782: 古物屋 ◆PhiNBJZ8Q2 2005/12/01(木) 06:54:59 ID:ibDAQVv/0
視線
まだ学生だった頃の体験談。
田舎のさらに山の上、新しく出来た団地に住んでいた頃。一番近くのコンビニまで徒歩20分という立地条件で、
四方八方は山。団地の裏がそのまま山で、山菜採りの場所には全く不自由しないという、
そんな所に住んでいました。
そのころ、剣術をかじっていた私は、夜、眠れないときなどは剣道着と袴に着替えて、よく、裏山に素振りに
出かけていたものでした。(満月の晩に道着に袴、模擬刀で素振りしていて、お化けと間違われ、
団地の七不思議になってしまったことはまた別のお話です)
ある晩、素振りを終えて、帰ろうとした瞬間、どこからか視線を感じます。私がいた裏山の土手、20メートルほど
のぼった地点でしょうか?さらに、藪が動く音。野犬か山猫か。まさか熊や猪は勘弁・・・と、
冷や汗を流しつつ、腰の引けた情けない体勢で、腰に差した模造刀のツカに手をかけながらじりじりと後退。
よく考えて、はたか見たらこちらのほうが不審人物そのものと気付いて、相手が万が一寝近所の人である
可能性にも思い当たり、震えないように注意して声をかけました。
「・・・夜中に失礼致しました。どなたかいらっしゃるんですか?」
沈黙。視線も感じなくなりました。
やはり、動物か何かだったのかと、掌の汗を袴の腿にこすりつけ、袴の裾をもちあげて、土手を上ってみました。
と、そこには、ちょっと予想していなかったものがありました。
風雨にさらされた、縦横40㎝ほどの、小さなお社のようなものが、ちんまりとそこにありました。
杯のようなものと、青く錆をふいた10円硬貨がいくつか。言ってはなんですが、住宅地の裏手とはいえ、
誰も通りがからない、わざわざ土手の上まで見に来なければわからない場所にありました。
そこで私は怖いとは何故か思わずに、邪魔をして申し訳ないという気持ちになり、
「お騒がせして、申し訳ありませんでした。」とお社にお辞儀をして、土手を降りていきました。
背後で、小枝が折れるような音が、一度だけしました。
あとで聞いたら、昔、集落がそこにあった時代の、道祖神のようなものだったそうです。
小ネタで失礼しました。
790: 本当にあった怖い名無し 2005/12/01(木) 14:59:13 ID:I2W12H3N0
なるほどねぇー。神っているんだ。
571: 本当にあった怖い名無し 2005/11/19(土) 13:00:44 ID:zEOsGJOx0
539 :名無し職人:2005/11/18(金) 10:47:51
うちの爺さんは若い頃、当時では珍しいバイク乗りで
金持ちだった爺さんの両親からの何不自由ない援助のおかげで
燃費の悪い輸入物のバイクを暇さえあれば乗り回していたそうな。
ある時、爺さんはいつものように愛車を駆って
山へキャンプへ出かけたのだそうな。
ようやく電気の灯りが普及し始めた当時、夜の山ともなれば
それこそ漆黒の闇に包まれる。
そんな中で爺さんはテントを張り、火をおこしキャンプを始めた。
持ってきた酒を飲み、ほどよく酔いが回ってきた頃に
何者かが近づいてくる気配を感じた爺さん。
「ツーリングキャンプ」なんて言葉もなかった時代。
夜遅くの山で出くわす者と言えば、獣か猟師か物の怪か。
爺さんは腰に差した鉈を抜いて、やってくる者に備えたそうだ。
572: 本当にあった怖い名無し 2005/11/19(土) 13:01:38 ID:zEOsGJOx0
540 :名無し職人:2005/11/18(金) 10:48:33
やがて藪を掻き分ける音と共に、「なにか」が目の前に現れたのだそうな。
この「なにか」というのが、他のなににも例えることが出来ないものだったので
「なにか」と言うしかない、とは爺さんの談である。
それはとても奇妙な外見をしていたそうだ。
縦は周囲の木よりも高く、逆に横幅はさほどでもなく、爺さんの体の半分ほどしかない。
なんだか解らないが「ユラユラと揺れる太く長い棒」みたいのが現れたそうだ。
爺さんはその異様に圧倒され、声もなくそいつを凝視しつづけた。
そいつはしばらく目の前でユラユラ揺れていたと思うと、唐突に口をきいたのだそうな。
「すりゃあぬしんんまけ?」
一瞬なにを言われたのかわからなかったそうな。
酷い訛りと発音のお陰で、辛うじて語尾から疑問系だと知れた程度だったという。
爺さんが何も答えないでいると、そいつは長い体をぐ~っと曲げて
頭と思われる部分を爺さんのバイクに近づけると、再び尋ねてきた。
「くりゃあぬしんんまけ?」
そこでようやく爺さんは「これはオマエの馬か?」と聞かれてると理解できた。
黙っているとなにをされるか、そう思った爺さんは勇気を出して
「そうだ。」とおびえを押し殺して答えたそうだ。
573: 本当にあった怖い名無し 2005/11/19(土) 13:02:13 ID:zEOsGJOx0
541 :名無し職人:2005/11/18(金) 10:49:25
そいつはしばらくバイクを眺めて(顔が無いのでよくわからないが)いたが
しばらくするとまた口を聞いた。
「ぺかぺかしちゅうのぉ。ほすぅのう。」(ピカピカしてる。欲しいなぁ。)
その時、爺さんはようやくソイツが口をきく度に猛烈な血の臭いがすることに気が付いた。
人か獣か知らんが、とにかくコイツは肉を喰う。
下手に答えると命が無いと直感した爺さんは、バイクと引き替えに助かるならと
「欲しければ持って行け。」と答えた。
それを聞いソイツは、しばし考え込んでる風だったという。(顔がないのでよくわからないが)
ソイツがまた口をきいた。
「こいはなんくうが?」 (これはなにを喰うんだ?)
「ガソリンをたらふく喰らう。」 爺さんは正直に答えた。
「かいばでゃあいかんが?」 (飼い葉ではだめか?)
「飼い葉は食わん。その馬には口がない。」 バイクを指し示す爺さん。
「あ~くちんねぇ くちんねぇ たしかにたしかに。」 納得するソイツ。
そこまで会話を続けた時点で、爺さんはいつの間にか
ソイツに対する恐怖が無くなっていることに気が付いたという。
574: 本当にあった怖い名無し 2005/11/19(土) 13:03:02 ID:zEOsGJOx0
542 :名無し職人:2005/11/18(金) 10:52:41
ソイツはしばらくバイクの上でユラユラと体を揺らしていたが
その内に溜息のような呻き声を漏らすと
「ほすぅがのう ものかねんでゃなぁ」(欲しいけど、ものを食べないのでは・・・。)
そう呟くように語ると、不機嫌そうに体を揺らしたという。
怒らせては不味いと思った爺さんは
「代わりにコレを持って行け。」
と持ってきた菓子類を袋に詰めて投げてやったという。
袋はソイツの体に吸い込まれるように見えなくなった。
するとソイツは一言「ありがでぇ」と呟いて山の闇へ消えていったという。
その姿が完全に見えなくなるまで残念そうな「む~ む~」という呻きが響いていたという。
爺さんは、気が付くといつの間にか失禁していたという。
その夜はテントの中で震えながら過ごし、朝日が昇ると一目散に山を下りたそうだ。
家に帰ってこの話をしても、当然誰も信じてはくれなかったが
ただ一人爺さんの爺さん(曾々爺さん)が
「山の物の怪っちゅうのは珍しいもんが好きでな、おまえのバイクは
山に入った時から目を付けられていたんだろう。
諦めさせたのは良かったな。意固地になって断っておったら
おまえは喰われていただろう。」
と語ってくれたのだそうな。
以来、爺さんは二度とバイクで山に行くことはなかったそうだ。
ちなみに、件のバイクは今なお実家の倉に眠っている。
581: 本当にあった怖い名無し 2005/11/19(土) 17:33:54 ID:zEOsGJOx0
人外魔境
親父殿に聞きました。
母ちゃんの実家は佐渡島の山奥にある。
この山奥っぷりというのが半端ではなく
麓の「お隣さん」まで原チャリを飛ばして20分かかるという
ほんと~に辺鄙な所にある。
これ、前置きね。
昔々、親父殿と母ちゃんが結婚する前の話。
母ちゃんの両親にご挨拶するために、親父殿の運転で
その辺鄙な山道を車で登っているとき、異変が起こった。
助手席で寝ていた母ちゃんが、突然に
「だめよ!後で!!」
と大声で叫んだそうな。
その声にビックリしたものの、寝言だろうと思って
そのまま運転を続け、無事に母ちゃんの実家まで辿り着けたそうな。
車から降りると、母ちゃんは土産物を積んだトランクを開け
「あぁ~、やっぱりやられたぁ。夢じゃなかったのねぇ。」
と残念そうに言ったという。
何事かと親父殿もトランクを覗き込んだのだが、そこには
土産物として持ってきた菓子類が食い荒らされ、残骸が散らばっていたという。
「寝てたらねぇ、後部座席に小さな子供達が座ってお菓子を食べてる光景が見えたのよ。
これは山のタヌキだと思って怒鳴ったんだけど・・・遅かったわぁ。」
と、さして怖がる風でもなく語る母の姿に、なんだか人外魔境に
迷い込んだ気分になったと親父殿は語るのであった。
582: 本当にあった怖い名無し 2005/11/19(土) 17:37:11 ID:zEOsGJOx0
ちなみに親父殿は、その時になんとなく
「なんでキツネだと思わなかったんだ?」
と尋ねたそうな。
そしたら母ちゃんは
「佐渡島にキツネはおらんのよ。昔、領主に悪さして追い出されたんだって。」
と、これまた事も無げに語ったそうな。
592: 本当にあった怖い名無し 2005/11/20(日) 01:26:55 ID:HVB6oQVC0
佐渡島話をもう一つ
母はよく、笑い話として
「私が幼い頃はね、カレーを作るってのは、まずお爺ちゃんが鉄砲の弾を作るところから始まったの。」
などと言っていました。
ようするにカレーの「具」になるお肉を山で撃ってくるってことですw
眉唾で聞いていたのですが、件の祖父が亡くなった折に
集まった親戚に真偽を聞いてみたところ
「それは一つ手順が抜けてる。まず最初に猫を納戸に放り込むんだよ。」
このスレの住人の皆様なら、その理由はおわかりでしょうw
まとめサイトを読んで思い出したお話でした。
483: 本当にあった怖い名無し 2005/11/14(月) 10:34:24 ID:dZH9KF8A0
不思議な階段
あんま怖くないけど長いよ
山のさびれた神社だかお寺での出来事
夕方ぐらいに山の中をドライブ中疲れたので停めて適当に山道をぶらついてた
ふと石造りの階段と鳥居が見えたので、珍しいと思い生き抜きついでに拝んでくかと思い
階段を一段目から数えながら登る
その時の数え方は1・2・3・4と普通に数えてた
確か131段だった
拝み終わり帰る時、階段を一段飛ばしつつ2・4・6と数えてくと130段
普通なら数え間違いで済ますが何か釈然としなくて
もう一度慎重に数えながら登ると131段
降りる時は一段飛ばしで下り数えたのでより慎重に数える、130段…
こいつは化かされてるのかな?と感じこういうことは生まれて初めてなので怖くなり深く考えるのをやめ何事も無く帰宅
家に帰ってから風呂でさっぱりしたあとに自分の部屋に行くのに二階に上がる為、階段を使うんだが自宅の階段を数えたことは無い、あったかもしれないが覚えていない
何か石段のことを思い出して数える
13段
下りながら慎重に数える
12段…
ここで鳥肌が立ってもう一度数えるんだけど上がる13段下る12段
落ち着け落ち着けと思いながら何度も繰り返す
バカみたいだがマジで怖かった
あんまりどっすんどっすん狂ったように階段を上り
下りするもんだからママンが来たんだが
484: 本当にあった怖い名無し 2005/11/14(月) 10:36:19 ID:dZH9KF8A0
上り13段下り12段だよ!と訳のわからんことを興奮気味に言ってたそうな
一緒に階段を数えながら上がってくれと言われて苦笑しつつ無理矢理付き添わせ、上り13段
下り12段…
最初は苦笑ぎみだったママンも何回も確認して確実に一段ずれることをだんだん認識して真っ青に
神社だか寺だかに行って石段を数えてからと説明したら猛スピードでキッチンに行きそのまま取ってきた塩カップの中身を俺にぶちまけた
パパン帰宅、玄関の近くに階段あるんだが塩まみれの真っ青の俺と真っ青のママンと床塩まみれ
現状を説明すると微笑され「そりゃお前憑かれたな」とか言われた
改めパパンと階段の段差を数えると上り下り両方13段に
何か疲れてぶっ倒れるように座り込んだのは覚えてるよ
あの感覚は不思議だった、マジで何で一段違うかわかんねーんだもん
それからというもの階段は数えない、塩は効くかも、憑き物?は居ると認識した。
こんな階段一段ズレ体験したヤツ居る?ああー思い出したらまた…
495: 本当にあった怖い名無し 2005/11/15(火) 03:17:12 ID:/v0BthjK0
いぶきをとるぞ
学生の頃、私はデザイナーを目指していました。
しかし、学業も専門分野の勉強も上手くいかず、
いつしか死にたいと思うようになっていました。
今で言う、鬱だったのかもしれません。
真夏のある日、私は友人の勧めで
自然に触れて気分転換しようと山に行きました。
なるべく自然がそのまま残っている山を選んで登っていると、
心が晴れるどころか、この山に同化して消えたいという思いが
どんどんと膨らんできます。
私の足は自然に山道を逸れ、藪を掻き分けながら進んでいました。
しばらく進むと、急に目の前が開け、小さな池(?)が現れます。
その池はとても綺麗で、怖いとも思いましたが
私は気の向くままに服を脱いで池に入ってみました。
今考えると、一応は年頃の女が、素っ裸とは考えられません。
自暴自棄でした。死にたいと言いながら、
本当は、何か自分の中でスイッチが入って欲しい、
そのスイッチ(の弾み)で変わりたい、そう思っていたのです。
水の中を漂っていたら、
目の前を大きな藻だか海草のようなものが横切りました。
不思議に思って水面に顔を出すと、急にその藻が競りあがってきました。
それは、藻や草を浴衣のようにまとった色白の女性でした。
河童という推測が思いつきましたが、それよりも高貴な雰囲気です。
変ですが、私はかぐや姫を連想しました。
しかし次の瞬間、その女性の真っ赤な口がニヤリと開き、
ザザザと水面を移動して向かってきました。
水際まで逃げたのですが、そのままのしかかるように押し倒されます。
496: 本当にあった怖い名無し 2005/11/15(火) 03:22:59 ID:/v0BthjK0
私は必死になって逃げようと暴れましたが、
両手が身体を包み、しっかりと抱きかかえられてしまいました。
閉じた両足の間に、女性のヌメヌメした足らしきものが割って入り絡みつきます。
そしてあろう事か、口に齧り付かれました。口付け、という感じではなかったのですが。
続いて藻や草がどんどん私たちの上に積もり、
真っ暗な藻の中に取り込まれてしまいました。闇の中では、
私の口を貪る女性の「ん゛ーーー! ん゛ーーー!!」という唸り声が聞こえます。
凄く生臭かったのを覚えています。
しばらくパニックで動けなくなっていましたが、
いくら恐ろしくても、同じ状況が続くと人間は冷静になってくるものです。
口を塞がれたまま、私は「ここで死ぬのか」「もっと頑張りたかった」と思いました。
突然、闇の中で解放され、耳元で囁かれました。
「…………たら、迎えにいくぞ。いぶきをとるぞ」
気がつくと、池の側で服を着て倒れていました。
時計を見ると、1時間前後ほど経っています。
私は不思議な気持ちのまま、まるで操られるように下山しました。
何人かの親しい友達に話してみましたが、大抵は日射病だと言われます。
その後、私は一生懸命にやり直して、今は小さい店でデザイナー見習いをしています。
カウンターを預かって色白の女性が店に入ってくるたび、私は思い出します。
あの女性(妖怪?)は、何をしたら私を迎えに(殺しに?)くると言ったのか。
残念ながら、あの時は聞き取れなかったので気になっています。
怖いという気持ちはありません。
どちらかと言うと、日増しにもう一度逢いたい気持ちが増してきます。
(お恥ずかしい話ですが、あのとき、ほんの少しだけですがドキドキしました)
あれは、私を元気付けようとしてくれた山の神様……
なんて思うのは都合が良すぎでしょうか。
いつか、もう一度あの場所へ行ってみようと思います。
危険なのは、わかっているんですが……。逢いたいと、思うのです。
497: 本当にあった怖い名無し 2005/11/15(火) 04:45:18 ID:Kfy6z4Dm0
>>496
もう一度貴女が「自暴自棄になったら、迎えにいくぞ。いぶきをとるぞ」ということでは?
貴女が前に進んでいる限り迎えに来る事はないと思う。
再び池を訪れて転機になった出来事に思いを馳せるのも良いかもしれません。
500: 本当にあった怖い名無し 2005/11/15(火) 17:12:22 ID:3v5T5hQ/0
真っ先に
「あとX年したら迎えにいくぞ」
と思いついたんだが、そうじゃない事を祈ってます。
510: 本当にあった怖い名無し 2005/11/16(水) 03:32:31 ID:vNP2O4Wt0
山の影
山って神聖な場所と思われがちですが、私はそうは思いません。
ちょっと前まで、私はよく学生時代の友人と山に登ったりしていました。
ある日、自分のナップザックにお葬式用の塩が入っているのを見つけます。
私は1つのナップザックを仕事・休日問わず使っているので、
きっとどこかで紛れ込んだのでしょう。
ちょっと考えてから、神聖な山に登るんだから身体を清めようと、
私は封を切って自分の身体にかけました。
友人たちは山で清められるんだから、塩なんかいいじゃんと笑っていました。
私が友人について歩いていると、だんだんと友人の呼吸が荒く激しくなります。
「おや?まだそんなに激しい道じゃないのにな?」と思いながらも、
少しおかしいので「だいじょぶ?」と声をかけてみました。
友人は振り返り、血走った目と無駄に大きな声で
「うー、良い風だぁ!」と答えます。目は焦点が合っていません。
ビックリして他の友人に異変を知らせようとすると、
その友人も同じような異変を起こしています。
しかし、誰一人としてお互いの体調の変化を口にしません。
冷静になって周りを見ると、他の登山客も、私以外のみんなが同じです。
「きっと、自分に体力がついてきただけだ」と思い直し、
再び私は山を登り始めました。しばらくはこの事を忘れることができたのです。
いくらか歩いた後、休憩ということになりました。
私たちは木陰で腰を下ろそうとしましたが、再び異変に遭遇します。
涼を取ろうと向かった木陰が……木陰が逃げて行くのです。
511: 本当にあった怖い名無し 2005/11/16(水) 03:33:14 ID:vNP2O4Wt0
逃げた影は細かくちぎれ、わらわらと友人たちの方へたかりはじめました。
まるで、友人の影を食い散らかすように、地面を50cmくらいの影が舞うのです。
追い越してゆく人の影にも、ブンブンと音が聞こえるくらい纏わりついて。
ゾッとして友人に知らせようとしたとき、全ての影がピタリと動きを止めました。
私は心臓を鷲掴みにされたようにビクッとし、硬直してしまいました。
影たちは再びゆっくりと、今度は全部が私を目指して近づいてきます。
人に助けを求めようとしたのですが、友人も登山客も、
焦点の合っていない目で私の方を向いて息を荒げているだけでした。
よく見ると影は、人の影に見えなくもありません。
それが集まりに集まって、私の周り1mぐらいを空けて密集しています。
影の通りに人がいるとすれば、周りをぐるりと囲まれている状態です。
危険を感じ逃げようとすると、影たちは道を開けるのですが、
直ぐに私を遠巻きに包囲します。気のせいか、圧迫感をも感じ始めます。
私はふと、「ある村で異邦人が村のタブーを口にして、村人に追われる」
という映画を思い出しました。
友人は「○○、どうしたー?」と言ってくれます。血走った焦点の合わない目で。
512: 本当にあった怖い名無し 2005/11/16(水) 03:34:38 ID:vNP2O4Wt0
皆さん、私を罵って下さい。
私はそのとき耐え切れず、我が身可愛さに友人を捨てて走って下山しました。
友人が「おい、どうしたー!?」と追ってくることにすら恐怖して。
後日、当然のことながら一緒に山を登った友人に詰問されました。
私は、信じてもらえなくてもいいからと、ありのままを話しました。
友人は、その日に異常な疲れを感じたこともあり、信じてくれました。
と同時に、私はここ一番で友達を見殺しにするチキンと認識されました。
交友も途絶え、今、友人と呼べるのは仕事仲間だけです。
私はそれを素直に受け止めなければいけないと思っています。
あの山の、影の正体はわかりません。
知りたくもありません。
521: 本当にあった怖い名無し 2005/11/16(水) 18:18:01 ID:dfguoo740
悪いモノ
昔さ、学校の遠足で近所の山登ったんだよね
で、俺らまだ小さな子供だったから、最近になって開かれた比較的平坦な道を登ったわけ
新しい道だから、階段とかあるし、道案内もあるし、結構整備されてるんだこれが
半分くらい登ったところかな、泉みたいなのがあってね
まぁ、これも後になって作られたものみたいで、傍に『山から引いた水なので飲めます』みたいな綺麗な看板が立ってた
俺は、なんかクサイ匂いがしたからから飲まなかったけど、女の子とか水筒に汲みとってた
で、『空気が綺麗だし、涼しいから』ってことで、そこで一旦休憩することになったんだけどさ
そのね、説明しにくいけどなんか変なんだよね
違和感があるって言うのかな、とにかく『どこかおかしい』って思った
山なんて登るの初めてだったからおかしいもおかしくないもないんだろうけどさ
とにかくなんか妙な感じがあってさ
まぁ、結局なにも解決しないまま休憩時間も終わって皆で頂上まで登ったんだけどね
漸くそこで何が『妙』だったのかわかったよ
俺たちが登ったの、初夏の頃だったんだ
だから、頂上から見た山の木々も青々と芽吹いてた
でも、休憩した場所にあった木はみんな茶色い葉っぱだったんだよね
枯れ木みたいな感じでさ、全然生気が無かったの
まぁ、そこだけ土壌が悪くて枯れてたのかもしれないし、そういうことってあるじゃん
でもさ、俺は多分、原因はそばにあったあの泉だと思うんだ
泉で水もってきた女の子がね、山を降りる途中で水飲もうとコップに出したんだよね
そしたらさ、出てきたのは水って言うよりも泥みたいな、腐った『何か』が出てきた
それが何かは分からないけど、とにかく何か悪いモノだったんだと思う
まぁ、なんとか無事に下山はできたけどね
確かに、人間が生きるために山を切り開くのは仕方ないとも思うけど
いつまでも開拓し続けるって言うのは正しいことなのかな
522: 本当にあった怖い名無し 2005/11/16(水) 21:42:02 ID:4plvXGH00
>>521
葉っぱが茶色いということは、少し前までは多分緑に繁っていたのでしょうね。
非オカ板的解釈だけど、直前に誰かがその泉のそばに有毒物質を含む産廃を投棄していたとか。
596: 本当にあった怖い名無し 2005/11/20(日) 09:54:21 ID:HVB6oQVC0
爺様に聞いた話
畑仕事を終えた夕暮れ時、はやく帰ろうと
普段は日中しか通らない獣道みたいなところを
歩いていると、道脇に妙なものがいたそうだ。
それは下手くそな人型の粘土細工のような姿をしており
何をするでもなくボンヤリと立っていたそうだ。
爺様が担いでいた鍬をソイツに向かって突きつけ
「なにもんだっ!!」と一喝したところ
そいつは急に輪郭を崩し、ドサドサドサッとその場に崩れてしまった。
近づいてみると、そこにはこんもりと腐葉土の小山が出来ており
その所々から獣の骨が覗いていたそうな。
「山で死んだ獣が、腐れ堕ちた肉の代わりに
その辺のモンをかき集めて纏っていたんだろうな。」
とは爺様の談。
何故人型なのか、いったい何のために現れたかのかはわからんそうな。
602: 本当にあった怖い名無し 2005/11/20(日) 11:39:42 ID:HVB6oQVC0
爺様の話
山で草取りをしていると、背後から肩をトントンと叩かれ
「ぬし様が通りますので、ちょっと失礼。」と何者かに話しかけられた。
途端、草刈りのために屈んだ姿勢のまま、体が動かなくなったそうな。
瞬きもできないまま、しばらく待っていると爺様の背後を
何か巨大なものがその身をズルズルと引きずりながら通り過ぎていったそうだ。
恐ろしくて生きた心地もしなかったが、ズルズルという音が聞こえなくなった辺りで
再び何者かに「ご迷惑をおかけしました。」と耳元で囁かれ
その瞬間、爺様は盛大に小便を漏らして気絶したそうな。
気が付くと、時間はさほど経っておらず、日もまだ充分高かったが
夕暮れまで仕事をする気になれない爺様は、荷物を纏めて早々に家路に着いたそうだ。
途中、今まで草刈りをしていた山肌をふり返って見たが
巨大な何かが通ったような痕跡は見つけることができなかったと言う。
603: 本当にあった怖い名無し 2005/11/20(日) 16:08:06 ID:3UQ7P4O50
山のぬしともなるとちゃんと礼をわきまえた付き人がついているのか。
629: 本当にあった怖い名無し 2005/11/21(月) 13:13:22 ID:3sZqfdqF0
桜の話
爺様曰く
「山中に一本だけポツンとある桜の下で夜を明かしては行けない。
桜は弱い。たまたま山中に芽吹いたとしても長らえることはできない。
にも関わらず、周りの木々に負けず一本だけで生きる桜というのは
山の怪の持ち物、もしくは桜そのものが怪なのだ。
そんなモノの下で眠りこければ、桜に喰われ滋養にされてしまう。」
ここから自分の話。
花見の季節、友人に「穴場スポットがある。」と言われて誘われたのが
そんな桜の下でした。
山中のちょっと開けた場所に、たった一本だけ満開の花をつける桜は
美しいと同時にちょっと異様でもありました。
何事もなく酒宴を楽しみましたが、帰りには一応根元に未開封の
ワンカップを置いて「お騒がせしました。」と礼を述べてから山を下りました。
残念(?)ながら、特に不思議な体験はありませんでしたw
630: 本当にあった怖い名無し 2005/11/21(月) 13:45:01 ID:3sZqfdqF0
ついでにこんな話も。
たぶん中国の話。
旅の男が山中の大樹の下で夜を明かしていると
木陰から白磁のように美しい肌を持つ、裸の娘が現れ男を誘った。
誘われるままに体を重ねると、娘の白い肌は
まるでヒルのように男を張り付き、剥がそうとするとひどく痛む。
その上、男が幾度も精を放っても娘は満足せず
それどころかますます貪欲に求めてくる。
男は意識が無くなるまで娘と交わり続けた。
翌朝、目を覚ました男が見たものは
昨夜までは蕾も付けていなかった桜の大樹が満開の花を咲かせる光景であった。
男は精魂絞り尽くされ立ち上がることもままならなかったが
また娘が現れたら、今度こそ命まで吸い取られると思い
這いずるように山を降りたという。
麓の村まで辿り着いた男は、村人に昨夜の事を話すと
皆、怖がるどころか逆に歓喜に沸き返り、また男を褒め称えた。
事情のわからない男に、村の長が説明する。
「おまえが出会った娘は山の神だ。神は男の精気を糧に花をつけ
その礼のように山河を豊かにしてくれるのだ。
だが今年は戦で元気な男衆を取られてしまって困っていたのだ。」
男は厚く持て成され、後に村の娘と所帯を持ったが
神に絞り尽くされてしまったのか、遂に子種には恵まれなかったという。
646: 本当にあった怖い名無し 2005/11/21(月) 17:12:59 ID:3sZqfdqF0
爺様の話。
山仕事中に大雨に降られ
カッパを羽織って作業を続けた爺様。
フードに当たる猛烈な雨音しか聞こえない中
黙々と下生えを刈っていると、ふと音が消えた。
不信に思って顔を上げると、相変わらず雨粒は
勢いよく顔に当たるのに音が一切聞こえない。
「こりゃあ耳がイカレたか?」
と呟いたら、その自分の声はハッキリ聞こえたそうな。
試しに持っていた鎌の刃を指で弾くと
キンッと小さな金属音が確かに聞こえる。
それなのに雨音だけがまったく耳に響かない。
奇妙に静まりかえった山の中で、爺様は心細くなり
震えながら「勘弁してくれ。」と小さく呟くと
それに答えたのか、唐突にバチバチッ!とフードを叩く雨音が戻ったという。
「狐狸の類にからかわれたんだろうな。」
と当時を思いだして語る爺様であった。
658: 本当にあった怖い名無し 2005/11/22(火) 13:16:38 ID:nPb4xYi80
爺様の話。
キノコ取りのために山深く分け入った時
山の奥から人とは思えない、それこそ
巨人のような大鼾が聞こえてきて
すっかり肝を潰して逃げ帰ったそうな。
結局、手ぶらで帰宅したのだが
キノコを期待してた婆様に烈火の如く怒られたそうな。
「あの鼾よりも婆ちゃんのほうが怖かった。」
という爺様のコメントをオチとして
とっぴんぱらりのぷー
659: 本当にあった怖い名無し 2005/11/22(火) 17:04:35 ID:nPb4xYi80
爺様ばっかりではアレなんで他の話でも・・・。
リア小時代の先生の話。
先生が引率として行った山での宿泊研修で
夕食の時間にある問題が起こったという。
班ごとに別れた生徒達が、バーベキューやカレーなどを
自らが火をおこし、調理をして食べるという手筈になっていたのだが
どの班も一様に
「火が点かない」
と口を揃えて先生に訴えてくる。
火起こしに慣れたプロの指導員ですら
どんなに木を擦り合わせても煙も出ない有様だったという。
天気は乾燥気味の晴れ、風もないのに、何故かまったく火が起きない。
ライターやマッチなどの火は出るのだが
いざそれを薪や枯れ葉に燃え移らせても、みるみるうちに消えてしまう。
これはどうしたことだ、先生達は頭を捻っていると
指導員の一人が「あっ!!」と、何か思い出したように叫ぶと
やおら山に分け入っていった。
何事かと見守ること数十分、体中に泥やら枯れ葉を付着させた指導員が
フラフラになって戻ってきて
「どうもスイマセン。山頂の神さんに火を起こす許可を貰い忘れてました。」
と曰ったという。
その後、問題なく火は起こり、生徒達はようやく食事にありつくことができたという。
687: コピペ 2005/11/24(木) 20:55:59 ID:2Isu4RMS0
178 名前:可愛い奥様 メェル:sage 投稿日:2005/10/30(日) 21:04:34 ID:uWq/rSv/
私が住んでいる地域は、東向き方向には繁華街もあり
バスも地下鉄も私電も通っていて、結構にぎやかだけど
西方向には山の向こうに小さな町があるだけで交通手段
も何度も倒産しかけて再生手続きばかりやってる民営バス
しかない。
でもって、先日その小さな町に夕方から用事があって駅前
から町行きのそのバスに乗ることに・・・乗ってる時間は1時
間半程度だけど、流石に夕方からそっち方向に乗る乗客は
私一人で、誰もいないバスの真ん中ぐらいに座って、窓の外
を見ていました。
いくらも走らないうちに窓の外は細い山道に入り、対向車との
すれ違いすらままならない程・・外は暗くなってくるし、山道は
真っ暗だしで『気持ち悪いなぁ』と、思っていたら後の方で
『ボソ・・ボソ・・』という喋り声と誰かが身動きする衣擦れの音
がして、何となくああ、誰か別の乗客がいるんだな・・と思って
いたけど、ふと今は自分以外には乗ってないはず!と思い当
たって慌てて後を振り返ると案の定誰もいない。
688: コピペ 2005/11/24(木) 20:57:13 ID:2Isu4RMS0
179 名前:178 メェル:sage 投稿日:2005/10/30(日) 21:06:19 ID:uWq/rSv/
続き
気のせいかと、思って前を向いていると間違いなく誰かの
喋り声、それも一人じゃなく何人ものつぶやき声が後の座席
からする!しかも私が座っている座席の直ぐ後の席からも
誰かが身じろぎする座席が軋む音がして、もう怖くて仕方なく
思わず運転手さんのすぐ後ろの席に移動した。移動する時に
もう一度、後部座席を見たがやはり私以外は無人でした。
でもバスから降りようにもそこは山道の中のバス停しかなく
当然そんな時間にはバス停に誰もいるわけなく、周りには人家
らしきものも殆どないので、降りたら降りたでもっと怖いだろうし
・・というより、降りたときに万一その訳の判らない気配も一緒に
降りてきたら?と思うとそれも出来ないので、早く終点に着いて
欲しい!と願っていたけど、その変な気配はどんどん賑やか?に
なってきて、呟き声もちょっとザワザワと感じるぐらになってきて
しかも足音が後から前に、前から後に何回もし始めた。
689: コピペ 2005/11/24(木) 20:57:47 ID:2Isu4RMS0
180 名前:178 メェル:sage 投稿日:2005/10/30(日) 21:06:55 ID:uWq/rSv/
続き
でも真横を足音が通っても、相変わらず何も見えない、気配が
するだけで、運転手さんは何も聞こえないのか?感じないのか?
と不思議に感じるぐらいで、もう我慢できなくて変に思われても
いいから運転手さんに話そう!と決心した時に、いきなりその
運転手さんが、少し山道の少し広くなった部分でバスを停めて
『ちょっとすみませんねー』と言いながら、席を離れて窓の
カーテン(窓に備え付けになってる上から引っ張って下ろして
眩しい時などに遮光するタイプ)を大きな音をさせて一度下まで
降ろして、そのまま今度は上まで跳ね上げる・・とバタン!バタン!と
いくつかやりながら、バス通路をドタドタとあの足音の様に行ったり
着たりした後、座席に戻ったらあの変な気配が全く無くなっていました。
後は、終点に着くまで何も無かったけど、運転手さんの話では
この経路ではたまにあることで、運転手間では有名でなったときの
対処法wwも申し送られてるとか・・『別に悪さをする訳じゃなくて、
自分達が間違ったところにいると知らないんじゃないかな?ああ
やって大きな音で脅かせば、慌てたみたいにいなくなりますから』と、
事もなげに言っていた・・て、それかなり変な事じゃないかと?運転手
さんに小一時間言いたい!| ̄|○
帰りは深夜だったし怖いのでタクシーで帰ったけど、山の中って
絶対何かいるよーー!
778: 本当にあった怖い名無し 2005/12/01(木) 01:53:49 ID:6N0fae+W0
1人だと確かに山は怖い。
近所の小さい山に山菜採りに行った時に
何か大きい動物か何かが死んでるかのような
強烈な腐敗臭がした時には、怖くて確かめる事もできずに
一生懸命逃げ帰ったヘタレな自分には
1人で登山するなんて想像も出来ないorz
789: 本当にあった怖い名無し 2005/12/01(木) 14:08:03 ID:jlItPHWH0
>>778
自分は単独登山ばっかりなんだが、山は恐いと思う事はないけど畏れを感じる
事はあるな。里っていうか住宅街なんかだと、人の領分だって感じだけど、
滅多に人も入らないような稜線の奥のほうなんか、ホントに神様の領分って
感じる。
若い時は気が勝ってたから、山頂に到達すると独り占めしてここは俺のもんだ
みたいな畏れ多い事を思ってしまったけど、そんな時は下山中に滑落したり
転んで捻挫したり、枝で股刺しちゃったりと叱られたものだった。
いまはきちんと、無事に登頂させてもらった事を神様に感謝して、お供えの一つも
置いてくるようにしてる。おかげさまで怪我一つしなくなったよ。
781: 本当にあった怖い名無し 2005/12/01(木) 03:49:39 ID:sUgLJcj70
夜の山道が好きで時々一人で車を走らせる。
何度か来た事のある少し広い所に車を止めて一休み。
山深い場所で空気が冷たく、星も見えて気持ちよかったんだけど、
すぐ傍の沢の方から動物の呼吸音が聞こえてきた。小動物ではない気配。
何がいるのか知りたかったけど怖いからやめたよ。
696: 全裸隊 ◆CH99uyNUDE 2005/11/26(土) 07:59:44 ID:FgFSsCqV0
古い登山靴
夏と秋、山小屋でアルバイトをしていた後輩が下山してきた。
朝から晩まで追い回されるように過ごし、ほんの少しの山歩きを楽しんだらしい。
その山小屋は、夕方ともなると宿泊する登山者で満杯になり、
靴が整然と玄関付近を埋め尽くす。
無論、整然と靴を並べるのは我が後輩の役目だ。
指名されたわけではないが、何となく、後輩の役目になってしまった。
靴を各自で保管すれば良さそうなものだが、小屋の主人の方針で
客の靴は玄関に並べておく。
翌朝、客が出かけ始めると、玄関から靴が消えていく。
ある朝、全ての宿泊客が出払った後、靴が一足だけ残された。
年季の入った古い登山靴だ。
昨夜、これがあっただろうかと思い返してもはっきりしない。
覚えきれないほどの人数が泊まれるような施設ではない。
小屋の主人に声をかけ、靴を見に玄関へ戻ると、すでに靴はない。
翌朝、彼の忙しい一日が始まり、宿泊客の出発が一段落し、
せわしない一日の中でも、時間の流れが少しだけゆったりする頃、
玄関の掃除を始めようとする彼が見るのは、昨日と同じ靴だ。
697: 全裸隊 ◆CH99uyNUDE 2005/11/26(土) 08:00:29 ID:FgFSsCqV0
小屋の主人を呼びに行った。
無論、二人が戻る時には靴など残っていない。
三日目にも靴はあったが、もう彼は主人を呼びに行かなかった。
小屋の主人を連れてくることが、靴の主を追い立てる行為に思えた。
数日後、客が出払った後の玄関に、その靴はなかった。
代わりに食堂のテーブルに彼宛の封筒が置かれていた。
封筒を開くと、しわくちゃの千円札が一枚。
客からの心づけだから取っておけと主人に言われ、彼は千円札を
財布に入れた。
千円札に印刷されている人物は、伊藤博文だった。
あの靴と同じくらい年季が入った、古い札だった。
698: 本当にあった怖い名無し 2005/11/26(土) 20:54:07 ID:EnPKOyUsO
面白い話でした
乙です!