは私が体験した事ですが(笑)そういう不可思議な事がちょこちょことありました。
そんなホテルから帰宅したある日の夜。
確か季節は夏。
扇風機をつけた自分の部屋で寝ていました。
寝てすぐ見始めた夢。
暗い部屋。その真ん中には蝋燭が1本、火の点いた状態で置いてあります。
そしてそれを囲む形でぐるりと円を書いて座る職場のおばさん数人と私。一人ずつ怖い話を披露しています。
話をし終えると蝋燭を消し、そして消した本人が再度火を点ける…それを話が終わる度に繰り返す。
皆さんの話を聞きながら、(怖いな…そろそろ私だ…上手く話せるかな…)なんて考えてたと思います。
そしていつの間にか隣のおばさんが話終わり、火を消してすぐまた点けました。
「次は○○ちゃん(私)の番」
そう言われたので用意してあった話をしようとしました。
喋ろうと口を開けた瞬間、画面がガラッと変わり、何故か私の部屋になりました。
棚の本、ぬいぐるみ、机、TV。間違いなく自分の部屋。
目は閉じたまま、ぼんやりする頭で(あぁ、夢から覚めたのか)と思いました。
嫌な夢だった…そう思い体の向きを変えようとしましたが体が動きません。
まさか金縛り…しかもあんな夢を見た後だったので一気に怖くなりました。
体を動かして解こうと試みましたが全く駄目、指先すら動かせません。
悲しいことに意識だけははっきりしてきたので、頭の中でずっと解けろ解けろと繰り返していました。
…すると。閉じている瞼に柔らかい何かが当たる事に気付きました。
(電気の紐?…にしては柔らかい(むしろ顔に届かない)なんだ…?)
怖い…けど正体が気になる…でも怖い…悩んだ末好奇心が勝手しまい、確かめる事にしました。
ゆっくりと瞼を開ける、すると今度は顔全体に柔らかい物が当たりました。
(豆電球点けてるから見えるはず…)
それなのにボヤける視界に入ってきたのは、豆電球の淡い光ではなく真っ黒い物。目の前で左右に揺れ、その度に柔らかい物が顔に当たる。
段々とはっきりとする視界…お陰でそれが何なのかわかってしまいました。
真っ黒い物の正体…それは髪の毛が長い、女性の頭頂部でした。
有り得ない正体に心臓が速く脈打つのがわかります。
目を閉じようにも瞼まで金縛りがかかったのが動かない。
目線をそらせず、揺れる頭をずっと凝視していると、その女性がブツブツと何か言っているのが聞こえてきました。
「…じ……ない……お……じゃ……い」
ザザっとノイズが混じったような声。
そしてゆっくりと動いていく目の前の頭。
更に自分の首に両手を添えられる感触。
目を閉じたい、見たくないのに動かない。
そんな私の気持ちとは裏腹に、目の前の頭はもう口元まで上がっている、しかし髪の毛のせいで顔は見えません。
「…じゃ…い……お…え……ない…」
口元が上がったせいか、ノイズ混じりの声が何を言ってるのか徐々に聞き取れ始めました。
と同時に、首の両手がゆっくりと力を込め締めてくる。
苦しい、そう思った瞬間。
「お前じゃない」
はっきりとそう聞こえ、すぐにザーっというノイズ音に変わりました。
はっとすると、目の前の女性は消え、変わりに豆電球の淡い光が飛び込んできました。
荒く乱れる呼吸を整えようと深呼吸し、壁に掛かった時計に目線を移すと朝の7時辺りを指しています。
夢…かと思いましたが、痕は無かったものの、首を絞められた感触が生々しく残っていました。
…以上が私の怖い体験でした。
夢の百物語、髪の長い女性、首を絞められた感触…未だに全部夢だったのか、はたまた違うのかはわかりません。
夢じゃないのだとしたら、あの女性は誰を探していたのでしょうか?
長い上に乱文、失礼致しました。
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人形
ペンネーム:さいふぉん
これは私が5歳の頃の実体験です。
私達家族は母親の実家に休みを利用して遊びに行っていました。
この実家はアパートでしたが、隣が空き部屋になった為、当時高校生と中学生だった伯母の子供部屋にと二部屋を借りて住んでいました。
新たに借りた子供部屋にもキッチンが当然ありましたが、使う予定も無い事からビール瓶や醤油瓶などの空き瓶や、前の住人が置いて行った椅子などの不要な不燃ゴミの一時置き場となっていました。
私はそこでオモチャの車を手に持ち、瓶を障害物に見立てて一人遊んでいました。
その時なんとなくキッチンの隅に置いてあった博多人形?陶器で出来た人形が目に留まりました。人形は壁を向いて背中側が見えています。不思議と目が離せません。すると陶器で出来た筈の人形が、まるで生き物のように滑らかに上半身だけが回りながらゆっくりとこちらを振り向き始めました。恐怖にひきつり、目が離せません。殆ど180度腰から回転してこちらを振り向いた人形に私はパニックになり、転がっていたビール瓶でその人形を叩き割りワンワンと泣きました。
このあと高熱を出して2,3日この光景を夢に見ては泣いたのをハッキリと覚えています。
これ以来私は日本人形の類いが怖くなり、祖父宅にあったもうひとつの日本人形を見ても泣き出すので祖父がこれをゴミに出して捨てました。
しかしそれから数週間後、祖父宅に用事で母が訪問した時、玄関の近くに半分燃えて焦げた、捨てたはずの日本人形が落ちており、これには母や高校生だった伯母もかなり怖がって、祖父に頼んでこの人形を近所の神社に持っていって貰ったと聞きました。
ある程度私が大人になってから祖母や母から聞いたのですが、私が叩き割った博多人形は誰も存在すら知らなかった事、私が怖がった為に捨てた日本人形は前の家族が置いていった物。実はこの前に住んでいた家族には私と変わらない年頃の子供が居ましたが、病気で亡くなってしまい、思い出の残るアパートに住み続けるのが辛くなり引っ越して行った事を聞きました。
人形が動いたとワンワン泣く私を見たとき祖母は、この亡くなった子供が年の近かった私と遊びたがっていたのだろうとすぐに分かったと言っていました。
人形には魂が宿ると言いますが、この件から母も人形を気味悪がり、私の家にはそれ以来人形と呼べるものは全て無くなりました。
以上が私の実体験ですが、未だにこの光景は脳内で再生出来るほど鮮明に覚えており、思い出す度に鳥肌が立ちます。
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あるラブホテルの一室で
ペンネーム:Xの元カノ
元彼はアメリカ人(以外X)で、ある程度日本語ペラペラ(大阪で覚えたらしく大阪弁)。
でもビジネス会話を主に覚えていたので日常の込み入った日本語には疎い面もあり、私とは英語半分、日本語半分で会話してた。
そんなXとあるラブホテルに行った時の体験を書きたいと思います。
そのホテルはラブホテル街の一角にあり、見た目はどのホテルとも変わらなかった。
おかしいな、と思ったのは部屋に入った時。
玄関から廊下、途中にトイレと風呂、廊下の先に1つドアがあってそこを開けると部屋だった。そのドアを開けたらまず見えるのがなぜか階段でその階段の先は天井で行きどまり。
その階段の下にテレビが埋め込まれるように設置されてた。
わかりづらくて申し訳ないけど、ベッドから見て天井まで続く階段が横から断面を見てるように見える感じ。
なんだろう、この階段?どういうつくり?とすごく不思議だった。あと、部屋の向こう、ドアを隔てた廊下と風呂場が異様に気持ち悪い。シャワーを浴びる時も寒気がしたし、誰かに見られている様な気がずっとする。ふろ場にはサウナ室までついてたけど、とてもじゃないが気味悪くて入りたくなかったので無視。
そして、やることをやりベッドの中でぼーっとしてる時も何だか見られている感が強かった。私は怖がりで妄想で怖くなってしまうから、今回もそれだと自分に納得させてた。どう妄想をやめようとしても、足元のベッドのヘリから女の人が顔を出して覗き込んでる様な気がしてしまっていた。
そんな時に限ってXが「なあなあ、怖い話せーへん?怖い話教えて」とウキウキ話しかけてきた。Xは怖い話大好きでよくせがんできたし、心霊スポットに一緒に行こう!と頼んでくる。しかもイスラム教徒で霊をあんまり信じてないくせに霊感が自覚なく強くて、ぼんやりと心霊体験をいくつか体験していた(それらもかなり怖かったけど今回は割愛)
この謎の階段がある薄気味悪い部屋で、こいつ…!と思い「話さないよ。もう寝るよ!」と提案を却下して電気を消して寝ることにした。
しばらく妄想と戦いながらもうとうとし始めた時
「なあ」とX。
「なに…?」
「あの音、なに?」
は?部屋はいたって静か。何にも聞こえない。なんだかとても腹が立ったので
「何にも聞こえないよ!もーそういうのいいから寝ようよ!」と語気を荒らげて言ったら黙ってた。
そのまま私は寝て、朝になった。
Xはいつも通りのんびり起きて、早く出たくて急かす私に気にすることなくのんびり準備してやっとホテルから出た。
車に乗って出発してまもなくXが昨日のことを話し始めた。
「あんな、昨日、あの音なに?って聞いたやろ」
「うん」
「ずっとな、喋ってる声、聞こえてた」
え。喋ってる声?
Xの話によると私が寝るよ、と言ってしばらくしてからずっとその音がしていた。隣の部屋のテレビの音かな、と思った。その喋り声は寝るまでずっと聞こえていたと言う。
そんなわけない。無音だったし、壁も薄くなかったのか隣のテレビの音どころかそういうことしている声もまったく聞こえなかった。
「…私は何も聞こえなかったよ」
「うん。テレビやなかった。部屋のドアの向こうからずっと聞こえてた」
「ずっとな、ボソボソボソっていうてて、日本語やからなんて言うてるかわからへんかった。」
「…その声は、男の声?女の声?若いの?それとも年寄りなの?」
Xは少し黙って考えてた。そしてこう言った。
「1人じゃなくてうるさかったから、わからん」
「…な、なな何人もいたの?何人いたの!?」
もう私は悲鳴に近い声で聞いた。ドアの近くで寝たのは私だった。何も聞こえなかった。
「10人以上いた。」
私は自分には聞こえなかったことに感謝した。
Xが平然としているのもとても怖かった。
あの天井に続く階段は何だったんだろうか。
10人以上が話していた内容はなんだったのか。
そのホテルにはもちろん二度と行かなかった。
以上です。
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警告
ペンネーム:サチロカ
アメリカ留学中に起きた、私自身の心霊体験。
私のルームメイト(日本人の女の子、Aちゃんとします。)は霊感があって、一緒に住んでいたアパートでもよく、階段を降りたら首の反転した赤ちゃんがキッチンに向かってハイハイしていた、とか部屋の隅に男がうずくまってるとか、自分のでも彼氏(B君、Aちゃんと部屋をシェア)のでもない髪の毛が壁にへばり付いているとか、なんだかありがちな話を何度か私に話してくれていました。
私は霊的存在や超常現象などはかなり信じている方なのですが、今までこれといってそういう体験もしたことがなく、私もB君も夜間はアルバイトで家にいないので、Aちゃんは適当なことを言って誰かに家にいてほしいのかも、など考えていました。
そういう不思議な現象はいつもAちゃんが一人きりの時に起きるらしく、私自身、アパートにいてそういう気配を感じたこともなければ、むしろかなり快適に生活していたので、半信半疑といったところでした。
そんな私もさすがに怖いかも・・・となったのが、Aちゃんがシャワー中に起きた出来事です。Aちゃん達の部屋には小さなバスルームが付いていて、そこには磨りガラスのドアの付いたシャワーと、トイレ、洗面スペースがありました。
そのバスルームには引っ越し当初からなぜか赤い電球がついていたらしく、(写真を現像する時に使うような電球です。)AちゃんもB君も不思議に思ったものの、特に不自由ではなかったらしく、そのままにしていたそうです。私なら絶対すぐに取り替えますが・・・。
ある日Aちゃんがシャワー中に、磨りガラス越しに何か動いたのが見え、彼氏のB君がバスルームに何かを取りに来たのかな?と思ったけれど、やけに静かだったらしく、「何してるのB君?」と呼びかけたそうです。
ちなみにAちゃんはシャンプーの途中で下を向いたままでした。返事がないので、視線だけを動かすと、磨りガラスのドアにべったりと手のひらをつけて髪の長い何かがすぐそこに立っていたそうで、Aちゃんは硬直。
必死に目をつぶって髪の毛を洗い続けたそうです。しばらくするとその何かはいなくなっていて、部屋にいたB君も、バスルームには入っていないということでした。
私はAちゃん達とは違う自分用のバスルームを使っていて、そう言った気配を感じることもなければ、アパート内のどこでもかなり快適に過ごせていたので、この話を聞いた時は怖かったのですが、すぐに忘れてしまいました。
それからしばらくして、アメリカ人の友達数人がアパートに遊びに来ていた時のことです。AちゃんとB君、二人の友達も交えてお酒を飲みながらトランプをしたり、映画を見たりしていたのですが、やることもなくなり、なんとなくAちゃんが今まで体験してきたアパートでの怖い話になりました。さすがはアメリカ人というか、そういう話を聞いてもあまり怖くないのか、もっと聞きたい!すごい!など大盛り上がりでした。
遂にバスルームでの事件も話題にあがり、アメリカ人友人達の興奮も最高潮に達しました。
そのうちの一人が、「Aちゃんのバスルームを見せてよ!そのゴーストに会えるかも!」などと酔っている勢いもあり、私も調子に乗って、「見たい!行こう!」などと一緒に盛り上がっていました。
AちゃんもあっさりOKということで、二階にあるAちゃん達のバスルームに行こうと立ち上がり、階段の電気
をつけた瞬間でした。
パンっ!という破裂音と共に階段の電球が破裂しました。驚いて私は叫んでしまい、それもあり全員がパニックでした。
結局それでみんな怖気付いてしまい、アメリカ人の友人もこれは絶対にバスルームに行くなという警告だと、縮こまっていました。私も率先して行こうとしていたので、何とも言えない驚きでいっぱいでした。みんなカーペットの上に座り、それでもまだ心霊現象の話をぼそぼそしていた時です。
何だか生ぬるい嫌な空気が私の首元に纏わり付き、私は気持ち悪くてまた大声で叫んでしまいました。そこでまた全員がパニック、もう心霊の話はやめようということになりました。あの何とも言えない感触はそれまでに体験したことがなく、空気なのにぬるっとしていて、とても不快なものでした。私の左側からやってきて右のほうへゆっくり移動したのを覚えています。
後になって私が働いていたバーのママさん(霊感強め)から聞いた話ですが、私のアパートの向かい側にある別のアパートに住んでいる知り合いを訪れた際に、そのアパート内の空気が重すぎて部屋に足を踏み入れることが出来なかったと聞かされました。
ママさんによると、その一帯は常に重くて不快なモノが溜まっているとのことでした。思い返せば、Aちゃんが日本にいるB君に電話で話していた時も、B君が「誰か友達と一緒にいる?すごいざわざわ言ってるけど・・・」ということもありました。もちろんAちゃんは部屋に一人きり。
今思えば相当な数の何かが、私たちのアパートの辺りを彷徨っていたのだと思います。そんな場所でふざけたり冷やかしたりすれば、得体のしれないものを怒らせてしまうのも当然で、むしろ電球が破裂するくらいの警告で済んだことが幸いでした。霊感などないと高を括っている皆さん、お気をつけください・・・。
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ライブカメラ
ペンネーム:ひっそり
これは実際に目撃した話ですが、一般的な「怖い話」ではないかもしれません。
なぜならそれは普通にTVに映り、誰もが見ることができ、調べれば恐らくその記録もTV局や自治体に残っていて、それがなんなのか解明することが可能だと思われるからです。
ただ、私にはそれがなんであるのか未だにわからず、思わずTV画面を撮ったその写真を未だに消すことが出来ないでいます。
これがTVに映ったのは、2014年の2月のことだったと思います。
私が神奈川県に越して、初めての冬でした。
一人暮らしの寂しさから、寝るときは消音にしてTVを付けっぱなしにしていることが多く、たいていはあまり映像の移り変わりが激しくない番組や、放送を終えている局の黒い画面を常夜灯代わりにしていました。
なかでも朝方に目が覚めると必ずと言っていいほど、県内の河川敷や港を淡々と写し続ける、ローカル局のライブ配信をつけるようにしていました。
その日は雨で、ライブカメラに映し出された大桟橋は雨に塗れ、いつもより眩しく見えました。ふと画面の中央、右寄りに視線が吸い寄せられました。ライトの反射かな?そう思ったのですが、見れば見るほどそれが人の顔に見えてきました。慌てて、枕元に置いてあったケータイで写真を撮り、拡大してみてみるとそれは、ひとりの顔の二つの表情のように見えました。
慌てて部屋の電気をつけ、改めてTVを見直すと画面はまだそのままで、不気味な青い顔がそこに張り付いたままでした。
早朝5時のローカル局とはいえ、誰か見ている人はいるだろうと思い、ツイッターを検索してみてもソレらしいツイートは見つかりませんでした。
数日後、同じ時間に目が覚めた私は再びあの局のライブ映像を付けてみました。時間は数日前と数分差。あの場所に、あの顔はありませんでした。これも確認のために写真を撮ったので、添付します。
これがなんなのかはわかりません。
ただ、あまりにも不気味でこれ以降、私は雨の日にこのライブ映像を見ることはなくなりました。
ちなみにこの映像を見てからなにか怖い出来事があったかといえば、TVに背を向けて寝ているときに、誰かが両手で布団を掴み、中に空気を入れるかのように大きくばさりと一振りされたくらいです。
添付1枚目、画面を写した写真
添付2枚目、それを拡大したもの
添付3枚目、数日後に写したもの
トリミング以外の加工はしていません。
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