463: コーヒー7杯目 ◆3W89qHGCZ. 2006/03/30(木) 03:04:03 ID:zLxS1ob/0
「しににきたのか?」「・・・?」「なあ、しににきたのか?」
突然、唐突に振ってきた声に、知人が粘るような瞼を開いて、寝ぼけ眼を向けると、狭いツェルトのなかに、
自分以外の小さな人影がある。不思議と怖いとは思わず、芋虫のようにシュラフからは出して枕元の眼鏡を取り、
据え置き式の蛍光灯をつけると、ようやく相手が見えた。
綺麗な赤い着物を着た、肩口で髪を切りそろえた、9-10歳ぐらいの、可愛らしい女の子だった。
蛍光灯がまぶしそうに手で光を遮って、物怖じせずに知人を見つめている。
「・・・・」何が起こっているのかいまいち理解出来ていない知人に、ちょっと首を傾げて、また、女の子が口を開く。
「なあ、しににきたのか?」知人の頭で、ようやく変換ができた。「死にに来たのか?」と聞いていたのだ。
知人は、自分でも意識しないまま、答えていた。
「わからない。疲れていたとは思う。でも、いまは、死のうとは考えていない」
その答えを聞いて、赤い着物の少女は、真っ白な歯を見せて、柔らかく笑った。「そうか、ならいい。」
知人は、必要があるほど高い山ではないが、いつものくせで持ってきた行動食の飴のパックをきって、
「純露」少女の手に握らせた。少女は珍しそうに手の中の飴を見つめていた。「飴だよ」知人は、包装を剥いて見せて、
自分でも食べ、少女にも食べさせてあげると、少女は、とても嬉しそうにもういちど微笑んだ。
そして、少女は、シュラフを指さして、にこにこと言った。「おらも、いれてくれ。」「・・・狭いと思うけど」「いい。いれてくれ。」
知人は、二人はいるには少し狭いシュラフのジッパーを下げると、少女は、するりとその中に入り込んできた。
少しひやっとする、ほそい手足の感触と、季節外れの、桃か桜のような匂い。シュラフの感触が楽しいのか、
くすくす笑いをしていた少女が、蛍光灯を指して言った。「ねよう。けして。」知人は、手を伸ばして、蛍光灯のスイッチを切った。
未だに、自分が夢の中にいるような気がして、ふたたび薄闇の中で知人が眼を閉じると、すぐ耳元で、少女がささやいた。
464: コーヒー7杯目 ◆3W89qHGCZ. 2006/03/30(木) 03:05:19 ID:zLxS1ob/0
「うたって。」「・・・?」「なあ、うたって。」
子守歌をせがまれているとしばらくして気付いた知人は、こんな時にうたう歌なんて知らないとあわてたが、
気が付くと、シュラフの中の少女を、あやすように揺さぶりながら、小さな声で歌い始めていた。
「・・・いかに います父母・・・つつがかなきや ともがき・・・・ 雨に風につけても・・・・ 重いいずる ふるさと・・・・」
正月に帰って以来、電話もしていない両親。自分が卒業した小学校。子供時代を遊んだ駄菓子屋と公園。
「こころざしを はたして・・・・ いつのひにか 帰らん・・・山はあおきふるさと・・・みずは清き ふるさと・・・・」
気が付くと、ぼたぼたと大粒の涙がこぼれていた。そして、歌い終わると、知人は、ここ数ヶ月の死に絶えていた感情が
爆発したように、号泣していた。
少女は、驚きもせず、おこりもせず、知人に抱きつくような姿勢を取って、さっきしていたように、優しくあやすように揺すっていた。
気が付くと、ツェルトの外側が、すっかり明るくなっていた。知人は、まだ濡れたまま顔のまま、シュラフをはい出した。
飴のパッケージは空になっていたが、ゴミはちゃんとゴミ袋に全部はいっていた。
知人は、冷水で顔を洗って歯を磨き、ツェルトをたたんで、別人のようにすっきりした気持ちで下山にしていった。
職場は、その後、ストライキをほめのかす全員の強い要望があって大幅に改善され、定時に帰れることも多くなった。
知人は、その山の出来事に、心から感謝しているが、いくつか困った点もあったとのこと。
「困った点ってなんだ?」 「一つ。その朝、パンツが白くガビガビになっていることを発見した」「変態」
「もう一つ。あの少女のことが思い出されて、よく上の空になる」「ペドエロス」
あれは、追いつめられた知人の防衛反応が夢となって現れたのか、それとも自分の縄張りで不景気な顔で死なれたくなかった
人ならぬものの好意だったのか
元気の代わりに心を奪われ、何度かその場所で宿泊した知人だったが、赤い着物の少女は、出会えてはいないらしい。
それでも、そのつど、包装を剥いた飴を、お供えするのは忘れていないそうだ。
長文失礼しました
437: 本当にあった怖い名無し 2006/03/29(水) 03:11:00 ID:nYWS0buPO
>>436
乙です。
怖いような、微笑ましいような・・・
不思議なお話ですね。
465: 本当にあった怖い名無し 2006/03/30(木) 03:18:10 ID:CawGKvVp0
おお、優しい話だな。
これに少し似たので恐ろしい話があったけど、優しいのに会えてよかったなぁ知人さん。
429: 本当にあった怖い名無し 2006/03/28(火) 23:28:32 ID:fy0GptvfO
百鬼夜行
爺ちゃんと小さい時山ん中歩いていたら百鬼夜行を見たことがある。
谷向かいの山に光る長い煙が流れていて、中で近くの木より高い
でかい人、が行列でふらふら点滅してる感じ。
怖いとは全く思わなかったし、それが見間違いだろうが自然現象だろうが
妖怪とかのたぐいは「在る」んだってのをその時の気持ちで知った。
430: 本当にあった怖い名無し 2006/03/28(火) 23:45:33 ID:PLw63bOb0
>>429
物凄くウラヤマシス…
そんなものを小さい時に一度見れたら、その後の生き方もまるで違ってきそう。
196: 本当にあった怖い名無し 2006/03/15(水) 18:59:42 ID:A1HOKpiU0
身投げした女
1/2
友人から聞いた、20年程前の話
近畿地方に住んでいた友人は、子供の頃お父さんに連れられて
よくあちこちの山に連れて行ってもらっていたそうだ。
その日はN県の山奥にある大きなダムへドライブに出掛けたという。
車を駐車場に止め、展望台へ向かうと、そこにはひとりだけ、先客がいた。
よく晴れた日で、遠くからでもどんなひとか、よく確認出来た。
クリーム色のセーターにフレアスカート、ロングヘア・・・若い女性だった。
季節外れの山中の観光地には場違いな感じがして、何だかとても気になったそうだ。
彼女は手摺に凭れ掛かって友人達を一瞥したそうだが
いきなり、やった。手摺を乗り越えて身投げしたのだ。
お父さんと友人は慌てて駆け寄って見下ろしてみた。
50mほど下のコンクリートに女性は血を流して倒れている。即死だろう。
携帯電話も普及してない時代の事、
お父さんは友人を車に乗せ、ふもとの町まで事故を知らせに行く事にした。
曲がりくねった山道を車を走らせながら、お父さんは
「決して後ろを振り返ってはいけない。バックミラーも覗いてはいけない」
と言ったそうだ。
197: 本当にあった怖い名無し 2006/03/15(水) 19:00:34 ID:A1HOKpiU0
2/2
だが、とても気になる。
友人も、小さな頃から霊感が強く、背後に何だか禍々しいものを感じていた。
・・・耐えられなくなって友人はバックミラーを見た。
さっき身投げしたはずの女が、頭から血を流してついて来てる。
一瞬だがはっきり見た。口を真一文字に結んで黙々と歩いてついて来るという。
車は全速で山道を下り降りているのに・・・
友人は泣き出してしまい、町まで助手席に突っ伏したまま動けなくなってしまった。
町に着き、警察に駆け込んだ時には、女は消えていたと云う。
お父さんも実はかなりの霊感の持ち主で、狐憑きの除霊なんかもした人らしいが
何故、女がついて来たのかは判らない、と言っていたそうだ。
194: 本当にあった怖い名無し 2006/03/15(水) 10:51:31 ID:Dfm+eM6l0
開けないでね
昔生物部の合宿で、OGの先輩の大学が所有している山小屋に泊まった時の話。
冬の丹沢で、鹿やフィールドサインを観察して
夕方になったので山小屋に泊まった。
先輩が「夜、足音やドアを叩く音が聞こえても、開けないでね」
というので、?と思って質問したら
「良くあるのよ。開けても誰も居ないから。
遭難した人が助けを求めに来るみたいなんだけどね。
だだだ!と階段を駆け上がって、ドアをドンドン!と叩くんだけど
開けても誰も居ないの。」と。
幸いというか、泊まった晩はそのようなことは起きなかった。
(皆、冬山歩きにへとへとになって、爆睡していたからかもしれないけど)
49: 本当にあった怖い名無し 2006/03/05(日) 07:10:34 ID:pCXz1xyh0
かくれ里
夕方、かくれんぼうをして遊んでいると、かくれ座頭というじいさんが出てきて、『かくれ里』という、誰にも入れない世界に連れていくという。
それがどこにあるか、誰にも分からなかった。
ある日、高尾山を歩いていた二人の男が、山の北側に一つの大きな穴があいているのを発見した。穴の深さはどのくらいあるのか分からなかった。
と、覗いていた一人の男が、誤ってこの穴の中に落ち込んでしまった。
一緒にいた友達がひどく心配して「さてさて、大変なことになってしまった。
たぶん命はなかろうが、もし生きていたら、さぞ食べ物に困るだろう。」と、食べ物を穴の中に投げ込んでやった。
穴に落ち込んだ男は無事であった。男は上から投げ落とされた食べ物を拾って、穴の中を先へ先へと歩いていった。
はじめは真っ暗だったが十日あまりも、根気よく歩き続けていると、急に辺りが明るくなった。見ると、一人のじいさんが寝ている。
その男は空腹だったので「何か、口に入れるものはないでしょうか。」と、尋ねてみた。
すると木の根のところを指さしながら「それを飲んだらよかろう。」と言った。
そこには竹筒があって、白い液が入っていた。それを飲むとたちまちからだや心がさわやかになって気力が満ちてきた。
50: 本当にあった怖い名無し 2006/03/05(日) 07:11:02 ID:pCXz1xyh0
気が付くと、周りには、さわやかに鳥が鳴き、いろいろな果物がなっていた。
「お前はここにとどまる気かね。」「いいえ、僕、家に帰りたいです。」というと、「それでは、ここから西へ行くと一つの井戸がある。
その井戸の中に飛び込んで見なさい。」と教えてくれた。
その男は西へ行き、見つけた井戸に飛び込んだ。井戸の底には一本の道が続いていた。
男は道ばたにあるものを食べながら歩き続けた。そして半年ぶりに高尾山の中腹に出た。
山を下り、町の中へ入った頃には、もう夕方だった。町の中では子供がかくれんぼうをしていた。
と、物陰に、あの穴の別天地で会った老人が隠れている。
そして、子供が、そこに隠れに来るのをじっと待っているようだった。
男は疲れていたのでそのまま家へ帰った。
次の日の朝、子供が一人いなくなったと町中が大騒ぎしていた。
男は、初めてあの老人が『かくれ座頭』だったということが分かった。
男は、町の人を連れて高尾山の穴を探してみたが、穴はどこにもなかった。
52: 本当にあった怖い名無し 2006/03/05(日) 08:43:50 ID:pCXz1xyh0
昔、山に『山じじい』(山爺)という妖怪がいた。
特に、四国の高知県に、そういう記録がたくさん残っている。
高知藩の山の役人として、春木次郎繁則という人が、土佐郡本川郷の山村に勤めていた。
この人が宝暦元年に書いた日記の中に、この山じじいのことが書かれている。
「山鬼という妖怪がいる。年七十ばかりの老人のようで人に似ていた。
目一つ足一つで、蓑のようなものを着ていた。
普通、本川の『山じじい』という。一説には、妖怪ではなく、けものの類であるという。
しかし『山じじい』を見た者は、そうたくさんいるわけではない。
ある大雪の日に、村はずれの道に足跡があった。杵で押したような丸い足跡だった。
これが、山じじいの足だろうといわれた。
また、村の老婆が、ばったり道で逢ってすれ違ったという。
びっくりしてあとを振り返ったが、もう山じじいの行方はわからなかったという。それはぴょんぴょん跳んで歩くからだろう。」
53: 本当にあった怖い名無し 2006/03/05(日) 08:44:04 ID:pCXz1xyh0
また『南路志績編稿草廿三』という書物に、
「ある人がいうには、この一眼の者、土佐山中に多い。その名を『山じじい』という。
形は人に似ていて、全身にねずみ色の短い毛があり、目ははなはだ大きく、しかも光っている。
歯はものすごく強く、サルの頭などをまるでダイコンをかじるように食べる。
オオカミは、この山じじいをものすごく怖れた。
猟師などは山小屋で寝るとき、山じじいに毛皮などをとられないように、家の周りに、動物の骨を置いて寝たという。」
と記されている。
広島県辺りにも、山村では朝起きてみると、雪の上に丸い足跡が二メートルおきにあるのを、昔は見たという。ただ、姿を見た者はあまりなかったらしく、「一つ足」と呼んだ。
足跡の大きさは人間の足の四倍ぐらいあったという。
和歌山県には、今でも熊野山中に『一本だたら』という妖怪が住んでいる。
その形を見た人はいないが、幅一尺(三〇センチ)ばかりの大きな足跡が、一足ずつ雪の上に記されているのを、今でも時々見る人があるという。
深山で、木を切る木こりの話だが、何日歩いても、山ばかりという深山の中にときどき人の家のような妙な空き家があるという。
わたしはそれが『山じじい』の家ではないかと思う。
160: N.W ◆0r0atwEaSo 2006/03/13(月) 19:55:20 ID:a90ObNpz0
この休みに友人たちと、ようやく花が満開になった梅林へ出掛けた。
いつものように、売店のある広場の隅でバーベキューの支度をする。
炭がちゃんと熾こるまで、少し暇がかかるので、焚き火職人をその場に残し、
近くで何枚か写真を撮った。
もう良かろうと戻ってみると、そいつが何ともいえない顔をしている。
「どうした?」
おかしな事に、途中の村営のスーパーで仕入れた具材のうち、本日のメイン
“山女”だけがきれいさっぱり消えている。
「あ、生で食っちまったのか?」
「食ってねえ、食ってねえ」
焚き火職人はぶんぶん首を振る。
彼が言うには、一生懸命火の世話をしていると、後ろから、俺たちの中の誰かが
呼びかけた。
「おい、買って来たぞ」
オレ、何か頼んだっけ?そんな事を考えていると、もう一度声がした。
「これ、ここでいいのか?」
「うん?」振り返ると、そこには誰もいない。
「あれ?」じゃあ、今の声は誰だ?
聞き覚えはある。だが、誰の声だったかわからない。
そんな馬鹿な…首を捻りながら前を向くと、山女だけが1匹残らず無くなっていた。
みんなで顔を見合わせたが、そうしていても始まらない。
「…まあ、山の中だから」
「しょうがねえなあ」
「次からは、火の番は2人だな」
そんな事を言いながら、もう一度車で買出しに出かけた。
161: N.W ◆0r0atwEaSo 2006/03/13(月) 19:56:23 ID:a90ObNpz0
友人の実家の持ち山の中に、1本だけ、黄色い花の咲く梅の木がある。
黄桜より濃く、福寿草より淡い色のその花は、決して蝋梅などではなく、
柔らかなまろみを帯びた花弁も、気品溢れるその香りも、まさに梅以外の
何者でもない。
ただ、その在り処が定かではない。
毎年、山を見回りに行った親父さんが見つけるのだが、歩いている途中に
ふと出会い、一枝そっと折り取って来るらしい。
後から見当を付けて出向いてみても、何処にも梅の木なんぞ有りはしない。
その年の花が、大きければ畑の作物が、数が多ければ稲が豊作だと言う。
不思議な事に、持ち帰ったその枝を地面に刺して根付かせても、世間で
ありきたりの紅梅か白梅にしかならない。
その不思議な黄梅に、今年は友人が出会ってしまった。
たまたま休みに実家へ戻り、親父さんと山を歩いていた時に、どうした訳だか
はぐれてしまい、気が付けば目の前に、馥郁たる香を放つ満開の黄梅があった。
子供の頃から馴染んでいた不思議なそれとの出会いに、友人は感動し、手折る
事なく道を戻った。
はぐれた事にさえ気付いていなかった親父さんは、彼の話を聞いて一言
「世代交代、だな」そう寂しげに呟いた。
友人は、この3月一杯で都会を離れ、実家へ戻る。
192: 本当にあった怖い名無し 2006/03/15(水) 08:06:22 ID:FpGZKhx1O
オーイオーイ
おはよーございます。
よくある話ですみませんが。
東海地方G県の山中でラリーの大会があり、途中で1台の車が行方不明になりました。
夜中に細く曲がりくねった山道を猛スピードで走る競技なので、事故ったり崖から落ちたりなんて珍しくなかったそうです。
で、うちの旦那もゴール後に一人で探しに行ったんですけど、谷底に注意しながらトロトロ走っていたらオーイオーイと聞こえてきました。
やはり落ちたんだと思い車のエンジンを停めて谷を覗き込んだ所、ライトも何も見えなかったけど確かに谷底からオーイと聞こえてくる。
怪我はないか、一人の声しか聞こえないけど同乗者(運転手とナビゲーターの二人で一組)は無事なのかと声をかけてもオーイとしか返ってこない。
そうこうしている内に、「見つかったぞー」と、行方不明になった車が見つかったことを知らせに仲間が来てくれました。
行方不明になった車は旦那が探していた場所よりも山頂付近で事故っていたそうです。
??と思っている最中も、まだ谷からオーイの声は聞こえてきます。ぞっとしてゴールまで戻ったそうですが。
そこはよく釣りに行ったりラリーの練習する山だったけど、あの低い声が今でも忘れられず、またその日以外にも色々あったそうで、もうずっと行ってないと言っています。
ちなみにその山はO垣Y老付近にある山で、昔は処刑場(首切場?)のあった所です。
山で呼ばれたら返事するなって聞きますが、こちらが呼び返すのはセーフってことでしょうか。
243: 雷鳥一号 ◆zE.wmw4nYQ 2006/03/17(金) 22:19:42 ID:ldCFIw/Y0
知り合いの話。
彼は仕事柄、長いこと山に篭もることが多い。
そのため山の持ち主に断って、活動基地となる簡単な小屋を造っている。
そこに私と友人二人が押しかけていた時のことだ。
差し入れの酒とジャーキーを摘まみながら、下界の他愛もない話をしていると。
不意に彼が顔を上げた。
宙を睨むような表情で、鼻をしきりにヒクヒクさせている。
「どうした?」何の気なしに友人が尋ねてみると、
「今、誰かこの山に踏み入ってきた。多分、三人。○○沢の方から」
そうあっさりと答えてきた。
彼以外の皆が驚いた。代表するような形で私が問う。
「そんなこと、何でわかるのさ?」
彼はしばらく思案していた様子だったが、やがて肩をすくめ次のように話した。
「ツンと鼻奥に来たんだ。煙草の臭いがね」
244: 雷鳥一号 ◆zE.wmw4nYQ 2006/03/17(金) 22:20:49 ID:ldCFIw/Y0
(続き)
彼が言うには、いつの頃からか山に篭もっている間、嗅覚が異常に利くように
なったのだそうだ。
初めはそこまで利かないのだが、篭もってから数日経つと、あらゆる匂い、
特に煙草のそれに敏感になるのだという。
「どの方角から匂うのか、どれくらい離れているのか。
そんなことまで自然とわかるようになるんだ。
煙草だったら人数まで大体わかる。
え?・・・いや、流石に銘柄まではわからん。
山を下りると、すぐに元の鼻に戻るんだけどな。
まぁ篭もってる間は好き勝手放題に吸えないから、その代償かもしれん」
半時間後、小屋を訪れた客がある。
私たち共通の山仲間だった。その数、四人。
「遊びに来てやったぞ」
「おー、お前らも来てたのか」
そう言いながらドカドカと遠慮もなく上がり込む。
「煙草、吸ってた?」思わずこちらの一人が聞いていた。
245: 雷鳥一号 ◆zE.wmw4nYQ 2006/03/17(金) 22:22:32 ID:ldCFIw/Y0
(続き)
四人はきょとんとした顔をすると、うち三人が携帯用の灰皿を出した。
「○○で休憩した時吸ったけど」
「俺は吸ってないけどな」一人だけそう答える。
差し引き三人。彼の予測とずばり合っている。
「・・・そうかっ、そんなにもお前の身体はニコチンを欲していたのかっ」
その後は一晩中、そう言って彼をからかいながらの宴会となった。
「やっぱり言うんじゃなかったな、コンチクショウ」
憎まれ口を叩いているが、嫌がってはいない様子。
一人より多勢の方が楽しいのだろうな、やはり。
次回より、差し入れの品に煙草が含まれるようになった。
吸わない私などにとっては「大概にしろよな」という感じではあるが。
251: 本当にあった怖い名無し 2006/03/17(金) 23:56:50 ID:UXeKT+Gf0
>>243-245 うちのじーちゃん、山で炭焼きしてた。
現在でもそれなりに注文があるみたいで、時々山にこもってる。
一年くらい前、酒持って遊びに行ったんだが。
その時ね、この話と似たようなことがあったんだよな。
夜中、釜の火を見ながら二人でチビチビやっていたんだけど。
いきなりじーちゃん、じっと闇の中を睨みだした。
それで「タバコなんざ吸いやがって、罰当たりが」とか言い出すんだ。
俺が「何言ってんだ?」と言ったとたん、じーちゃんの視線の先で
「ポッ」と赤い点がともって、すぐ消えた。
誰かが向こうの斜面でタバコに火をつけたんだ、ってさすがの俺にも
理解できた。
「何でわかったの?」って聞いたら、モク臭はきついからすぐわかる
んだと。里じゃわからないとも言ってたけど。
山にこもると、何て言うか、五感が鋭くなるってさ。
ふと、別のことが気になった。
「今の・・・誰がタバコを吸ってんだ?こんな夜中に、こんな山奥で?」
じーちゃん、あっさり答えたさ。
「密猟者だろ。あいつら山ン中じゃ無茶苦茶するからな。」
「おまけに、山の持ち主より山に詳しいもん(者)も居る。関わらん方がええ」
個人的には、密猟者のくだりが一番怖かったとです、ハイ。
256: 本当にあった怖い名無し 2006/03/18(土) 01:53:41 ID:qyJBHfAv0
>>251
煙草に火をつける前にモク臭を嗅ぎつけるじいちゃんスゴス!
しかし持ち主より山に詳しい密猟者は怖いすね。
考えたらかなり野生な仕事だもんな。密猟。
いや、凄く悪いことなんだが。
357: 330 2006/03/23(木) 16:56:31 ID:4RFJVy5R0
じゃ~軽く一つだけ書いておくよ
霊酒?の話
啄木で有名な?渋民村から近い県境で、実は野生の朝鮮人参が取れる
三つ葉を細く鋭くした様な葉に、細い蔓で独特の匂いを持っている
ある事情で山奥の宿に泊まった時に、そこのおばさんにそれを漬けたお酒をふるまわれた
少し変わった宿でおばさんが一人だけ
奥の突き当たりにある部屋の戸に「日本刀には神がどうの」「八百万の神がどうの」と書いてある
「何これ?」と思い聞いたら、そこのおじいさんの部屋らしい(姿はみてない)
めったに取れなくて「山の神様からの贈り物」らしい
瓶詰めの琥珀色のそのお酒を飲んでいたら、思いがけない事が自分を襲った
「イタコ」みたいに意識はあるのに自分が変な事を話し始める
「ここの土地の~犬神がどうの~おばさんに妹がいてどうの」とか色々
翌朝帰る時に「これ」と言って小さなビンにそのお酒をいただいた
強烈な経験だった為に未だに怖くて飲んでいません
410: 330 2006/03/27(月) 01:05:58 ID:CXZfPPh60
トンネル工事の話
山の中にトンネルを掘るときに、専門の業者?の人たちがいる
1M幾らで稼ぐその人たちは、刺青バリバリでヤクザと間違う
気性も荒く、段取りが悪くて工事が出来ないと、責任者がぶん殴られる
そんな人達でも「この日は掘ってはいけない!」日があり
かたくなに拒む
教えてくれなかったが、非常に気になる・・・
412: 本当にあった怖い名無し 2006/03/27(月) 02:37:55 ID:TZwbcBj40
>>410
忌日ってのがある、その地方によって違う(山の神を敬う日)
また工事中どうしてもうまくいかない日が
ある場合は途中で切り上げることがあるらしい
無理すると事故や人死がでるから
436: 330 2006/03/29(水) 02:58:40 ID:6MJJUjng0
お礼?
アマチュア無線で屋外に出て運営するコンテストがある
ある一行が中腹にテントを張り、設営してる中、別の担当が
近くにある小さな清流に飯盒の米研ぎに行った
米を研いでると、清流の向かい側を小人(20cm位?)が歩いていった
「えっ?」と思い、何故かポケットの飴を剥いて投げてみた
少し立つと「服を着た小人」が戻ってきて拾って消えたと言う
あわわわで戻って知らせようとしたら、連絡用の無線が入り
「急用らしいからすぐ帰れ」と言われ、話さずに一人下山
その夜、一向はいきなりのどしゃぶりに見舞われ、あろうことか
20M先の木に落雷 離れていてもメンバーは飛ばされ、足の裏を焼けどした
「地面を雷が走ったよ!」と言っていた
戻ったそいつは連絡を入れた奴に「え?入れてないよ」と言われ
のちにメンバーに確認したら「お前が急に帰ったんで心配した」と言われたという
449: 本当にあった怖い名無し 2006/03/29(水) 20:32:04 ID:bz9EUPpo0
私が現場に出ていた地方では猿のことはあんちゃん(兄さん)て言ってた。
その現場内で頻繁に放火のある場所があって、
こんな場所に道を通したから山の神が怒ってるんだって言われて
どうしようかと考えあぐねて、結局
「まあ、女同士なんだし、ひとつお手柔らかに頼みます。一献どうぞ」って酒を捧げた。
したら、その後、私の任期中には一度も火が出なかった。
今もあの場所にそういう方がおられるのかどうか、もう遠く離れてしまったのでわからないけれど。
450: 330 2006/03/29(水) 20:40:51 ID:cXBQBxU50
テントでの泊りがけの渓流釣りで「火の玉?」を見たという
夜に小用でテントを出たら近くに浮いていた
「おお!」と釣竿を出してつついて診たが、動かない
触ろうとするとス~っと手を避ける、光るけど熱くないそうだ
写真を撮ってやろうとデジカメを取りにテントに戻ろうとすると
「クスクス」と複数の笑い声が聞こえた
振り向くと暗闇の向こうに、複数の光の行列を見た
「あれがキツネの嫁入りだと思う」と言っていた
不思議と怖いとかではなく、なごやかな感じだったらしい
479: 330 2006/03/30(木) 17:24:43 ID:ETHezJ9V0
知人の驚いた話
山上湖へ「ヘラブナ釣り」に早朝薄暗い中出かけた
着いて用意をして一服 持ってきたワンカップをちびりちびり飲みながら
釣りをしていた ふと気がつくと後ろに「小汚いおじいちゃん」が立ってて
にこにこ釣りを見てる 話しかけてもにこにこ見てるおじいちゃんに
鞄からワンカップ出して「飲まいん」と封をあけて渡してあげた
ただ貰うのが悪いと思ったのか、おじいちゃんが腹に巻いていた新聞紙(腹巻がわり?)
を差し出したそうな 入らないとも何か言えず「あ、ども」といただいた
暖かい黄ばんだ新聞紙をたたんでポケットに入れた
そのうちおじいちゃんがどこかへ居なくなり、そいつも釣りを止め車に戻った
車の中でさっきの新聞紙を出した時にふと目にした記事に腰抜かしそうになった
父親が6年前に亡くなった時に出した「死亡広告」が乗っていた
何故かいたたまれなくなり、行ってなかったお墓参りにすぐに行ったそうです
480: 本当にあった怖い名無し 2006/03/30(木) 18:05:55 ID:jthIiyjg0
こんなスレあったんだな
親父の体験談を。
うちは四方を山に囲まれた、当にド田舎なんだけど、
親父が若い頃、炭守り(一晩かけて、窯で木を炭にするための見張り)をしていたときの事。
夜も更け、灯りといえば焚き火のみ。
風も無く、静寂が支配する闇。
そんなとき、焚き火の灯りにかすかに映る目の前の景色が右に動いた。
それは連続して、ずーーずーーーという感じで、動き続けた。
親父は これは疲れなのか、と一時自問したが、
火の点いた木片をかざして、これが幻覚や錯覚ではないことがわかった。
それは直径30センチはあるであろう、蛇だった。
蛇はそのまま目前を通り過ぎ、闇の中に消えていったという。
オレが消防のころ、黒豹を見てガクブルで家に帰り、親父に話したときも
「そりゃ山は何でもおるわい」と笑ってたな~w
486: 396 2006/03/30(木) 19:26:21 ID:tawPoNBA0
般若心経がらみで思い出した実体験をば。
ウチの実家周りは鬱蒼とした竹藪に囲まれている。
小学校の頃には基地とか作って竹藪で遊んでた。
ある日思い立って竹藪の丘を奥まで探検してみた。
どこまでも続く竹林と枯れ笹に埋もれた地面の上を
踏み分けて行くと窪んだ場所の崖っ淵に出くわした。
覗いてみると墓石の山・山・山
何層にも積み重なった墓石が無造作に淵の底にあった。
何だか薄気味悪いなぁと思いつつ踵を返して家に帰った。
後日、友達が二人遊びに来た。話が弾むうちに何となく
この前の探検の話をしだしたら友達Aの顔色が悪くなる。
友達Bも何かそわそわし始めた。相変わらず普通の漏れw
「ねぇ、やめようよ」
Aが必死で止めようとするのが面白くて話を続けていると
Bは何だか寒いと言い出し、ついにAが恐怖の形相で叫んだ。
「窓、窓の外に何か居るうっ!」
487: 396 2006/03/30(木) 19:41:59 ID:tawPoNBA0
昼下がりの日当たりの良い東向きの二階の窓からは
漏れには見慣れたいつもの景色しか見当たらない。
つまり、何にも無いし何も見えないwという訳である。
「えー何もみえないじゃんw何か居るの?」
からかい半分で窓を開けようとしたらAがいきなり
「おげええぇ!」
とゲロを吐き出した。それを見てBも漏れも唖然とする。
尋常ではない様子を見てBがパニックに陥ってしまう。
「嫌だ、嫌だ、どうしよう!何とかしてぇ~」と半泣き状態。
そこで万が一、と思って用意しておいた般若心教を取り出し
何度もお経を唱えていたら、やっとAが落ち着きを取り戻した。
488: 396 2006/03/30(木) 20:00:25 ID:tawPoNBA0
階下にタオルを取りに行きゲロの始末をしていると
Aが真っ青な顔色をしながらボソボソと話し出した。
「竹藪の話をし始めてから窓の外にびっしりと霊が
張り付いて来て埋め尽くされていた。怖かったよ~。
なのに窓を開けようとするからもう、気持ち悪くって」
Aは霊感があったらしい。Bは普通の感覚の持ち主。
…では漏れは?
父から聞いた話では竹藪一帯の丘は昔は寺院があったとか。
墓石はその名残なのでは、という事で一応納得はしたけれど。
現在、その竹藪一帯は開発されて新興住宅地になっている。
出るのか、出ないのかは知らないが漏れにはきっと見えないなw
497: 本当にあった怖い名無し 2006/03/31(金) 09:16:42 ID:salHnYm6O
狐の嫁入り
子供の頃山の中に住んでた。家は山の斜面で谷を挟み反対側の山には過疎が進み誰も住んでない部落が見え、はるか遠く東には富士山が圧倒的な存在感でそびえている。
ある夏の夜遅く、母親に起こされた。向かいの山を見ろという。眠い目を擦りながら言うとおりにした。夜空には無数の星と眩しいほどの月。濃いブルーの静かな世界が神秘的だった。
暗闇に目が慣れてきた。すると、向かいの山の中腹に弱い光を見つけた。一つではない。10ほどの光の列がゆっくり動いている。時折木の影に隠れチラチラと…。人が歩く早さぐらいに見えた。
498: 本当にあった怖い名無し 2006/03/31(金) 09:18:54 ID:salHnYm6O
「何…あれ?」声をひそめて聞く。「狐の嫁入りだよ。」と教えてくれた。母親は随分前から見ていたようだ。
人が通る道なんかないことは知っていた。変わった山歩きが趣味でもまさかこんな夜中に歩く人はいないだろう。やがて、一つまた一つと光が消えていく。不思議なもんだなと光が消えるまで母親と眺めていた。
今は町に下り、あれほどの静寂さはまず体験出来ない。月夜の山は本当に神や天狗の存在を感じさせる。山に泊まる機会があったらぜひ、そっと外を覗いてみてください。不思議なものが見られるかも。