504: 本当にあった怖い名無し 2012/06/09(土) 16:14:44.25 ID:K12mg2qN0
神社に行くまで少し坂を上りますので、鳥居をくぐったときにはだいぶ汗ばんでいました。
この神社は村の氏神のようなものですが、過疎化の進んだ昨今は常駐する神主もおりません。
例祭のとき以外にはめったにお参りする人もいないような所です。
大きな石に山水をひいた手水鉢で手を清めようとしてふとその底をのぞき込んだときに、くらくらと目眩がして、水に頭から突っ込んでしまいました。
深さは五十センチ程度だったと思うのですが、私の体はストーンとそのまま手水鉢の中に落ち込んでしまいました。
そしてかなりの高さを落ちていった気がします。
ばしゃっと音をたてて井戸の底のような所に落ち込みました。ショックはあったのですがそのわりには体に痛いところはありませんでした。
そこはおかしな空間で、半径1.5mほどの茶筒の底のようで1mくらい水が溜まった中に
私は立っています。回りの壁は平らでつるつるしていて、しかも真珠のような色と光沢で内部から光っているのです。
一番不思議なのは、真上10mくらいのところに手水鉢と思われる穴があり水がゆらるらとゆらいで見えることです。しかし私自身の顔は空気中にあり、下半身は水の中にいるのです。
505: 本当にあった怖い名無し 2012/06/09(土) 16:15:11.66 ID:K12mg2qN0
私が浸かっている水はまったく濁りがなく透明で、さして冷たくはありません。底の方を見ていると足元に20cmばかりの井守がいるのに気づきました。それだけではありません。
井守は一匹の小さな青蛙を足の方から半分ほどくわえ込んでいます。
蛙はまだ生きていて逃れようと手をばたつかせますがどうにもなりません。
その状態が長い時間続いているようです。
私はふと、その蛙の姿が工場の資金繰りに行き詰まってもがいている自分のようで、かがんで手を伸ばし助けてやろうとしました、その時、頭の中に声が聞こえたのです。
ーそうだ、その蛙はお前だ。ただし今のお前ではなく自死したのち罰を受けているお前の姿だー
私はあっと思いました。
がつん、ばしゃっという衝撃があり、気がつくと手水鉢の縁に頭をぶつけていました。少し血が出ました。
血は神社の境内では不浄と思ったのでハンカチで押さえながら急いで鳥居の外に出ました。
体は少しも濡れたりはしていません。
そしてその時には、あれほど頭の中を占めていた自殺という考えはすっかりなくなっていたのです。
郷里から帰った私は奮闘し、工場の経営を立て直しました。そして毎年その神社へのお参りはかかしていません。
話は以上です。スレ汚し失礼いたしました。
506: 本当にあった怖い名無し 2012/06/09(土) 19:18:39.18 ID:oEiX6GPe0
>>503
いい話ですな。持ち直されたようで何より。
そして俺を雇ってください
494: 本当にあった怖い名無し 2012/06/07(木) 17:49:01.45 ID:HSLKAHpZ0
剥製と紋付き袴
上の方にムサカリ絵馬の話を書かれている方がいましたが、それと少し関連した体験があるので書いてみます。このような掲示板にまとまった文章を書くのは初めてなので、乱筆お許しください。
今からはもうだいぶ前のことになります。そのころ私は美術の専門学校を卒業したばかりで、さらに金属工芸系を深く学ぶためにその地方の中核都市へ出てきていました。
学校の手続きはすぐに済みましたが、アパートを探さなくてはなりません。当時私は片親の家庭で仕送りなどあまり期待できませんでした。
専門学校もアルバイトをしながら卒業したくらいでしたので、あちこちの不動産屋を回り少しでも条件がよく家賃の安い物件を探していました。
そして数軒目の不動産屋でありえないような格安の物件を見つけたのです。それはアパートではなく一階建ての一部屋で隣に住む大家さんが自分の家の庭に離れとして建てたものでした。
そして家賃はちょっと考えられないほど安かったのです。なぜこのような物件がいつまでも残っていたのかというと不動産屋からは「大家さんたちは老夫婦で、だいぶ前に息子さんを亡くされている。その思い出がやっと薄らいできたので、息子さんが使っていた離れを人に貸そうという気持ちになった。
ただ同じ敷地内にあるようなものなので、できれば女の人に借りてもらいたいと思っている」このような話を聞かされました。さらに「大家さんたちは借り手と事前に面会して、その人が気に入ったら決めると言っている」とのことでした。
495: 本当にあった怖い名無し 2012/06/07(木) 17:49:49.66 ID:HSLKAHpZ0
その場所は私の学校からは二駅しか離れておらず通学にも便利で、ぜひともここに決めたいと思いました。
そして不動産屋にセッティングをしてもらい、大家さん夫妻との面接に臨んだのです。不動産屋の車で大家さんの家へ行き、玄関のチャイムを鳴らしました、出てこられたのはご主人が70歳代、奥さんが60代半ばといったところでしょうか、どちらも白髪の上品な人たちです。
「ささ、お上がりなさい」私たちは和室に案内されました。そこは裏の山側に面した上品な一室でしたが、床の間に他の調度にそぐわない鷹の剥製があり鋭い目を光らせているのが少し異様に感じられました。
そうして私は学校のことや将来の夢などをご主人に問われるままに語りました。奥さんのほうはつねににこにこと微笑んでおられるだけでした。
ただ私が出身地の県のことを話したときに、奥さんは「これは」というような顔をしてご主人と目配せしたのを覚えています。
ご主人は話の最後に「これはよいお嬢さんだ、どうだね○○(奥さんの名前)この方に決めようじゃないか」「ええ、それがよろしゅうございますね」こうして私は夫妻の家の離れに住むことになったのです。
496: 本当にあった怖い名無し 2012/06/07(木) 17:50:06.37 ID:HSLKAHpZ0
そして帰る前に離れの部屋を見せていただきました。
そこは夫妻の家から10mばかり離れた庭の中にあり、外観はまだ新しいものでした。
「ここは元々は息子が動物を飼育するための小屋として使っていた場所で、ひとり息子が死んでから今年でちょうど10年になる。それで私たちもいつまでも悔やんでいてもしかたないと、ここを建てかえて人に貸すことにしたのだよ。あなたのような人に住んでもらうことになってよかった」とご主人。
「ほんに。息子は生き物の好きな子でしてねえ」と奥さん。それを「これ」とご主人がたしなめ、「あなたが都合のよいときに引っ越してきてください、いつでもかまわんよ」とおっしゃってくれます。
私がお愛想のつもりで息子さんの仕事について尋ねますと、ご夫妻は顔を見合わせていましたが、ご主人が「なに、わたしの跡を継いで職人をしていたんです。あなたも工芸をおやりになるそうで、息子が生きていたら気が合ったかもしれませんな」と答えられました。
部屋は6畳の一間に台所、バス・トイレと普通のアパートと違いはありませんでした。ただ建物の外観に比べて内部がせますぎるように思われました。しかし壁などを厚くしていねいに造っているのだろうと解釈することにしました。
497: 本当にあった怖い名無し 2012/06/07(木) 17:52:24.98 ID:HSLKAHpZ0
それから1週間後、学校の始まる3日前に引っ越しました。荷物は布団や小型冷蔵庫など最小限で、さほど時間はかかりませんでした。
その時は私の母も一緒でしたが、大家さん夫妻は満面の笑みで出迎えてくれ「何か不都合なことがあったらいつでも言ってきなさい」「これはこの地方でとれる蕗の煮物だよ」と奥さんからはお料理までいただきました。
冷蔵庫の中身はまだ買っていなかったのでありがたく思いました。母は翌日も仕事があるためすぐに帰り、スーパーなども近くにあったのでとりあえず買い物をして荷物の整理をしているうちに早くも日暮れとなりました。
その日は疲れていたのでスーパーで買った出来合いのお総菜といただいた蕗の煮付けを食べて早く寝ようと思いました。その蕗の煮物を一口食べて奇妙な味がするのに気がつきました。
不味いというわけではないのですが不思議な香りがするのです。西洋ハーブのアニスによく似ています。この地方特有の味付けかと考え、せっかくのご厚意にこたえないのも失礼と思って全部食べてしまいました。
布団を敷いて横になるとすぐに眠ってしまいました。そして奇妙な夢を見ました。
それは大広間のような和室に大勢の人が集まりみな喪服を着ています。どこか田舎の大家のお葬式のようです。そうしてそこに次の間から自分が和服の花嫁衣装を着て入っていくのです。
すると両脇から大家さん夫妻がやはり喪装で、昼に見たような満面の笑みを浮かべて私を迎え、手を取って上座の席に連れて行きます。隣の花婿の席は空いています。やがて一同は両脇に分かれて座ります。そして一斉に拍手をします。
すると正面のふすまが開き、紋付袴の花婿らしき人が入ってきます。
その顔はわかりません。なぜなら黒い頭巾で頭部全体を覆っているからです。花婿が私の横の席にすわります。すると獣臭さがわっと襲いかかるように鼻につきます。花婿が私の手をとります。
お婿さんの手には茶色いごわごわした毛が生えています。そうしてもう一方の手で自分の黒い頭巾を上に引っ張ります。紋付の肩に茶色い毛の束が広がります。
頭巾をすっかりとってしまうと、そこにあるのは何とも種類の判別しない動物の頭です。しかも両目がありません。
私は絶叫しました。
498: 本当にあった怖い名無し 2012/06/07(木) 17:52:53.73 ID:HSLKAHpZ0
そして目が覚めました。枕元の時計を見るとまだ2時過ぎです。とりあえず夢とわかってほっとしたところでしたが、すぐに部屋の中が夢と同じに獣臭いことに気がつきました。
何かがいる気配がします。それも一匹や二匹ではありません。
大きなもの、小さなもの、羽ばたくもの、這うもの、あらゆる獣が私の布団を取り囲んでいます。少しでも動けば襲いかかってきそうに思えます。
部屋の中は真っ暗ではありません。電気製品や時計のわずかな灯りで見た目には何もいないのです。それでも尋常ではない殺気のために身動き一つできません。
そうして何時間が過ぎたでしょうか。カーテンごしに朝日が当たっているのがわかります。すると一つまた一つと小さなうなり声を残して、それらの獣の気配は部屋の南側、押し入れのあるほうに吸い込まれるように消えて行ったのです。
どれくらい布団をかぶっていたでしょうか。光が差し込んだ部屋の中はすっかり朝の雰囲気となり、昨夜のことはどこまでが夢でどこまでが事実だったのかわからないような心持ちになりました。おそるおそる時計を見るとまだ6時半を過ぎたばかりです。
私は起き上がり、昨夜の獣たちが消えて行った押し入れの前にいき戸を開けました。そこには昨日私が入れた段ボール箱とわずかの寝具があるだけでしたが、突き当たりの板を押してみるとなんだかごわごわします。
後ろになにか柔らかいものがあってそれに板が当たっているような感触なのです。そこで押すのをやめ、てのひら全体をあてて横にずらそうと試みました。
するとそれほどの力ではないのに板が大きく動きました。・・・そこに見たものは十数体の動物たちの剥製でした。毛のある生き物ばかりではありません。
私は夢の中のように大きく悲鳴をあげて、パジャマのまま部屋の外に飛び出しました。
離れの外に出ると、少し離れたところに大家さん夫妻が立っていました。夢で見たとおりの喪服姿でした。
ご主人が口を開き
「あなたなら息子の嫁にふさわしいかと思ったのに残念だ・・・。」
奥さんが「杯を交わすまであと少しだったのに・・・」
さも心惜しそうにつけ加えます。私はそのまま家の門を走り抜け大通りに出ました。そしてその日一日を大勢の人に紛れて駅で過ごしたのです。
499: 本当にあった怖い名無し 2012/06/07(木) 17:53:09.82 ID:HSLKAHpZ0
それからしばらくたって、荷物などは男性の友人に無理に頼んで取りに行ってもらいました。
その人の話では、離れは取り壊されてすでになく、母屋も引っ越しをしたらしく中はがらんとした状態で私の荷物だけがそっくり玄関先にまとめられていたということです。
あれからずいぶん立ちますが、今でもあの押し入れの奥でちらと見たもののことを思い出します。たくさんの剥製に囲まれるように紋付袴姿の男性がひっそりと佇んでいた気がするのです。
481: 本当にあった怖い名無し 2012/06/05(火) 23:17:27.85 ID:sD30PrI70
殺された女の子の訴え
15年くらい前、俺がまだ中学生だった頃に体験したことを書いてみます。
俺が住んでいたのは大きな市の郊外にある新興住宅地で周りはみな同じような新しい家がたち並び、当時は俺の家族も引っ越してきたばかりだったので、小路を一本間違えて入ると自分の家のすぐ近くなのに迷ったりすることもありました。
引っ越してから半年あまりたった頃に町内で殺人事件がありました。5歳になったばかりの女の子が町内の公園で殺されたのです。たしか日曜の午後早くのことだったと記憶しています。
主婦だった母親が弟の乳母車を押して散歩の途中、知り合いと会って立ち話をしているすきに、その女の子が近くだった公園に走り込んで遊具で遊ぼうとしてトイレに連れ込まれ殺されてしまったのです。
しかもこの手の事件は絞殺が多いのに、刃物で腹部を刺されるという残虐な犯行でした。
短時間で犯行が行われたこと、現場が迷路のような新興住宅地の一角であることから、警察は近所に住む者に嫌疑をかけているという噂が広がり、小学校では集団登校の班が組まれるなど当時は大変な騒ぎでした。
俺は中学生で自転車通学でしたが、たまたま通学路がその公園の脇の道にあたっていたため、十分気をつけるようにと学校と家族から注意を受けていました。ただ俺は男だし中学生には見えない大柄な体格をしていたし、公園から道路をはさんだ反対側は当たり前に民家が立ち並んでいたので、そう怖いと思うこともなく毎日通っていました。
482: 本当にあった怖い名無し 2012/06/05(火) 23:17:53.21 ID:sD30PrI70
その公園はさして広くはなくちょうど宅地一軒分くらいで、遊具も回旋塔とブランコ、ジャングルジムに砂場があるくらいです。
トイレの周囲に10本くらいの木が立っていましたが、それが犯行を隠した原因とみられ、事件後はすべて伐られました。そのためそれまで葉陰になっていた町内の案内板がよく見えるようになりました。
犯行があってから3ヶ月くらいたったある日、部活の帰りだったので7時半くらいでしょうか、俺はその公園の横に自転車を停め案内板に向かいました。社会の公民で地域の発展といった授業があり、それで町内の商店数を数えてみようと思ったのです。
事件の後公園の外に街灯が設置され十分に見える明るさでしたが、その時に俺はおかしなことに気づきました。
その案内板の半分くらいが汚れて黒くなっているのです。
近づいてよく見るとそれは小さな手の跡がいくつもついているようでした。
ふと、夜だから黒く見えるけれど昼ならば赤黒いしみに見えるのではないかと考えてしまい、急に水を浴びせかけられたようにぞっとしました。それで自転車に飛び乗って全速力で家に帰りました。
次の日の朝、その道を通るのをやめようかとも思ったのですが、思い切って家を早めに出てもう一度その掲示板の前に立つと、遠くからは全体的な汚れに見えるのですが、近づいてよくよく見るとうっすらとしたたくさんの小さな手の跡です。しかもやはり乾いた血のように思えます。
俺の町内は8丁目までありましたが、国道を挟んで1~4丁目と5~8丁目に分かれています。そして手の跡は1~4丁目側にすべてついているのです。
その時俺は、この公園で殺された女の子に幽霊話が出ていることを思い出しました。
それは夜半に車を走らせていると、その時間には外に出ているはずのない小さな女の子がよろよろした足どりで道を歩いている。車を停めようかどうか迷っていると、いつの間にかその子の姿は消えてしまうというような話で、学校でも噂になっていました。
そして、よく考えてみるとその目撃があった場所は自分の家があるのと同じ国道の西側、つまりこの手型がついている側なのだと思い当たったのです。
483: 本当にあった怖い名無し 2012/06/05(火) 23:18:38.83 ID:sD30PrI70
このことに気づくと俺はとても奇妙な考えにとらわれてしまい、ものすごく怖い気持ちになりました、そうしてその道を通るのをやめ、相当遠回りして学校に通うようにしていました。
それから3ヶ月ほどして母が急病になりました、2・3日前から具合が悪く、医者にいったところ風邪だろうといわれて勤めを休んでいましたが、夜中に高熱と激しい咳き込みにおちいってしまい救急車を呼んだのです。
救急車には父と自分が乗り込み救急指定病院へと向かったのですが、そこは町内の7丁目、国道の東側にありました。
幸い急性肺炎であるものの症状は重篤ではないとわかり、父が病院に付き添うことにして自分はタクシーで家へ戻ることになりました。夜中の2時過ぎです。
病院の前に常に待機しているタクシーに乗り込みました。住宅地であり道を通る人影はありません。そのとき前の方の家の門の陰から小さな女の子がふらふらと出てきて車の前を横切ろうとしました。俺は後部座席に乗っていましたがその姿ははっきりと見えました。
運転手さんが急ブレーキをかけ、車の外に出ました。ひとしきりあたりを見回していましたが「おかしいな、誰もいない」といって戻ってきました。そして車を発進させたのですが、車窓から後ろを振り返った俺は、真っ黒なシルエットになった小さな女の子が両手をあげてスキップするようにして一軒の家の門内に入り込んでいくのを確かに見ました。
そらから1週間ぐらいして、新聞に女の子を殺した犯人逮捕の記事が載りました。殺人犯は浪人中の予備校生で、本人が警察に出頭したとのことです。
その日の新聞には書かれてはいませんでしたが、後日犯人の住所がわかり、それはあの日俺が病院の帰りに女の子の影が走り込んでいった家そのものでした。・・・もう書くことはあまりありません。
犯人が逮捕されたことで俺も何となく軽い気持ちになり、ひさびさに公園の横の道を通ってみました。案内板を見ると小さな手の跡は以前より増えていて、国道の5~8町目側にまで及んでいました。
そして女の子を殺害した犯人の家の上には手型ではなく文字らしきものが書かれていました。薄く、しかも上の方なので俺は伸び上がってその字を読みました。
そこにはたとどたどしい筆跡で「ここだ」とあったのです。
485: 本当にあった怖い名無し 2012/06/06(水) 16:35:06.07 ID:jE+bOQO/O
なかなか面白かった
486: 本当にあった怖い名無し 2012/06/06(水) 18:58:45.89 ID:MDvy3SQS0
骨董品の障り
自分の親父と骨董の話を書きます。
親父は紡績の工場を経営していましたが、何を思ったか50歳のときにすっぱりとやめてしまい経営権から何から一切を売り払ってしまいました。
これは当時で十億近い金になり、親父は「生活には孫の代まで困らんから、これから好きなことをやらせてもらう。」
と言い出しました。
しかしそれまで仕事一筋だった父ですから、急に趣味に生きようと思っても、これといってやりたいことも見つからず途方に暮れた感じでした。
あれこれ手を出しても長続きせず、最後に残ったのが骨董品の蒐集でした。
最初は小さな物から買い始めました。ありがちなぐい呑みや煙草の根付けなどです。
「初めから高額の物を買ったりして騙されちゃいかんからな。小遣い程度でやるよ。」
と言って骨董市で赤いサンゴ玉がいくつか付いた根付けを買ってきました。
「何となく見ていてぴーんとひらめいたんだよ。このサンゴ玉は元々はかんざしに付いていたのかもしれないね。」などと言って、書斎に準備した大きなガラスケースに綿に乗せて置きました。
これが我が家の異変の始まりです。
まず親父になついていたはずの飼い猫が書斎に入らなくなりました。親父が抱き上げて連れて行ってもすぐに逃げ出してしまうのです。さらに家の中の物がなんだか腐りやすくなりました。
梅雨時でもないのに食パンなどは買ってすぐに黴に覆われてしまったりして、台所は常に饐えた臭いがするようになりました。それから家には小さいながら庭もあったのですが、全体的に植木の元気がなくなり、中には立ち枯れるものも出始めました。
また屋根の上の一ヶ所につねに黒い煙いのようなものが溜まり何人もの通行人に火事ではないかと言われたりもしました。しかしはしごをかけて屋根に上ってみてもそこには何もないのです。
487: 本当にあった怖い名無し 2012/06/06(水) 18:59:09.09 ID:MDvy3SQS0
その頃、親父は時宝堂という骨董屋の主人と親しくなりました。その人は小柄な老人で親父が金があると目をつけたのか、ちょくちょく家に尋ねてくるようになったのです。
ある日親父は家族に向かって「この間から、家の中がちょっと変だったろう。どうもあのサンゴの根付けが原因らしい。時宝堂さんから聞いたんだが、ああいうものはお女郎さんの恨みがこもってるかもしれないってね。だが、そういうのを打ち消す方法もあるって話だ。それでこれを買うことにしたよ。」と言って一幅の掛け軸を見せました。
それはよくある寒山拾得(中国唐代の2人の禅僧)を描いた中国製で、それほど高い物には思えませんでした。
そしてそれは和室の床の間に飾られることになりました。掛け軸が来てから家の中の異変はいったん収まったようでした。
相変わらず猫は書斎へは入らないものの、植木は元気を取り戻し、物が腐りやすいということもなくなったのです。親父は、「古い物はほとんどが人間の一生以上の歴史を持っていて、中には悪い気を溜め込んでしまっている物もある。そういうのの調和を取るのが骨董の醍醐味だと時宝堂さんから聞いたよ。」と悦に入っていました。
ある日のことです。当時自分は中学生でしたので和室に入る用などめったになかったのですが、たまたま家族が留守の時、学校で応援に使ううちわが和室の欄間に挿されていたのを思い出して取りに行ったのです。
すると家の中には誰もいないはずなのになぜか人の話し声が聞こえてきます。
ごく小さな声ですが和室の中からです。ふすまの前で聞いているとこんな感じです。
「・・・・これで収まったと思うなら浅はかな・・・。」
「ただ臭いものに蓋をしたにすぎないだろ・・・今にもっとヒドイことが・・・。」
どうも二人の人物が会話をしているようです。
自分はコミカルな声調だったのであまり怖いとも思わず一気にふすまを開けて見ました。
しかし当然ながらそこには誰もいませんでした。
ただ床の間の絵を見たときに、なんだか2人の僧の立っている位置が前とは違っている気がしました。
そしてそれから2・3日後、夜中に家に小型トラックが突っ込んでくるという事故が起きたのです。
塀と玄関の一部を壊しましたが幸い家族にケガ人はありませんでした。
488: 本当にあった怖い名無し 2012/06/06(水) 18:59:41.27 ID:MDvy3SQS0
親父はこの事故のことでずいぶんと考え込んでいましたが、それからはますます骨董買いに拍車がかかりました。
古めかしい香炉、室町時代といわれる脇差、大正時代のガラス器などなど。
そしてそのたびに家に変事が起こり、また収まり、そしてもっとヒドイことが発生するといったくり返しになりました。骨董に遣ったお金もそうとうな額にのぼったと思います。
「あっちを収めればこっちの障りが出てくる、考えなきゃいけないことが十も二十もある。こらたまらんな。」
親父はノイローゼのようになっていました。そして今にして思えば骨董蒐集の最後になったのが、江戸時代の幽霊画でした。これはずいぶん高価なものだったはずです。
それは白装束の足のない女の幽霊が柳の木の下に浮かんでいる絵柄で、高名な画家の弟子が描いたものだろうということでした。親父は「この絵はお前たちは不気味に思うかもしれんが、実に力を持った絵だよ。この家の運気を高めてくれる。」と言っていました。
そしてその絵が家に来た晩から自分の小学校低学年の妹がうなされるようになったのです。妹は両親と一緒に寝室で寝ていたのですが、決まって夜中の2時過ぎになるとひーっと叫んで飛び起きます。
そして聞いたこともない異国の言葉のようなものを発し、両親に揺さぶられて我に返るのです。
もちろん病院に連れて行きましたが何の異常も認められないとのことでした。家の者はまた骨董のせいではないかと疑っていましたが、それを親父に言い出すことはできませんでした。
時宝堂が来ていたときに親父がこの話をしたら「おお、それはいよいよ生まれるのですな。」と意味不明のことを言っていたそうです。
そしてその日の夜のことです。やはり2時過ぎ、妹はうなされていたのが白目をむいて立ち上がり、「がっ、がっ、あらほれそんがや~。」というような言葉とともに大人の拳ほどの、白い透明感のある石を大量のよだれとともに口から吐き出しました。
次の日、時宝堂が来てその白い石をかなり高額で買っていったそうです。親父はこのことを契機に時宝堂とのつき合いをたち、骨董の蒐集もすっぱりやめてしまいました。
「家族には迷惑をかけられないからな。みんなの健康が何よりだよ。これからは庭いじりでもやることにする。」
そして我が家の異変は完全に収まったのです。
489: 本当にあった怖い名無し 2012/06/06(水) 22:03:09.33 ID:boto2ZH0O
>>486-488 面白かった
昔エニグマスレかどこかで好評だった喜一じいちゃんシリーズっぽいけど
507: 1/2 2012/06/09(土) 22:39:17.68 ID:fgMh1NJm0
深夜、自宅へ帰るために一人で車を運転していた。
深夜だったので通りに他の車はほとんどなかった。
そのうち、1台のタクシーが俺の車をずっとつけてきていることに気づいた。
そのタクシーの運転手は、こちらを見て何か喋りながら、スケッチブック?のような紙をこちらに向けて見せようとしているようなのだ。
508: 2/2 2012/06/09(土) 22:43:27.52 ID:fgMh1NJm0
赤信号でタクシーが左に並んだ時、その運転手が紙を窓に貼り付けるようにしてこちらに向けてくるので、仕方なく助手席側に身を乗り出してそれを見ると、その紙には一言
「おやのかたき」
と殴り書きしてあった。
急に怖くなって信号無視して全速力で逃げた。
あれがどういう意味だったのか全く心当たりはない。
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