2: 1◆0sA8GVLJwJ07 19/06/25(火)20:37:45 ID:3KH
今日は和歌山から徳島へ
海上風警報が出ているだけあって風は横から叩きつけるように強く吹いていて、白波もたくさん立っていた
そんな中、操舵するおれの後ろで船酔いに苦しむ男が
これから3日くらい同行する予定の、シンヤ君という子だ
前スレでもちょっと説明したけど、シンヤ君は「馬と冒険がしたい」とおれに相談に来た子で、実際にモロッコで馬と300km野宿旅をしたという実績のある子だ
冬に冒険したいと言うからおれが馬と1000km冒険したキルギスじゃなくてモロッコをおすすめしたら、本当に達成してしまった
今回は数日同行したいとのことだったから、コミュ障のおれはタジタジながらも受け入れることにした
マスト付近や甲板での移動もあるというのに、新谷くんはサンダルだった(一応運動靴も持ってきたとのこと)
ただし、馬との冒険もこのサンダルでやったそうなので、それが彼のスタイルらしい
…まあ大丈夫なんだろう、落ちたら頑張って這い上がってきてもらおう笑
風が強くて海が荒れていたので、新谷くんはすぐに酔ってしまい、何もできなくなったようだった
また、クリート留めやモヤイ結びもなかなか難しそうだったから、ジブセール(前後の帆のうち前側の簡易的な帆)の着脱をお願いすることにした
そして途中、プロペラに何か絡んだようで速度が落ちた
おれのヨットのプロペラはサッカーボールくらいの大きさしかなく非力なので、海面近くを漂う海藻が巻き付くとそれだけで速度が落ちてしまう
今までも何度かあったことだったけど、これだけ風が強く船が揺れる中でプロペラを確認して解決するのは難しそうだ
…というわけで、風を受けすぎないようにストームジブ(荒天用の小さい帆)だけを使い、トラブル中で速力の低いエンジンと併用して航行することにした
静岡からここまでは機帆走と呼ばれるスタイル
(エンジンと帆を同時に使い、速力はエンジンに、安定度を帆に担当させるというやり方。元オーナーさんはこれだったのでおれはこれしか教わらなかった)
でほとんどやってきていたから、セーリングはまだまだ練習しているところだ
ストームジブに風を受けさせながら、バックに入れてエンジンをふかす
プロペラに絡まったものはこうやると取れる場合があるらしいが、今回も何度かやっていると取れたようで、速力が改善した
3: 1◆0sA8GVLJwJ07 19/06/25(火)20:38:30 ID:3KH
そして今日の目的地、徳島県の伊島に到着
シンヤ君は航海の最後の方は少し楽になったようで、上陸時には普段通り動けるようになっていた
「動画やスレに出るなら何か役割が欲しい、何かで活躍していいとこ見せたい!」と意気込んでいるシンヤ君だったけど、
もやい結びやクリート止めは難しかったようだから動けても活躍の場は無かった…
果たしてこのたったの3日の間に活躍できるんだろうか…
伊島は洞窟などもあって尖った丘の多い、まさにRPGにぴったりな雰囲気のある島だったけど、到着したのが18時頃だったので特に何もセず就寝
雑貨屋はしまっていて軽油の補充もできなかったけど、まあ明日は追い風だから帆走でそこそこ進める…はずだ
6: 名無しさん@おーぷん 19/06/25(火)23:12:36 ID:9Em
おい!来たぞ!!新スレは楽しくやろうぜ!!四国?鹿児島まで行ったんじゃないのか!?!?
まさかぐるりんちょ!って四国周遊してるのか!
15: 1◆0sA8GVLJwJ07 19/06/26(水)11:12:12 ID:ovu
>>6
めっちゃ元気よくて草
今は熊本におるったい!
熊本はたいぎゃよかとこ
9: 名無しさん@おーぷん 19/06/26(水)00:12:39 ID:p3P
>>6
文章にしてまとめてるのが四国ってだけで
現在地とは関係ないんじゃね?
13: 名無しさん@おーぷん 19/06/26(水)11:00:01 ID:nkY
>>9
なんだってー!じゃあ既に青森にいる可能性もあるってことか!!
ゴールどこだっけ?台風が来るってビッグニュースが来たから見に来た!!!
15: 1◆0sA8GVLJwJ07 19/06/26(水)11:12:12 ID:ovu
>>13
ゴールは静岡!
7: 名無しさん@おーぷん 19/06/25(火)23:22:44 ID:u1z
ワクワクもしたいがご安全に!
15: 1◆0sA8GVLJwJ07 19/06/26(水)11:12:12 ID:ovu
>>7
頑張る!!
8: 名無しさん@おーぷん 19/06/26(水)00:00:56 ID:xsg
タイミング合えば釧路で和商の勝手丼奢るぜ!
15: 1◆0sA8GVLJwJ07 19/06/26(水)11:12:12 ID:ovu
>>8
やったぜ!
今後大きな問題なければ北海道回れそう
北海道は8月かな
10: 北海道人 19/06/26(水)01:18:35 ID:2dm
無事に順調に進んで是非道東来てくださいなー
15: 1◆0sA8GVLJwJ07 19/06/26(水)11:12:12 ID:ovu
>>10
北海道民おおいなw
時計回りの予定だから東側は最後だし、時間余ってればゆっくり回れるかも!
11: 名無しさん@おーぷん 19/06/26(水)05:55:31 ID:QZj
漁船?
15: 1◆0sA8GVLJwJ07 19/06/26(水)11:12:12 ID:ovu
>>11
ヨットだな
上下に長いから係留する時はその辺気をつけないといけない
16: 1◆0sA8GVLJwJ07 19/06/26(水)12:36:57 ID:ovu
次の日
昨日と違って海は穏やかで、風も追い風だったのでエンジンを止めて帆走だけで結構進むことができた
まだセーリングは不慣れであまりわかっていなかったけど、風さえ吹けば帆だけでもエンジンと同等以上に進めるらしい
昼前には風が弱まってきたのでエンジンをかけ、昼過ぎに徳島県の牟岐漁港に到着
漁協の方がすぐに来られるように漁協前に係留したが、GW明けの平日にもかかわらず数時間待っても誰も来なかった
静岡や近畿では漁協の人が係留場所について指示をくれることがあったものだけど、この辺りではあまりその辺は気にしないのかもしれない
漁師の人たちももう仕事を終えているようすだったし、ひとまず邪魔にならなそうなところに係留し直して、上陸
船のすぐ近くの木ではゴイサギという鳥がつがいで暮らしていて、カラスのような潰れた声でぎゃあぎゃあと鳴いていた
茶色い海藻のようなものを地面に広げているお婆さんがいたので声をかけてみたところ、なんでも布海苔というものを広げて乾燥させているらしい
天ぷらにしたり、東北だと味噌汁の具にしたりでき、漆喰の原料や薬にもなるそうだ
夕食後、シンヤ君が「良い所を見せたい」と主張したので何ができるか聞いたところ、鍵屋で働いていたからこそできる特技を見せてくれるとのことだった
南京錠と針金を渡してみたところ、どうやら針金が柔らかい過ぎたらしく、ヘアピンが要るというので買って渡してみる
これは…かっこよさそう…!
17: 1◆0sA8GVLJwJ07 19/06/26(水)19:35:31 ID:ovu
シンヤ君
「この南京錠は一番簡単なタイプですね」
そう言って、ヘアピンを曲げて開けるための道具を作り始める
そして、20分後…
結果…!!
いやできないのかよ!!
シンヤ君
「まあ、鍵ってものは開けられないように作られてますし…」
…う、うん、そうだな
…どうしよう、どこで活躍してもらおう笑
早くもやい結びかクリート止め綺麗にできるようになってくれ…
そして次の日、シンヤ君にとっては最終日が早くもやってきた
今日は高知県南東の室戸岬を回って、反対側にある漁港へ行く予定だ
逆向きの潮流があって向かい風も出ていたけど、エンジンを使って少しずつ進む
室戸岬の先端は海が少し荒れていて潮流も少し複雑になっていた
こういう場所では水深やホンダワラに注意しないと…と思った矢先、規則的な音を立てていたエンジンがいきなり急停止して、船が完全に止まってしまった
船から顔を出して水中を覗くと、大量のホンダワラ…
あぁ、やってしまった!!
※ホンダワラ
かなりガッツリと絡んでしまったようで、エンジンの前進/後進のレバーすら動かせない
目的地の港はもう見えていたけど、エンジンが無いと帰港はできないだろう
仮に帆走で付近まで行けたとしても、帆走ではバックもブレーキも無く、風にまっすぐ逆らって進むこともできないから港の岸壁に衝突しかねない
そうなったら大惨事だ
おれ
「シンヤ君、ジブセール張ってもらえる?
エンジン周りの問題はおれが何とかする」
時刻は既に夕方で、日が沈もうとしている時だった
ここで何十分も足止めを食らったら日が沈んで暗い中危険な航海をしないといけないだろう
前の帆だけで航行するのは若干バランスが悪いけど、この3日間シンヤ君にはそれをやってもらっていたから、時間はかかっても確実にできるはず
これでおれがホンダワラを何とかできれば、時間ロスを最小限に抑えて復帰できる
18: 1◆0sA8GVLJwJ07 19/06/26(水)20:15:01 ID:ovu
船のフチから船の下を覗き込むとホンダワラ
(と呼ばれているもの。もしかするとホンダワラ科でないものも今後そう呼ぶかもしれないけど、この冒険ではホンダワラで統一する)
が大量に伸びてきていたので、長い棒を使って少しずつ取り除くことにした
どうやらプロペラにホンダワラが幾重にも重なって絡みついているらしい
漁船の大きなプロペラだとエンジンをかければ簡単に引きちぎれるらしいけど、このヨットのエンジンはかなり小さく30cmの立方体に収まってしまうようなサイズなので地道に手作業で取るしかない
下手に引っ張ってプロペラを破損させたら終わりなので、強くは引っ張れなかったけど、引く方向を少し変えれば取れるものも多かった
そして、大方取り除けたところで改めてエンジンをかけプロペラを回してみる
エンジンが正常にかかり、ドドドドド…といういつものエンジン音が聞こえてきた
レバーを前進の方に倒す
…よし、進む!大丈夫だ!!
いつもの1/3くらいの速度しか出ていないけど、十分だ
そうして、港へ向けて再出発
出発後、シンヤ君がジブセールを張り終えてくれたのと、レバーをバック側に大きく倒してみたらかなりの量のホンダワラが取れたようで、風と合わせて4ノット(時速7キロと少し)出るようになった
そうして無事、目的地の室戸に到着
日没ギリギリだ
レーダーが無いこの船で暗い中航行するのはかなり危険(船灯が暗いから、他船と衝突したり養殖イカダが見えずぶつかって壊してしまったりするかもしれない)だったから、間に合って良かった…
夜は打ち上げということで、金目鯛の丼を注文して乾杯
この室戸では金目鯛が有名らしい
そして次の日、シンヤ君はバスで家へと帰って行った
残ったおれは港内で海に潜り、プロペラに少し残ったホンダワラを外す
まだ5月だったけど、意外と水は冷たくなく、ホンダワラも手で簡単に外せたから、15分位で作業を終えることができた
今後、ホンダワラ等が絡んだ時は「潜る」というコマンドが使えるようになった(もちろん沖合で一人で潜るのは危険だから命綱必須)わけだから、静岡から出航後に何度もおれを悩ませていたホンダワラはこれで攻略済みということになりそうだった
シンヤ君が乗ってた時の動画:
【リアルRPG 海賊編15】本州から四国へ! 馬との冒険経験者が乗船しに来た話【和歌山県(阿尾漁港)~高知県(室戸)】
https://youtu.be/U7fmuBOIoi8
19: 名無しさん@おーぷん 19/06/26(水)21:29:23 ID:G3I
最新動画見たけど身に付けてる服の色と、痩けた頬で人参にみえたぞ。身体に気を付けてな。
20: 1◆0sA8GVLJwJ07 19/06/26(水)21:42:30 ID:ovu
>>19人参は草
この時はアドレナリンどばどばでいつもより顔変な気がするからそれもあるかも
とりあえず痩せすぎないようにして、体には気をつける
ありがとう!
21: 名無しさん@おーぷん 19/06/26(水)21:50:46 ID:iV4
海の写真が増えてきた!w
23: 1◆0sA8GVLJwJ07 19/06/27(木)10:03:02 ID:vgw
>>21
今回は周りの景色海しかないから…笑
22: 名無しさん@おーぷん 19/06/27(木)00:07:20 ID:rg2
漂流した人は日焼けし過ぎててオットセイと間違われたとかいう話を思い出した
23: 1◆0sA8GVLJwJ07 19/06/27(木)10:03:02 ID:vgw
>>22
多少は焼けたかなあ、でもおれ真っ黒まではならないけど
24: 1◆0sA8GVLJwJ07 19/06/27(木)10:50:35 ID:vgw
さて、ここ室戸にはドルフィンセンターという施設がある
水族館とかのイルカショーとは違って、イルカがいる海 (外海とはネットで仕切られているだけの場所) の中に入って好きなだけ触れ合ったり、泳いだりでき、
文字通り目の前でイルカジャンプやその他輪投げなどの芸を見たりすることができる
せっかくなので行ってみることにした
おれが申し込んだのはイルカと触れ合ったり飼育員の方と一緒に指示を出して芸をしてもらうというものだったから、
海に浸かるのは下半身だけでよく、服の上から半身だけの防水スーツを着るだけで良かったから準備も簡単だった
おれは大人なので、クールに知的にイルカとの触れ合いを楽しむ
(おれのはしゃぎぶりに飼育員のお姉さんが若干引いてた気もするけど、多分、気のせいだ)
そして翌日、出航
今日は四国南部の土佐湾を渡って高知県西側の土佐佐賀という港まで行く予定だ
ドルフィンセンターの飼育員の方が「この辺りには野生のイルカもいるから運が良い時は会えるかも」と言っていたのでそれに期待して、今日は全力でイルカを探すことにした
しかし、丸一日かけて航路付近にイルカが来ないか探したものの、イルカは影も形も無くて、代わりに大量のホンダワラをあちこちで見かけただけだった
もう少しで夕日が沈んでしまいそうだったから、諦めて土佐佐賀に寄港することに決定
土佐佐賀の港は鹿島という小さな島の後ろに隠れる形だったので、その鹿島の脇を通って裏側に回らないといけない
…と、その時
鹿島の隣を通過しようとすると、少し先の港の入り口の狭い所に遊泳者らしき影が見えた
えぇ…危ないだろ!
プロペラに巻き込まれると大惨事になるのでプロペラの回転数を最小限にして、慎重に港へ近づく
さすがにこの船に気付けば逃げてくれるだろうし…
その遊泳者の影は夕日の逆光でよく見えなかったけど、数十秒に1回しか息継ぎをしていないようで、たまにしか水面に頭を出さなかった
普通は数秒に一回は息継ぎする気がするけど、海女さんとかで潜り慣れてる人なんだろうか…?
25: 1◆0sA8GVLJwJ07 19/06/27(木)12:00:01 ID:vgw
そんなことを思いながら港の入り口を通過しようとすると、すぐ近くで灰色のなめらかな動物が姿を現した!
こ…、こいつは!!
※gifアニメ
View post on imgur.com
イルカだ!!!
すぐにプロペラを止めて、イルカを傷つけないようにする
おそらく1頭だ
だいたい15秒くらいの間隔で、後頭部についている鼻を海上に出して呼吸をしている
通常イルカは群れで生活するはずだから、迷子だろうか?
気になりつつも、しばらくするとイルカは少し離れたところで泳ぎ始めたので、日没直前ということもあり観察を切り上げて港へ入ることにした
おれ
「イルカァ! 仲間になれよ…!」
…まあ、イルカを仲間に加えるのは色々問題があり過ぎて無理だろう笑
入港後、係留場所は川を少し遡ったところにあったので、水深を気にしつつ隅っこの方に船をとめて上陸
いつも通り、ガソリンスタンドで軽油の補充をして、雑貨屋で食材を買い足す
雑貨屋の店主によると、この街は別にイルカで有名だったり棲み着いていたりする訳ではないらしい
さっきイルカが見られたのは純粋に運が良かったみたいだ!
その日はいつもにも増して気分よく入眠することができた
ドルフィンセンターから土佐佐賀までの動画:
https://youtu.be/fPrkphPrAWQ
26: 1◆0sA8GVLJwJ07 19/06/27(木)23:52:10 ID:vgw
次の日、いつもよりかなり遅めの9時頃に出発して、足摺岬の土佐清水へ向かう
足摺岬は高知県の南西にあって、土佐湾をでてすぐの所に港がある
出航後、土佐湾を出ようとした時、後ろの遠くの方で何やら水しぶきが複数上がるのが見えた
少し減速してようすを見ていると、その水しぶきはどんどんこちらへ近付いて来る
いっ……
イルカの群れだっ!!!
野生のイルカの群れを、自分で操舵する船から見られるとは思わなかった
イルカたちはどんどんこちらへ近づいてきたので、プロペラを停止して風だけで航行していると、イルカたちが船の周りに集まってきて伴走してくれた
すごい!
これは、土佐湾を出るおれをイルカたちが見送ってくれてるんだ、そうに違いない!
そんな風に勝手に思い込んで興奮しつつ、イルカたちを観察する
船の周りに集まって来たのはおそらく10匹くらいで、群れの一部のようだ
近づく時はすぐに近付いてきたのに、なかなか船から離れないところを見るに、やはり明らかに船に集まっているといえた
※Twitterの動画リンク(ごめん、元動画どっかいったのと、梅雨で電気足りてなくてgifアニメ出力キツい)
水中を自由自在に泳ぐイルカたちに魅了されつつ、この冒険やって良かったっ!!なんて早くも思いつつ、イルカたちを観察する
その後、イルカが離れて行ったのを確認してプロペラを再始動して先へ
足摺岬を回って土佐清水へ
土佐清水に到着して港へ入ると、付近にいた漁師さんたちが「こっちに停めるといいよ」と気さくに教えてくれた
教えに従い、「外から来たヨットがよくとまっている」という場所に係留
どうやらこの土佐清水にはたくさんのヨットが寄港するらしい
サウナ付きの銭湯があったので久しぶりに体を綺麗にして、夕食はせっかくなので特産品の清水サバを食べることにした
身が引き締まっていてとても美味しい
この町もなんとなく居心地が良さそうだったので、数日滞在することに決定
27: 1◆0sA8GVLJwJ07 19/06/28(金)00:01:44 ID:0Sq
その後の数日は特に大きな出来事もなく、連載の原稿作成や動画編集をして過ごした
強いて挙げるとすれば、一度海保の職務質問を受けたくらいか
その時にエンジンの点検をしていて、エンジン室の部屋の一つに200ml位の水が溜まっているのを発見した
↓かなり分かりにくいけど、写真左下辺りにちょっとだけ水が溜まってるのが分かると思う
海保の人や元オーナーさんに質問したところ、ここには少しずつ水が貯まるものらしい
今までの航海でそこに水が溜まっているのは見たことが無かったけど、正常なら良いかと思い、数日後の出航時にまとめて水を抜くことに決定
まあ、大したこと無いだろう
…なんて、その時のおれは考えてた
天気は少しずつどんよりとしてきたから、これからはなかなか快晴の青空が拝めないかもしれない…
あと2週間もすれば、梅雨がやってくる
28: 1◆0sA8GVLJwJ07 19/06/28(金)00:19:02 ID:0Sq
その後数日は予想されていた通り雨が降り続き、波や風がでていたので出航ができなかった
ひどいときは沿岸の波高が4m弱になっていたようで、屋久島では50年に一度の豪雨が降ったらしい
せめて波高が1.8か1.7mくらいなら覚悟の上出港できるけど、2mを越す時点で舵はきかないだろうから出航してもすぐ遭難扱いにされてしまうだろう
仕方がないので港でおとなしく過ごし、ようやく海が穏やかになり晴れた日、おれは出航するべく準備を始める
そしてその準備の中で、排水しようと思っていた、エンジン室手前に溜まっていた水が増えているのに気付いた
海保の職質の時と比べて2.5倍ほどの深さになっていた
流石に増えるペースが早過ぎるし、おかしい
そういえば、以前エンジンを修理した際に、エンジニアの方が冷却水系統から漏れが出るかも知れないと呟いていたのを思い出す
それが原因じゃないかと思い、とりあえず水を抜かずにヤンマーディーゼルの店へ行ってみてもらうことにした
しかし、メカニックの方にみてもらった結果、エンジンには全く異常が無いということが分かった
じゃあ何で水が溜まってるんだ…?
エンジン室の底に溜まっていたからエンジンが原因かと思っていたけど、そうではないらしい
原因不明で若干もやもやながらも、ポンプで排水を開始
…ん…?
あ、あれ…?
水が減らない…?
29: 1◆0sA8GVLJwJ07 19/06/28(金)00:39:07 ID:0Sq
ぱっと見には少ししか入っていないように見えていたけど、もしかすると床下全体に水が…いやいやまさか
しかし、何十リットルもの排水を試みるも、水は無くならなかった
どう考えてもおかしいので、恐る恐る床板を外して下を確認してみる
…ああ、やっぱり!
船室の床下一杯に水が溜まっていて、一部はエンジン室の入り口側、プロペラシャフトがあるところへと溢れ落ちていた
な、なんだこれ…!
とりあえず、原因不明ではあるものの、ポンプで少しずつ水を吸出すことにした
1時間以上かけて排水を完了…したかに思えた
…が、しかし
ふと見ると、さっき完全に排水したはずの仕切り内に水が溜まっている
…え…?
なんと、どうやら船底からじわじわと、流れすら見えない程の速度でゆっくりと浸水してきているようだった…!
速度が遅いのでポンプでの排水を継続すれば今のところは何とかなりそうだったけど、船底にヒビでも入ってしまったんだろうか…?
潮岬で船を直して貰ったときは間違いなく浸水していなかったから、それ以降のどこかでこの現象は始まったに違いない
さらに、この港で海保に職質された時はほとんど溜まっていなかったことから、この問題はこの港に係留してから起こった可能性が高い
あとは、ここ数日続いていた大雨がどこかに溜まって床下へ流れているのかもしれないと考えて、溜まっている茶色い汚水を指に取り舐めてみる
…しょっぱい
これは海水だ
当時の動画:
【リアルRPG 海賊編17】冒険中止の危機【高知県(土佐佐賀~土佐清水)】
https://youtu.be/Z8MrEXpswM4
34: 名無しさん@おーぷん 19/06/28(金)10:20:27 ID:cnF
>>29
それでいまどうなってるのか
35: 名無しさん@おーぷん 19/06/28(金)10:55:07 ID:lVk
>>34
完全には直らないみたいね
36: 1◆0sA8GVLJwJ07 19/06/28(金)13:13:52 ID:0Sq
>>34
これから書くからw
30: 名無しさん@おーぷん 19/06/28(金)03:05:18 ID:7Qc
サビサビですやん
31: 1◆0sA8GVLJwJ07 19/06/28(金)06:11:15 ID:0Sq
>>30
この船もうお婆ちゃんだから…笑
41: 1◆0sA8GVLJwJ07 19/06/28(金)17:56:45 ID:0Sq
船を陸に揚げないと直せないかもしれない…けど、船底に金属板が飛び出ている形状のこのヨットを乗せられる船台は少なく、この近辺には無いかも知れない
…となると、他の港へいかないといけないけど、ヒビが入っていたとして、航海中に広がり一気に浸水して沈没する可能性もあるかもしれない
そう考えると長距離航海できるかどうか怪しい
なら、ここで直せなかったらゲームオーバー、廃船しかないんだろうか…?
不安になりつつ、船の陸揚げや修理について、ダメ元で漁協に聞いてみることにした
漁港の人
「ウチでは修理とかは一切わからないね
あそこに全部委託してるから」
漁協の職員が指差す方を見ると大きい工場のようなところがあり、何台か船が陸揚げされていた
船工場だ!
なんでも工場長はかなりの腕利きらしく、以前は1ヶ月に4、5杯の船を作り海へ送り出していたらしい
また、去年は京都御所の池に浮かべる木の船を造船したりもしていたらしく、まさしく名工と呼べるような社長がいる工場らしい
なんて運が良いんだ!
クレーンもあるのでヨットを上げられるだろうし、これは勝ちパターン入ったかもしれない!
期待しつつ、造船所の近くへ移動し係留
どうやら、少なくとも少し航海したくらいでは浸水が速まったりはしないみたいだ
42: 1◆0sA8GVLJwJ07 19/06/28(金)17:58:02 ID:0Sq
おれが係留した場所の隣には船がぎゅうぎゅうに繋がれていて、前後左右を囲まれ出せない船もあった
後で聞いた話によると、それらは廃船予定の船だったらしい
つまり、今おれの春馬丸 (友達が呼んでた名前だけど、何となくおれもこの名前で呼ぶようになってしまった) が繋がれている場所は、船の墓場とも呼べる場所のようだ
到着後、付近の人に聞いてみたところ、工場長は夕方にならないと帰ってこないとのことだ
船を陸へ揚げる為の線路が何本も海へと伸びていて、千と千尋の神隠しの世界みたいだった
工場で同じく船の修理を依頼していたり、何となく退屈だから来られたという漁師さんたちと話して過ごす
漁師さんたちは皆気さくでとても和気あいあいとした雰囲気だった
なかでも中田さん(仮名)という方は、日本一周していると話すと興味を持ってくださったようだ
中田さん「Twitterやってる?」
おれ「はい、あまり更新してないですが、やってます」
おれがそう言うと中田さんはスマホをしばらく操作して、「これ?」とおれに画面を見せてきた
おれのTwitterアカウントが映っている
まだ名前も言ってないのに特定されたww
おれ「すごいですね…笑」
中田さん「あれ、春間豪太郎ってあれじゃない?
昔、アフリカかどっかでラクダ連れて死にかけた人?」
おれ「あ、そうです」
中田さんだけでなく、他の何人かの方も「あ、それ読んだことある」と反応した
「ネットまとめに載ってたよなあ?」
…漁師さんって少し俗世離れしてるイメージがあったけど、普通にまとめサイト見るのか…
43: 1◆0sA8GVLJwJ07 19/06/28(金)18:31:13 ID:0Sq
そしてその後、工場長が帰ってきたので、船を見てもらうことになった
既に日は沈み、どんどん暗くなってきている中、船内の明かりと強力なLEDライトで浸水箇所を照らして説明をする
…が、工場長はおれの話を遮りすぐに
「陸揚げないと直せるかどうかも分からないけど、揚げるならそれだけで4~5万もらうよ
直すのにいくらかかるか想像つかないから廃船処理するのと同じかそれ以上かかるかもね
直せるかも分からないし
バラすなら(廃船処理)30万円ってとこかな
そもそも初めての船で日本一周なんて無茶だね
経験不足だから、戻って何年か修行してから出直し」
おれ
「えぇ…、そもそも『戻る』って言っても浸水したままだとヒビが開いて沈没したりとか…」
工場長
「船はそんな簡単に沈まないから
戻れるから、出直し」
工場長はそう言い、帰ってしまった
(実際は15分くらいは話したけど、冗長さを避けるために要約)
クレーンで揚げる場合に4~5万円かかるのはもしかすると普通なのかもしれないけど、マリーナなどでの一般的なヨットの陸揚げ費用の相場は8千円程度だというのは知っていたから、非常に高額だと思わざるを得なかった
そもそも、ヨットの正確な形状を伝えたにもかかわらず陸揚げの見積もりすらおおよそでしか出してくれなかったあたり、考え過ぎかもしれないけど「直す気はない」というメッセージのようにも感じられた
そういえば工場長はヨットの機帆走に対して強く否定的だったから、ヨットや冒険が好きではないのかもしれない
工場長とは戻る/戻らないという話をしたけど、ここからすぐに戻れる場所なんてもちろん無い
浸水している状態で多少の航海はできると言っても、さすがに静岡まではとても持たないだろう
そもそも静岡へ戻ったところで修理できるとも限らないし、状況はほとんど変わらないだろう
つまり、ここで修理できないのなら、もう廃船にするしかないのかもしれない
ゲームオーバー、だろうか…
44: 1◆0sA8GVLJwJ07 19/06/28(金)18:38:07 ID:0Sq
修理の糸口やアドバイスなども貰うこともできなかったので途方に暮れていると、話が終わるのを待っていた様子の中田さんがやって来て、美味しい中華の店で天津飯をご馳走してくれた
中田さん
「今回はうまくいかなかったみたいだけど、またいつか挑戦できるよ」
おれ
「いつになるんでしょうかね…
インコのほむらさえいなければ無茶できるんですが…」
中田さん
「いやいや、簡単に言うけど、海で遭難者が出ると漁師も大変なんだ
この前シケてるときに遭難した釣り人がいて、その人のせいでこの辺一帯の漁師さん丸一日仕事休みにして探し回ることになったから」
おれ
「ええ…、そんなことがあるんですね
ならますます出航するわけにはいかないですね…」
中田さん
「いやまあ、そのヨットは今の感じだと浸水が速まってもそうそう沈まないとは思うけどね」
「船はそう簡単には沈まない」というのは工場長も言っていた
遭難するのはマズいにしても、この状態のまま出航すること自体はどうやら大丈夫なようだ
中田さん
「だから、可能性があるとすれば、この近くのマリーナとかヨットレースやってる町とかで修理できないか聞いてみて、そこを目指すとかかなあ
この辺だとヨットの陸揚げ施設は中々無さそうだけど」
中田さんは、厳しい現実を教えてくれつつ、応援してる!と背中を押してくれた
そして、おれは浸水している薄暗い船内へ戻り、目を開けたまま横になる
…さあ
こっからだなあ…!
45: 名無しさん@おーぷん 19/06/28(金)22:26:00 ID:j2d
俺出てて草
もう鹿児島まで行ったのか
うまくいくといいなあ
応援してる!
47: 名無しさん@おーぷん 19/06/28(金)22:34:39 ID:7Qc
>>45
中田さん!?
49: 1◆0sA8GVLJwJ07 19/06/29(土)14:38:38 ID:hQM
>>45
今は長崎まで来ました!
ありがとうございます、頑張ります!
46: 1◆0sA8GVLJwJ07 19/06/28(金)22:32:48 ID:0Sq
次の日の朝、おれは四国にあるマリーナなどの施設に電話をかけて、ヨットを陸揚げできる施設がないかを聞いて回る
今いる土佐清水から近い順にかけるも、良い返答は得られなかった
「ウチには無いし、そもそも豊後水道の四国側にはそういう設備無いんじゃないかなあ」という回答ばかりだった
そして、連絡する範囲を愛媛県にまで広げて連絡を続けていると、一軒だけ「揚げられる」と回答が得られた施設を見つけることができた
愛媛県西予市のフィッシャリーナ(漁港とマリーナの中間的施設)だ
一般的なヨットの形状と少し異なる (多くのヨットはキールがもっと小さく三角形に近いが、おれのヨットは前から後ろまで長いキールが長方形に近いとも言えるような形で付いている) ことは説明したが、それでも陸揚げできるだろうとのことだった
そのフィッシャリーナの社長は、もしできない場合は船台を調整して乗るようにするから大丈夫、となんとも心強いことを言ってくれた
この土佐清水からそこへは100km以上あるが、そこが最寄りだ
冒険を継続するにはフィッシャリーナまで行って陸揚げして、原因を突き止めて直さないといけないだろう
ここへ向かって航海することに決定だ!
そして、少しでも浸水スピードが遅くならないか、できるだけの事はやろうと考え付近のホームセンターへ
ホームセンターで水中利用可能なパテを買ってきて浸水箇所を一部塞いでみたところ、少しだけ浸水速度が遅くなったようだった
いまこの場でできることはこのくらいだ
あとはできるだけ海が穏やかで条件が整っている日に一気にフィッシャリーナまで行くのが良いだろう
となると明日は向かい風だから、明後日がベストだ
追い波追い風、さらに昼過ぎまでは追い潮流まである
波も1m以下とかなり穏やかだ
さあ、準備して出発だ!
動画:
【リアルRPG 海賊編18】船室の床下からゆっくり浸水するようになって、簡単には直せないって事を知ったバカだけど【高知県(土佐清水)】
https://youtu.be/njB3g0xUbog
50: 1◆0sA8GVLJwJ07 19/06/29(土)14:59:08 ID:hQM
深夜、夜明け少し前に出発
「浸水があったとしても船はそうそう沈まない」と漁師さん達は言っていたが、最悪沈んでしまっても大丈夫なように準備をした
船が沈没した場合、ほむらは防水バッグの中に入っていてもらう予定なので、防水バッグの中に当分の餌を袋詰めで入れておいた
また、鳥類は肺の周りに気のうという空気袋を持っていて効率よく酸素と二酸化炭素を交換できるので、酸素が薄い環境でも比較的生きることができる
以前計算したところ、防水バッグ内の空気なら数時間おきに換気すればほむらは生きられるようだったので、漂流することになったら数時間おきに防水バッグを少しだけ開けて空気を入れ換えれば大丈夫だろう
袋にいれて防水仕様にしたHDDや救助を呼ぶための信号紅炎、水などをリュックにつめて救命用の浮き輪に繋いだから、最悪これだけ持ち出せれば良い
また、沈没して漂流することになった場合、何時から漂流し始めたとしても、(船の沈んだ位置の緯度経度を記録するのは当然として)ほむらの体調悪化が無い限り、海保に連絡するのは夕方16時以降にすると決めていた
遭難者が出ると、救助が終わるまではその地域の漁師が仕事できない場合があるらしいからだ
夕方になり漁師たちが港へ帰った後(多くの漁師は夜明から昼過ぎごろまで海にいるようだ)なら、そういったことも起こらない
真夜中出港の漁師も問題ないだろうし、夕方ピンポイントに出港する漁師もいるかもしれないがかなり数が少ないはずなので、この地域にはいないかもしれない
少なくとも多くの漁師さんたちの仕事を奪うことはないだろう
そして、現在船はいつも以上に沈んでいて水中の抵抗が大きいので、船が進む速度も落ちるかもしれないと考えて今日は西予を目指すか諦めるかの足切りラインを設けることにした
土佐清水から西予までは100km以上あり、少なくとも四国本島では宿毛市以降は問題が発生したときにアクセスしやすい主要な港が無いようだった
なので、宿毛市から南西に延ばした線分を基準ラインとして、このラインを11時半までに越えられなければ西予へは諦めて宿毛に寄港することにした
51: 1◆0sA8GVLJwJ07 19/06/29(土)15:17:41 ID:hQM
出港から一時間後
やはり船の速度は少し遅くなっているようで、潮の流れや風の力をおおよそ計算してみたところ、エンジン単体では普段の95%位の速度しか出ていないようだだた
とはいえ今日は追い風なので、それを補ってもあまりある位速度は出ているから、大丈夫だ
そして、出発してから数時間が経過
浸水が速まっている様子はない
…よし! 今のところは順調だ!!
そして、基準ラインを通過
まだ10時にもなっていなくて、理想通り、いい感じだ
そして、西予フィッシャリーナへはあと25kmとなった
目の前には戸島という島があり、ここを超えればフィッシャリーナへの障害は何も無い
浸水も問題ないので、あとはこの戸島をどちら側から抜けるかだったが、左側から遠回りして抜けることにした
右側は別の島との距離が近く、水深が浅く不規則な海流ができやすい上に岩礁もあるだろう
少し遠回りになっても、ここは広い左側を航行すべきだ
そう考えて左側へ
…が、戸島を横切り西予まであと20kmというところで、エンジンの動きがいきなり不規則になり、そして停止してしまった
おれは最後のツメが甘い展開は嫌いなので、最後ほど集中して取り組むことにしていて、見張りはかなりしっかりやっていた
ホンダワラの見落としはなかったはずだ…
59: 1◆0sA8GVLJwJ07 19/06/29(土)21:30:54 ID:Hcw
まずはプロペラの物理的なトラブルか、エンジンそのもののトラブルかを切り分ける為に防水スマホ(Torque G02)を海に沈めて船底を撮影し、プロペラの様子を確認する
ホンダワラとは異なる、何か白い糸のようなものがプロペラに絡みついていた
なるほど、釣り糸の様に丈夫そうな糸なので、これじゃプロペラは回らないだろう
また、ホンダワラなら大きいので船から限界まで身を乗り出して頭だけ海中に沈めるような形で棒で取れないことも無いが、この糸を外すとなるとナイフを持って潜るしかないだろう
命綱などの準備にも時間がかかるし、基準ラインを通過してから風が弱まり速度が落ちたので今はもう夕方だ
時間はない
というわけで、サブエンジンを起動し最寄りの港へ寄港することにしたが、少なくとも四国本島のこの辺りには港がない
どこに行こうか…と考え始めたが、考えるまでも無かった
目の前に島があったからだ
ああ、港は無くとも目の前に戸島があるから、船着き場位はあるはずだ!
サブエンジンを起動し、戸島へ
サブエンジンはあくまで非常用で予備の燃料タンクが無いので、これだけで西予まで行くのは無理だろう
島のすぐそばまで来ると携帯の電波が入ったので、GoogleMapの衛星画像で船着き場を確認
今いる位置の反対側にあるらしいので、岩場や水深に注意しつつ、ゆっくりと移動して到着
60: 1◆0sA8GVLJwJ07 19/06/29(土)21:41:25 ID:Hcw
おれが島に着いた時、ちょうどてんぐさというところてんの原料を潜って取る漁師さんが帰ってきたところだった
漁師さんはウエットスーツを着ていて、乗っている船には大きめのゴミ袋5つ分くらいの大量の天草が積まれていた
これらをたったの1日で集めたらしい
職人の技に恐れ入りつつ挨拶をして現在の状況を説明すると、ついでだからとおれの船のプロペラに絡んだ糸を外してくれた
ナイロンの糸が絡んでいたらしい
ともかく、これで明日出港できる!
礼を言っていると、てんぐさを干すのを手伝っていた周りの人たちがサザエ1匹とシリタカ貝を2匹くれた
シリタカ貝の内1匹は貝の部分に藻などが付いていて、少しキャラ立ちしていたので、そいつを除いてサザエ1匹とシリタカ1匹をオリーブオイルと塩コショウで味付けして焼いて食べることにした
シリタカはサザエより少しまろやかで中々美味い
残った1匹は非常食ということで水槽に入れ、餌となる海藻も入れる
さらに、実は潮岬でUSBで動作するブクブクをコンビニ配送により買っていたので、それも稼働
三木浦漁港の時よりはマシな環境のはずだ
動画:
【リアルRPG 海賊編19】浸水が止まらず沈みつつある船で100km航海【高知県(土佐清水)~?】
https://youtu.be/v0c5uh1XHkw
62: 1◆0sA8GVLJwJ07 19/06/29(土)21:53:22 ID:Hcw
翌日の朝、メインエンジンがかからないことに気付く
昨日ナイロンはちゃんと取ったはずなのに、なんでだ…?
セルは回るがエンジンがかかった時のドドドドド…という音にならない
バッテリーが弱っているのかと思ってほぼ満タンのサブバッテリーに繋ぎ変えたり、デコンプレバーを引くことで回転数を上げてエンジンをかけようとしたが、やはりかからない
まだ燃料は十分残っていたけど、念の為燃料をたっぷりと補給してから試すも、改善なし
プロペラのナイロンは完全に取れている…というかそもそもエンジンがかかった段階ではまだプロペラに繋がっていない状態なので関係ないだろう
…ダメだ、分からない
漁師さんに相談してみることにした
漁師さんはキンチョールをエンジンのホースに吹き付けることでエンジンを一時的にかけるという謎の荒業をやってのけたが、エンジン始動のスイッチを離すと止まってしまう
(後で知った話だけど、これはキンチョールのガスを使って噴射中だけ無理やりエンジンを動かすやり方で、エンジンに負荷がかかるのでやらないほうが良いらしい)
漁師さん「オイル(燃料)がいっとらんー!
ここじゃ直せんー
帆使って(西予まで)行けー」
漁師さんによると、なんでも、エンジンの燃料ポンプ内に空気が入っているらしく、業者に依頼するか専用の工具がないと修理できないらしい
…となると仕方がない、今日はメインエンジン使わずに西予を目指すしか無い!!
フィッシャリーナは修理施設も併設されているようなので、そこまで行って専門業者の人に頼めば確実に直せるだろう
(エンジン詳しい人は「は?」って感じだろうけど、もうちょっと待ってくれ)
64: 1◆0sA8GVLJwJ07 19/06/29(土)22:28:00 ID:Hcw
また、サブエンジンは燃料に余裕がなく、万が一西予手前で燃料切れになってしまったら、帆走で港に入ることになる
大惨事になりかねないからそれはなんとしても避けないといけない
帆走ではブレーキやバックが無く、帆を畳むのにも少し時間がかかり、風の強さによっては舵ききも悪い
港の岸壁や他の船に突っ込む可能性は大いにある
よし、メインエンジンが直せないなら、サブエンジンも港直前まで温存して、今日は帆走だけで航行だ!!
そして出航
メインエンジンがかからず天気も曇りだから船載バッテリーは充電できない
GPSやオートパイロットはかなり電気を消費するからできるだけ使わないようにしないといけない
今日は幸い南風が昼過ぎから強く吹く日だったので、追い風を捕まえて効率よくフィッシャリーナまで航行することができた
しかし、帆走にしては航行速度は申し分なかったものの、この日の問題は浸水だった
出航時の時点で、浸水速度が以前の3倍ほどに速まっていた
その後帆走中、浸水はどんどん速度を増し、フィッシャリーナ付近に来たときには6~7倍程度の速度で浸水し、船が揺れるたびに床下に溜まった海水が跳ねるという状況だった
えぇ…これやばいんじゃ…
しかし、戸棚などへの浸水には至らず、なんとかフィッシャリーナに到着
あと一日遅かったら浸水が速まり過ぎて航海できなかったかもしれないから、危ないところだった…
72: 1◆0sA8GVLJwJ07 19/06/29(土)23:50:15 ID:Hcw
そして、フィッシャリーナの社長さんの指示に従い、船を陸揚げ
浸水箇所が無いか、船底をよく見ると、あった…
ヒビだ…!
ヒビの部分やその周りは凹んだり傷ついたりしている様子は無かったが、なぜかヒビだけが入っていた
フィッシャリーナの社長
「どうする?
ヒビ塞ぐのはウチでやらせてもらってもいい?」
なんと、西予フィッシャリーナでは修理も業務としてやっているらしい
てっきり修理を依頼する場合は業者探しをしないといけないと思っていたけど不要らしい
プロの方が修理する所を間近で見れればかなり経験値が得られるだろうから、よほど高くなければお願いしたいところだ
おれ
「ちなみにその場合の見積もりはどのような感じに…」
社長
「そうだね、3日かかるとして…
だいたい計算してくるから待って」
そのフィッシャリーナの社長はすぐに大まかな見積もりを出してくださった
陸揚げ費用8000円、保管費及び修理費、そして船底塗装の際のペンキ代(ペンキはおれが塗る)で25000円の、合計33000円ほどとのことだった
安い!
ぜひお願いしたいと告げると、フィッシャリーナのスタッフの方が早速修理を始めてくださった
まずはヒビの周りを削って綺麗にし、完全に水を出すためとヒビが広がるのを止める為にドリルで穴を開ける
おれは金だわしや海水放射機のようなもので船底を綺麗にする
海水放射機は滅茶苦茶強い勢いで水が出て、その水圧で船が綺麗になっていくから中々面白い(動画参照)
74: 名無しさん@おーぷん 19/06/29(土)23:54:45 ID:Ivn
>>72
陸揚げの写真カッコE
77: 1◆0sA8GVLJwJ07 19/06/30(日)00:13:38 ID:OCp
>>74
おれも見た時けっこうテンション上がった!笑
場所によるけどマリーナとかだと夜は船の所有者は外で過ごさないといけなかったりするから、その辺り寛容な所でツリーハウス船内で寝れて良かった!
73: 1◆0sA8GVLJwJ07 19/06/29(土)23:50:32 ID:Hcw
フィッシャリーナの営業時間内には何とかすべて終わり、メカニックの方は帰っていった
陸揚げしたヨットにはハシゴがかけてあってツリーハウスのようになっているから、今日のおれの寝床はそこだ
この2ヶ月はずっと船内で寝起きしていたから「揺れない船室」にはかなり違和感があった
明日は傷を塞いでペンキを塗り、乾かして明後日進水させる予定らしい
ちなみにヒビの原因は錆だった
おれのヨットはキールと一体型になっていて、その金属でできたキールはFRP(ガラス繊維)で覆われている
内側の金属が何年もかけて錆びてその分膨らみ、FRPを内側から圧迫した結果今回のヒビに繋がったようだ
なので、この現象は避けようもなくまた再発するだろう
一般的なヨットは船体とキールが分離していてボルトでとめてある構造だからボルトからの浸水を押さえれば解決するけど、
一体型でかつおれのヨットのようにキールが錆びてボロボロの場合、外装のFRPにヒビが入った時点でどこであっても浸水が始まるということになる
とはいえ、パッとみた感じヒビのところ以外に大きく膨らんでいる部分は無かったから、おそらく今後数年は大丈夫だろうし、同じことがまたあったとしても今回の経験を活かして対処できるだろう
船は、どうやら直せそうだった…!!
75: 1◆0sA8GVLJwJ07 19/06/29(土)23:59:00 ID:Hcw
そして、翌日
ペンキを塗って、傷を塞ぐ
ちなみにメインエンジンは、「エア抜きは簡単にできる」と社長さんが教えてくれたので、船内にあったヤンマーエンジンの説明書を見ながらやってみることにした
マイナスドライバーでネジを緩めて燃料フィードポンプを上げ下げするというだけの内容で、無事メインエンジンは復活!
ナイロン糸が絡んだ時は燃料が少なくなっていて、それに加えて船が揺れることで燃料も波立つので、ちょうどエンジンが不安定になった時に空気が入ってしまったのかもしれない
…これ、簡単に直ったけど、戸島からここまで帆走した意味あったんだろうか…笑
まあ、結局直ったし西予にも無事たどり着けたから結果オーライだろう
修理後、陸揚げ費用や保管費、ペンキ代など全て含めて見積もり通りの金額を提示されたので、たくさんの感謝の言葉と共に支払う
予想よりも少し安かったので、もしかすると社長さんが多少好意的な価格にしてくれたのかもしれない
社長の義理の息子さんが気さくに話しかけてくれ、夕方帰宅時に4kmほど先の町まで車で送ってくれたおかげで買い出しなども楽に済んだ
ケン食堂という、40年以上続いている長寿な食堂にお邪魔してランチを食べていると、店のおばさんがニューサマーオレンジというオレンジをデザートに付けてくれた
高知県で言うところの小夏の愛媛版らしい
とても柔らかく、甘くてみずみずしかった
…さあ、船は直り、体力も回復した!
明日から、九州だ!!
【つづく】
76: 1◆0sA8GVLJwJ07 19/06/29(土)23:59:53 ID:Hcw
今回はここまで!
また今度九州編のスレ立てる!
質問とかあれば書き込んで欲しい
78: 1◆0sA8GVLJwJ07 19/06/30(日)00:20:33 ID:OCp
79: 1◆0sA8GVLJwJ07 19/06/30(日)10:32:45 ID:jOe
伝え忘れてた
やっぱ時間無い時にスレ完結させようとするとキツいな
前スレで相談のって下さった皆さんありがとうございます!
上に書いた通り、おかげさまで無事修理ができて今は九州を回れてます
助かりました!
83: 名無しさん@おーぷん 19/07/01(月)11:34:30 ID:kOQ
>>79
乙
85: 名無しさん@おーぷん 19/07/01(月)12:22:36 ID:tKK
>>79
おおよかったね
80: 名無しさん@おーぷん 19/06/30(日)14:50:49 ID:JGo
かりんとうまんじゅうみたいな肌になったな
81: 1◆0sA8GVLJwJ07 19/06/30(日)17:29:09 ID:jOe
>>80
今度やる冒険の時には現地人と近い肌色になってるんじゃないかと期待してる
周りに上手く紛れられればより安全に行動できるし
96: 名無しさん@おーぷん 19/07/01(月)22:45:25 ID:ULm
しばらく見てなかったが続けてたんだな
いま四国か
97: 名無しさん@おーぷん 19/07/02(火)00:10:50 ID:uTs
>>96
現在地は九州だってよ
102: 1◆0sA8GVLJwJ07 19/07/03(水)10:47:56 ID:QoA
>>96
誰も見てなくても死ぬまで続ける笑