2: 以下、5ちゃんねるからVIPがお送りします 2019/11/11(月) 22:05:07.881 ID:JO1VxSK70
<警察署>
職員「なんのご用でしょう?」
男「“バールのようなもの”事件についてご存じの刑事さんに会いたいのですが」
職員「しかし……」
男「お願いします! 大事なことなんです!」
職員「分かりました……少々お待ち下さい」
3: 以下、5ちゃんねるからVIPがお送りします 2019/11/11(月) 22:08:15.536 ID:JO1VxSK70
刑事「どういったご用件で?」
男「“バールのようなもの”事件について話があるのです」
刑事「話って、いずれの事件も犯人はもう捕まってるんですよ。それとも犯人のお知り合いで?」
男「いえ、知らないんですけど……」
男「たとえば凶器はどうなったとか、犯人はどうやって凶器を手に入れたとか、色々知りたいんです」
刑事「あのねえ、部外者に捜査情報は教えられないんですよ」
男「それでも教えてもらいたいんです」
刑事「帰りなさい」
男「そこを何とか!」
刑事「帰れ!」
4: 以下、5ちゃんねるからVIPがお送りします 2019/11/11(月) 22:10:07.343 ID:JO1VxSK70
男(やはり追い返されてしまったか……)
男(警察関係者の力を借りるのは、やはり難しいだろうな)
男(仕方ない、自分の力で何とかするとしよう)
男(まずは……事件現場へ!)
5: 以下、5ちゃんねるからVIPがお送りします 2019/11/11(月) 22:13:28.485 ID:JO1VxSK70
<事件現場>
ワイワイ…
男(事件からまもないし、まだ捜査してる人がいるな……)
男「あのー」
捜査員「はい?」
男「凶器は見つかりましたか?」
捜査員「それがまだなんだよねえ」
男(やはり……)
6: 以下、5ちゃんねるからVIPがお送りします 2019/11/11(月) 22:15:34.274 ID:JO1VxSK70
男「俺も捜査に参加させてもらえませんか?」
捜査員「さすがにそりゃダメだ! こっちが怒られちまう!」
男(食い下がっても無駄だろうな……)
男「分かりました。だったら迷惑のかからないように、現場の外でやります」
捜査員「?」
7: 以下、5ちゃんねるからVIPがお送りします 2019/11/11(月) 22:19:29.559 ID:JO1VxSK70
男「……」クンクン
男「……」クンクン
捜査員「!?」ギョッ
捜査員「あんた、なにやってんだ!?」
男「……」ピクッ
男(この鉄の匂い……間違いない!)
男(これをたどっていけば……!)クンクン
捜査員「なんなんだ、あの人……」
8: 以下、5ちゃんねるからVIPがお送りします 2019/11/11(月) 22:20:46.674 ID:Iqz/eoBSr
犬かよ
9: 以下、5ちゃんねるからVIPがお送りします 2019/11/11(月) 22:23:01.959 ID:JO1VxSK70
男「……」クンクン
男(とはいえ、俺の鼻だけであいつの行方を追うのは難しい)
男(匂いもここで途切れてしまった……)
男(仕方ない、ここからは人に聞いていくしかない)
男「あのー」
通行人「なにか?」
男「このあたりでバールのようなものを見ませんでしたか?」
通行人「いや、見てないけど」
10: 以下、5ちゃんねるからVIPがお送りします 2019/11/11(月) 22:23:38.155 ID:9LUVsGZCa
なんでバールのようなものなんだろう
棒状のものでいいじゃん
13: 以下、5ちゃんねるからVIPがお送りします 2019/11/11(月) 22:26:08.826 ID:JO1VxSK70
青年「バールのようなもの? さあ……」
JK「見てませーん!」
リーマン「下見ながら歩かないからなぁ……分からないよ」
男(やはり目撃情報はない……。しかし、根気よく続けるしかない)
14: 以下、5ちゃんねるからVIPがお送りします 2019/11/11(月) 22:29:18.478 ID:JO1VxSK70
幼女「みたよ!」
男「本当かい!?」
幼女「うん、さっきあそこにおちてた」
男「どれどれ……」クンクン
男(匂いがあった! これで追跡できる!)
男「ありがとう!」クンクンクン
幼女「じゃーねー!」
15: 以下、5ちゃんねるからVIPがお送りします 2019/11/11(月) 22:30:48.845 ID:Iqz/eoBSr
完全に事案
16: 以下、5ちゃんねるからVIPがお送りします 2019/11/11(月) 22:32:30.454 ID:JO1VxSK70
<工場>
男「……」クンクン
男「……」クンクンクン
男(匂いはこの小さな工場に続いている……この中にいる!)
男(今こそあいつを止めなくては!)
男(それができるのは俺だけだ!)ダッ
17: 以下、5ちゃんねるからVIPがお送りします 2019/11/11(月) 22:35:18.882 ID:JO1VxSK70
工場長「まーたこんな下らないミスしやがって!」
作業員「すみません……」
工場長「一体いつになったらまともに仕事ができるようになるんだ、このボケェ! カスゥ!」
作業員「……」
工場長「おい聞いてんのか! 頭に続いて、耳まで故障しちまったか! スクラップにすんぞ!」
作業員(もう我慢の限界だ……)
18: 以下、5ちゃんねるからVIPがお送りします 2019/11/11(月) 22:39:24.724 ID:JO1VxSK70
作業員(ちょうどいいところにこんなものが……)ガシッ
工場長「?」
作業員「この野郎ォォォォォ!!!」ブオンッ
工場長「うっ、うわ――」
男「やめろーっ!!!」ガシッ
作業員「うっ!?」
ドザァッ…
20: 以下、5ちゃんねるからVIPがお送りします 2019/11/11(月) 22:42:18.069 ID:JO1VxSK70
作業員「なんだあんた!? 放せ!」
男「やめろ! もうやめるんだ!」
作業員「放せよ!」
男「やめるんだぁっ!」
作業員「もうやめてるよ! なんなんだいったい……」
男「やめろぉぉぉぉぉっ!」
作業員(この人、俺にいってるわけじゃない! じゃあ誰に……?)
21: 以下、5ちゃんねるからVIPがお送りします 2019/11/11(月) 22:44:37.231 ID:JO1VxSK70
男「もうやめろ……!」
バールのようなもの「……」
作業員「この人が押さえつけてるのは……バールのようなものだ!」
工場長「人じゃなく、道具押さえつけてどうするんだ!?」
22: 以下、5ちゃんねるからVIPがお送りします 2019/11/11(月) 22:47:26.590 ID:JO1VxSK70
バールのようなもの「邪魔しやがって……」
作業員「うわっ!?」
工場長「しゃべった!?」
バールのようなもの「なぜ止めた……」
バールのようなもの「せっかくまた事件を起こせるところだったのに」
男「……」
作業員「事件を……?」
工場長「どういうことだ?」
24: 以下、5ちゃんねるからVIPがお送りします 2019/11/11(月) 22:48:32.490 ID:Iqz/eoBSr
マジかよ
23: 以下、5ちゃんねるからVIPがお送りします 2019/11/11(月) 22:47:27.827 ID:eEhMEjc50
ふむ
25: 以下、5ちゃんねるからVIPがお送りします 2019/11/11(月) 22:53:16.620 ID:JO1VxSK70
バールのようなもの「なぜ俺がしゃべれるようになったか教えてやろう」
バールのようなもの「俺はかつて、とあるバール工場で生産された……」
バールのようなもの「ただし、生産工程でひん曲がってしまい、製品としては不適格になった」
バールのようなもの「当然処分される運命にある。そのこと自体は仕方ないと受け入れていた」
バールのようなもの「だが、俺の品質チェックをしたあの人間は――」
『ダメだなこりゃ、ちょっと曲がっちまってる』
『こいつはバールなんかじゃないな。バールのようなもの、だ』
26: 以下、5ちゃんねるからVIPがお送りします 2019/11/11(月) 22:56:30.934 ID:JO1VxSK70
バールのようなもの「あいつは失敗作である俺を、バールとすら認めなかったんだ!」
バールのようなもの「その後、処理業者の運搬時のトラブルで処分を免れた俺は――」
バールのようなもの「あの時の人間を……いや人間そのものを恨んだ」
バールのようなもの「そしていつしかある程度自在に動けるようになり……」
バールのようなもの「なおかつ恨みで宿った妖力で、近くにいる人間の憎悪や暴力衝動を増幅させたり」
バールのようなもの「俺を握った者を暴力に駆り立てるといった能力を手に入れたんだ」
バールのようなもの「そう、まるで“妖刀”のようにな」
作業員「じゃあ、さっき俺がイライラして殴りかかったのも……」
工場長「このバールのようなものの仕業だったのか!」
27: 以下、5ちゃんねるからVIPがお送りします 2019/11/11(月) 22:59:23.951 ID:JO1VxSK70
男「すまなかった……」
バールのようなもの「?」
男「お前がそうなってしまったのは……俺の責任だ」
バールのようなもの「なに!? 貴様、まさか……」
男「そうだ。俺はお前が生産されたバール工場の工員……」
男「お前を“バールのようなもの”呼ばわりした男だ!!!」
バールのようなもの「な……!」
28: 以下、5ちゃんねるからVIPがお送りします 2019/11/11(月) 23:03:22.081 ID:JO1VxSK70
バールのようなもの「お前かっ!」ギュオッ
ガンッ!
男「ぐっ!」
バールのようなもの「お前かっ! お前かっ!」ギュオオッ
ガッ! ゴッ!
作業員「やめろっ!」
工場長「危ないっ!」
男「止めないでくれっ!」
工場長「しかし、死んでしまうぞ!」
男「いいんだ……これでいいんだ」
男「もし俺が死んだら、おかしな男が工場に乱入して、自殺騒ぎを起こしたと通報して下さい!」
30: 以下、5ちゃんねるからVIPがお送りします 2019/11/11(月) 23:06:06.338 ID:JO1VxSK70
男「どうした、こんなものか?」
バールのようなもの「ぐ……!」
男「こんなんじゃ、到底俺は殺せないぞっ!」
バールのようなもの「ぐ、ぐぐぐ……ぐぐ……」
作業員「……?」
工場長「バールのようなものの動きが止まった……?」
31: 以下、5ちゃんねるからVIPがお送りします 2019/11/11(月) 23:07:05.112 ID:WFKm2Stfr
?
32: 以下、5ちゃんねるからVIPがお送りします 2019/11/11(月) 23:08:14.045 ID:GXWkccDm0
なんだこれ
33: 以下、5ちゃんねるからVIPがお送りします 2019/11/11(月) 23:09:41.269 ID:JO1VxSK70
バールのようなもの「う、うう……」
男「やはりな……お前はバールであることの誇りを捨て切れていない」
男「元々バールの用途は釘抜きなどで、決して凶器なんかじゃない」
男「だから今までの事件、全て被害者は死んでいないんだ! 傷害事件で済んでるんだ!」
バールのようなもの「!」
男「そう、俺はお前に殺されに来たわけじゃない」
男「お前を……バールだと認めに来たんだ!」
バールのようなもの「俺を……!」
34: 以下、5ちゃんねるからVIPがお送りします 2019/11/11(月) 23:13:00.115 ID:JO1VxSK70
男「すまなかった……」
バールのようなもの「うう……」
男「お前は……バールのようなものなんかじゃない」
男「お前は……バールだ!!!」
バール「う、ううっ……」
バール(やっと……認めてもらえた……)パァァァ…
作業員「バールのようなもの、いや、バールが――」
工場長「光り輝いて――」
35: 以下、5ちゃんねるからVIPがお送りします 2019/11/11(月) 23:14:07.391 ID:eEhMEjc50
なんだこの展開www
36: 以下、5ちゃんねるからVIPがお送りします 2019/11/11(月) 23:16:27.338 ID:JO1VxSK70
バシュゥゥゥゥゥ…
ヒュンヒュンヒュンッ ヒュヒュヒュンッ
作業員「光になって飛び散った!」
工場長「これは一体……!?」
男「きっと……これまでに傷つけた被害者のもとにあの光が届き、傷を癒やすのでしょう」
男「バール最期の力で……」
男(俺のせいで凶行に走らせてしまって……すまないバール……!)
37: 以下、5ちゃんねるからVIPがお送りします 2019/11/11(月) 23:19:17.637 ID:JO1VxSK70
<バール工場>
ウイーン… ガガガガ…
後輩「なんだこりゃ」
男「どうした?」
後輩「変なバールができちゃったんすよ」
後輩「こんなのバールとはいえねえや。さっさと処分しないと」
男「……」
38: 以下、5ちゃんねるからVIPがお送りします 2019/11/11(月) 23:22:24.137 ID:JO1VxSK70
男「いや……これはバールだよ」
後輩「え……」
男「たとえ処分するにしても、これはバールなんだ。最後までバールとして扱うように」
後輩「す、すみません! 気をつけます!」
これ以降、“バールのようなもの”による事件は二度と起こらなくなったという――
おわり
40: 以下、5ちゃんねるからVIPがお送りします 2019/11/11(月) 23:24:31.970 ID:s4TLuZDu0
以外と面白い
41: 以下、5ちゃんねるからVIPがお送りします 2019/11/11(月) 23:28:36.956 ID:WFKm2Stfr
乙
これは全国のバール工場に配布すべき