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    『心霊怖い話部門 第二部』真冬の怖い話グランプリ


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    グランプリの詳細はこちらのページをご確認ください。
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    この記事では「心霊怖い話部門」から15話をご紹介いたします。
    怖かった話、面白いと思った話の番号とタイトルを投票ページから投票してくださいね!

    目次

    22.とある産婦人科で出産した話 立華様
    23.ネズミーランド ぺたく様
    24. 零崎優識様
    25.娘を捜しています 森川聡史様
    26.今もずっと くだんらん様
    27.背中に張り付いて。 名無し様
    28.普通の人 タルタルエビフライ様
    29.おとなりさん たくみん様
    30.ステンドグラスの顔 真冬のそうめん様
    31.真夜中の足音 赤猫様
    32.従兄弟と叔父の話 はやぶさ様
    33.お化けマンション でんちねこ様
    34.駅のエレベーター 澪様
    35.赤めだら トミヒロ様
    36.呪具 那須しめじ様

    投票ページはこちら
    心霊怖い話部門 第二部投票ページ





    22.とある産婦人科で出産した話

    ペンネーム:立華

    4年程前に出産をする為、とある病院の産婦人科にお世話になった時の話です。
    その病院は地元では古くからある総合病院で建物自体は古いものの受付の方の対応や、産婦人科の先生達スタッフの方々も検診の時からみんな親身になって優しくしてくださる所だったので私はとても安心していました。

    ただ、霊感というか勘の働く夫は「ここの病院は暗いから嫌いだ。産婦人科はまだマシだから良いけど…」と初めから不満そうでした。けれども私が満足している事、私に持病があり普段はかかりつけの病院に通院していますが、もしもの時に同じ科のある病院で出産した方が良いとかかりつけ医師にも勧められていたのでそれ以上は何も言わず快く送り迎えもしてくれました。

    妊娠も後期に差し掛かった頃、立会い出産を希望する夫婦はちょっとした講習のようなものや入院病棟の見学があり私達夫婦も参加しました。
    病棟は今集団部屋から個室部屋に少しずつ改装しているところで、エレベーターホールから1番遠い部屋が個室に改装してあるとの事でした。

    ちなみに病棟はうろ覚えですが中心にナースステーション・授乳室&沐浴&リネン置き場・分娩室3部屋。その中心の施設を取り囲むように多分L字型にエレベーター側から切迫流産などまだ出産はしないけど体調不良の妊婦さんの部屋。陣痛待ち部屋。面会室。処置室。出産後の集団部屋2〜3室。個室。L字に折れてシャワールーム。また個室…という感じでした。

    その後臨月を迎え、家で破水してしまったので初産だけど念のためと陣痛室で夜を明かし翌日帝王切開で無事出産したものの子供は低血糖だったのでその処置と私も40度近い熱を出したのでさっきとは別の病室でまた一晩眠りました。

    そして次の日の朝、私も子供も問題ないので2人で1番奥、シャワールームの隣の個室に移動しました。個室と言いましたがまだ改装の途中なのか大部屋の真ん中を固いカーテン?の様な物で仕切り出入り口にもそれが両方の空間についている為病室のトイレ洗面台は共同だけど、顔を合わす必要が無い感じになっていました。ただその仕切られた部屋の半分のベッドにはまだ誰もいないのでそちらの扉カーテンは開けっぱなしでした。

    何故かこの部屋に案内された途端、私はすごく嫌な気分になりました。ここまで2つの病室を経由しましたが前の2部屋には感じなかったすごく不安な変な感覚です。直感で「この部屋嫌い」と思いました。
    特に空いている方の部屋の空気が特に嫌でそっちを視界に入れたくないためトイレに行く時とかなるべく見ないようにしていました。けれどもこの時は出産のせいで疲れて不安定になってるんだと思っていました。
    しかし私の身に次々と不思議な事が起こるようになりました。

    まず始めに驚いたのが陣痛室にいた時以来初めて洗面台の鏡に映る自分の顔を見た時です。
    その時私はギリギリ20代だったのですが鏡の自分が明らかに老けているのです。出産して熱出してお風呂に入らずボロボロで汚いのは分かっていますが目尻や口角が下がり、首に歳を取った時に出るようなシワが幾重にも入っていて明らかに実年齢より20歳以上は老けこんでいます。

    びっくりはしたけれどこの時も疲れてボロボロだからこうなったんだなと妙に納得してショックとかはありませんでした。もうこの時から少しおかしかったのかもしれません。一応主人に「産んだらすごい老けた。首に皺が何本も入った」とメールしましたがいつもはなんでも親身に答えてくれる主人から「そう?おっぱいあげるのにずっと下向いてたからじゃない?クリームでも塗っとけば〜」という意外にも素っ気ない返事が来たので「?」と思いました。

    そしてこの部屋で過ごす初めての夜。母子同伴なので慣れない赤ちゃんのお世話で夜中も起きていると隣の部屋から変な感じがしてふと天井と仕切りの隙間を見てみると薄いけど黒いもやみたいなものが見えました。
    見た瞬間めちゃくちゃ怖かったけど主人からそういうのは気にしないのが1番。ほぼ無害だし、幽霊よりも生きている人のエネルギーの方が強いから特に新生児がそばにいたら近寄れないよ。と言われていたのでなるべく気にせずなんとか一週間(その病院は初産の帝王切開は一週間目安)耐えようと思いました。
    黒いもやもこっちに来たそうにムギューってなってたけど入ってこれなかったみたいだし、気分は最悪だけどもやに関しては怖いからスルーしました。

    しかし不思議な事はどんどん私の身に降りかかりました。
    鏡やもやの話と前後しますが、母子同伴するとこの病院ではお母さんが決められた時間に赤ちゃんの検温。うんち・おしっこの回数を決められた用紙に逐一記載するのですが私はこの説明を受けた記憶が無く助産師さんを困らせてしまいました。
    また術後の痛み止めをいくつか処方されていて自分で飲むのですがその説明も薬をもらったことも記憶が無く、後日助産師さんに言われて飲む始末でした。助産師さん達は本当に真面目で良い人ばかりなのでこれは単純に私が不安定になって忘れちゃったんだと思っていましたが、おかしな事に病院で過ごす記憶がそれでは説明つかないほどになくなっていくのです。

    ある時は助産師さんに「〇〇さん(私)午前中△△ちゃん(子)の事で小児科の先生に相談したいって言ってたから先生連れてきましたよ」→言った記憶も無ければ相談事も無い

    その他にも「〇〇さん粉ミルクの作り方教えてって言ってたの今時間取れたからどうぞ〜」→そんな事わざわざ聞かない
    「〇〇さん哺乳瓶の消毒液の作り方聞きたいってry」→そんな事ry

    このような事がたくさん続き更には一日中赤ちゃんと過ごしているのに育てている記憶も飛び飛びになってしまいました。(助産師さんからは何も言われてないのでキチンとお世話は出来ていたみたいで良かった)その代わりに私の中に変な意識というか記憶というか別の気持ちが入ってくるようになりました。

    例えばカレンダーを見て「今は入院3日目だから退院は〇日」と認識し、頭でもしっかり理解出来るのですが心は「もう何年もここに入院してる。さみしい。早く退院したい」と思うようになったのです。理解はしてても心はもうずっとここにいるから早く帰りたくて帰りたくて仕方ないという感覚でした。

    やっぱりこの部屋おかしい!と思いましたが産後で不安定だからかもという気持ちもあって助産師さんにもずっと言えずにいました。
    黒いもやと部屋の不快感は相変わらずで遂には夜はずっと授乳じゃなくても授乳室で赤ちゃんと過ごすようになりました。授乳室は嫌な感じもしないし身体は心底疲れていたけど安心出来たからです。

    しかしそんな入院生活を送った為に5日目の夜中、また熱が上がってしまい助産師さんが冷え冷え枕を持ってきてくれた時、その助産師さんが「慣れない子育てでちょっと疲れちゃったかな?」と優しい言葉を掛けて下さった瞬間涙がポロポロ出てきて「頭ではあと〇日で退院って分かってるけど、もう何年もここにいる気がする…早くお家に帰りたい…!」と言ってしまいました。

    すると助産師さんは「じゃあ明日帰ろっか。赤ちゃんのお世話も問題なく出来ているし、先生の診察次第だけど明日朝一で先生に来てもらえる様に申し送りに書くから診察がOKなら午前中に退院しよう。授乳室が落ち着くならずっとここにいていいよ」とこんな真夜中に側から見れば家に帰すことの方が不安な母子を実際の予定より2日程早く退院と、医師の診察次第ではありますが独断であっさり決めてしまったのです。

    やっぱりあの部屋おかしいんだ…。

    けれどそれを助産師さんに聞く事は出来ませんでした。
    もし助産師さんが私が体験した怖くて不思議な体験を全て認めてしまったらもう怖くて荷物まとめたりとかあの部屋で出来ませんからね(笑)

    その後無事退院し、病院から出た途端気持ちがスッと楽になり日付感覚も取り戻しました。貴重な母子同伴の記憶がほとんどない事が悔しいですが何よりホッとしました。
    そして帰宅して何気なく鏡を見るとそこには疲れてはいるものの年相応のいつもの自分が映っていて、首の皺も消えていました。
    子育ても大変で辛い時も何度もありましたが記憶もしっかりし、子供も元気すぎるくらい良く育ってくれています。

    色々落ち着いてから主人にこの事を話すと

    あの病院は建物が古いとか関係なく入った瞬間から全体的に暗い
    産婦人科はそこまでじゃなかったから大丈夫だと思ったけど一緒に病棟見学に行った時、あの個室の前だけ暗いフィルター被せたみたいに見えた
    ヤベーと思ったけど病棟空いてるしまさかあの部屋になるまいと思ってたけどピンポイントでなるとは思わなかった 俺も気付いてたけど言ったら無駄に怖がらせるだけで良くないから黙ってた
    あと俺には老けたように見えなかったし首の皺も見えなかったからメール送られてきた時何言ってんだろう?と思ってた
    あの病棟、他にも何人か赤ちゃんいたのに異様に静かだったよね
    病院の中では産科が唯一新しい命が生まれる場所なのにそういった空気が一切感じられない珍しい場所(部屋作りが明るいとかそういう事じゃない)
    あそこ昔精神科病棟だった気がするから認知症のお年寄りもそこに入る場合があるからもしかしたらそのお年寄りなのかもね〜
    もしかしたら退院決めた助産師さん、今までもあの部屋に入院したお母さんに何か言われたんじゃない?
    まぁ生きてる人の方が絶対的に強いんだから大丈夫って言ったでしょ特に新生児は強いからもやも入ってこれなかったし気にするこたぁないよ♪

    とのこと。オバケ慣れしている人がちょっと羨ましいです(笑)

    以上が私の出産した時のお話ですが、主人といてから他にも不思議な体験、主人自体がめちゃくちゃ不思議な体験が多いのでそれらのお話はまたどこかで書けたらと思います。

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    23.ネズミーランド

    ペンネーム:ぺたく

    若かりし頃の実話な話で。
    あんまり不思議.netさんでは
    見かけない?触れられない??
    某ネズミーランドでの体験。

    もう約20年前かな?その時に体験した
    少しだけ怖い話。

    私は高校卒業して就職先も決まらず、
    バイトしてた会社で社員旅行がありました。

    たまたま同じ時期に
    当時、高校生の私の妹も同じ会社で
    バイトしていて、バイト員でも社員旅行に
    参加できるという事で、
    あのネズミーランドに行くことになりました。

    平日ですが、あそこはやはり人が多く
    長蛇の列に並んで、ひとしきりアトラクションを楽しみました。

    私、妹、先輩2人。この4人で行動してました。
    その当時、スプラ◯シュマウンテンが
    出来たばかりくらいの頃で。
    絶対に乗りたい!!
    いざ行ってみると、多少行列になっていました。
    これから長蛇の列ができるのか?と思ったけど
    なぜか、私たちの後ろには誰も並ばない。

    おかしいな?
    そんな思いを感じつつ、、、
    本当に乗車する直前まで後ろには
    誰も並んでいませんでした。
    他のアトラクションではあんなに
    行列が出来ていたのに。
    ましてや、あの当時出来立ての
    スプラ◯シュマウンテンなのに。

    変だな?という感じで係員の誘導のもと
    乗り込もうとした際、、、

    ふと後ろを見ると。
    小学校の低学年特有の黄色い帽子を被った
    見た目は、たぶん小学校1年生くらいの子供が1人で居て、
    なんの違和感もなく私たちと共に
    乗り込みました。
    係員の人も見えてないのか、見えないのか、
    何も言われず座らされ
    配列はこんな感じ。
    2人シート×4列に

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    あのアトラクションに乗ったことが
    ある人なら分かると思いますが
    まぁ、途中まではちょっとした起伏などあり
    多少の「きゃー」とか
    不思議な空間に迷い込んだ感じで
    不安感や恐怖心を煽る感じだったので、

    さすがに私も妹も、後ろの小学生が気になり
    「大丈夫?」「怖くない?」とか
    話しかけてました。

    その子は、そのたびに
    「うん。」とだけ返事をしてました。

    そして、最後にはお決まりの滝壺へダイブ!
    楽しさで、後ろの子供は気にせずに
    わーっ!きゃー!言っておりました。
    その後、ゆっくり降り口まで行ったのですが
    振り向いて確認し、後ろの子供は大丈夫そう。
    私「怖くなかった?」
    子供「うん。」

    その後、降り口に着き降りるや、いなや
    急にその子が、

    「楽しかった。もう一回乗ろう。」

    と、言って駆け出して出口の方向へ
    走り出して行きました。

    出口は一つなので、追いかけるではなく、
    歩きながら付いて行きましたが
    もう姿は見えません。

    知ってると思いますが、そのアトラクション
    滝壺ダイブの瞬間に写真撮ってるんですよね。
    その写真を記念に買うシステム。

    しばらくするとモニターに私たちの
    ダイブの写真が映し出されたのですが、、、

    最後列に居たはずの、黄色い帽子の
    小学生は写っていません。

    会話もしたのに?なんで?

    モニターを見ながら、私は妹に
    私「黄色い帽子の子、居たよね?」
    妹「うん。いた。」
    私「なんで写ってないの?」
    妹「…」
    私「…」

    怖くて、写真は買いませんでしたが
    無邪気な先輩1は写真を購入してました。
    (先輩は後日職場に持ってきましたが、見れるはずもなく。いや、見たくなかった)

    もともと多少霊感のある家系の私達には見えて
    無邪気な先輩2人には見えてない、
    そんな不思議な感覚に陥りました。
    その後の他のアトラクションは
    全く楽しく無かったですし、
    帰りのバスでも、私と妹は沈黙。。。

    その時以来、ネズミーランドに行っていません。

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    24.顔

    ペンネーム:零崎優識

     6年前の今ごろ、僕は家の周りに積もった雪を掻いていた。その年は例年よりもたくさんの雪が降り、深いところでは、当時高校生であった僕の腹辺りまで埋まるほどだった。普段ならばそのような雪が深い地点を避け、浅く積もった部分から切り崩すのだが、その日は、クリスマスが近づいてきて浮かれた脳で、あえて奥の方の、雪が高く積もった部分から掘り進めようと考えた。

     その地点に向かう途中、僕は雪が柔らかい部分を踏み抜いてしまい、腰まで埋まってしまった。抜け出そうと、手を積もった雪の上に踏ん張るが、抜けそうにない。少し長靴の締めつけが強くなったような気がした。

    どうにか抜けようともがいているうちに、片足を持ち上げることができた。その浮いた足で穴を拡げようと、さらに足を上げようとしたその時、穴の奥に赤い物が見えた気がした。隙間を拡げ、穴を覗きこむと、その赤い物の正体がはっきりと見えた。

    それは顔だった。いや、正確には目だろう。真っ赤に血走った目が特徴的な醜悪な顔が穴の底にすっぽりと収まっている。と、そこを覗きこんだことで、さっきの足への締めつけが穴の内壁から飛び出ている幾本もの手によるものだということにも気がついた。

    その非現実的な光景を呆然と見ていると、穴の内壁からもう二本の腕が出てきた。その手は一直線に僕の頭へと伸びてきた。そこでやっと危険が身に迫っていることを意識し、渾身の力でもがいた。無我夢中だった。

    そうしてもがいているうちに、足を掴んでいた腕の力が弱まったようで、穴から抜け出すことができた。恐怖で息もつけないでいる僕は、今しがた抜け出したその穴から、確かに舌打ちの音を聞いた。
    やけにはっきりと響いたその音は、僕に二度と雪が深いところに近づかないことを決心させるには十分な恐ろしさを孕んでいた。

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    25.娘を捜しています

    ペンネーム:森川聡史

    10年程前の事です。

     ある日、私が同居人Aと世間話なんかをしながら家でのんびりしていた時、ふとあぐらをかいて座っていたAが突然空中を見つめたまま黙り込んだのです。
    黙ったままのAは、こちらのどうしたの?と言う問いには答えないので、あ、いつものアレだ、何かあるなと感じた私は少し様子を見ることにしました。
     実はAは生まれつき体が弱く、昔大病を患った時に死にかけて以来、死んだ人の魂が見えるようになってしまったと聞いていました。

    「ちょっと待って」 

    ようやく口を開いたAがさらに私に待つように指示して1、2分ほどの時間がたった頃ようやく今、何が起きているかを私に話し始めました。

    「あのね、今、知らないおじさんが来てるんだよね」
    「は?」

    もちろん私には全く見えません。唐突におじさんと言われて笑ってしまいました。
    おじさんて誰だよ、と。

    「何かね、賑やかで居心地よさそうだからお邪魔してしまったって」

    何か気さくに家に上がり込んできたかのようなおじさんは50代くらいで、家に入ってすぐ帰るつもりだったがどうやら私達の会話や雰囲気が楽しそうなのと、死んだ自分が見えるAに興味を持ったので話し掛けてみたということらしい。
     何だか申し訳なさそうな顔してる気弱なおじさんを想像してしまった私は、突然の死者の来客に戸惑いながらも怖さは感じず、こんな怖くない魂もいるのだなと思っていました。

    しかし、私には聞こえない彼の言葉を聞きながら語り始めたAの口からは、おじさんの悲痛な身の上話が聞けました。

    「私は娘に殺されました」

    おじさんはここに来た本当の目的を語り始めたのです。

    「この世で娘は罪を償い、すでに刑期を終えて世に出てきています。子供が親を殺すという事は、けして許されることではない。世間が許しても親である私は許さない」
    「私は娘を探しています」
     Aは続ける。
    「娘を見つけたら、私は生まれ変われなくなってもいい。必ず娘を呪い、殺します」
    「それが人殺しの娘の親としての責任です」
     
    Aはそこまで言うと、息を少し吐いた。
    「あのね、魂は呪ったり生きてる人を殺すと次の人生、生まれ変われないんだって」
    何も言えないで聞いている私にAは説明してくれました。
    おじさんが自分を殺した娘を探して日本全国探し回っていること。
    家の中を1軒、また1軒としらみつぶしに入っていること。
    そうして何年も何年も毎日毎日、娘をのろい殺すためだけに次から次へと家に入り、親を殺した親不孝な娘を探していて今日、私達の家にも入ったこと。

    「必ず娘を殺します」

    ゾッとしました。
    でも切なくも思いました。
    殺すことが、娘をこの世に生んだ親の責任だといったおじさんの言葉が心に残ります。

    そしてあれから10年ほどたちました。
    あの時のおじさんの目的は果たされたのでしょうか?それともすでに年老いたであろう娘を探して今も1軒1軒と家を訪れているのでしょうか?
    これを読んでいる方の家にも、おじさんは訪れているかもしれません。

    あのあと、Aの口を借りておじさんは私にとっては洒落にならないこともいいました。

    「けして悪さはしません。2日間程ここにいさせて下さい…」と。

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    26.今もずっと

    ペンネーム:くだんらん

    これは私が6年ほど前先輩から聞いた話で、先輩のお兄さんが実際に体験した出来事です。ちなみにお兄さんに霊感はないらしいです。

    当時大学生だったお兄さんが里帰りした際に、地元の友人とその家族が一週間ほど前に空き家を購入し、そこに引っ越したということだったので、確認がてらお泊まりして遊ぶことなったそうです。

    友達の家はその辺の家に比べると比較的新しい二階の一戸建てだったらしいです。家に上がり友人のお母さんに挨拶しにいくと、やけに顔色が悪かったので話を聞いてみると 引っ越してからまともに眠れていないとのことでした。

    というのも深夜の2時半ごろの決まった時間になると一階の物置部屋からドスンッ!という大きな音が聞こえてる来るそうなんです。そしてお母さんは目覚めてそこから眠れないのだそうです(友達は二階の部屋で寝ており、お父さんは一度寝たらちょっとやそっとじゃ起きないらしく普段通りだったらしい)。部屋を見てみると段ボールが積み重なってるようなよくある物置と同じで、そんな音の原因となりそうなものはありませんでした。

    するとお兄さんは、
    「それならその時間に物置部屋にいようぜ!」ということになったらしく深夜張り込んで原因を確かめることになりました。

    しかし、お兄さんと友達は他の地元の知り合いと居酒屋に行って、その計画を忘れてしまい結局家に帰ったのは深夜2時半頃でした。
    そしてまた飲み直そうとして二階にある友達の部屋に行こうとして階段を登り廊下を二人で歩いている時でした

    目の前を真っ逆さまに女が落ちてきたそうです。

    天井から頭が出てそのまま吸い込まれるように床へ消えて行き 次の瞬間に下から ドスンッ!
    という鈍い音が響き渡ったそうです。この廊下の下はちょうど物置部屋にあたります。一瞬の出来事の筈ですが今でも鮮明に覚えてるそうです。

    この後調べてわかったことはその家が建つ前は駐車場でその近くにビル?みたなものがあったらしいです(その時はすでに壊されてたらしい)

    つまりお兄さんたちが見た女はそのビルから飛び降り自殺した霊なのではないかと。そして新しい家が建った今も女は自殺し続けているのではないかと……。


    以上が私が聞いた話です。自分の体験談ではないので真偽は不明ですが調べても似たような話は見つかりませんでした。
    その後 友達家族がどうなったのかはすいません覚えてないです笑笑 ちなみに音以外に実害はないらしいです。
    聞いた話をなるべくそのまま書こうとしてさらに見辛い文になりました。すいません……。

    みなさんは死んだらどうなると思いますか?
    人それぞれ様々な考えがあると思います。
    善人は天国、悪人は地獄などが一般的かもしれませんが 自殺者はどうなるんでしょうね?
    私は今まで地獄に行くのだと思っていましたがもしかしたらこの話の女のように生きることも死ぬこともできずに永遠に自殺し続けるのかもしれないですね。

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    27.背中に張り付いて。

    ペンネーム:名無し

    これは私がまだ幼稚園の時の話です。私の母は元々糖尿病の持病を待っていたのですが、ある時期から身体が怠く重たいという症状が酷くなったのです。
    掛かりつけの病院に診てもらったのですが、特に症状が悪いという訳ではないと言われ診察を終えてきました。

    しかし、体調は良くならず他の病院に行って診てもらったりもしましたが同様の事を言われしばらくは原因が分からず布団に寝ている事が多くなっていました。
    見かねた叔母が『気休めでもいいから拝み屋さんに行って見てもらおうよ』と言い母を連れて行きました。

    その方は盲目のおばあちゃんでした。私と母と叔母の3人で行ったのですが、その方は仏壇の前に座って手を合わせ何事か唱えてから『この人には若くて死んだ真っ黒い人が背中に張り付いてる』と言いました。
    まさしく心辺りがありました。叔母の息子が若くして会社の事故で焼死していたのです。その人が自分の親(つまり叔父や叔母)を心配して私の母に頼みたくて付いていたのです。

    とにかくお祓いをしないとこのままではこの人の身体が悪くなると言われました。『明日から1週間毎日夜の7時に本人(母)と叔母の2人だけで線香と饅頭や果物を持ってお祓いに来なさい。ただし2人だけで、何故なら他の人がくると今度はその人に張り付いてしまうから』という事でした。

    さて、1週間がたち8日目の夜今度は母1人で紙の付いた棒を『夜7時くらいに家の近くのお墓に行ってその棒を誰の墓でもいいから花を入れる所に挿してきなさいと。その時家から出て帰って玄関に入るまで絶対に後ろを振り返らない事』と念を押されました。母はそのとうりにやり真っ青な顔で帰ってきたのを覚えています。
    その後体調は元どうりに回復しました。

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    28.普通の人

    ペンネーム:タルタルエビフライ

    友人から聞いた話です。

    友人は当時都内の本屋に勤務しており、その日は棚卸しの為、仕事が終わったのは午前4時過ぎ。始発で帰り最寄駅に着いたのが6時位だったそうです。冬の朝6時はまだ暗く、人もほとんど歩いていません。
    最寄駅から家までの真っ直ぐの道を、眠気と疲れでヘトヘトになりながら歩いていると、遠くに男性がいるのが見えました。時間も時間なので「ジョギングか犬の散歩でもしてるんだろう」と、特に気にする事もなく歩く友人。男性との距離が近づくにつれ、その男性が30~40代位の上下グレーのスエットを着た人だという事が分かりました。「やっぱジョギングか…寒いのによくやるな」と思いつつも、男性に何か違和感がある事に気づきました。
    違和感の正体が分からずモヤモヤするも、気持ちは「早く帰って寝たい」が勝っているのでそのまま歩き続け、男性との距離が10メートル…5メートル…と近づくと、そこでようやく、違和感の正体が分かりました。

    「あ、この人、膝から下が無い」

    気がついた瞬間、全身に鳥肌が立ち、身体が硬直し動けなくなった友人の横を、その男性は走り(?)抜けたそうです。
    数秒後に振り返るも、もう男性はいませんでした。

    友人曰く「幽霊だと思うんだけど、余りにも普通の人すぎて怖いよりも不思議だった。今思えば若干身体が透けてたというか、何か重量感みたいのが無かったんだよね」
    その話を聞いた時は「眠すぎて幻覚が見えたんだよ」と突っ込んでおきましたが、普通の感じが逆にリアルで、総毛立っていました。

    また「膝から下が無かったら、遠くからでもおかしいって分かるでしょ!」とお思いの方も沢山いると思いますが(私も思いました)これには友人も「それがね~意外と分からないのよ。違和感はあるの。でも、普通の背格好で普通に走ってる人の膝から下が無いって、普通ありえないじゃん?」と。

    この話を聞いてから、怖い話や映像で白いワンピースを着ている血だらけの女、みたいのが嘘臭くてつまらなくなってしまいました()

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    29.おとなりさん

    ペンネーム:たくみん

     ……ヒック。ヒック。
     僕はどこからか聞こえてくる耳障りな女の声に眼を覚ました。
    「チッ。明日は一限から講義があるからしっかり睡眠をとっておきたいというのに」
    僕は辟易して言い捨る。
    声の出処を探ってみると、どうやら隣りの部屋から聞こえてくるようだ。
     ご近所トラブルの案件で最も多いのが騒音だと聞いたことがあるが、確かにこれでは敵わない。
    〝コン、コン〟
    僕は耐えかねて壁をノックした。すると、泣き声が止んだので、「これで眠れる」と僕安堵に胸を撫で下ろした。
       ○
     何で大学生になってまで体育の講義が課せられるのだろうか。僕は内心そう思いながらサッカーボールを蹴り上げた。
     大学に進学して早や一ヶ月が経とうとしている。キャンパスライフというものはもっと自由を謳歌できると思い込んでいたが、実際は違っていた。只々、与えられた必修科目を受ける退屈な日々。
    田舎から上洛してきた苦学生の僕は講義を終えるとアルバイトに精を出さなければならない。 
    今日もアルバイト先の大衆居酒屋でタイムカードを押した。
    店長によるとこの時期の客は浮ついた大学生がほとんどだという。新歓コンパの客が騒ぎ立てる。その姿は最早、自然人とは呼べない。
       ○
    月夜が照らす帰り道。僕は賄いで満たした腹を撫でながら下宿先へと歩を進める。
     築二十五年のおんぼろアパート。階段を登る度にギシギシと軋みを立てる。二階の角部屋に着き、手慣れた仕草で鍵を開けた。
    僕は部屋に入るなり煎餅布団に倒れるように横になった。一息ついてテーブルの上のリモコンに手を伸ばすと、何やら見慣れない便箋の存在に気付いた。                          
    「うん? 何だこれ」
    僕はリモコンをどけて検めると、丸まった字で「昨夜は、深い時間にお聞き苦しい喚き声を立ててしまい御免なさい」と綴られていた。
    全身の毛が逆立つ。顔が蒼白に染まった僕はその便箋をまるでなかったかのようにビリビリに破いてゴミ箱に投げ捨てた。
    一体、どこから侵入して来たのだろうか。玄関のドアはしっかりと施錠していたはずだ。それでは窓から? 
    いずれにしても不法侵入だ。僕は携帯電話を取り出し縋る思いで110番を鳴らした。
    「○○警察です。どうされました。緊急ですか?」
     どこか事務的な口調の相手に一瞬たじろいだが、僕は事案を簡潔に伝えた。
    「はぁ。そうですか。他に部屋が荒らされたり、金品がなくなったりということはありますか?」
     その口調は飽くまで高圧的だ。
    「……。いいえ。そういった形跡はありません」
    「うーん。そうですか。それでは、これからお伺いしたいと思いますので少々お待ちください」
     通話を終えると部屋は静寂に包まれた。
       ○
     警察官が到着するまで十分くらい待たされただろうか? しかし体感時間ではとても永く感じた。                    
    呼び鈴の音に誘われドアを開けると年配の警察官とその部下と思われる中年巡査の二人の姿があった。
    「お待たせいたしました。○○警察署の清水(仮名)と申します。△△さんご本人でいらっしゃいますか?」
     年配の警察官、清水がしわがれた声で尋ねると僕は無言で頷き、部屋に招き入れた。
    「部屋が散らかっておりますが、これは普段と同じ状況ですか」突然、中年の警察官が口を開き、場違いな大きな声で聞いてきた。
    「はい。そうですが」僕はぶっきらぼうに答える。
    「それでは、先程おっしゃっていた、便せんをお見せいただいてよろしいでしょうか」
     清水が慌てたように会話を遮る。僕はゴミ箱からバラバラになった便せんを取り出した。二人の警察官は絶句した。
    「ちょっと△△さん。困るんですよ感情に任せてこういうことをされてしまったら。」中年警官が子供に諭すような口調で言う。
    「いずれにしても不法侵入に違いないでしょう。さっさと犯罪者を連行してくださいよ」僕は声を荒げる。
    「まあまあ落ち着いてください。例えばですがご友人のいたずらという可能性はありませんか」と清水が言う。
    「そういった交流関係は一切ありません」僕がきっぱりと答えると、二人の警察官はバツが悪そうな顔をした。
    「それでは、お隣の住人の方に聞き取り調査を行いますのでご同行願います」
     清水がそう言うと三人は踵を返して、隣人宅に向かった。中年の警察官がチャイムを鳴らすが、一向に反応がない。それどころか中で動く気配すら察知することができなかった。
    「時間が時間ですからねぇ」中年警官が嫌味ったらしく言う。僕は、まるで深夜帯に通報した自分を責めるかのように感じた。
    「△△さん。御心配でしょうが、明日改めてお伺いするような形でもよろしいですか」清水が労うように言う。
    僕は「はぁ。」と力なく返事をして電話番号を伝えると、警察官二人はそそくさとその場を後にした。
       ○
     携帯電話の耳障りなバイブ音が僕の睡眠を妨げる。応答しようするも虚しくも切れてしまった。
    気付けばもう陽が傾く時間だ。どうやら、今の今まで眠りこくってしまったようだ。「チッ」と僕は舌を鳴らした。
    着信履歴を確かめると昨日の警察官から連絡だったようだ。留守番電話が入っていたので眠け眼を擦りながら、再生ボタンをタップする。
    「△△さん。昨日お伺いした○○警察署の清水です。単刀直入にお聞きします。女性の声が聞こえたとおっしゃいましたが、それが聞き間違いだったということはありませんか。いやねぇ、先程そちらのアパートの大家さんに確認をとったのですがお隣のお部屋、空室らしいんですよ。そういう訳で折り返しお電話いただけると助かり――」
     再生の途中で切れてしまった。
    「空室? どういうことだ。そんなわけない。だって、俺は確かに聞いたんだ」僕は声を絞り出す。すると手にしていた携帯がまた振動した。すぐさま応答する。
    「もしもし? 清水さんですか。空き家って一体どういうことですか」渇いた声で訴えるが返答がない。電波状況が悪いのだろうか。ノイズ交じりの不協和音が耳をつんざく。
    「ご■んな*い」
    「えっ? 聞こえませんよ。もっと大きな声で言ってください」僕は苛立ったように声を荒げる。
     背後から冷やりとした何かが僕の肩を擦った。そして耳元でソット囁いた。
    「ゥマㇾテ キ テ ゴメンナサイ」

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    30.ステンドグラスの顔

    ペンネーム:真冬のそうめん

    これは今から十数年前、私が大学生になって2年目の夏に体験したお話です。当時私は東京の大学に通っていました。

    人生初の上京と一人暮らしは思っていたよりも大変で、またキャンパスから実家までは電車で4時間ほどかかってしまうという事情もあり、
    最初の1年は年末年始を除いてなかなか地元に帰ろうと思う事はありませんでした。

    ですが、大学の夏休みは本当に長く、去年は東京で一緒に過ごした地方出身の友達も流石に1年以上経って生活に慣れたからか、
    はたまたホームシックにかかったのか、8月の声を聞いてからすぐに地元へと帰ってしまい、下宿先に1人取り残された私はほんの気まぐれで

    「暇だし、今年は夏休みも久しぶりに実家に帰るかぁ」というくらいの軽い気持ちで地元へ帰ることを決心しました。

    朝の9時前には東京を出て、何本か電車を乗り継ぐと、だんだんと見慣れた風景が近づいてきます。ローカル線の車窓から見える海と打ち寄せる波が、
    真夏の強い日差しを受けてキラキラ輝いていました。

    そしていざ地元の駅に降りてみると、私を真っ先に出迎えてくれたのは強い潮の匂いでした。

    東京に居たらまず感じることの無いそれに、改めて自分が住み慣れた土地を離れていたんだという実感と、
    懐かしさのようなものが急に込み上げて来たのを今でもよく覚えています。

    私の実家は駅から徒歩2分ほどの位置にあり、実家のすぐ目の前が海というかなりの好立地な場所にあります。
    風の強い日は外に干した洗濯物が砂や潮でベタベタになってしまうという難点はありますが、それでも、
    二階にある私の部屋のベランダから臨める広大な太平洋の景色を、私はとても気に入っていました。

    実家へは定期的に連絡だけは入れていましたし、また東京を出る時と駅に着いた時に携帯で連絡もしていたので、
    私が家に向かって歩き出すと、すでに家の前には母が出て来ており、私を笑顔で出迎えてくれました。
    (その日、父は仕事でまだ帰っておらず、弟は当時高校生でしたが全寮制の学校に通っていたため、私の帰省中には帰って来ませんでした)

    それから、とりあえず荷物を部屋に置いて、厨房兼居間になっている部屋で母と談笑。
    この時点で大体午後2時くらいだったと思います。


    そのあとは、久しぶりに目にする海を大学の友達にもおすそ分けしようと、大学に入る時に買ってもらったばかりの携帯で
    写真を撮りながらブラブラと海岸を散歩したり、コンビニで夜部屋で飲むお茶を買ったりして、夕食時には大学の話や一人暮らしの話、
    それから軽い世間話などをしながら久しぶりの家族団欒を楽しみました。

    我が家は夜は各々が自分の部屋に戻ってプライベートな時間を過ごしたがる傾向にあったので、
    みんなでテレビを見ながら談笑したりするなんて事もなく、両親は離れへ、私もちゃっちゃと入浴を済ませ二階の自室に籠り、
    ベッドの上で昼間撮った写真を写メールで同じく帰省中の友達へ送り、夜遅くまでメールのやり取りをしながらまったりと過ごしました。

    こうしてその日は何ごとも無く済んだのですが、問題は私が実家へ帰省してから2日目の、あの蒸し暑い夜に起こったのです。

    2日目も、私は特に何をするでもなく母と2人で朝昼兼用の食事をとってから部屋でテレビゲームをしたり軽く私物の整理をしたり、
    当時飼っていた飼い犬と遊んだりと、我ながら自堕落な1日を過ごしていました。

    そして、夕食を食べて入浴を終え、自室に籠って昨日と同じようにメールをしたり漫画を読んだりしてゆるゆると過ごし、
    「さぁ寝ようか」となったのが大体深夜の1時過ぎくらい。私はある事情で真っ暗な部屋だと眠れないタチなので、
    カーテンを開け放って室内に月明かりを入れ、更に常夜灯(いわゆるオレンジの豆球)をつけて、就寝しました。

    あの夜は風もほとんど無く、クーラーをつけてもなんだか蒸し蒸ししてすごく寝苦しかったのを覚えています。

    ベッドでうつらうつらとし始めてからどのくらい経ったでしょうか。
    私は寝るときは仰向けではなく横を向かないと眠れないのですが、突然キーーーンという激しい耳鳴りがして、
    身体がカーテンを開け放った窓(というよりベランダへ出るための大きなガラス戸)の方を向いたまま動かなくなりました。
    所謂金縛りというやつです。


    私は物凄く疲れた日などにたびたびこういう風に金縛りにあう事があったので、その時は
    (うわ、久しぶりの金縛りだー……やだなぁ、たまに変なモノが見えたりするからなぁ)
    くらいのもので、別段気にしていなかったのですが、この日の金縛りはなんだかいつもと少し違いました。

    窓の方を向いたまま、薄眼を開けているような状態で横向きに固まる私。
    窓の向こうにはベランダ越しに見える黒々とした海と、灰色に染まった砂浜が月明かりに照らされて朧げに見えます。

    その黒い海と灰色の砂浜の境目に、何やらモゾモゾと動くものがありました。

    (? なんだろう、あれ……)

    金縛りの最中なので夢か現かは定かではありませんでしたが、視界内で蠢くその謎の物体を私はぼんやりと眺め続けます。
    すると、最初は小さかったそれが、だんだんと大きくなっていきました。


    月明かりに照らされているにもかかわらず真っ黒なままのそれは、ゆっくりと伸び上がり、少しずつ少しずつ体積を増していきます。
    しばらくそれを眺めていると、私はある事に気付きました。

    (……あれ、大きくなってるわけじゃなくて、もしかして、こっちに近づいて来てる……?)

    それが分かった瞬間、私は叫びだしたくなるほどの強烈な恐怖と悪寒に襲われました。
    しかし、それに気づいても、金縛り中ですからどうしようもありません。

    逃げ出す事も目を瞑る事も出来ずに、ただ近づいてくる〝ソレ〟を動かせない眼球で見つめ続けるしかない私。
    そうしている間にも、海から上がってきたソレは、ゆらゆらと不思議な動きをしながらゆっくりと、真っ直ぐに二階にある私の部屋へ向かって飛んできます。

    砂浜から防砂林を越えて、海岸道路を横断しながら風船のようにふらふらふわふわと飛んでくる謎の物体。

    見たくないけど、見ているしかできない……あの時の恐怖は、今も脳裏に焼き付いて離れません。

    そして、どれくらいそうしていたでしょうか、金縛り中なので正確には分かりませんが、その物体がとうとう私の部屋のベランダに到達し
    なんとあろう事か窓をすり抜けて室内に入って来てしまったのです。

    (……うわっ!!?)

    私はその時、声こそ出せませんでしたが、心の中で思わず叫び声を上げてしまいました。
    今まで真っ黒で輪郭すらはっきりしなかった正体不明の謎の物体が、私の部屋に入って来た瞬間、
    急激にその形と色彩を変え、はっきりと視認できるようになったからです。

    私の部屋に入って来た飛行物体の正体、それは、〝大きな人間の頭部〟でした。

    顔はまるで教会にあるステンドグラスのようにひび割れ極彩色に染まっており、ボサボサの長い髪をズルズルと引きずっていて、
    目や口があるはずの部分はマジックで塗りつぶしたみたいに真っ黒。

    それが、微妙に色彩や形を変え、歪に顔のパーツをゆがませて呻き声をあげながら、私の顔をジーっと覗き込んで来るのです。
    視界に映るその異形の物体に、私はもう恐怖のあまり涙が出そうになりました。

    (怖い怖い怖い怖い! やめて消えて来ないでやめて!)

    と、心の中で叫び続けます。目を瞑れず声も出せない私には、そのくらいしか出来ることはありませんでした。

    そうやって私が目の前のステンドグラスのような顔を見つめ続けていると、不意に強張っていた身体から、
    カクンと力が抜けるような感覚がしました。経験上それは金縛りが解ける時の合図です。
    私はそれを直感し、身体にかけていた薄いタオルケットをはねのける勢いで、ガバッ! っと思い切り身体を起こしました。

    するとそこには、寝汗をびっしょりとかいていた以外は、クーラーの鈍い稼働音と遠くにさざ波の音が聞こえるだけの、
    寝る前と何も変わらない私の部屋の風景がありました。

    もちろん、あのステンドグラスみたいな顔の化け物は、部屋の中にも窓の外にも、何処にもいません。

    (……久しぶりの金縛りで、流石にこれはキツいよ……)

    そんな事を考えつつも、あれが夢か幻覚であった事に安堵し、汗で濡れたシャツを着替え、飛び起きた拍子に吹っ飛ばしてしまった
    タオルケットや枕元に置いていた携帯を拾いつつ、若干ビクビクしながらも、今度は窓に背を向け壁の方を向いたまま私はもう一度就寝しました。
    確かこれが夜中の3時過ぎくらいだったと思います。

    そして翌日、何事もなく目が覚めた私は、こういうオカルトめいた話に理解がある母に、早速自分が昨夜体験した金縛りの話をしました。

    私の話を聞いた母は「また妙なもの見たねぇ。でも、金縛りは心霊現象じゃないのもあるから大丈夫だよ」と軽く流しつつ
    「でも、昨夜は私も、なんだか気持ち悪かったなぁ……」と呟きました。

    私が何かあったのかと聞いてみると、母も昨夜「Yが見たような怪物を見たわけでは無いが、風も無いのにふわふわと離れのカーテンがたなびいたり、
    窓の外に人が立っているような奇妙な気配を何回も感じた」と言うのです。

    そうして私たちが客間で「やだね、気持ち悪いね」なんて話をしていると、不意に玄関のインターホンが鳴りました。
    それを聞いた母は「多分荷物かなにかが来たのだろう」と、返事をしながらすぐ応対に向かいました。

    私は客間でテレビを見ながら待っていたのですが、しばらくすると、母が嫌そうな顔をしながら戻って来ました。
    「どうしたの?」と私が聞くと、母は若干言いづらそうにしながらも、今聞いて来た話を私に話してくれました。

    来客は回覧板を回しに来た近所のおばさんだったらしく、少し世間話をしたらしいのですが、そのおばさん曰く、
    今朝すぐそこの海で死体が上がったというのです。しかも、事故ではなく自殺者の死体であると。

    その亡くなった方は地元の人で、前から職場の人間関係がうまくいかず、死にたいとよくこぼしていたという中年の女性のNさん。
    私も直接面識はありませんでしたが、特別支援施設に勤めている、精神を病んでしまったNという方が近所に居るというのは知っていました。

    そのNさんが入水自殺を計ったのが昨日の夜遅く……ちょうど私が金縛りにあい、母が奇妙な気配を感じていた時間とだいたい同じだと
    いうのですから、母が苦虫を噛み潰したような顔になるのも致し方ない事でした。

    私も母も、今までに何度も普通では説明がつかないような怪奇現象に遭遇した事のある人間だったので、昨夜の出来事も単なる夢や気のせいで片付けられず、
    しばし眠れない夜を過ごしましたが、それからは何ごとも無く数日が経ちました。

    そして、私がいよいよ下宿先に帰ろうという段になり、あの怪物を見た夜の事も薄れ始めた頃……
    終わったと思っていたあの金縛りの件を蒸し返すある出来事がありました。

    東京へと帰るあの日、私は地元へ来た時と同じように荷物を抱えて駅への道を歩いていました。
    両親が駅まで見送りに来てくれ、仕送りの事や母の「何か困りごとがあったらすぐ連絡をするように」
    などのお決まりの言葉を聞きながら、私は東京へ向かう電車へ乗りました。

    当時、私は携帯電話の携帯充電バッテリーを持っていなかったので(携帯式のバッテリーがあまり一般に普及していなかったのか、
    単に私が存在を知らなかっただけなのかは分かりませんが)緊急時に備えて電池の無駄使いはしないようにしようと思いつつも、
    いざ離れるとなるとやはり久しぶりの地元が恋しくなってしまい、私は電車に揺られながら滞在中に撮った携帯の写真を眺めていました。

    陽光を反射して光る海の写真や近所の人懐こい野良猫の写真。それから、駅向こうに見える緑が茂る山々の写真。

    友達に見せる用とはいえ「我ながらうまく撮れたじゃないか」と私が1人悦に入っていると、
    ここ数日で撮影した写真の中に、一枚見覚えのない写真がある事に気付きました。

    その写真は、一見すると画面全体が真っ黒で何も写っていないように見えますが、よく見ると、画面の左上辺りにオレンジ色の半月?のようなものが写っていました。
    なんだろう?と思い、その画像を選択し、撮影された日付けを確認してみると、私は驚きのあまり思わず携帯を取り落としそうになってしまいました。

    その写真が撮影された日付けと時間は今でもはっきり覚えています。

    『20XX/08/04 AM :02:52』

    あの日のあの夜、私が不気味な金縛りから飛び起きて時計を確認したのが大体3時過ぎだったので、ちょうど金縛りにあっていたと思われる時間でした。

    電車のボックス席で1人その事実に戦慄していると、私は更に写真に写っているオレンジ色の半月がなんなのかも
    すぐに思い当たりました。それは私が毎晩つけている常夜灯の光でした。

    でも、それはおかしいのです。だって、常夜灯は豆球ですから。もしそれが写っているのだとしたら、半月ではなく丸く写るはずです。
    なのに、それが半分しか写っていないという事は……

    「……ぅわ……!」

    そこまで思い至ると同時に、私は咄嗟にその画像を削除してしまいました。今となっては「心霊現象のいい証拠になったかもしれないのに、失敗したな」と
    少し思っていますが、当時は本当に吐き気がするほどの恐怖に襲われ、それどころではなかったのです。

    常夜灯の光が半分しか写っていないとするならば、常夜灯と私の携帯のカメラの間に、何か遮蔽物があったという事になります。

    オレンジ色の丸い光を遮る黒い何か……

    陽光が差し込む電車の中で確認したのでよく見えなかったというのもありますが、もし暗いところで写真をよく確認していたら……
    そうでなくても、パソコンにデータを取り込み、あの写真の明度や輝度を上げてみたら……

    果たしてそこには、私があの夜見たステンドグラスの顔が、私の顔を覗き込むように浮かんでいたのでしょうか?

    それとも単に私が寝ぼけて、金縛りの最中に変な写真を撮ってしまっただけなのでしょうか?

    十数年経った今でも、真相は闇の中です。

    以上が、私が今までの人生で体験した中でも、間違いなくベスト5に入るであろう恐怖体験です。

    長くなってしまい申し訳ございません。ここまでお読み下さりありがとうございました。

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    31.真夜中の足音

    ペンネーム:赤猫

    私が高校生のときに体験した話です。
    私は ソフトテニス部に入っており、
    ある夏、部の合宿に参加することになりました。
    朝からみっちりトレーニングをして、夕方は勉強会、
    そして学校の敷地内にある合宿所で就寝しました。
    合宿所は、狭い中庭を挟んで校舎と向かい合っており、その横にグラウンドが広がっていました。
    学校自体、高台をバスで登っていったところにあるので、
    周りは民家もなく夜はとてもひっそりしていました。

    昼間のトレーニングで身体は疲れ、陽に焼けてかなり眠いはずなのに、
    私はなかなか寝付けずにいました。
    それでも 部のみんなは同じ部屋ですでに休んでいるので、
    なんとか眠ろうと横になっていました。

    何時かはわかりませんが、深夜となり。
    合宿所と校舎に挟まれた中庭を、
    グラウンドのほうへ歩いていく足音が聞こえてきました。
    ジャッ、ジャッ、ジャッ、ジャッ…

    夜回りの先生か 用務員さんか、
    こんな深夜に?
    不思議だなぁと思いましたが、あまり気にしませんでした。

    そしてまた眠れないまま 瞼を閉じてじっとしていると、
    一時間ほど経った頃でしょうか、
    先ほどと同じ
    ジャッ、ジャッ、ジャッ、ジャッ…
    まったく同じ足音が、合宿所前の中庭からグラウンドのほうへ向かって行くのです。

    …また夜回り?そんな必要ある?
    それとも何か作業が続いていたのだろうか、
    でもこんな夜中に?
    気になりつつも、そのまま横になっていました。

    それから一時間ほど経って。

    ジャッ、ジャッ、ジャッ、ジャッ…

    その足音は、先ほどの2回と同じように
    また中庭を通って グラウンドのほうへ消えていきました。

    …どう考えてもおかしい。
    なぜか、その足音は 毎回近くから遠くへ過ぎ去っていくけど、
    帰ってくる音は一切聞こえなかったのです。
    もしかしたら、グラウンドから 遠回りに中庭へ戻ってきていて その音はこちらに聞こえてないのかもしれない。
    でも、こんな夜中になんで何回もグラウンドへ向かう必要がある?
    警備の話なんて 聞いたことがない。

    そして。
    その足音は、普段 野球部員の男子たちが履くスパイクの足音と明らかに同じだったのです。

    わざわざそんなものを履いて夜中にグラウンドに行く人がいるとは考えられません。
    もしかして、やっぱり…

    スパイクを履いた透けた足元が 合宿所の前を通りグラウンドへ向かうところを想像し、
    体がこわばりました。
    音がした時に 合宿所の窓から覗けば、その姿を見ることができたかもしれません。
    でも怖くてできずにいるうち、私はいつのまにか眠りに落ちていました。

    数時間後、朝となり合宿所で部員たちと朝食をとっていました。
    すると近くで部員数人が話している声が聞こえてきました。
    「野球部員…」
    「スパイク…」
    「足音…」

    心当たりのある言葉が 彼女たちから聞こえてきた時、
    ああ、他にも聞いていた子達がいたんだなと思いました。

    その高校は その後しばらくして移転し、
    跡地には老人ホームができる予定だと聞きましたが、ずいぶん長い間 校舎が建ったまま放置されていたように思います。
    夜だれもいないあの暗い中庭を想像するたび、
    例の足音が頭の中に響いては遠ざかっていきます。
    あの足音の主は 高校がなくなったあと どうしたのかなぁと
    今でもたまに思い出しています。

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    32.従兄弟と叔父の話

    ペンネーム:はやぶさ

    怖くは無いですが、私の叔父(父の兄)と従兄弟(叔父の息子)の話をさせてください。
    従兄弟は賢治(仮名)とさせてください。

    私と賢治は同じ県内に住む同い年の同姓というのもあって、子供の頃から本当に仲が良かったです。

    正月やお盆だけじゃなくて、休みの時には家族で叔父の家に遊びに行ったりする事もあって、とにかく家族同士で交流が多かった。

    まだ携帯の無い時代でしたから、個人的に連絡を取り合う事はなかったですが、叔父の家に行って賢治や他の従兄弟たちと遊ぶのを子供の頃は本当に楽しみにしていました。

    中学に入ってから賢治が調子を崩したという話を母から聞かされました。ご飯があまり食べられないらしいと。

    私も『マジで?あいつどうしたのかね?可哀想に』くらいの感じでいたと思います。

    それから久々に会った時に随分痩せたなとは感じましたが、本人も平気だと言ってましたし、あまり深く聞くのもアレだしなと思い、子供ながらに気を使って明るい話をしたと思います。

    後から聞いた話では拒食症気味だったらしいです。

    高校生になってからは友達と遊ぶことやバイトに明け暮れて、正月に叔父の家に行ったりするのも億劫になっていきました。

    賢治に関しては高校生になっても依然として体調が悪い事も多かった様で、学校で倒れたりする事も多々あった様です。

    私は高校を卒業後は上京して、親の呪縛からも解放されて大学やバイト先の仲間や彼女と本当に楽しい時間を過ごしていました。

    今思えば人生でも屈指の楽しい時間で、実家にもほぼ連絡はせず当然賢治の事なんてほぼ考える事はなかったです。

    20になった年の年末に実家に帰った際に母から

    『年明けにおじさんの所に行って賢治に会ったら相当参っちゃってるみたいだから、元気づけてあげてね。ビックリしない様にね。。。』

    と言われて、あいつそんなにヤバいのか?と思いましたが、実際会って結構ショックを受けました。

    もうガリガリで声も小さく震える様に絞り出してる感じでしたし、何より20歳の男が皆の前でお母さん(叔父の妻)と手を繋いだり時折抱き着いたりしている事に心底驚きました。

    『賢ちゃん大丈夫大丈夫!怖いくないから』とか言われて体を擦られたりしてもいました。

    (あぁ。。こいつこんな酷い事になってたのか。。こうなる前にもっと何かしてやれる事なかったのかな?)と思って後悔した事を覚えています。

    それからしばらくして賢治は投身自殺を図りこの世から去りました。

    母からその電話を受けた時は驚きましたが、あの状態ではそうなってもおかしく無かったんだろうなとも感じました。



    私が知らなかっただけで賢治は高校を出た後は精神病院に入ったり自殺未遂をしていたり色々大変だったそうです。

    それからはお正月やお盆なんかに叔父の家に集まっても、賢治の話は皆が自然と避けてましたし、叔父たちもそれには触れませんでした。

    どうしたって暗くて悲しい話になってしまうから。

    皆で集まって思い出話として賢治の名前を出したり出来る様になったのはそれから5年くらいはかかったと思います。

    彼が居なかった様に振る舞うのは皆も心苦しかったし、楽しかった思い出話なんかを出来る様になって私も嬉しかったです。

    それから更に数年が経ったある日、叔父が旅行に行ってきたとお土産を家に届けに来てくれました。

    今でもよく覚えていますがよく晴れた気持ちが良い日曜日の午後でした。
    そんな爽やかな休みの日に、いっつも真面目で誠実な感じの叔父が

    『そういえばさ〜、賢治が高校生の頃変な事言い出した時期があってさ』とホントに何気なく切り出してきました。

    内容は賢治が幽霊みたいなモノが部屋に出ると必死に訴えて来たというものでした。

    夜中に赤ちゃんが泣きながら這いずって来て家の前でずっと泣いているとか、男の人が部屋に入って来て自分を睨みつけて来るといったもので、

    叔父が突然真顔で心霊話をし出すので、私も両親も、え。。?みたいなテンションでした。

    賢治はそれに相当悩んでいたそうで、学校でもあらゆる人に霊をどうにか出来る人を知らないかと聞いて回っていた様です。

    そんな中で仲が良かった訳でもない他のクラスの女の子が、親戚の知り合いならそういう人がいるという話を持ってきてくれたそうで、

    そんな状態なら話を聞いてもらえるか頼んでみるよと。

    叔父も半信半疑でしたが、賢治がどうしてもと頼むのでその女の子を伴って車で5時間近くかけてその霊感がある人のお宅まで赴いたそうです。

    その子が一緒に行ってくれた理由は賢治が調子が悪いのは学年でも有名で心底心配して優しさから付いてきてくれたみたいです。

    近所に親戚の家もあるし私が紹介するんだからという事で。

    結局その霊感のあるという方に会って言われたのが、最近部屋をいじらなかったか?何かしたでしょ?という事だったみたいです。

    叔父には思い当たる節が合った様で、その現象が起きる直前に賢治が相当精神的に参っていた事もあって、賢治の姉が使っていた部屋をリフォームして賢治の新しい部屋としたそうです。

    私も知っていますが姉ちゃんの部屋は賢治の部屋より二畳広くて日当りが良かったから。

    壁紙を張り替え賢治の部屋からタンスを持って来たという話をその方にすると、帰ってそれをどかしなさいと言われたそうです。

    霊の通り道を塞いでるんだとの事で。

    家に帰ってから叔父夫妻でそのタンスをどかしたら、三か月ほど前に張り替えたまだ綺麗なはずの壁紙に黒い手の跡がビッシリと付いていたそうです。。

    タンスを賢治の部屋に戻してからその現象はピッタリと止んだそうです。

    先にも書きましたがこんな変な冗談を言う人では無く、子供の頃からよく知っている叔父が凄く気持ちの良い日の午後にこんな不気味でよく分からない話をしてきた事に私たち家族は凄く驚きました。

    叔父も『何だったのか結局わかんないわ。俺らは何も聞いてないし。ただ真っ黒い手形が沢山ついてただけって話なだけだけどさ』とサラリと言っていました。

    私は霊など信じてきませんでしたが、叔父が真顔でこんな話をしてきた事で何かそういった事が本当にあるのかな?と思う様になりました。

    オチもありませんが私にとっては不気味な話でした。

    霊と賢治の自殺の因果関係は分かりません。そもそも病みだしたのは中学の時の人間関係が原因の様ですから。

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    33.お化けマンション

    ペンネーム:でんちねこ

    もう十数年以上昔の話。
    学校を卒業してすぐ、田舎を出てS市で独り暮らしを始めた。
    市の中央部から地下鉄で10分ほど離れた駅そばのマンション2階の一部屋。
    その部屋の大家さんは、やさしい老夫婦だった。娘が昔使っていた部屋だと言っていた。
    地下鉄の駅のそば、周りにはスーパーもコンビニも銀行もあり、地下にはコインランドリー付き。それなのに2万7千円という破格の家賃だった。
    その上、以前に娘さんが使っていたが今は不要だから、という理由で古い冷蔵庫までくれたのだ。本当にいい物件を見つけた!と、母と喜んだ。

    仕事にも就き、はじめての事がいっぱいの独り暮らし。
    小さな部屋だったけれど、最初は期待で胸がいっぱいだった。
    でも、その家はなにか変だった。

    金縛りは日常茶飯事。
    ベッドにゆっくり上がってきて、わたしの頭の方に向かってくる何かを見ないように、せめて目を開けないようにすることで必死だった。
    そいつの重みはすごくリアルで、太ももや体が押しつぶされて痛い。ものすごく痛く強く手を握ってきたりもする。
    横向きで寝ていたときには、後ろから思いっきり抱きつかれ絞められ、気持ち悪くて逃げたいのに全く動けない。苦しくて怖くて息ができなかった。

    その他にも、なにがしたいのか全く意味不明だけど、上の階というよりは、天井からよく足音が聞こえた。コツコツコツコツ・・長い時間、
    かかとの高そうな靴でグルグル部屋中を歩き回る足音。これが聞こえるときは金縛りにはならなかったけれど、あまりに響く大きな足音で
    やっぱり普通ではない感じがして怖かった。

    突然電気が消えたり、突然テレビが消えたりついたりすることもしょっちゅうだった。
    玄関のドアの向こう、床とドアの細い隙間から、誰かがずっと立っている足の影が見えていることもあった。
    そういうときは息を殺してじっとしている以外なかった。


    一番気が滅入ったのは、いつからかほぼ毎晩やってくるようになった「気配」。
    毎晩夜2時頃になると、廊下の奥からミシ・・ミシィ・・と、ゆっくり居間の方に向かって足音が近づいてくる。
    そいつ、(多分女)は居間の手前、冷蔵庫の前、ちょうどベッドから死角になって見えないギリギリの位置で立ち止まり、とにかくずっとそこに立っている。(分かりやすいように、わたしの部屋の簡単な間取りを載せておく。間取りの赤丸の位置。)

    お化けマンション

    向こうも息を殺しているような雰囲気で、でも確かに「いる!」という気配がするのだ。
    それ以上こっちに来ないでくれ!という思い。もし、そちらを見てしまったら、顔だけ壁から出してこちらを見ているそいつと目が合ってしまいそうで、
    どんなことがあってもそちらを見てはいけない!という思いから、いつも汗だくになりながら、明るくなるまで布団の中で丸まって固まっていた。
    そいつが来た翌日は、必ず廊下の真ん中に水溜まりができていた。あの水がどこから来ていたのか未だに分からない。
    彼氏と寝ているときにもそいつは来た。彼氏も目を覚まし「家の中に誰かいるよ・・」と怯えていた。

    あまりに怖くて、眠れなくなり、その頃から酒を大量に飲むようになった。
    泥酔してほとんど気絶状態になって眠ると、夜中に目覚めることもそいつの気配に気づくこともなくなった。
    その代わり朝起きれなくなり、仕事に遅刻することが増えた。部屋の掃除ができなくなりゴミ屋敷のように部屋は荒れた。

    生活も乱れ、あまりにも怖く、何度となく母に電話で「引っ越したい」と話した。その度に母は「絶対ダメだよ。そんなにいい場所でそんなに安いところなんてないんだから」と、わたしを止めた。
    そんな母なのに、うちに泊まりに来ると「あんたの家にいるとやる気がなくなる」とよく言った。

    ある日、仕事から帰ると洗面所の壁についている大きな鏡が落ちて割れていた。ねじが錆びて外れていた。そんなことってあるのだろうか。その洗面所のドアは、入っていない時にしょっちゅう勝手に鍵がかかり、外から開けるのに苦労した。

    マンションが古いせいだろうが、蛇口をひねれば、出てくる最初の水は決まって錆を含んでおり、文字通り赤い水だった。
    今思えば、窓が小さいせいもあっただろうけど、部屋はどうしても薄暗く、
    わたしが掃除できなくなればなるほど、もっと暗い感じを増していった。
    小さなゴキブリもたくさん出た。
    とにかく気持ち悪くて居心地の悪い部屋だった。
    そんな部屋なのに、母に引き留められながらわたしは5年も住んでしまった。

    ある日、裁判所から手紙が届いた。
    大家さんが失踪したという。持ち主の権利をどうとかの話で不動産屋が出てきたりして、これをきっかけにわたしは引っ越すことを決めた。
    もう限界だった。

    いちばん仲の良い友達が引っ越し前の掃除を手伝ってくれた。掃除の最中、わたしがドアにベタベタ貼っていたステッカーを一緒に剥がしてもらった。
    彼女はその夜夢を見たという。
    「〇〇んちでね、ステッカー剥がしたでしょ。だからだと思うんだけど、夢の中でも剥がしてるんだよね。
    でも、その夢の中のってステッカーじゃなくて全部お札なの!で、ドアの向こうにおじいさんとおばあさんが立っているのを知ってて、なんかすっごく怖いの」
    わたしは、大家さんの老夫婦、また娘さんの詳細については一切知らない。だから、あらゆる怪現象と、あのご家族が関係あるのかないのかも全く分からない。

    とにかく新しく引っ越した部屋は、まず空気が違って本当に気持ちがよかった。窓も大きく、太陽光が部屋にいっぱい入り明るかった。
    もう嫌な夜を過ごさなくていいと思うと、本当にうれしかった。
    荷物を解く作業が少しひと段落し、やっと落ち着いて腰を下ろした。わざわざ手伝いに来てくれていた母に
    「お母さんにダメダメって何度も言われたから、ほんっと我慢したけど、やっと引っ越せたよ」と言った。
    そんな母の返事、これが本当に一番怖かったこと。
    「お母さん、引っ越したらダメなんて、一度も言ったことないよ?」

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    34.駅のエレベーター

    ペンネーム:澪

    一緒に飲み会に行った友達がちょっと一人で帰すの無理そうなくらい泥酔してて
    その場に女はその子と自分だけだったので、私はその友達を自宅に連れて帰ることにした

    三駅ほどの間に、友達は電車の中ですっかり寝入ってしまった
    終電間際のホームに降りると他の客も駅員の姿も見えない
    改札があるのは向こうのホームなので半分寝ている友達をなんとか歩かせて
    (やっぱりタクシーを使えばよかったかな)
    って軽く後悔しつつ階段に向かった

    その手前にエレベーターが設置されている
    普段は気にもとめないけれど、今日に限ってはコレを運ばないといけないし使わせてもらおう
    そう思ってボタンを押した
    エレベーターの扉が開いて友達を押し込む
    その酔っぱらいを適当にあしらいつつ、『閉じる』のボタンを押すと
    「ドアが閉まります」
    ってアナウンスとともにゆっくり扉が閉まる

    が、途中で何かが引っかかったように扉がトーンと開いた
    誰か入ってくるのかと一瞬待ってみたが、誰の気配もない
    (あれ?おかしいな)
    と思いもう一度ボタンを押す
    ゆっくりと扉が閉まり、閉じきる前にまたはじかれたように開く

    扉の周辺になにか挟まっているわけでもなかった
    なんだろうって思っていると、後ろで友達がケタケタ笑いだした
    (あぁこいつか)
    エレベーター側面の低い位置にも操作盤がある
    「そこ、スイッチ当たってるから」
    しぶしぶよけると無駄に人ひとり入れる程度のスペースが空いて
    やっと扉は閉まった

    二階にはすぐに着いた
    「ドアが開きます」
    ってアナウンス
    扉がゆっくりと開くその途中で、今度はすぐに止まった
    二十センチくらいしか開いていないのに
    「ドアが開きます」
    アナウンスが繰り返される
    また何かやったのかと思って振り返ると
    友達は両手のひらを前に向けてフルフルと横に首を振った
    どうやら酔いも覚めてきたらしい

    カチカチと『開く』のボタンを押すと、ゆっくり少しずつ開いていくように見えた
    その間もアナウンスは壊れたように繰り返される
    「ドアが開きます」
    異様な空気に心臓が高鳴る

    その時、開き始めた扉と床の間に
    黒い何かが挟まっているのに気づいた
    だんだんと広がっていくそれは
    頭頂部、人の頭の鉢だった
    人間の頭の両目から上が床から生えている
    髪の隙間から見える頭皮にジクジクと血が浮いているのが分かる
    ありえない光景に叫び声をあげると、同じものが見えているのか
    友達が後ろから抱きついてくる

    床からわいて出る頭は
    ゆっくり
    少しずつこっちに寄ってくる
    後ずさりしようにも狭い密室
    それも後ろから押さえられていては逃げられもしない
    「ちょっ、離して!」
    慌てて抱きついてきた腕を取って身をよじる

    真後ろじゃなく、斜め後ろでおびえてる友達と目が合う

    じゃあこの腕だれ?
    筋肉質で毛深い男の腕だった


    パニックになり、気付くと改札機に引っかかって泣いてた
    「すいません、この子酔ってるんで」
    って隣で改札口にいた駅員にフォロー入れてる友達に
    「アンタが、オバケが」
    って言いながらわんわん泣いている私
    客観的に見ればたしかにタチの悪い酔っ払い以外の何者でもない

    聞けば、友達は私の後を追って逃げてきたらしかった
    私は開きかけのドアを両手でこじ開け、すごい勢いで駆け出していったのだと言う
    自分ではずっと悲鳴を上げてたってことしか思い出せなかった

    「あの頭どうなったの?」って聞くと
    「あんた踏み潰してたでしょ」って言われて
    二人で仲良くうずくまって道端のドブに吐いた

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    35.赤めだら

    ペンネーム:トミヒロ

    私(トミヒロといいます)の実家は、いま思うとそうとうヤバい家でした。三陸地方の沿岸にあるK市のはずれにあって、両親と祖母が米屋をやっていたのです。明治の中ごろから続く古い店で、私の父親で3代目でした。この話というのは、私が小学校5年生のとき(昭和50年)のことなので、昔すぎて申し訳ないのですが、あまりに鮮明に覚えているのでここに書いてみようと思います。

    実家の米屋は古い木造2階建てで、1階の店舗の裏側には、別棟続きで仏間と両親の部屋がありました。
    幼い頃は両親の部屋で寝起きしていた私も、だんだん自分の部屋がほしくなります。
    そうしたところ、店舗の2階はもともと米を精米するための機械室だったのですが、精米の仕事がなくなったのを機に、改築して広い和室をつくることになりました。真ん中を襖で仕切って、奥の部屋は祖母の寝室、手前の部屋は私が使っていいということになりました。
    自分の部屋といっても、襖で仕切られただけだから、物音は筒抜け。でも、フカフカのベッドや勉強机、中古のオーディオセットを手に入れて、自分なりに部屋をレイアウトするのが楽しかったのを覚えています。
    「トミヒロや、ベッドはそっちの方さ向げだらダメだ」って、祖母がうるさかったけれど、いま思えば“北枕”
    だったからなのでしょうね。「いいだろべつに! 自分の部屋なんだから」って、私は聞く耳を持たずに、かまわず北枕で寝ていました。そして、ある晩、怖い夢を見たのです。

    1階にある両親の寝室の手前には仏間があって、りっぱな仏壇と先祖の写真が何枚も飾ってあります。夢のなかで、私はその部屋の入口に立って部屋のなかを見ているのです。すると、ドーン、ドーン、ドーン、ドーンっていう、太い和太鼓の音というか、空気の振動というか、なんとも説明しづらい痺れるような衝撃が伝わってきて、身体が硬直して、その場からまったく動けないのです。
    動こうとすれば、身体がカーッと火照るようになる。怖くなって取り乱した気持ちでいると、仏壇の裏に通じる扉ががサーッと開いて、目には見えないけれど、何かの気配だけが、自分に近づいてくるのです。私は、(あぁ、幽霊がくるんだ。幽霊は本当にいるんだ)って思いながら、 必死で逃げようと力を込めます。ドーン、ドーンという、さっきから続いている衝撃も、全身にのしかかるように重くなって、私は「だずげでっ!」と、声にならない大声を振り絞りました。そこでハッと目が覚めて、金縛りも解けたのです。(夢か、そりゃ夢だな)と、あまりのリアルな感じに汗がじっとりしたような、いやな気分でした。

    ところがこれ以来、そういう怖い夢をよく見るようになって、そのたびに金縛りになってしまいます。ただ、
    「助けて!」と力を振り絞って叫べばなんとか目が覚めるので、どうせ夢なんだし(金縛りにあっても大丈夫)くらいに考えていました。
    しかし、その夜だけは、違ったのです。私はやっぱり夢のなかで1階の仏間に立っており、幽霊が出てくると感じたところで「だずげでっ!」って大声を上げて、(あぁ、また金縛りだったんだ。目が覚めてよかった)と思って目を覚まし、薄暗い自分の部屋で、ベッドに寝ている自分を確認しました。
    すると、覚醒しているにもかかわらず、部屋の外、階段の下から、あの仏壇の裏にいる「気配」が、1段1段上ってくるのがわかったのです。ほの暗い静寂のなか、そいつは、1歩階段を上るたびに、「バリーン」という電気が放電するようなすさまじい音を放って、「バリーン、バリーン」と徐々に部屋に近づいてくるのです。私の身体は、ベッドに横たわったまま、まったく動きませんでした。いつの間にかまた金縛りにあい、声も出ない状態。しかし目は開いていて、階段に近い障子の入口をじっと見つめていました。
    すると、その障子がスーッとあいて、黒い人型のようなものが、のそっと部屋に入ってきたのがわかりました。もう放電のような音はしていませんでしたが、私は重苦しい痺れを感じ、その黒い人型が、寝ている自分にのしかかってくるのがわかりました。私は、あまりの恐怖に、大声を絞り出したつもりですが、そこから記憶がありません。
    祖母にゆり動かされて目が覚め、「トミヒロ、大丈夫か? 夢でも見たか? うなされでだぞ」と言われました。
    隣の部屋から心配して見に来てくれたようです。でも、(いまのは夢じゃない)と思ったことはよく覚えています。

    そんな恐ろしい体験が続いていることを母親に話したら、「疲れているときに胸に手を置いて寝ると、金縛りにあうんだよ。幽霊なんているわけない」と、笑って取り合ってくれません。ところが祖母は、「その夢に出てきた黒い化け物は、男か女か? 顔は見なかったか?」と、真剣に聞いてきます。
    そして祖母は、「この家には何かいる。オレもな、それ見たわ。バリン、バリンって、部屋に近づいてきてな、布団の足元のところに立って、じっとこっちを見てんだ。何だべ、このおっかねー黒い影はって、目を凝らして見ると、オレの胸の上に立って上がってきてさ、両腕をつかまえられで、ぎゅーっと引っ張られるのさ。胸が苦しいし、恐ろしいし、見ればその影は、上半身が裸で、顔から胸まで“赤めだら”(火傷などで赤く焼けただれた意味)の男だった」と、言うのです。
    私も祖母も、実家にいる恐ろしい男の幽霊の存在を確信しました。祖母と相談して、私はベッドの方角を東向きに変えたり、枕の下にお守りを置いて寝るようにしました。すると不思議にそれ以来、怖い夢をみることがなくなったのです。ただ祖母だけは、たまに「またあの“赤めだら”が来た。おっかねぇ」と話すことはありました(頻繁ではありません)。

    中学生、高校生と成長するうちに、私は自分の体験も祖母の体験も、じつはすべて夢だったのではないかと考えるようになりました。おそらく2階の部屋がかつて精米の機械部屋だったことが、何か潜在意識に音や振動で影響しているのではないかと結論づけたりしました。その話は祖母にもしましたが、「いやいや、何がいる」と聞きませんでした。

    その祖母も亡くなり、平成元年ごろのこと、東京で公務員をやっていた父の弟が突然実家に電話をしてきて、こう言いました。「いろいろ災難が続くんで、嫁がどうしても祈祷師に見てもらおうっていうんで、ある祈祷師を訪ねたら、『あなたの実家に悪いのがいる。火事で何人も死んでる』って言われてさ、必ずお祓いをするように言われたよ」とのこと。私の父はその話を聞いて、明治時代からある実家で火事の経験はなく、あり得ないと、笑って済ませたそう。
    ところがその後、市役所に家の登記を調べに行った父が青い顔をして帰ってきて、母親にこんな話をしたそう。
    「おい、この家の住所には、登記上、ウチ以外にも家がもう1軒建ってることになっていたぞ。昔、火事で焼失した家が、手続のミスでまだ存在してることになってたんだ。死人もあったらしいが、そんな土地に、この家を建ててしまったらしい」。
    というわけで、叔父が話を聞いた祈祷師の話は、ズバリ本当だったのです。そして、祖母の元に現われたあの“赤めだら”の男も、じつはかつてあった自分の家を徘徊していたに違いないのです。

    このあと、さらに家にまつわる不思議な事実が続くのですが、その話は、またの機会に。仏壇の裏側と、両親の寝室にはさらに秘密がありました。いろいろヤバイけれど、長すぎるのでこのへんで。

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    36.呪具

    ペンネー:那須しめじ 最近、ひと段落ついた話。あやふやだが、良ければ読んでくれ。

    実家暮らしの俺の家に、彼女(Y子)が初めてきた時のことだ。Y子が

    「あれ、なんか変な感じがする。」

    と言い出した。そういえば霊感があるとかなんとか言ってたな、と思って半信半疑ながら、

    「え、どんな感じすんの?」と聞くと、

    「ここら辺が、なんかモヤモヤする…」

    と、俺の部屋の押入れを指差した。

    Y子に言われるまま、ものがめちゃくちゃに詰め込まれている押入れを掘り返していると、「あっ」と、Y子が叫んだ。Y子の指差した先に、お菓子か何か入っていたであろう、缶があった。

    「なんだこれ…」

    明らかに異様だった。その缶の周りにあったもの、服とか他の小物とかが全部黒ずんでいる。

    「それヤバイよ…なんか、すごいのが入ってる」

    とY子が青ざめる。俺はおそるおそる缶を開けると、中には昔遊んだおもちゃや安物のアクセサリーが詰まっていた。それらも昔とは違って全て錆びたように黒ずんでいる。中のものを全部出してみると、一つだけ黒ずんでいない、ネックレスがあった。緑色の宝石のようなものを包むように、銀でできた飾りが付いている中々値段のしそうなもの。俺が小1の時に道端で拾ったのを思い出した。

    「それ、ほんとにやばいよ。こんな(他のものが黒ずむ)こと、絶対ないし。警察に届けるか、お寺に届けるかしたほうがいいよ!」

    「いやでも、俺自身、これがある部屋に何年も住んでたけど、別にこれといってなんもなかったぞ。」

    「いやいや、絶対どっかやったほうがいいって!」

    そういうと、Y子は俺の手からネックレスを奪った。

    「知り合いのお寺の人に見てもらう」

    とそのまま自分のバッグに入れてその日は雰囲気もないのでお開きになった。


    数日後、Y子が自殺した。

    突然のことに全く頭が回らなかった。理由も思い当たらないし、そもそも前日まであっていたのにそんなそぶりは一切見せていなかったからだ。しかし、Y子は明らかに自分で首を吊って死んだらしく、他殺や自己の疑いは全くなかったという。

    遺品整理を行うため、Y子の部屋に行った。その時、あの時と同じように、周りのものがうっすら黒ずんでいる小箱を見つけた。

    嫌な予感がして、それを勝手に持ち帰って開けてみると、異常な匂いがする。中にはあのネックレスが、内臓みたいなものに巻き付いて入っていた。

    「うわっ…」

    見た瞬間、これにY子は殺されたんだと確信した。しかし、なぜこんな状態になってY子の部屋にあるんだ?
    どちらにせよ、どう見てもやばいものなので、近くのお寺の坊さんに持っていった。

    「ああ、」

    と、一目その箱をみて言われる。

    「とんでもない力を持ったものが入ってますね。うちで預かって、払える人のところに届けたいんですが、あなた自身もその影響を受けているので、今すぐ一緒に行きましょう。」

    と、有無を言わせずに坊さんの車に乗りこまされる。そのまま何時間か車に揺られて、田舎の大きな屋敷に連れていかれた。

    そこには、20歳後半くらいの細身の男性がいた。名前は教えてもらえなかったがまあ仮にXとする。

    Xいわく、「よくはわからないが、Y子さんがその呪具でなにかしらの神様のようなものを生み出そうとしていた可能性がある。人間では払えない。近くの山にそれを祀っておくので、影響を受けたあなたも月に一度山に来てくれ。」と言われた。俺自身も定期的にお祓いを受けなければいけないのは、その呪具と俺がなにかしらのつながりを持っており、俺自身もその呪具の一部となっているかららしい。

    その日は呪具を預けて、簡単なお祓いを受けて終わった。

    数日後、スマホにY子から「会いたい」というメッセージと、黒と赤の絵の具をぐちゃぐちゃにまぜたような画像が送られて来た。

    「…なんで…」

    削除しても、またすぐに送られてくる。俺はただただ恐ろしくて、スマホに近づかないようにした。

    道を歩いていると、知らない人から手を合わせて拝まれる時もあった。意味がわからず、呆然と立ち尽くすことしかできなかった。怒る気にすらならなかった。

    確実に何か悪い方向に進んでいることだけは分かる。

    そんなこんなを、あの時の坊さんに話すと、あれから一週間も経っていないが、またXのもとに行くことになった。

    Xいわく、「想像以上にやばい」ことになっているらしい。三人で、呪具を祀っている場所へ行くとお菓子や花などが山のように供えてあった。

    「これはほんとに大変なことになった。このままだとあなたの生活に支障が出る。できるかどうかわからないが、あなたの中にあるその神様みたいなものを切り離す」

    Xはその後、坊さんの寺でお祓いを行なった。俺が部屋の中央に座って正座をして、Xが何か唱える。だが、お祓いが始まって数分で、俺の意識はとんだ。

    次に意識が戻った時は、電車らしきものの中にいた。『らしき』というのは、そこら中にお札が貼られており、自分が乗っている車両以外は真っ暗でなにも見えないからだ。明らかに普通の電車ではない。前に走っているのか、後ろに走っているのかもわからない。ただ、がたんごとんと揺れている。

    状況が全くわからなかった。怖さに体の震えが止まらない。なにが起きるのか、ここから出られるのか。俺はただ縮こまって、隅で震えていた。

    うぉぉぉおおお……

    唸りのような、お経のような声が車両の周りを囲む。
    その瞬間、ちかちかと天井の明かりが点滅しだした。
    点滅ごとに車両は真っ暗になり、パッパッと、車内が照らされる。

    パッ、パッ、パッ、パッ……

    暗くなって、また明かりがついた時、
    背の高い、黒服の女が現れた。

    髪はボサボサで顔は見えない。だが、車両の真ん中で仁王立ちするようにして、俺を見下ろしているのはわかった。

    パッ、パッ、パッ、パッ…

    また点滅して、今度はその女の前に正座した白い着物こ少女が現れる。つまり、俺の目の前だ。少女の口は太い紐で痛々しく縫われていた。
    少女は、俺をじっと見つめた。

    そのまま、いくらか時間が経った。
    がたんごとんと車両が揺れるだけ。
    俺は叫びそうなのを必死で手で押さえて堪える。目は目の前の異様な女二人から離せなかった。

    しばらくたって少女の縫われた口から、血が滴り落ちてきた。血は少女の顎を伝い、床に落ちて、俺の足にまで広がった。

    少女がにんまりと口を曲げる。恐らく笑っているのだろう。

    そこで意識が飛ぶ。

    目を覚ますと、俺は病室にいた。後から来た坊さんの話によると、お祓いの最中にまず俺が倒れ、次にXが叫んで外に飛び出していった。俺はそのまま病院に連れてこられたそうだ。

    俺と呪具の切り離しには成功したようだ。だが、Xはあのお祓いの後、そのまま行方知らずとなったらしい。
    山のお供え物もなくなったらしく、俺も退院した後、知らない人から拝まれることはなくなった。

    近づかなくなったスマホを見るとY子から「ありがとう」と一言きていた。

    そのことを坊さんに話すと、俺はもう関わるべきではないし、俺にはもうなにも付いていないらしい。ただ、もう何もかも手遅れなんだそうで、坊さんができることもなにもないらしい。

    何か良くないことが起こっている。
    ざっと書いたが、最近、この出来事の記憶一切が薄れかけてきていたので、ここに記そうと思った。

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