765: ヌキス ◆IEWOxphiII 2005/07/09(土) 22:47:53 ID:Tbh1nh9d0
>>763続き
再び歩き出して1時間、その歌声は徐々に大きくなって行き、歌詞も聞き取れるぐらいにまでなった。メロディは中国の民謡みたいな感じで、子供ながらに神秘的に感じ、歌詞は「天から大きな簪(かんざし)降った、地から小さな俵(たわら)がはえた」ってフレーズだけ覚えてるが、他は忘れてしまった。
その歌を聴いてると、かなり気持悪くなってきて、正直俺は引き返したかったが、それを言うと馬鹿にされるので更に声のほうへと進んで行った。
すると、声が急に止み、また先頭の奴が立ち止まった。「どないしたんや、はよ行けや」「おい、前見てみろよ・・・」俺達が前方を見ると、小さな鳥居が立っていた。
「こんな所に鳥居なんか在るんや、珍しいなぁ」と言いながら鳥居をくぐってみた。
鳥居から5mほど離れて、本当に小さな祠があって、何年も手入れされてないんだろうか、めちゃくちゃになっていた。ちょうど朝から出発して、腹が極限まで減っていたので、俺達はそこで母ちゃんの作ってくれた弁当を食べることにした。
766: ヌキス ◆IEWOxphiII 2005/07/09(土) 22:59:00 ID:Tbh1nh9d0
>>765
俺ら4人が地べたに座って、腹が極限状態まで減っていたので、必死になって弁当食ってると、またさっきのあの歌声が聞こえた。今度はどこで歌っているのか分からず、山全体に響くような感じで聞こえ、その歌声は徐々に大きくなっていくのが分かった。今考えるとかなり怖いが、その時はその歌に聞き込んでいて、4人とも弁当食いながらぼぉ~っとしていた。
弁当食い終わって、歌声の主も分からないので、更に奥に進もうかということになって、俺達が鳥居を再度出るために潜った瞬間、さっきの歌声が間近から聞こえ始めた。
その歌声は祠から発せられていて、お爺さんが叫ぶように歌っている聞こえた。
俺達は子供ながらにヤバイと感じたらしく、一斉に走って逃げようとすると、前20mぐらい先に真っ白な装束?(あの坊さんが着てるような奴)を着た人が3人こっちを向いて立ってた。
これには俺達もマジでビビッテ、全く逆方向に向って走って逃げた。後ろは振り向かずに、ひたすら走って逃げた、だいたい1時間以上逃げ続けて、立ち止まると、後方には誰もいなかった。
俺達は怖くなってそのまま山を別ルートを探して下って行き、5時間かけて山から出ることができた。
今でもその時の友人と会うと、例の歌声の話題で盛り上がる。その事件以後、その山には絶対に近づかないようにしてるが。長々とすまそ、つまんないですが。
767: 本当にあった怖い名無し 2005/07/09(土) 23:11:42 ID:xIdkCA210
>>766
こんな目にあったら、夢に出てきそうで怖い!
なんかいわくつきの山なのですか?
775: 本当にあった怖い名無し 2005/07/10(日) 00:55:54 ID:A3HvCyW30
>>763
それだけ聞くと神域で飯食ってたのが悪かったのか
いわくつきの土地に長居したのが悪かったのか。
787: 1/2 2005/07/10(日) 20:39:53 ID:kkUG0pWj0
この下に埋めるかぁ
ちょっとネタ投下
これは自分の妹(当時小5)が体験した話。
小学生の頃、よくキャンプに連れて行ってもらっていた。
家族皆キャンプが大好きで、夏休みは毎週のように連れて行ってもらってた。
この体験をしたのは小6の夏で、仲の良かった近所の家族も一緒だった。
初日、私達はその山でかなり遊んだ。
かくれんぼをして遊んだとき、私は一番仲の良かった女の子と一緒に、私達が泊まるコテージの下に隠れた。
その下はけっこうなスペースがあって、なにか白い塊?が散らばってた。
よく見ると土の色が周りと微妙に色が違う。
そのときは「この白いの何かなー?」くらいにしか思ってなかった。
一緒に居た子に、「ここに人の骨あるでー」と言って怖がらせてみたりしたけど、その子は当然信じはしなかったし、私もなんかの固まりくらいにしか思ってなかった。
コテージは3つとってたから、父親、母親、子供に別れて寝ることになった。
そのときは何も思わずにコテージを選んだんだけど、そのコテージは昼間、私達がかくれんぼで隠れてたコテージだった。
ゲームやおしゃべりしてて、気付いたらもう10時。
そろそろ寝るか、ってことになって皆寝付いた。
788: 2/2 2005/07/10(日) 20:42:03 ID:kkUG0pWj0
夜中、目が覚めて起きた。
体を起こして周りを見回すと誰かがこっちを見ている。
びくびくしてると、それは妹だった。
妹も眠れないらしい。
どうしたのか聞いても黙ったまま。
その夜は一緒に寝たよ。
次の日の朝、朝ご飯のときに夜のことを聞いてみた。
「あ、あれね。昨日の夜ね、なんか目が覚めたんね。
そしたら、コテージの中に知らない男の人と女の人浮いてたんで」
普通に浮いてたとか言う妹にびっくりした。
「足の辺りよく見えなかったけど、浮いてたっぽかった。
でね、その人たちがなんか話してるんよ。」
「なんて言ってたん?」
「『この下に埋めるかぁ』って。」
そのこと聞いた途端に鳥肌がたった。
昨日の昼間見たあの白いのは本当に・・・?
一緒に居た友達も妹には言ってないと言う。
結局、その人たちは誰か、本当に埋められてたのかは分からなかったけど、
今でもたまに食卓にのぼる話題。
いろいろ読みにくいところもあるかも
すいません
789: 本当にあった怖い名無し 2005/07/10(日) 20:49:08 ID:7N6WuwpJ0
>>787,788
乙です!
リアルに有りそうで本当に怖いお話。
アウトドアシーズンってだいたい夏場ばっかりだから
冬場のキャンプ場って、非道いところだと月単位でしか
管理人がこないんですよ~。特にオートキャンプ場。
・・・無人の山奥で何が行われているのか・・・ブルブル
879: 重子 2005/07/14(木) 05:22:59 ID:Ivc83aQG0
カーナビ
先月、旦那と二人で北海道一周旅行をしたんです。
なんせ、貧乏なのと行き当たりバッタリなんで、ワンボックスの車の後部席に布団を用意して公共の駐車場で泊まる、って感じの旅でした。
温泉巡りも目的の一つだったから、立ち寄り温泉とか探しながらね。
最近はけっこういい温泉施設が出来てて困る事はそんなに無かったんだけど、南富良野のあたりは温泉が無くて「今日は風呂は入れないかな~」って思ってたら【観光案内所】を発見。
近隣施設のパンフレットで、近くの「ナントカ国民保養施設」(忘れてしまった。。)にお風呂があり電話をしたらまだOKだったんで、そのTEL番号をナビで場所を探し目的地に登録して急いで出発しました。
ナビに指図されるまま山道をどんどん登って言ったんだけど、なんだか道が細~くなってきて「あっ!あれかな?」って思った建物は近付いてみると火葬場だったので二人とも無言でスルー。。。
しばらく行くと登り道が終わり「あっ!ひらけた所に出た」と思ったらお墓だったんです。
するとそこでナビが「目的地付近でーす」とか言いやがって、おかしいやら怖いやらで…
行き止まりだったのでお墓の中でUターンして【観光案内所】まで戻り、地図で確認すると
方向が全然違うし距離もかなりありました。
ナビ!どうした?!
怖くないのに長くてごめんなさいね。
882: 本当にあった怖い名無し 2005/07/14(木) 07:06:43 ID:YI8iwyix0
>>879
>怖くないのに長くてごめんなさいね。
いや、ナニゲに怖い…
886: 本当にあった怖い名無し 2005/07/14(木) 09:31:53 ID:gSB78iZsO
>>879
私もソレある……
東北方面だけど、やはり車中泊しながら温泉巡りをしていました
よくある温泉巡りマガジンみたいの見て、その夜都合のいい時間に立ち寄れそうな温泉施設を決めました
ナビ設定して向かったんですが、着いた目的地にはそんなもの無い
しかしナビは目的地を指している
正式名称きちんと入力して再設定してもやはり同じ
そのあたり何度もぐるぐるしたあげく、埒あかないので施設に電話して所在を聞いてみた
電話で案内してもらったら(非常にわかりにくい道筋ではあったが)全然違う場所だった
到着してみると、マップ上には施設名がちゃんとのっている
検索するときに入力したのと全く同じ名称だ
ナビは最新型、ありえねー、ナビにやられちゃったなーなんて言ってたけど……
ほんとは気味悪かった
旅は車中泊が定番スタイルの私たち、明かりひとつない深夜の山道もガンガン行くし、
怪しげなさみしいとこでも車とめて寝ちゃうことが多いので、オカルト方面に考えがいっちゃうとそういうことが今後できなくなる
私たちは暗黙で深く考えないことにして笑いとばした
でもやっぱり思い出してもちょっと気持ち悪い出来事でした
似たような事、あるんですねー
541: 本当にあった怖い名無し 2005/06/29(水) 09:42:05 ID:I1rjNUaH0
長文ごめん。子供の頃の思い出。
ある年の夏休み、家族でキャンプに出かけた。
テントも無事張り終え、私は母と一緒に水場を確認しに行った。
そのキャンプ場は山の中にあり、利用客も私達一家の他には一組しかいないようで、
時折鳥の声が聞こえるくらい。
あまりの静けさに、子供の私はなんとなく怖くなり、母にくっついて歩いた。
と、突然一緒に歩いていた母が猛ダッシュを始めた!
慌てて後を追うが、母の背中はどんどん遠くなり、
走っても走っても追い付けない。私は不安で泣きだしそうになった。
とうとう母の姿は木立で見えなくなり、私は追うのを諦めた。
しばらくして帰ってきた母曰く、
「ウシガエル(食用蛙ね)の鳴き声が聞こえたから、捕まえようと思ったけど見つけられなかった」
548: 本当にあった怖い名無し 2005/06/30(木) 00:00:27 ID:Us6IEMNl0
鉱石採集に山へ入った男が、待避所に車を置いて目的の斜面を掘っていた。
すると近くの木の影から誰かが覗いているのに気付く。不思議に思い、後ろに回っても誰もいない。
首を捻りつつも、そのまま斜面を掘っていると、周囲からクスクスと笑い声が聞こえてきた。
その後、何度か視線を感じたが、気にせず作業を続けたそうだ。
550: 本当にあった怖い名無し 2005/06/30(木) 02:49:27 ID:0yi+i7Ie0
>>548
やっぱりタヌだと思います。
564: 本当にあった怖い名無し 2005/06/30(木) 13:56:24 ID:XPsM/1/N0
知り合いに聞いた話。
彼女は子供の頃、山菜採りの名人と評判の祖父とあちこちに山菜採りに出かけた。
ある時隠し田の脇にセリが群生する所で、セリつみをした。ふと顔を上げるとやや離れた所にワラビもたくさん生えていた。祖父にあれは採らないの? と尋ねると、あのワラビは採ると笑うから採れねぇ、と言われた。文字通り、わら、わら、わらと茎を揺すって笑うのだそうだ。
……食べたらどんな味なのかしらねぇ、名残惜しそうに話してくれた。
587: 本当にあった怖い名無し 2005/06/30(木) 21:49:32 ID:InrcHX0jO
ダム建設の仕事をしてる関係で、相当な山奥に調査にいく機会が多いんだが、
明らかに人が訪れないような場所に、小さい女の子の赤い靴が揃えて置かれてたのが無償に怖かった。。
やっぱ、事件のニオイがするよな?
588: 本当にあった怖い名無し 2005/06/30(木) 22:33:24 ID:izO72tVp0
>>587
山歩きをしているとさ、とんでもない山奥で、
ビニール製のアヒルちゃんを見つけたりするんだよねw
やっぱ、事件のニオイかな?
619: N.W 2005/07/02(土) 13:56:11 ID:UkTCqCym0
男の叫び声
今は昔。
頃は初夏。5月に南アルプス鳳凰山へ行った時の事。
桃色2年に上がったばかりの頃、隣のクラスで山岳部の梶がやって来た。
青色3年の時の同級生で、ある事件がきっかけで友達になったヤツだ。
「おい、5月の連休ヒマだったら、一緒に南アの鳳凰山行かないか?ちょっと宅配便のバイトすりゃアゴ・足代ロハで行けるぞ」
夢のような話だ。地蔵岳のオベリスクの美しさは話に聞いている。「行く」と即答。
が、甘い話には裏がある。
夜叉神峠登山口に着いた俺たちを待っていたのは“歩荷”だった。もう既に本職の歩荷さんと大学生のバイトの人たちが、手際よく俺たちの分も荷造してくれている。
「か~じ~、おまえ宅配便って言ったよな?」
「ああ、山小屋までな。おまえ山好きだろ?」
「か~じ~、俺が山岳部でなくてハイカーだって知ってるよな?」
一体この荷物、何キロいや何十キロ有るんだ?顔が引き攣る。合羽と着替、あと少々の物しか持った事のない俺に、これが背負えるのか?
「心配すんなって。ま、40キロ弱、いつもの俺らの荷物2個分ぐらいだな。そうだ、女の子一人背負ってるって思やあ、軽いもんだろ?」
「バカヤロー!女の子てのはな、ぷにぷにっとして、やーらかくて、背負うもんじゃなくて抱くもんだ!」
「はいはい、後は上の小屋で聞いてやるよ」
しれっとした顔で梶はそう言い、手近の荷物を背負った。
俺もここまで来たからにはどうしようもない。梶に倣って荷物を背負う。
40キロは半端じゃない。思わず呻き声が出る。くっそぉ、おのれェ…
620: N.W 2005/07/02(土) 13:56:47 ID:UkTCqCym0
正直、荷を担ぐのがこんなに大変だとは思っていなかった。我身一つのバランスを保つのとまるっきり勝手が違う。歩くだけなのに、わずかな揺らぎが大きな修正を伴う。
当然、休憩も立ったまましかとれない。座ったら、今度は立つのが大変だろうから。
夜叉神峠小屋から大崖頭山まで、ひたすら登りが続くこの道で、俺たちは可憐な花に目を留める余裕もなく歯を食いしばって歩き続けた。本来なら、登山口から小屋まで1時間、小屋から大崖頭山まで1時間10分か15分もあれば行けるだろうと思うのに、そこに来るまでに3時間余りも費やしてしまう。
本職さんと大学生の人たちはずんずん先へ行っている。俺たちは急いでついて来なくていいから、確実に運ぶように言われていたので、自分たちのペースで上がって行く。
それでも、杖立峠から苺平まではわりと緩やかな道が続くから、俺たちも少しは慣れて余裕が出来てきた。この辺りの原生林は深く、特に今の季節の深い碧玉からカワセミの羽根色まで変化する木々の緑色は、肩に食込む荷物の重さをしばし忘れさせてくれる。
そんな時、木立の間から男の大声が聞えた。
おォオ、らァア、よォオおおぅ…
(何だ、あれ?)梶と二人、思わず立ち止まって顔を見合わせる。
それから少し間があって、ず、ざざざざざざぁっん…と大木の倒れるような音がした。
伐採かと思ったが、チェーンソーの音のような物は聞かなかったし、第一ここらで木を切って運んで行けるような道や場所もない。辺りはそれっきり、静まりかえっている。
これが“天狗倒し”とか“古杣”と言うものだろうか?
ま、いいか。熊でも猪でもなさそうだし。ノーテンキ野郎二人、また歩き始める。
今夜の泊りは南御室小屋。荷下ろし出来るのがこんなにほっとする事だとはなあ。
部屋へ上がる前に、黄昏の山々を見ながら二人で一服吸い付ける。うむ、最高!
621: N.W 2005/07/02(土) 13:57:30 ID:UkTCqCym0
昨夜、ストレッチはちゃんとやったが、やっぱり体が痛い。
梶が寄越した起き抜けの一服で少ししゃんとする。(家だったら確実に箒で殴られる)今日も快晴。荷は少し減ったが、筋肉痛で相殺されて、やっぱり俺たちはみんなより遅れてしまう。
2時間余りかかって何とか薬師小屋へ到着。ここで荷物が半減し、ぐんと楽になる。親切なオバチャンにもらった飴を嘗めつつ、薬師岳を越え、白砂の道を白根3山を眺めながら歩いていると、鳳凰山の最高峰観音岳が見えてきた。
俺は目標が見えると踏ん張りやすい性格らしい。まして、観音岳まで登ってしまえば、地蔵岳のオベリスクが見えてくる。俺は槍ヶ岳のてっぺんとかオベリスクとか、ああいうとんがった系のものがわりと好きだから、ついつい気合が入ってしまう。
観音岳から地蔵岳へは岩場が続くので、いっそう足が鈍くなるが、まあ勘弁してもらおう。
自分で転倒して自損するのはしょうがないが、ここまで無事に運んだ荷物に傷なんざ絶対付けたくない。
途中、鳳凰小屋への近道があったのでそちらを選ぶ。あと一歩だ。
無事、鳳凰小屋へ到着して荷物を下ろせた時は、本当にほっとした。あー、最後までがんばれて良かった。梶も俺も最後の一服。この2日で二人とも1箱吸い切った。
622: N.W 2005/07/02(土) 13:58:35 ID:UkTCqCym0
歩荷さんと大学生の人たちはこれから燕頭山を通り、御座石鉱泉の方へ下りるという。
俺たちはせっかくだからオベリスクのよく見える辺りまで付合い、また引返してドンドコ沢から青木鉱泉の方へ抜ける道を選んだ。山岳部OBの藤原さんが、鉱泉の付近にログハウスを建て、今夜は俺たちをそこへ泊めてくれる事になっていた。
沢にはいくつもの滝がある。足場も少々悪い。おまけに筋肉痛の体。これで坂を下るのは結構きつい。普段の俺たちなら何とかこなしただろうが、今日は二人ともよく転ける。
白糸の滝を過ぎた辺りで、俺たちはまたあの男の叫び声に遭遇した。
おォオ、らァア、よォオおおぅ…
それから少し間があって、ず、ざざざざざざぁっん…と大木の倒れるような音。
しかし、どこにもそんな様子はない。
「…やっこさん、俺たちになんか言いたい事でもあんのかな?」
梶が冷静に首を捻る。わからん、と俺は首を傾げる。
煙草もトイレも所定の場所で済ませた。唾を吐き散らした覚えもない。金品をちょろまかしたりなんかもしていない。嫌がる他人を無理矢理いたした覚えもない。
俺たちは山で悪さはしていない。
何であんなのが聞えたのか。いまだにわからない。
16才と17才の山好きが体験した不思議な話である。
653: 本当にあった怖い名無し 2005/07/04(月) 04:23:31 ID:uiRY3zrJ0
2つの目
季節はずれでスマンが、冬のある日、近所の山にある池に行った。
夕方頃になった。暗くなり始めたので急いで車に戻ろうと、歩いて5分程の距離を歩いた。
その道は鬱蒼と木々が生い茂って昼間でも薄暗い。
夕方ともなると、真っ暗と言えば言い過ぎかも知れないが、かなり暗い。
その時・・・、真冬の寒さの中、ある場所を通った瞬間生暖かい空気が顔にあたった。
同時にただならぬ危機感を感じた。
顔を上げてはいけない。本能でそう思った。
木々の生い茂る遊歩道脇の山の斜面に何かの気配を感じながら、
しかし、けっしてそちらを見る事はなく足早に車に向かった。
斜面の草木が不自然にガサガサなっている。
(クマは生息していない地域です。)
内心焦りながらも、やっと車に到着して そそくさと乗り込んだ。
その時気づいた。
車がその山の斜面の方に向かって停まっていることを。
エンジンをかけ、ライトを付けた時、人間でもなく野生動物でもない
2つの目がライトにうつしだされた。
体は見えなかった。
全身に鳥肌が立った。
車を動かしてなんとか走り出した。
それは後を追って来ることは無かった。
車にも不調はなかった。
あれはなんだったのだろうか・・・。
654: 本当にあった怖い名無し 2005/07/04(月) 04:27:45 ID:r5izSdEq0
山神様がこんな時期に何をしに来たのか
と思ったのでしょう
696: N.W 2005/07/07(木) 06:58:51 ID:I7LOW/DM0
かくえん
今は昔。
頃は夏。台湾から日本、そして台湾。
俺が大学1年の7月。家に帰ると、台北から葉書が届いていた。
先々週末からバイク仲間で蝶々大好き男の笹井が、婚約者を連れて台湾の山の中へ虫採りに行ってたから、何かいいのでも採れたのかと思い、軽く目を通した俺はブッ飛んだ。
そこには《私達、結婚しました 楊美紀(旧姓岩本)》の文字と、笹井の婚約者があちら風の花嫁衣装を着、笹井とは全然似ても似付かない男とにっこり微笑んでいる写真が入っていたからだ。ヤツと彼女は5年越しの交際で、来月結納、年明け早々に式を挙げる予定だったハズなのに…結婚って、じゃあ笹井はどうなったんだ?慌てて笹井の家へ電話をかけて見ると、笹井本人が受話器を取った。電話で話せる事ではないので、とにかくそっちへ行く事にする。
笹井の家の玄関前で中村と出会い、部屋へ通ると奥野が先に来ていた。前田もすぐ来るらしい。みんなバイク仲間だ。
気を利かせた前田が持込んだ酒とつまみで、何となく飲み会が始まる。
最初はだるそうに何も言わなかった笹井だが、アルコールが廻って口がほぐれてくる。
「…ガイドがさ、今日は止めとけって言ったんだよ。日が悪いって。けど、こっちは限られた日にちしか居られねえ訳だから、天気が良かったら行きたいだろ。無理矢理押切って山へ入ったんだ。
んで、蝶の道のアタリ付けて、追っかけてたら、急に霧が出てきてさ、俺とガイドは一緒に居たんだが、美紀が一人はぐれちまった。ホントにひっでぇ霧で、50センチ先も見えやしねえから、探したくても動き回れねえ訳よ。
そいで、一生懸命二人して呼んだけど、返事もねえ。そのうちだんだんアイツの事、腹立ってきて、何で側に居ないんだあのバカとか、こんなに呼んでるのにわかんねえのかよコンチクショウ、とか…霧が晴れたらアイツ、俺らから5メーターも離れてねえとこに居やがったんだけど、こっちはもう、顔も見たくねえ状態だったし、向うも何だかこっちに思いっきり腹立てて。それで勝手にしろって事になって、アイツがホテルを飛出してった。その後は、全然。もう俺の知ったこっちゃない…」
697: N.W 2005/07/07(木) 06:59:57 ID:I7LOW/DM0
月が替って、美紀が帰って来た。
妊娠したので、日本で子供を産むのだと言う。妊娠ってそんなに簡単にわかるものか?
それはともかく、美紀は頻繁に俺に連絡を寄越した。俺は笹井の連れで美紀の連れではなく、元彼でも今彼でもなかったのに、彼女は全然お構いなしに俺を引っ張り回した。
最初は反発も覚えたが、親の協力も得られず、微熱があるような熱い手と潤んだ目でこっちを頼ってこられると、どうしようもないなと観念せざるを得なかった。しかし、本当に彼女の俺への頼り方は尋常ではなく、お陰で、当時交際っていた智美とは別れるわ、美紀の両親には子供の本父かと疑われるわ、俺は踏んだり蹴ったりだったが…
そんな美紀の様子に変化が現れだしたのは、年が明けて3月も終りの頃。
ずいぶん目立つようになった腹に手をやりながら、時々、笹井の事を自分から口にするようになった。おかしな事に、笹井も俺に美紀の近況を聞いてきたりするようになった。
二人とも、今まで俺や他の連中が互いの名をちらっとでもだそうものなら、ものすごい剣幕で突っかかって来たというのに。笹井と美紀のお互いに対する言葉がずいぶん和らぎ、互いに電話し合い、笹井が彼女の下を訪れるようになるには幾日とかからなかった。
俺も少し肩の荷が下りた。
不思議な事に、この1年、父方から手紙が来る事はあっても、こちらを訪ねてくる者は一人も居なかった。
そして5月に入り、彼女の顔色がだんだん冴えなくなってきた。向こうに居る旦那とこっちに居る元彼との間で揺れているのか。でも、それは俺にはどうしようもない。
「赤ちゃん、生みたくない」と美紀が言い出した。「何で笹井君とあんな事でケンカしたのか、どうしてあっちであの人と結婚したのか、全然わからない。それにね、私この子が怖いの。何でだかわからないけど、凄く怖い」
「おまえさ、きっと初めての出産でナーバスになってんだよ」
とは言ったが、女性のこういうメンタルな事は男の俺ではお手上げだ。
「違うの、この子普通じゃない。わかるのよ、私」
気のせい、で押し通したものの、美紀の様子は酷くふさぎこんで見えた。
698: N.W 2005/07/07(木) 07:01:02 ID:I7LOW/DM0
子供は予定日より1週間早く生れ、『太一』と名付けられた。楊氏からの指示で決めたのだ
と、笹井が教えてくれた。
美紀はどうやら楊氏と離婚し、笹井ともう一度やり直す気らしい。
この先は俺が口出しする事でもないし、その気もない。
俺は新しい彼女を見付け、それなりの2ヶ月を過していた。そんなある日、唐突に笹井から電話が入った。美紀が家で暴れて手が付けられないと言う。
急いで駆け付けると、美紀が大声で喚きながら家中のものをひっくり返しているところで、両親は為す術もなく隅の方で彼女の名を呼んでいる。笹井は彼女から太一をかばって体中のあちこちが傷だらけになっていた。止めようとする俺に笹井は太一を渡し、笹井に抱きしめられてようやく悪鬼の形相で暴れ回っていた美紀は動くのを止めた。この騒ぎの中で、太一はピィともギャアとも言わない。
「何があった?」
笹井に聞いた俺に、美紀が怒鳴り返した。
「うるさい!!みんな、そいつのせいよ。その忌々しい赤ん坊のせいよ!!そいつなんか、生ま来なきゃ良かった!!そいつはバケモノよ!!」
「おまえな、言っていい事と悪い事があるぞ!」
俺は物心付いて以来、初めて女性をひっぱたいた。だが、彼女はひるまなかった。
「あんたなんかに何がわかるの?バケモノをバケモノって言ってどこが悪いの。もうたくさん、そんなヤツ欲しけりゃあんたにくれてやるわ。とっととあたしの目の前から消えてちょうだい!」
「わかった、太一は俺が預ってく。おまえらとはもう会わねぇ!」
売言葉に買言葉。最悪だ。子供は物じゃないのに…。
隅の方で固まったままの美紀の両親に目で挨拶し、俺は生後2ヶ月の太一を抱いて自分の家へ連れて帰った。
699: N.W 2005/07/07(木) 07:01:55 ID:I7LOW/DM0
俺に赤ん坊の世話は無理だ。しかし、美紀の荒れは育児ノイローゼだろうから、1週間もすれば落着いて迎えに来るだろう。そう思った俺は、母に事情を話し太一を任せた。
母は快く引受けてくれたが、一つ気になる事を言った。
「この子の親御さんって、普通の人?」
「どういう事?」母は霊感が強い。
「この子ね、まだこんなに小さいのに“額の眼”がしっかり開いちゃってるの。」
実際に目玉がある訳ではない。母の言う“額の眼”とは霊能者のパワーの事で、それがハッキリしているほど強く、格が有るのだそうだ。俺には全くわからない。
「周りにこの子と同格かそれ以上の大人がいてやらないと、可哀想な事になっちゃう。
うちの子だったら今しばらく閉じさせておくんだけれど、勝手な事出来ないし…
何だか、もうずいぶん酷い目に遭っちゃってるみたいね。」
母の言葉がわかったのか、太一は自分から手を述べて母にしがみついた。
「大丈夫だよ、このおばあちゃんはタイちゃんに酷い事しないからね」
太一は大人しい子で、高3の弟の受験勉強の邪魔にもならず、返って弟の方が太一を構いたがって母に注意される始末だった。
1週間経っても2週間経っても、美紀が太一を迎えに来る気配はなかった。
太一は良く笑うようになっていた。
1ヶ月が経ち、何となくこのままうちで太一を預り続けてもいいなと思い始めた頃、美紀と笹井の事故死が伝えられた。二人は深夜のドライブでカーブを曲がり損ね、転落した車が炎上してその中で亡くなったのだと言う。
701: N.W 2005/07/07(木) 07:03:11 ID:I7LOW/DM0
笹井の家と岩本の家が相談し、二人の葬儀は合同で行われる事になった。
俺が通夜に顔を出すと、美紀の両親が飛んで来た。明日の葬儀に、楊氏が来て太一を向こうに連れて帰ると言う。美紀はまだ離婚していなかったらしい。大人の都合であっちこっちにやられる太一を可哀想に思うが、俺は親じゃないからどうしようもない。
葬儀の日、俺は太一を抱いて時間ぎりぎりに出席した。
バイク仲間の“和泉のあねさん”が俺の分の席を取っていてくれた。太一は幼いながらに何かを感じているのか、俺の胸にしっかり顔を寄せ、騒ぎもしない。
岩本の親族の方に何か不思議な雰囲気の男女がいた。兄妹らしいが、何と言うのだろう、峠で休んでいる時に吹いて来た一陣の風、のような透明感のある二人だった。
「もしかして、あれが美紀の旦那さんとその身内か?」
“和泉のあねさん”が俺に囁いた。
「たぶん。俺も去年、写真で見ただけですから」
葬儀が滞りなく終り、棺が霊柩車に納った。身の濃い親族は火葬場へ送って行く。
俺たちの所へ、例の二人連れがまっすぐ静かに歩いて来た。
「この度は妻と子供の事であなたに大変御迷惑をお掛けしました」
男の日本語は正確で淀みがなかった。
「息子を国へ連れて返ります。本当にお世話になりました。この御恩はいつか必ずお返し致します」
ありがとうございました、と女性も言い、太一に向って手を差し伸べた。太一は一度、俺の
シャツをきゅっと掴み、それから女性の方に手を伸した。
踵を返し、去って行く三人を見ながら“和泉のあねさん”がぽつんと言った。
「おまえ、“かくえん”て知ってるか?」
「何ですか、それ?」
「中国の山に棲んでる化物一族で、時々人間の女を攫って子を孕ませ、人里へ返す。普通、18歳になれば子供は自分で山へ帰るけど、もし、母親が育児を放棄したら、かくえんに殺される。かくえんの子が人里にいる時は“楊”姓を名乗るんだと」
「…」俺は言葉が継げなかった。
「昔は蜀の国にいたらしいけどな、こんだけ世の中開けちまったら、移動するヤツが出て来てもおかしくねぇわな」
それは“和泉のあねさん”のブラックジョークだったのかもしれない。でも幾ばくかの真実も含まれていた、と俺は今でも思っている。
707: 本当にあった怖い名無し 2005/07/07(木) 10:16:31 ID:EnSpnqe/0
>>699
N.Wさん乙です。ローズマリーの赤ちゃんを思い出しました。
この映画をすぐ思い出す人はいい年の人ですねw
台湾は南北に連なる長大な山脈があり、富士山より高い山が幾つもあるらしいですね。
山好きの人間にはいつか行ってみたい憧れの地です。
山岳地帯の公園には屋久島の縄文杉より巨大な樹木が幾本もあるとか。
ここの山岳地帯には日本統治時代は高砂族、現在は山地同胞と呼ばれている少数民族が何部族かいるらしいですね。
かつては独自の文化を持ち、男たちは皆誇り高い戦士だったとか。
日本統治時代は中国系住民より高砂族の方が日本人と気が合ったらしいですね。
プライドの高い民族なので感情の行き違いから霧社事件のような事も起こったそうですが、今でも日本語が流暢な親日的な老人もけっこう多いらしいです。
この話では中国の妖怪のようですが、ひょっとすると元々はこの高砂族の精霊や妖怪だった物が中国から渡来した妖怪と混交したのかもしれませんね。
808: 落書き1/2 2005/07/11(月) 10:11:46 ID:IjYZTRWQ0
神さん
怖くも不思議でも面白くもないけどなんか変な気がした話。
うろ覚えだし、学歴も低く文章もまともに書けない癖に長文でゴメン。
7、8年前かなぁ。京都人の俺はバイクで南の方へあてのないツーリングに出かけた。
国道とか走るのは嫌いなんで山ん中の道とかを地図見ながら走ってたら、
山地の更に山奥にぽつんとあるお寺を地図に見つけた。「行ってみよう」
行ってみたら普通に整備はされてるけど誰もいなくて看板には「山伏の修行場」
みたいな事が書いてあって、馬鹿な俺は「面白そー。行ってみよー。」
てな感じで行きだした。ジーパン、Tシャツ、スニーカー。持ち物無しで。
歩き始めるとすぐに道端にお花が供えてあって、馬鹿は「神さんかな?」と思い一礼。
その後中年夫婦が結構な装備で歩いているのを小走りにぶち抜く。
んで鎖なんかを使いながら急な岩場なんかをなんも考えず楽しく谷に降りていく。
(そのコースは山の頂上→谷底→山の頂上ってかんじ)
んで谷に降りたら滝と川があって、顔を川で洗ったらいきなりなぜか
耳のピアスが落ちる。んでそれを必死に川の中で探しているとさっきの中年夫婦
が正規ルートを歩いていて抜かれたのが遠くに見えた。
「うわ、抜かれた」(馬鹿だね 笑) と焦って下を見ると
不思議な事にいきなり目の前に出てきた。キャッチ(耳の裏の留め金)も同じ場所に。
ありえない。キャッチも同じ場所になんて。しかも石だらけの川底で。
まぁでも馬鹿は深く考えず「おお、ラッキー。神さんありがとー」
一応川と山の神さんに感謝で礼をする。
809: 落書き2/2 2005/07/11(月) 10:12:36 ID:IjYZTRWQ0
そして急いで夫婦を追いかける、また花がある。会釈だけする。
しばらくすると後姿が見えた。「よし、負けへんでー」
と、とたんに体がオカシイ。力が入らない。むっちゃ元気なのに。
岩をよじ登り、坂道を四つんばいで上がっても追いつけるはずなのに
無理。でも絶対視界から消えない。一定距離を保ってしまう。
そしてデカイ岩があってその上にたどり着く。スゴイ絶景。
でも落ちたら死ぬ。そこで急に眩暈が。クラクラ~。
そしたらなんか後ろに引っ張られた。助けてくれたみたいに。
不思議な気持ちになりながらも無事寺に到着。二時間くらいかかったかな?
そしたらそこに中年夫婦がいて話かけたら。こんな感じでした。要約。
「自分、すごいなぁ。その格好。危ないで。」「そうですねぇ、通りがかって
なんとなく入ってみたんですけど僕、馬鹿ですよねぇ」
「せやなぁ。お花ぎょうさん供えてあったやろ?皆亡くなってるんやでぇ」
「・・・神さんやと思うてました」「ワハハ、手ぇ合わしといたかぁ?」
「ええ」「それで自分は無事に帰ってこれたんとちゃうか?
亡くなった人を勘違いでも神さんとしてお祈りしたんやし」
「そんなもんですかねぇ・・・」「ワハハ、とにかく無事でよかった」
まぁ一定距離だったのは僕の疲れや、夫婦が気使ってくれてたのかもしれませんが、
ピアスと背中を引っ張られたのはやはり不思議でした。
んでそこで数年後、孫とお爺ちゃんが登山?し、お爺ちゃんが滑落。
そして孫が助けに呼びに戻る途中、滑落して死亡。
お爺ちゃんは無事家族の探索願いで助かる。
という話が確かあったような・・・心からご冥福をお祈りいたします。
826: 本当にあった怖い名無し 2005/07/11(月) 21:20:23 ID:KunMkVgo0
あんまり怖くはないですが、小学生の頃の思い出話。
家から歩いて10分ぐらいのところに、小さな山があった。
今思うと「山」なんて呼ぶには小さすぎたが、小さいなりに草木が生い茂り、小学生の探検ごっこにはもってこいだった。
ある夏の日、一人でそこに虫取りに行ったときのこと。
いつも通る小道を登っている途中、ふと脇の方にのびている細い獣道のような道が目に入った。
「あれ?こんな分かれ道、前来た時あったかな?」と思ったが、どこにつながっているのか興味が湧き、そちらに進路を取った。
5分ぐらい歩いただろうか。その道は古い石作りの門の前で終わっていた。
苔むした門には扉はなく、向こう側には手前の獣道とは明らかに違う石畳の道がのびている。その先は一際深い茂みで、中に何があるのか全く見えない。
「こんなところに家とかあるのかな?」と門に近づいたその時、茂みの中から雪のように真っ白な猫がするりと現れて、石畳の右端に座ると私の顔を見て「ニャー」と鳴いた。
すると今度は白黒のぶち猫がやってきて、同じように石畳の左端に座り、私に向かって「ニャー」と鳴く。
なんだなんだと思っていると、次には三毛猫が出てきて、最初の白い猫の奥に並んで「ニャー」。続いて真っ黒い猫が出てきて、ぶち猫の奥に並んで「ニャー」。
そこまで見た時点でなんだか怖くなり、振り向かずに一目散に逃げ帰った。
その後、友人達と何度もその山を訪れたが、あの門に続く獣道はどうしても見つからなかった。
あの猫たちは私を門の奥に招き入れようとしていたように思えるのだが、あの門の向こう側には一体何があったのだろう。
猫たちはみんなふっくらとして毛艶もよく、野良には見えなかった。
844: 本当にあった怖い名無し 2005/07/12(火) 20:17:30 ID:WPQDXNfl0
先週、不思議な話を聞いたので書いてみる。
(以下、話者)
春先、相棒とふたりで沢の水質を調査するため山道を進んでいた。
町からそう遠くない低い山ではあるが、辺りには雪が残り空気も冷たい。
ふと、相棒が足を止めた。
どうしたんだ、と尋ねる間もなく、相棒は『向こう』といったふうに顎をしゃくる。
見ると、十数メートル程先の低い木の枝に手が乗っている。肘から先だけだ。
しかもその手は、おいで、おいで、をしている。
さて、どうしようか。戻りたい。でも仕事はまだまだ終わらない。
結局、(何も見たい、知らない!)と強引に突っ切ることにした。
ふたりで駆け抜ける。
その下まで来たとき、木からパサリと何かが落ちた。
反射的に振り向く。
それは、ただのゴム手袋であった。淡いピンク色が丁度人間の肌の色に
見えたようだ。おそらく、山菜取りに来た人が忘れていったのであろう。
しかし、手袋は木に引っかかっていたのではなく、枝の上に乗っていた。
手先を上にして。しかも、そよ風ひとつ吹いていなかった。
狐にでもからかわれたようだと思ったという。
852: N.W 2005/07/13(水) 07:10:27 ID:f5HaGqoH0
おくりぼっこ
今は昔。
頃は夏。2度目の田舎への一人旅での事。
弟がまた熱を出した。
本当はこの春も、母と弟と俺と3人で千葉の祖父ちゃんの所を訪れるはずだったが、弟が熱を出したから母が家に残り、俺は一人で何日かを祖父ちゃん祖母ちゃんと過ごした。
この夏は、今度こそ5人で一緒に居られるはずだったが、やっぱり無理みたいだ。
弟の度々の体調不良も激しい人見知りも、全て霊的に過敏な体質のせいだと知ったのは、俺がもう少し大きくなってからの事で、いつも俺の側にいる犬コロのような弟がいないのはずいぶん寂しい事だった。
祖父ちゃんの家に来て3日が過ぎた。
裏山は、この前怖い目に遭ったからあんまり行きたくないし、一人で海へ行くのは御法度。
馬はまだ祖父ちゃんが一緒でないと自分の命令を聞いてくれない。
仕方がないから河原で一人、石投げをして遊んでいた。
「へたくそだな、おまえ」
振り向くと、俺と同い年くらいの、藍色の裾の短い着物を着た少年がニコニコ笑っていた。
「こうやって投げるんだ」
彼の投げた石は水面を7・8度飛び跳ねて向こう岸へ到着した。
「わ、凄ェなあ、おまえ!」
俺が感心すると、彼は得意げに笑った。
「おれ“さかい”のもんだけど、おまえ、あんまり見た事ねえな。どこのもんだ?」
「俺ん家は“チドリ”だ」
さかいだのチドリだのはお互いの屋号で、ここらでは屋号を名乗り合うのが常の事だが、さかいと言うのは初めて耳にする屋号だった。
「ふーん、おれ太助」
「俺、マコト」
俺のは嘘だ。俺たち兄弟は7歳になるまで、身内の大人がいない所で本当の名を明かしてはならない、と祖父ちゃんに口が酸っぱくなる程言われていた。理由は命に関わるかららしい。
だから俺の名はウソなのでマコト、弟は二番目なのでハジメと名乗っていた。
853: N.W 2005/07/13(水) 07:12:06 ID:f5HaGqoH0
すいっとオニヤンマが俺たちの目の前を通り過ぎた。
あれ捕ろう。太助はそう言って河原で豆粒のような石を2個拾い、手近の柔らかい葉っぱで別々にくるむと、長い草でそれぞれの端っこを括り付けた。それをオニヤンマの上へ放り上げると、オニヤンマは警戒して高度を下げるが、石ころの落下速度の方が早い。
胴体に石と石を結び付けた草が触れると、反動で右側にあった石は円を描いて左へ、左側にあったのは右へ動くから、たちまち石ころ付き草に巻付かれたオニヤンマが地面へ落下してきて1丁上り。
俺が初めて見たトンボの捕り方だ。
「わーッ、すっげえぇ!!太助、おまえ凄ェや!!」
それほどでもないサ、と言いながら太助は得意満面だった。
「来いよ、もっと面白れえトコで遊ぼうぜ」
走り出した太助の後について行くと、俺の全然知らない森に着いた。あの河原からこっちに来て、はてこんな所あったかな?と思ったが、俺が方向を勘違いしているのかも知れない。
太助は本当にいろんな事を知っていた。祖父ちゃんも物知りだが、太助も同じぐらい何でも良く知っている。俺が感心する度、ヤツは謙遜しながらも自慢げな顔をする。
俺たちはお決まりのカブトやクワガタ捕りの他、蔓草に掴まって木から木へ飛び移ったり、落葉の積った崖を尻で滑り降りたりして遊んだ。我を忘れるぐらい楽しかった。
854: N.W 2005/07/13(水) 07:12:50 ID:f5HaGqoH0
「なあ、木の上に秘密基地、作らねえ?」
もうすぐ日も暮れようかと言う頃、俺がそう提案すると、太助は目を丸くした。
「ひみつきち?」
「おう、枝やなんかで小屋作ってさ、大人に教えねえで、俺たちだけの秘密の基地にすんだ」
いいな、それ。太助はにまっと笑った。いいな、明日からそれ作ろう。相談は決りだ。
その時、どこかから口笛の様な音が聞えた。
「あ、かあちゃんだ」
太助は口元を手で覆って口笛を吹いた。
帰ろう。俺たちが連れ立って森から道へ出てくると、太助と同じように袖も裾も短い茶色の着物を着て、引っ詰め髪にした女の人が立っていた。
「かあちゃん、チドリん家のマコトだよ」
こんにちは、と挨拶すると、向うも挨拶を返してくれたが、何だか不思議そうな顔をしている。
「じゃあな、マコト。また、あ・し・た、な?」
眩しいぐらいの夕日の中、太助は母親と仲良く手をつないで帰って行く。バイバイ、と手を振り、反対方向へ一人帰る俺の目にも夕日が眩しかった…え???
855: N.W 2005/07/13(水) 07:19:00 ID:f5HaGqoH0
昨日、太助が連れてってくれた森へ行こうとして俺は川沿いの道をテッテケテッテケ歩いてた。
後ろから太助の声がした。
「おーい、マコト。どこ行くんだよ、行過ぎ行過ぎ」
太助は今日は普通のシャツとズボンを着ていた。昨日はやっぱり祭か何かだったのか。
そして、俺たちの秘密基地造りが始まった。
太助が木を選び、小屋を乗せる枝を選んだ。二人で森の中をかけずり回り、足場や床になる枝を探した。太助の目は確かで、いくら頑丈そうに見えても、こいつがダメを出した枝はあっけないくらい脆かった。枝と枝を結び会わせる綱も、自分たちで葛を探して作り出した。
途中、くうぅぅーぅっ…と情けない音で腹が鳴った。そろそろ昼時だろう。
「腹減ったからいっぺん帰る。昼からまたやろうぜ」
俺たちは昨日のように連れ立って森から道へ出た。お日様は間違いなく頭の上にある。
ご飯が済んで一休みした俺は、祖母ちゃんに訳を言って茹でたトウモロコシを持たせてもらい、太助の待ってる森を目指して一心不乱に歩いて行った。
すると、横の方から太助の声がする。
「マコト、どこ行く気だよ。こっちこっち」
何だか不思議な気がした。俺は断じて方向音痴ではない。だのに、何でこんなに迷うんだ?それはともかく、俺たちはまた秘密基地造りに取り掛かった。
最初の想定より高い位置の枝を選んだから、梯子からして作らねばならない。
それでも、太助と作業すると面白いように事が運ぶ。太助もそう思ってくれているらしく、俺たちは作業の合間に何となく顔を見合わせ、笑いあった。
最初に二人並んで腰掛けられるスペースが出来た時は、最高にいい気分だった。俺たちはそこで物も言わずにトウモロコシを食った。一番旨いトウモロコシだった。
やがて日暮が近づき、またあの口笛の様な音が聞えた。太助も口元を手で覆って口笛を吹いた。
昨日と同じく、森から出た道の所に、短い着物姿の太助の母が立っていた。
今日の夕日も眩しく、俺は二人を最後まで見送れずに自分の家の方を振り返った。すると、やっぱりこっちにも夕日があって凄く眩しい。太助の帰る方には何か夕日を跳ね返すような、でっかい看板でも立ってるんだろうか?
856: N.W 2005/07/13(水) 07:19:41 ID:f5HaGqoH0
昨日だけではなく、太助の森へ行くのに俺はいつも行過ぎたり方向違いをやらかし、太助の
案内なしに森へ行けた事は一度もなかった。
それでも太助との秘密基地造りは楽しかった。
基地は思いの外大きくなり、広さは3畳間程、高さは俺たちが楽々立って歩ける程になった。
最後に葉っぱ付の枝で屋根を葺くだけになった日、昼ご飯を食べに帰った俺は、今夜母と弟が来る事を知らされた。
森の中に戻ってから、俺は今夜母が迎えに来て明日帰ってしまう事を太助に伝えた。
太助の表情が見る見る曇っていくのがわかる。俺だってつらい。でも、どうしようもない。
俺はわざと明るく言った。
「さあ、屋根やっちまおうぜ。俺らの最高の秘密基地だろ?」
俺たちはどちらから言出すともなく、それまで別々に探しに行ってた葉っぱ付の枝を二人で探し、ひとつづつ屋根に据え、しっかりと固定した。
「よぉっしゃあ!!」
俺たちの本当に最後の共同作業だった。
日が傾くまでの間、俺たちは秘密基地の中で黙って風に吹かれ、木の葉のざわめきを聞いていた。
もうまもなく太助の母の口笛が聞えるだろう。
マコト、螢見たか?と、唐突に太助が言った。いや、と俺は答えた。他所で見た事はあるが、この村で螢を見た事はなかった。
「じゃあさ、今夜おれと見に行こうぜ。いいとこ知ってるんだ」
「ほんとか?行こう行こう!」
やがて太助を呼ぶ口笛と、答える口笛が響き合い、俺たちは意気揚々と森を後にした。
「かあちゃん、おれ、今夜マコトと螢見に行く」
太助の母親が少し戸惑ったような表情を浮かべ、俺に尋ねた。
「夜、出て来て大丈夫なの?」
たぶん大丈夫、と俺は答えた。止められても、抜け出して来ようと決めていたからだ。
そんな俺の気持を察したかのように、太助の母親は「無理はダメよ」とやんわり釘を刺した。
今日は太助の方の大陽を見もせず、俺はまっしぐらに家へ駆け戻った。
857: N.W 2005/07/13(水) 07:20:55 ID:f5HaGqoH0
ご飯の後、祖父ちゃんに「螢見に行っていい?」と聞くと、祖父ちゃんは怪訝な顔をした。
俺は祖父ちゃんに今までの、太助と出会った事、秘密基地を作った事、夕方になると太助の母親が口笛で呼びに来る事、太助がそれに口笛で応える事、いつも二人の向こうに夕日が映っている事を全部話し、明日俺が帰ってしまうので太助が今夜螢見物に誘ってくれた事を話した。
祖父ちゃんは黙って俺の話を聞いていたが、一言「わかった」と肯き、自分で台所に立って、俺の大好物のクルミの飴煮を大量に作ってくれた。
「おまえの分はまた作ってやるから、これは太助の母さんに渡せ。それから、わかってると思うが、くれぐれも本当の名を明かしてはならんぞ。いいな?」
俺はちょっとドキッとした。本当は、太助にマコトと呼ばれるのがつらくなってきてたから。
手足に虫除けの薬を塗り、祖母ちゃんに包んでもらったクルミの飴煮を持って、太助の森を目指した。肝心の待ち合せ場所を決めていなかったので、とにかくそっちを目指せば太助が俺を見つけてくれるだろうと、単純に俺は考えていた。
マコトー、こっちだー。土手の上で太助が手を振ってくれる。当りだ。
太助はかなり夜目が利くらしい。足元をほとんど気にせず、すたすたすたすた歩いて行く。
俺は後を付いて行くのがやっとだった。
辺りの景色がだいぶん里山っぽくなって来た辺りで、太助はようやく足を止めた。
目の前を、小さな蛍光イエローの点が横切る。すると、それが合図だったかのように、周りの暗がりの中にも小さな灯りが点滅し始めた。
858: N.W 2005/07/13(水) 07:24:29 ID:f5HaGqoH0
無数の天上の星明りの下、川のせせらぎと葉のさやぎ、その中で明滅する幾千の命の灯。
俺と太助は何時知らず互いの手をつなぎ、一言も発せず、ただただその景色に見とれていた。
どれくらい立ったろうか、太助の母の口笛が俺たちを現の世界に引戻した。
「もうだいぶ遅いから、お家の人が心配するわ。帰りましょう」
俺たちは手をつないだまま太助の母の後に従った。
行きはあんなに長いように感じた道も、帰りはあっけなく終ってしまう。
太助の母親は俺からクルミの飴煮の包みを受取って礼を述べ、俺たちは別れの挨拶を口にした。
本当にもうこれっきりだ。
いつもなら、向こうが先に背を向けるのに、今夜は向こうが俺を見送っている。
俺は振り返り、太助に向って叫んだ。
「太助ー、おまえにあれ任せるからなー、俺がまた来るまで守っててくれなー!」
太助は返事の代りにあの口笛を吹いて寄越した。
この次あれが聞けるのは何時の事か。
ちょっと感傷に浸りながら2・3歩踏み出した時、後ろの方が何だか明るいような気がし、もう一度振り返ると、太助と母親が朱色の山のような大きな炎の中へ入っていく所だった。
二人の呼び合うような口笛が消えると、炎もすうっと消えてしまった。
859: N.W 2005/07/13(水) 07:25:07 ID:f5HaGqoH0
家では祖父ちゃんが起きて俺の帰りを待っていてくれた。
俺が、口笛を吹き合いながら大きな炎の中へ姿を消した二人の事を祖父ちゃんに話すと、祖父ちゃんは大きく頷いてこう言った。
「やっぱりな。おそらくおまえに“さかい”の太助と名乗った方は、後を弔う者のない子供の亡者だったろうな。“さかい”というのはあの世とこの世の端境の事、太助というのは助けを待っている、そう言う意味じゃろう。母親と見えたのは“おくりぼっこ”に違いない」
「おくりぼっこ?」
「子供の亡者があの世へ行くまで笛を吹いて遊んでやる妖怪じゃ。ワシは見た事がないが、口笛で子供に合図しとったんなら、たぶんそう思うて間違いない。姿形はワシが聞いておるのとおまえの見たもんは全然違うが、おまえが太助の目を通じて見たのならそれも合点がいく。
そやつが子供の亡者を遊ばせておる時に、たまたま、弟が居らんで寂しゅうて河原の石で遊んどったおまえを子供の亡者が見付け、つい寄って来てしもた。普通なら体の具合でも悪くなる所じゃろうが、おまえは妙に強い所があるからの。今日もどうしようか迷うたが、おまえならちゃんと送ってやれるかも知れん。そう思うたから飴玉代りにクルミを持たせたんじゃ」
「…太助は成仏しちゃったのかな?」
「きっとしたな」
「ふーん…」
俺の秘密基地は、太助の森と一緒に遠くへ行ってしまった。
もう一回作りたくても作れない。
今となっては遠い日の事だ。
866: 本当にあった怖い名無し 2005/07/13(水) 11:42:35 ID:XNfe8/9m0
これはすごい
面白かったです
こういうちょっと怖くて不思議だけどあったまる話はいいですね
だいぶ昔の「世にも不思議な・・」にはこの手の話があったような気がしますが
最近のには無いですね
861: 本当にあった怖い名無し 2005/07/13(水) 08:21:03 ID:d1gH4tJnO
不思議でしんみり来る話だね
文章もうまいし胸に響いたよ
妖怪かあ
そういう話好きだから楽しめたよGJ
888: 本当にあった怖い名無し 2005/07/14(木) 17:49:53 ID:m+PFTUsa0
森の中の登山者
情緒も怖くもない話ですが…
中高年登山にはまって、地元の山の会のメンバー5人と登山に行った母の話です。登山といってもその日は高原ハイキングのような感じだったらしい。
メンバーの中に、写真をやってるおじさんがいて、おしゃべりしながら歩く母たちとはちょっと離れて、一人で写真を撮りながら歩いていたそうな。
道の両脇に野原が広がり、その周りを森が囲むかんじになっている場所で、おじさんはまた道をそれだした。花も結構咲いている場所で、「綺麗な高山植物でも見つけたかしら」と見ていたのだがなにか様子がおかしい?
森の方にむかって礼をしたり手を上げたり。そうこうするうちに、さらにおじさんは道をそれて森のほうに歩いていきそうになったので、母たちは声をあげておじさんを呼んだ。その声に気が付いたおじさんはルートに戻ってきて母たちと合流。おじさんの言うには、「森の中を行く登山者と会って、話をしていた」そうだ。しかしそんな人の姿は母たち5人には見えなかったらしい。
889: 888 2005/07/14(木) 17:56:38 ID:m+PFTUsa0
おじさんの言うには、撮影ポイントを探して野原を歩いていたら、森の中を行く登山者と目が合った(?)ので会釈をした。で、
「写真ですか、立派なカメラおもちですね」
「最近はいいデジカメもありますけど自分はまだまだ銀塩派で…」とか
そんな世間話をしたらしい。で、おじさんたちよりはあきらかに山になれてる感じのその人に景色のいい場所あったか聞いたら、
「わたしが上がってきたほうは絶景ですが、危ないから行くなら気をつけて」
といわれて、それで登山者とは分かれたそうな。で、そんなにいい景色ならちょっと見てみるか、とその後に続くように森の中に行こうとした時点で母たちに呼び止められたそうな。
おじさんの記憶では、キャップを目深にかぶり、黄色いゴアテックスを着て、わりと重装備だったそうな。多少距離があったとはいえ、黄色いゴアテックス着てたら母たちの誰一人その姿が見えなかったというのはありえなーい…らしい。
890: 888 2005/07/14(木) 18:05:35 ID:m+PFTUsa0
後から考えるに、季節的にそんな厚着は変じゃないかとか、おじさんの話から考えるとその登山者はかなり危険な、登山ルートにもなってない急勾配をやってきたことになるとか、おかしいことは色々あるらしい。
どうってことない話ですが、生まれてこの方霊がどうとか一切話したことのない母のいうことなので、ちょっとびびって投下してしまいました。
977: N.W 2005/07/19(火) 07:10:41 ID:bt1vmWLc0
さばえ=みさき
今は昔。
頃は夏。信州・霧ガ峰でのこと。
俺が初めてバイクで信州を走ったのは、桃色(高坊)2年の7月の終わり。
まだ青色(中坊)でチャリダーだった頃から出入りしていたバイクショップの常連、和泉のあねさんに連れられての事だ。
暗闇の中、ただ単騎でまっしぐらに、何のためらいもなく突き進んで行くこの人を、みんなは『Night Witch』と呼ぶ。それが気に入らなくて突っ掛かって行く人たちもいるが、和泉さんは全く相手にしない。いつか梶が言ってたっけ、「相手の強大さにビビって騒ぐヤツはただの雑魚、相手の格が判らねぇヤツはカス以下だ」って。正論だ。だから、俺は和泉さんを“あねさん”と呼ぶ。
「無理するな。ダメだと思ったらいつでもペースを落とせ。合わせてやるから」
それだけ言って、午前0時、あねさんは走り出した。俺はその後を追う。
あねさんは能書きを垂れない。ただ、俺にその背中を見せるだけ。この人はどんな道であっても、なまじの男より大胆に、豪快にラインを決める。必死で食いついて走っていくうちに、俺にも少しづつ走り方が飲み込めて来る。
国道19号線──そう、木曽路を塩尻に向かって突っ走りながら、俺はあねさんに改めて惚れ直した。
978: N.W 2005/07/19(火) 07:11:40 ID:bt1vmWLc0
松本へ入る頃、急に気温が下がり、辺りの空気がキンと引き締まる。夜明けが近い。
浅間温泉の脇から武石峠を通り、美ヶ原高原を目指す。灰色の空が段々白んで行き、やがて浅葱色に染まる頃、名だたる山々が光と影をまといながら姿を現して来る。
俺たちが走るのはその間のなだらかな高原。朝露にぬれた深緑の葉と、やや黄色の勝ったニッコウキスゲの橙色の花々。時折混ざる赤紫色はたぶんアザミ。聞こえるものはただ俺たちのエグゾースト。俺たちバイク乗りが求めてやまないのは一瞬の感動だが、ここではそれが連続して押し寄せてくる。
太陽がすっかり昇ってしまい、他の車がぽつぽつ上がって来るようになった頃、俺たちは霧ヶ峰のパーキングにバイクを止めた。缶コーヒーを飲んでしばし休憩。
疲れたか?とあねさんが聞く。いいえと答えたがウソ。本当はヘロヘロで、立っているのもやっと。腰から下が他人の物のようだ。24時間あれば北海道や九州までかっ飛んで行くあねさんにすれば、こんなもの朝飯前の鼻歌だろうけど。
夜走りはもう嫌か?と聞かれ、いいえと答えたが、これは本当。
「しんどいけど、なんだか楽しくて…もしかしたら俺、夜走るほうが好きかも」
「そうか」あねさんが少し笑った。「なら、おまえ、二つ名は“夜風”を名乗れ」
驚いた。二つ名なんてものは実力のある人が持つ称号。俺のような、走り出して まだ半年にもならない小僧が持って良いものじゃない。
「先代の“夜風”から預かってた。私の眼鏡に適うヤツに譲ってくれってね。おまえが夜走りが嫌いなら止めておこうと思ったけど、好きならちょうどいい」
嬉しかった。名前を持てる事より、あねさんに認めて貰えた事がすごく嬉しかった。煙草を吸って気分を落ち着けたかったが、煙草が大嫌いなあねさんの前ではマズイ。
知らずに一度、目の前で吸い付けて拳骨を食らった事がある。16歳が煙草を吸うのも問題だろうが、こう言う時こそ一服欲しい訳で、トイレ行って吸って来ようかと考えながら、辺りを見回した俺の目に変なものが映った。
979: N.W 2005/07/19(火) 07:17:32 ID:bt1vmWLc0
白い何かが、ふらりふらりと漂うように飛んでいる。コンビニの袋かと思ったが、よく見るとミヤマアゲハのような形をしており、蚕のように真っ白なそれの、翅の上端だけが真紅に彩られている。大人の目の高さ辺りを、右へ左へふらつきながら、その大きな変わった蝶はこちらの方へやって来る。
ふっと日が翳った。翳りは瞬間に曇りになり、足元からシューシュー音を立てて霧が湧いてくる。そりゃあここは霧ヶ峰、濃霧多発地域で昔その為に遭難した人もいると聞いたが、こんなに唐突に霧が出るのはちょっとおかしい。それも濃い。
あねさんが眉をひそめたその前を、白いアゲハモドキが通り過ぎた。
「しゃがめ!私が良いと言うまで、絶対に顔を上げるな!」
突然肩を押さえられ、訳が解らないまま、俺はあねさんの言葉に従った。
どこからか、生ゴミの腐ったような臭いが漂って来る。それがだんだん強くなると同時に、疲れ果てたような複数の足音が向こうの方から聞こえて来た。
ざっしゃ… ざっしゃ… ざっしゃ…
周りはアスファルト舗装のはずなのに、小石交じりの地面を歩いているような音だ。
全然デリケートでない俺が吐きそうになった程強烈な腐敗臭と、足音だけで姿の見えない面々はのろのろと俺たちの前を通り過ぎ、やがてどこかへ行ってしまった。
もういいぞ。あねさんの言葉と同時ぐらいに霧が晴れ始め、あっという間に元通りの好天に戻る。
980: N.W 2005/07/19(火) 07:21:26 ID:bt1vmWLc0
醜態を晒さずに済んでほっとしながら、俺はあねさんに尋ねた。
「今の、なんだったんですか?」
「“さばえ”だよ。所によっては“みさき”とも言うな。目を合わせたら命がない」
「じゃ、その前に飛んでたあの蝶みたいなのは?」
あねさんが目を丸くした。「見たのか、おまえ?」
はいと答えると、あねさんは天に向かって溜息を一つ。な、なんか悪い事か?
「…話には聞いた、“さばえ”の前触れに蝶のような“のはく”が飛ぶと。でも、それは普通の者には見えない」
「み、見えないって、見ちゃいました、俺」
「私は“さばえ”は見たが“のはく”は見てない。気配の違うヤツだとは思ってたが、霊感ゼロのくせに、どうしてそう言うモノを見るかな?」
信じられない、というようにあねさんは2・3度頭を振り、
「まあいい。それよりどっかで何か食べよう。お腹が空いた」
そして、俺たちは再びバイクに跨り、ビーナスラインを走り始めた。
以来、和泉のあねさんは時々、俺の事を“妖怪小僧”と呼ぶ。
俺は至って普通の人間なんだが…
993: 本当にあった怖い名無し 2005/07/19(火) 19:19:24 ID:+wd2GXka0
いつも行く呑み屋で、常連で山好きのおっさん(ハゲ)が不意に言い出した。
「あんたも山好きだったな?」
「ええ、俺は日帰りばっかりですけど」
「じゃあ雪解けの時期はあんまり入らないか」
「そうですね、雪山に遊びには行きますけど、雪解けの時期は行かないっすね」
「ほうかぁ・・・」
おっさんがまだ若い頃、仲間と雪解けの山に小屋泊まりの予定で入ったそうだ。
雪が残るその時期には服装を選ぶのが重要になる。
日が昇れば暑いが、天気が悪くなって風が吹けば寒くなるし、
どうかすると名残雪が吹雪いたりする場合もある。
その日は運良く上天気で、おっさんらは機嫌良く山を登っていたらしい。
「あ、こんにちは」
降りてくる一組のパーティーに会釈する。5人。
気がついてなかったが知らない間に近くまで寄っていたらしい。
相手はこちらに気がつかぬげに登山道をはずれて、道の脇を歩いていく。
よく見ると厳冬期のような格好もいれば、Tシャツ・短パンのような、夏の軽装もいる。
まあ、体感温度はそれぞれだから・・・と無理に納得して小屋へ急ぐ。
「で、小屋へ着いたら今日は登山客は俺ら以外にはいないって言うんだよ」
「登った客も降りた客もいないってことですか?!」
「そう。で、小屋の主人が言うことにはね・・・」
主人いわく、雪解けの時期は遭難者が帰る日なんだとか。
去年の遭難者は厳冬期やハイキングの事故もあわせて5人。
「歩いて帰るってのも山好きだからかねw」
「麓に降りたらとりあえず、ビールでもやってるんですかねw」
山には不思議ななにかがいつもある。
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