2: 1◆0sA8GVLJwJ07 19/10/29(火)13:19:26 ID:10T
浸水が、また始まっている…?
恐る恐る、床下を覗いてみる
すると、少ないながらもしっかりと、以前と全く同じ場所、そして今回はさらに別の場所にも水たまりができていた
そんな…
四国で起こったのと同じ状況で思わず狼狽えてしまったけど、悩んでいる暇は無かった
浸水の疑いがあると分かった時点で、おれはエンジンをかけ海へ出ることにした
前回と全く同じ現象かどうかの細かい確認は後回しだ
浸水していたとして、毎回修理をするだけの予算は無いが、その事について悩むのも後回しだ
とにかく、より悪い以前と同じ状況だと仮定すると、時間制限があるし、なにより今は軽油の残量が少ない
動かないといけなくなった時に動けるだけの準備が整っていない
今いる港の周りにはガソリンスタンドは無く、さらに、昨日から港では誰とも会っていないとはいえ、雰囲気的に経験上味方になってくれる方が少なそうだと判断したので出港だ
ガソリンスタンドやホームセンター、100円ショップなどが揃っている別の港へ移動することにした
目指すは山口県
下関市にある川棚温泉という温泉地だ
ここなら上記の施設はすべて揃っているし、日本海、九州、そして危険過ぎるから通りたくはないけど関門海峡、全てにアクセスしやすい位置でもある
今の時間は朝6時
浸水していたとして修理するとしても、修理可能かどうかの問い合わせは今の時間じゃまだできない
3: 1◆0sA8GVLJwJ07 19/10/29(火)15:06:57 ID:10T
今日は昨日と違ってちょうど良い追い風が吹いていたおかげで、昼過ぎには川棚温泉の付近の港に到着することができた
すぐに床板を外し、ポンプで水を全て抜いてようすを見る
そして10分後
そこには新たに生まれた複数の水たまりたちの姿が…
舐めてみると、少ししょっぱい
やっぱり、海水だ
あぁ…以前と全く同じだ…
この船、もう駄目なんだ…
凹みつつ、とにかくガソリンスタンドで給油を行う
そして付近のフィッシャリーナやマリーナに片っ端から電話をかけてみた…ものの、
結果、修理すら絶望的だということが分かった
まず、これから進む方向、日本海側には、近畿地方まで行ったところでそもそも陸揚げできる設備とヨット用の船台は無いようだった
設備だけならある場合もあったけど、下に金属板が飛び出ているヨットの形に合ったマイ船台がないと陸に揚げられない
そして戻る方向、九州側は、博多に施設はあるものの、陸揚げや保管だけで数万円かかってしまうらしい
駄目だ、予算オーバーだ
今回の冒険の資金は、開いた時間をほぼ全て資格の勉強や手術入院、連載執筆に回しつつフルタイムで頭がおかしくなりそうになりながら稼いだお金だ
数万円であっても、今後何度起こるかも分からない船底のヒビを塞ぐ為に使うのは中々精神的にきついものがある
進むも駄目、戻るも駄目
となると、残された道は…
…関門海峡越えルートが残っていた
しかし、唯一残された可能性、関門海峡を超えた先の大分や山口県南東部のマリーナに問い合わせてみるも、結果は惨敗
揚げられるとの返事をしてくれたマリーナもあったものの、船台やメカニックの予定が埋まっていて1週間以上待たないといけなかったり、陸揚げや保管をするだけで3万円近くかかってしまったりで、金銭的時間的な許容範囲を越えていた
駄目だ…
31: 名無しさん@おーぷん 19/10/31(木)20:57:59 ID:pAx
>>3
手術入院????
32: 1◆0sA8GVLJwJ07 19/10/31(木)22:07:50 ID:sLQ
>>31
胃袋がおかしかったり色々重なって一日の活動時間が制限される系の病気だったんだけど、手術したら綺麗に治ったわ
今後の冒険は今までよりずっと無茶できそう???
4: 1◆0sA8GVLJwJ07 19/10/29(火)20:15:43 ID:10T
となると…
ギリギリ1、2日で行けそうな範囲で、次に近いのは…
愛媛だった
あぁ
西予フィッシャリーナがあるじゃないか…!!
ここで浸水が速くなるのを眺めつつ何もしないよりは、修理できる可能性があるならそこへ行ってみるしかないだろう
修理するかどうか、廃船にするかどうかは陸揚げしてから考えれば良い
どのみちゲームオーバーだったとしても船の処理は必要になるわけで、陸揚げは必須だ
…よし、また西予フィッシャリーナに行こう!!
関門海峡を何とか越えられないかやってみることにして、おれは以前関門海峡についてよく知っていると言っていた方に連絡を取ることにした
関門海峡は海というよりかは、潮流による川とも呼べるほど流れが激しく、また距離が長くて日本屈指の航行難所だ
そんな場所を越えるにはしっかりとした計画と情報が必要だろう
関門海峡を抜ける上で必要なことについて訪ねたところ、その方は快く教えてくださった
その方によると、どうやら関門海峡は土日祝は釣り船が多く、他の船舶もそれを避けて航行するので危険度が増すらしい
今日は木曜日
…ということは、明日を逃すと月曜になる
すぐに西予フィッシャリーナに電話をかけてヨットの船台の空き状況を確認することにした
工場長さんはおれのことを覚えていてくれて、船台は空いているから来るなら受け入れられると教えてくれた
…よし、いける!!
関門海峡の潮流について確認したところ、最も狭いところに朝9時頃着くのが良いことが分かった
ただ、今いる川棚温泉から関門海峡は少し距離があるから正確な到着時刻の調整がしにくく、夜明けと同時に出発してギリギリ…というタイミングだった
数秒悩んだ末、同日の夕方出港
前と同じとは限らず、また浸水もさっき発見したばかりなので何かの間違いかもしれないけど、何にしても行かないといけない気がした
今日中に関門海峡の入り口付近の港まで何とか行ければ、明日は最も安全な形で関門海峡を抜けられるだろう
しかし、風がかなり強かった影響で思うように進めず、目的の港に到着と同時に辺りが暗くなり視認すら難しくなるというギリギリのタイミングだった
港付近の最後の方は、薄暗い中で目を凝らし、まるでトラップのように点在している目印付きの漁のアミを避けつつ航行する
目印の旗が黒いものが多かったので、中々見えにくかったけぉ、あれに絡んでしまうと漁師さんに多大な迷惑がかかってしまうので全力で見つけて避けないといけない
日が沈んで暗くなった頃、港に何とか係留
そういえば、昨日あたりからエンジン音がやけに大きい
このエンジンもかなりガタが来ているのかもしれない
5: 名無しさん@おーぷん 19/10/29(火)20:29:10 ID:tEA
ひさしぶり
で あってる?
8: 名無しさん@おーぷん 19/10/29(火)20:43:29 ID:3LW
わ!リアルタイムで読めるの嬉しい!!
いつもTwitterみてます。次の展開気になる。ワクワク。
16: 1◆0sA8GVLJwJ07 19/10/29(火)22:42:22 ID:I3i
>>8
ありがとうございます!
ぜひ読んでってください!
10: 名無しさん@おーぷん 19/10/29(火)20:52:06 ID:RJa
今海外?
16: 1◆0sA8GVLJwJ07 19/10/29(火)22:42:22 ID:I3i
>>10さっきまでは香港にいた!
今回は実験的にスレ立てを海外からしてみた
11: 名無しさん@おーぷん 19/10/29(火)20:57:01 ID:jxC
日本帰ってきたのかな?おかえり!
16: 1◆0sA8GVLJwJ07 19/10/29(火)22:42:22 ID:I3i
>>11
ついさっき帰ってきた!
でもまたすぐ出てく
12: 名無しさん@おーぷん 19/10/29(火)21:55:27 ID:5do
ちょっと前のことを書き起こしてる、でいいのかな?
楽しみにしてるよ!
17: 1◆0sA8GVLJwJ07 19/10/29(火)22:44:07 ID:I3i
>>12
やったぜ!
ありがとうございます!
そう、今書いてるのは3ヶ月くらい前の話!
またすぐ次だけど、頑張ってスレ立ててリアルタイムに追いつく予定
18: 1◆0sA8GVLJwJ07 19/10/29(火)22:44:50 ID:I3i
港に到着後、もう一度期待を込めて床下の水を全て抜いてみる
しばらくすると、この前と全く同じようにジワリと海水が湧き出てきた
やっぱり駄目だ
19: 1◆0sA8GVLJwJ07 19/10/29(火)22:45:30 ID:I3i
…明日朝出発して関門海峡を越えるしかないらしい
まさかこの小さな船で関門海峡を越えることになるとは思わなかったけど、ほむらに負担や危険が無いように集中して挑まないといけない…!
そして翌朝早朝、港を出て関門海峡へ
地形的には間違いなく今回の冒険最難関だろう
本来通る予定の無かった航路だ
関門海峡には朝のラッシュ時間帯というのがあるらしく、大型の船が何隻も行き来していた
大型船の航路を定めている海上標識(緑と赤の浮標で、それぞれ右側/左側を通るようにという意味がある)のギリギリのすみっこを通って進む
かくして、関門海峡の入り口へ到着
予定より少し早くついたものの、今は弱い逆向き潮流があるからどのみち一番危険な場所を通るときは予定通りの時刻になるはずだ
関門海峡で一番狭くて一番危険な場所は早鞆ノ瀬戸、関門橋の所だ
一番狭いということは、一番潮流が速くなるってことでもあるので危険度が他とは桁違いになる
あんな狭いところで、例えば速く不規則な潮流に飲まれて航行中の他の船舶と衝突でもしようものなら、それ以外の船舶も巻き込む大惨事になるかもしれない
小型船舶で通るのなら、どれだけ用心してもし過ぎにはならない
20: 名無しさん@おーぷん 19/10/30(水)00:14:02 ID:6D6
渦潮あるところだっけな?
24: 1◆0sA8GVLJwJ07 19/10/30(水)01:13:26 ID:r43
>>20
渦潮は条件整えば割とどこでもできる
23: 名無しさん@おーぷん 19/10/30(水)00:51:41 ID:cKo
すご
24: 1◆0sA8GVLJwJ07 19/10/30(水)01:13:26 ID:r43
>>23
つい先月まで船上生活してたのに、もう遠い昔のことのような気がする…
25: 1◆0sA8GVLJwJ07 19/10/30(水)14:29:53 ID:lVA
あぁそうだ動画もあるんだった
できるだけ写真はスレにたくさん貼りたいと思ってるけど、中々作業時間やスペース(こっちが問題。家ないからネカフェやファーストフード店とかでしか作業できない)が取れなくて貼れないことも多いだろうから、
そういう時は動画見て補完してもらえるとありがたい
文章はリアルタイムでほぼ完成させてるんだけど、写真とかのレイアウトまでは手が回ってなくて今やってる
【リアルRPG 海賊編45】悲しい事実が発覚…。九州までで冒険終了になるかもしれない…【福岡県(波津)~山口県(川棚温泉)】
https://youtu.be/cbu39Rl6WWQ
26: 名無しさん@おーぷん 19/10/30(水)14:35:59 ID:sCt
肩にインコ載せてキャプテンハーロックみたいやな
28: 1◆0sA8GVLJwJ07 19/10/30(水)22:40:59 ID:lVA
>>26
海賊は肩に動物乗せてるイメージ!笑
29: 1◆0sA8GVLJwJ07 19/10/31(木)19:26:49 ID:sLQ
そして、その難所、関門橋が近付いてきた
ここまでは予定通り
一番潮の流れが弱くて安全な9時頃に通過することができそうだ
橋の下には一文字だけ表示できる電光掲示板があって、「E(東へ)」「↑」「1」と順番に表示されていた
想定していた通り、現在関門橋の下は連れ潮(追い潮流)1ktが生じているらしい
もう少しすれば2ktになり、より進みやすくなるはずだ
【リアルRPG 海賊編46】船を修理できそうなところが全然無い!【山口県(川棚温泉)】
https://youtu.be/wFLnAkaEd-c???
33: 1◆0sA8GVLJwJ07 19/11/01(金)21:02:52 ID:TMw
そして、そのまま大きな危険もなく無事に関門橋を通過
大型船が往来する航路を外れてしばらく進んだ後、強めの追い風が吹いてきたので帆を上げてセーリングモードにする
風だけで6ktも出ている!
最近は強風時のセールの扱いにも慣れてきて、船が傾きすぎず、船首が振られすぎない範囲でギリギリまで効率よく風を利用するコツのようなものが分かってきた
帆を上げ下げせずとも角度の調整で風をいなす事ができるようになってきたから、仮に今平均風速の2倍の突風がいきなり吹いたとしても、問題なく航行できる自信はあった(鹿児島にいた頃は帆の調整が下手でスライダーの金具が吹き飛んだけど笑)
日没直前、港へ到着!
距離的に今日西予フィッシャリーナまでは行けないので大分県の国東市という所で停泊だ
明日はできるだけ早い時間に出港して西予フィッシャリーナを目指そう
豊予海峡を越える必要があるが、関門海峡に比べると遥かに楽に越えられるだろう
そう考えて寝ようとした時、事件は起こった
【リアルRPG 海賊編47】日本屈指の難所、関門海峡!!さらに、とうとうワタリガニが…!【山口県(川棚温泉)~大分県(国東)】
https://youtu.be/FmalnC64nbU
35: 1◆0sA8GVLJwJ07 19/11/03(日)08:11:58 ID:lRA
なんと、長崎県で釣り上げた非常食のワタリガニの、生命維持装置とも言えるブクブクが突然発熱し、充電端子の周りのプラスチックが溶けて壊れてしまった
36: 1◆0sA8GVLJwJ07 19/11/03(日)08:12:45 ID:lRA
魚の餌やワカメ等色々なものを食べている姿が可愛かったので最近は「ワタル君」と呼んでいた非常食だったので、何とか長生きして欲しいところだ
これはまずい…!
非常食だからと軽く考えて予備のブクブクを用意していなかったのが仇になってしまった
この大分の海に逃しでも、おそらくだが水質が違っていて長生きはできないだろう
ならいっそ今すぐ味噌汁に…いや、こんなに可愛いカニをそう簡単に食うわけには…
結局、悩んだ末にひとまず水換えをしてようすを見ることに決定
西予フィッシャリーナ付近で受け取れるよう、Amazonで新しいブクブクをコンビニ受け取りで発注しておいた
明日か明後日には届くらしい
なんとか明日の朝まで耐えてくれれば、航海中は船が揺れまくるのでエアレーションは不要だろうし時間が稼げる
かなり心配ではあったけど、浸水問題の解決が最優先ではあったし、明日の航海に備える為にそのまま朝まで眠ることにした
ちなみに浸水について、昨日何度排水しても少しずつ溜まってきていた床下の水が、なぜか今日一日は全く溜まっていないようだった
えぇ…関門海峡まで抜けてここまで来たのに、もしかして船底にヒビ入ってないんだろうか…
と思いつつ、だからといって嫌な予感は拭えないし陸揚げするまではっきりしないことは間違いないのでそのまま西予フィッシャリーナを目指すことにした
浸水問題とワタルの問題の両方を、これからなんとかしないといけない
なんとかなるだろうか…
37: 1◆0sA8GVLJwJ07 19/11/03(日)17:13:38 ID:AAo
朝、起きてワタルのようすを観察する
見た瞬間、寒気がした
水槽内には、全く動かずお尻側が僅かに浮いていてまったく生気の感じられないワタルの姿があったからだ
あぁ…し…死んでる…!?
恐る恐る、背中をつついてみる
…反応がない
そっと、胴体をつまんで持ち上げてみる
…反応が…ない!
ワタルはいつもなら、2対4本ある触覚のうち内側の触覚2本をほとんどずっと動かしている
しかし今はその触覚は口の前辺りに仕舞われていて、ピクリとも動いていない状態だった
…あぁ…、もう手遅れか…
うなだれつつも諦めきれず、水槽の海水を新鮮なものに入れ替えてワタルを入れてみる
新しい海水内には酸素が十分に溶け込んでいるはずなので、元気な状態なら水替えは効果的なはずだけど、もう死んでしまっていては駄目だろう…
そしてセールを張って出港準備をして、もう一度水槽を見ると、なんと、ワタルの触覚が時々ピクピク動いているのが見えた!
あぁ!生きてる!!
頑張れ…!!
新鮮な海水を提供する以外にできることが無いので、何とか復活してくれるよう祈る
非常食相手に何をやっているんだという思いもあったけど、ワタルには少し愛着が湧いて来てしまっていたので仕方がない
おれが見守っていると、ワタルは触覚を動かす回数が少しずつ増えてきて、ついに後ろ足をゆっくりと動かすまでに回復した
大きく重いハサミはまだ動かせないようだが、じきに回復してくれるかもしれない!
そして、出港
ワタルの状態を常に確認できるよう、操舵スペースに水槽を置くことにした
途中雨が降ってきた時は水槽内の海水が薄まらないよう船内に入れ、ハッチから見張りを継続しつつ、愛媛県の西予市を目指して航海
そして、なんとかフィッシャリーナに到着!
ワタルはまだ生きてる!!
38: 1◆0sA8GVLJwJ07 19/11/03(日)17:20:26 ID:AAo
フィッシャリーナでは、以前の浸水で特に世話になったkさん(こうのさん)が出迎えてくれた
kさん
「おかえり!」
おれ
「ただいまです! また戻って来ちゃいました!」
kさん
「Twitter見とるよ。バラモスの会心の一撃でやられてきたか笑」
おれ
「そうですね笑」
どうやらおれのTwitterはkさんに見られてしまっているらしい
だいぶ恥ずかしいけど、ここまでくれば船については大丈夫なはずだ
もう夕方だったから陸揚げは明日やることにして、その日はフィッシャリーナの桟橋に停泊することになった
ちなみに、今日もなぜか床下の水はほとんど増えていなかった
ヒビがたまたまふさがってくれたのか、何か特定の条件下でのみ浸水する状態なのか…
明日陸揚げすればはっきりするだろう
ワタルのブクブクは今朝10時に大阪から発送されたようだったけど、まだ西予市には到着していないみたいだ
注文履歴を確認すると「明日到着」となっていたから、明日の昼頃到着だろうか
到着までの間は3時間おきに水替えをしないとワタルは死んでしまうから、今晩は夜中も時々起きて水替えをすることにした
また、四国九州の海水なら少なくとも数日は持つだろうし、より新鮮なものを…ということで、人工海水じゃなくフィッシャリーナの海水を使うことにした
何とか明日まで持ってくれ…
しかし、そう願いつつ水換えをやり続けたところ、深夜、またしても事件が起こった
夕方からずっとやっているやり方でワタルの水替えをしたところ、急にワタルが動かなくなってしまった
触覚もほとんど動いていなくて、急速に弱っていっているようにも見える
やばい、なんでだ!!
3時間前と比べて海水の水質や温度が急激に変わってしまったのかもしれない
ただし、海表面の温度は特に雨の日は1日の変化が非常に小さいと言われていて、具体的には昼と夜で0.2℃くらいしか変化していないはずなので、あるとすれば別の冷たい海流が流れ込んできてしまった可能性だろう
すぐに水槽の海水を捨て可能な限り少なくして、酸素が溶け込みやすくワタルが温まりやすい状態にする
ワタルはどんどん弱っているようでもうほとんど動かなくなっていた
背中をつついてみても、軽く腹をつまんでみても、もはや全く反応が無い
【リアルRPG 海賊編48】ワタリガニのワタルがピクリとも動かなくなりました【大分県(国東)~愛媛県(西予フィッシャリーナ)】
https://youtu.be/JIM8ltzWEGI
39: 1◆0sA8GVLJwJ07 19/11/03(日)17:20:54 ID:AAo
あっ…(まぁいいか…)
40: 1◆0sA8GVLJwJ07 19/11/03(日)17:25:47 ID:AAo
ま、前書いたけど、人名は全部仮名だから…
な、何にしても書籍化の時には本名になるだろうし…
42: 1◆0sA8GVLJwJ07 19/11/03(日)17:49:52 ID:AAo
ワタルをつついてみた、その数十秒後
おれが見守る中、ワタルは突然ビクリ!と大きく動いて息を吹き替えした!
ゴロン…
それと同時に何かが落ちる音が水槽内に響く
…ん?
ワタルの右ハサミ、外れてないか…?
なんとワタルは自切をしていた
自切というのはカニが外敵から逃げる為に自分のハサミを餌として落とす行動のことだ
ちなみに無くなったハサミは脱皮をすることで再生していく
腕を引っ張ったり強く掴んだり衝撃を与えたりしていたわけでは無いのに、何から逃げようとして自切をしたのかは全くわからなかったけど、ひとまずワタルは息を吹き替えした
もしかすると黄泉の国から逃げ出そうとして自切をしたのかもしれないけど、何にしてもひとまず蘇ってくれて良かった
その後は3時間後に交換する海水を事前に汲んでおいて船内で少し温めてから少しずつ注いでやることで、何とかワタルはそれ以上弱らず朝を迎えることができた
44: 名無しさん@おーぷん 19/11/03(日)17:58:21 ID:LS4
自切とかあるのか初めて知ったわ
47: 1◆0sA8GVLJwJ07 19/11/03(日)23:03:26 ID:lRA
>>44
とかげで有名なやつ
45: 名無しさん@おーぷん 19/11/03(日)18:06:24 ID:H6J
ワタリガニはあんまり食べると来ないよね
だしにするイメージ
48: 1◆0sA8GVLJwJ07 19/11/04(月)11:57:11 ID:oRN
>>45
そうなんだよなぁ、非常食なのに…笑
49: 1◆0sA8GVLJwJ07 19/11/04(月)11:57:55 ID:oRN
次の日の朝、何やら外で音がしたので船内の窓から外を見ると、なんと船が海上を流れていた
えぇ!!ロープ外れたのか!?
昨日は別に嵐とかもなかったし、さっき水換えをやった時は問題なかったはずだ!
とにかくヤバい!
わけがわからず慌てて外に出ると、そこにはkさん含むフィッシャリーナの方々がいて、船の係留ロープを引っ張って陸揚げ施設まで移動させているところだった
…な、なんだ、良かった…
50: 1◆0sA8GVLJwJ07 19/11/04(月)11:59:38 ID:WaG
kさん
「おはよう! びっくりさせようと思って、何も言わずに動かすことにした笑」
おれ
「なんだ…、そうだったんですか…。おはようございます、今日はよろしくお願いします!」
そして陸揚げ
早速この前修理した部分を確認し、その他の部分もぐるりと見回すが、なんと、ヒビや浸水箇所は見当たらない
フィッシャリーナの社長さんやメカニックさんと4人がかりで確認するも、船底は全くもって問題無さそうだった
えぇ…穴、空いて無いのか…?
社長さん
「どうする? 下ろす?」
おれ
「そうですね…修理できる場所が無いなら、船台や保管費が無駄になりますし、下ろしてください」
そんなわけで結局船底にヒビは入っていないことが分かった
51: 1◆0sA8GVLJwJ07 19/11/04(月)12:02:32 ID:cjU
そしてその後kさんに船内を見てもらったところ、エンジン冷却用の海水循環機と、船上の排水穴の詰まり(貝が挟まっていた)、それで船上に水が溜まった事によるボルトからの水漏れ、そしてどこから来ているかはわからないがエンジン室横側から複数の小さな流水を発見することができた
流水…といえるほどの量はないけど指で拭き取るとすぐに水の経路が元通りになり、ゆっくりながらも水の流れを確認することができた
kさんによると、おそらくこれらの水が時間をかけてゆっくりと床下に集まり、浸水しているかのように見えたのだろう、とのことだった
というわけで、浸水問題についてはあっさり解決だ
58: 1◆0sA8GVLJwJ07 19/11/05(火)21:45:49 ID:XsF
エンジン周りのメンテ・交換をした後は、干潮時にkさんがテトラポッドが積み重なるポイントまで連れて行ってくれて、食べられる貝を教えてくれた
カメノテと、ニナ貝と呼ばれているものらしい
kさん「つまみにもなるし味噌汁の具にもなるし、今後寄港して干潮の時は探せばいいよ」
おれ「へぇ、こういう小さい貝の中にも美味しい貝があるんですね!
これは今晩食べてみます!」
…というわけで戦利品である貝をバケツに入れて船室へ戻る
そして、ワタルのようすを確認
59: 1◆0sA8GVLJwJ07 19/11/05(火)23:56:30 ID:XsF
すると…ワタルは虫の息になっていて、弱々しく触覚をピクピクさせていた…!
すぐに水を変えたけど、今度は今までのように復活しない
3時間ごとの水換えもそろそろ意味が無くなってきているのかもしれない
やばい…何とかしないと…と思っていた矢先、Amazonから荷物がコンビニに到着したとの連絡があった
ようやく来た!!
何とか間に合え…!
ワタルに対してできる事は水換え以外にはないので、弱々しい状態のワタルを船内に残し、コンビニへと急ぐ
ここから最寄りのコンビニまでは4kmほど距離があったけど、kさんに廃車予定の自転車を貸してもらったのでかなり時間を短縮することができそうだった
ちなみに西予フィッシャリーナでは自転車やバイクの修理もやっているらしく、この自転車はその関係で手に入った廃車らしい
この前はここで小型のエアコンを修理しているのを見かけたので、おそらくこのフィッシャリーナの人たちは万に通じるメカニックのスペシャリストなんだろう
自転車を全力で漕いでコンビニへ行き、荷物だけ受け取ってすぐに引き返す
礼を言いつつ自転車を元の場所に戻して、届いたブクブクを開封/組み立てしつつ船内へ駆け込みワタルの元へ
60: 1◆0sA8GVLJwJ07 19/11/06(水)08:47:16 ID:taJ
…よし! まだ生きてる!!
ワタルは弱々しいながらも触覚を動かしていた
ブクブクを水槽へ入れてUSBで接続すると、ブーッ…という音と共に空気の泡が出始めた
更にしばらく見守っていると、ワタルは元気を取り戻したようで、触覚の動きがよりなめらかで、力強くなっていった
こうして、片腕を失いつつも、何とかワタルは生き延びる事ができた
その日の夜はワタルの右腕とニナ貝/カメノテを使って味噌汁を作った
ニナ貝はシジミとサザエの間のようなちょっと不思議な味で、カメノテはなんだかもっちゃりしていた
ワタルの腕は、身はほとんどなかったものの、臭いはまさにカニそのものだったので良い出汁が出て、味噌汁がより味わい深くなった
62: 1◆0sA8GVLJwJ07 19/11/06(水)11:02:08 ID:taJ
…まあ、身が無いんじゃ非常食にはならないし、ワタルは非常食クビだな…
ワタルを食べる気はとっくに失せていたけど、一応そういう理由付で、非常食としてのワタルの役割は完全に果たされたことにした
そして、非常食をお役御免となったワタルを、おれは船の仲間として改めて受け入れることにした
今この海に放してやっても長生きはできないだろうから、仲間として連れて行く方がワタルは長生きできるだろう
ワタル、よろしくな!
63: 1◆0sA8GVLJwJ07 19/11/06(水)11:03:34 ID:taJ
そして話は少しだけさかのぼり、ワタルのブクブクが届く少し前
陸揚げ後、浸水が上からのものだと判明して、翌日フィッシャリーナを発つことにしたその時のことだ
おれは、何となく嫌な予感が拭えず、船内で悶々としていた
ワタルのことも心配だけど、それ以上に何故か、このまま出航するのは駄目な気がした
なんだろう、思い過ごしかもしれないが、何か見落としている気もする
うーん…あ、そういえば…
おれ
「kさん、そういえばここ数日エンジンがやけに大きい音を出すようになったんですが、ただの経年劣化ですかね?」
kさん
「あー…、そういえばさっき船内見た時にエンジンの土台を高さ調整する薄い板が落ちとるの見た気がするな
見てきたら」
おれ
「わかりました」
そして船内へ戻り、エンジンを確認する
kさんは土台…の敷板が何かって言ってたな…
土台、土台は…
あれ…?
ここって折れてていい所だったっけ…?
そして…
なんと、エンジンは土台4箇所中2箇所が割れていて、ほんの僅かに傾いていることが分かった…!
しかも奥のひび割れはフット部を支える金具じゃなく、エンジンの鋳物そのものにヒビが入っている…
エンジンを手で押すと、それだけでグラグラした
64: 1◆0sA8GVLJwJ07 19/11/06(水)11:06:54 ID:taJ
kさん
「うわ…これは直さんといかんね…
今は土台2箇所とプロペラシャフトだけで支えとるから、プロペラに負担がかかってていつずれたり折れたりするか分からんし、そうなるとこの船の構造上浸水止まらずに転覆か沈没するし…」
また、kさんによるとこの状態だとプロペラシャフトが若干いがんでいるためそこからも浸水があるだろうとのことだった
浸水が確認できたのが嵐の中航海した日の翌日で、エンジン音が大きくなったのもその頃からだった気がする
…となると、どうやらおれは、いつプロペラシャフトが折れて沈没してもおかしくない船で、関門海峡を越え片道200km近くも航海をしてここまで来たということになる
なかなかの冒険だったらしい
ひとまず、フィッシャリーナを出発する前に気付けてよかった
kさんにお願いして、修理の見積もりを出してもらう
…が
フィッシャリーナ社長
「エンジン下に道具を入れるだけの隙間が無いから折れたパーツ取り出せないね
ちなみにパーツ交換の場合、手前は1600円、奥は42000円
やるなら陸揚げしてエンジンごと取り出すことになるけど、そうなると数日かかるし、人手も必要になる
悪いけど、7、8万は覚悟してもらわないといけないかなあ…」
おれ
「そうなんですね…
すみません…、それだと予算上厳しくなってしまうので、少し考えさせてください」
65: 1◆0sA8GVLJwJ07 19/11/06(水)11:12:05 ID:taJ
「たかが数万円」と思うかもしれないけど、事実、ここで修理に7、8万円(おそらく社長のことだから、実際はそれより1、2万円安い価格にはなるだろうけど、それでも)かかってしまうのは予算オーバーだった
日本一周後にこの船を手放すことも考えないといけず、処分することになった場合は40~50万円が飛んでいくから、あと2、3ヶ月で廃船にするかもしれない船の修理に何万円もかけるのは賢明とは言えない
廃船にするとなった時の分を残しておかないと、この次の冒険に支障がでてしまう
船室で、一人で頭を悩ませる
メインエンジンが使えない場合、日本一周を達成するには以下2つのどちらかをやらないといけないだろう
①サブエンジンをメインエンジンの代わりに使用して航海
②九州でやっていたのと同じように、サブエンジンは港出入りの時のみでほとんど風のみで航海
まず①だと、サブエンジンは軽油じゃなくガソリンで動く上に燃費が悪くて、それだけでメインエンジンに比べて数万円の差がでてしまうだろう
予算オーバーだ
そもそも、ガソリンは軽油より取扱注意な液体だから、毎回都合よく携行缶に入れさせてもらえるとも限らない
やったことが無いのでなんとも言えないけど、場合によっては断られるかもしれない
そして②だと、予算はクリアできるものの時間的な制約にひっかかってしまう
ほぼ風だけで進むには日数が必要になるので、メインエンジンがある時に比べると倍程度の時間がかかるだろう
そうして夏が終わり秋になり、冬が近づいてしまうと、ほむらの健康上まずいことになる
①も②も駄目、八方塞がりだ…
【リアルRPG 海賊編49】仲間が増えるよ!!やったねほむちゃん!…からのゲームオーバー【愛媛県(西予フィッシャリーナ)】
https://youtu.be/6RWyo1NSqqI
66: 名無しさん@おーぷん 19/11/06(水)12:02:16 ID:dW7
カメノテって食えるのか・・・
72: 1◆0sA8GVLJwJ07 19/11/07(木)09:46:41 ID:7AL
>>66
味噌汁の具として普通に美味かった
67: 名無しさん@おーぷん 19/11/06(水)12:29:47 ID:rQm
カメノテ食うよね
ちょっとくちゅくちゅした食感だったような
72: 1◆0sA8GVLJwJ07 19/11/07(木)09:46:41 ID:7AL
>>67
そうそう、もきゅもきゅしてる
70: 1◆0sA8GVLJwJ07 19/11/06(水)18:35:09 ID:EAo
そうこう考えていると、kさんがこちらへやって来た
kさん
「呆然としとるね笑」
おれ
「そうですね…
すみません…」
kさん
「あの後も何か良い方法が無いか社長がずっと考えてくれてて、その隔壁に穴開けたら陸揚げせんでも良くて工賃も抑えられるかもって
どうする?」
kさんが言うには、船室とエンジン室を仕切るFRPの強固な隔壁に穴を開けることができれば、少なくとも手前のフットパーツは取り外すことができるので溶接や交換ができるらしい
奥のパーツは溶接はほぼ不可能で交換も非常に高価なので、ひとまず3点でエンジンを支えれば日本一周する2、3ヶ月はもつだろう…とのことだった
隔壁に穴を開けると土台そのものの強度も少し下がってしまう恐れがあったけど、その辺りも考えあまり強度が落ちないように穴を開けるとのことだった
この方法による具体的な見積額は、無かった
この船の構造が特殊ということもあって、穴あけやその後の作業にどれだけ手間や時間が必要化何とも言えないのかもしれない
それでも陸揚げして何日もかけて直すよりは工賃は抑えられるようだし、何よりこのフィッシャリーナの人たちなら理不尽に多く請求したりは絶対にしないだろう
となれば返答は一つだ
おれ
「どうか、よろしくお願いします!」
そして明日の朝、その工事が行われることになった
71: 名無しさん@おーぷん 19/11/07(木)08:40:54 ID:3y4
西予フィッシャリーナの人たちスゲーなぁ
73: 1◆0sA8GVLJwJ07 19/11/07(木)09:50:08 ID:7AL
>>71西予みかめフィッシャリーナの人たちがいなかったら序盤で詰んでたという事実…笑
ちなみにこの前不具合で貼れなかったけど、その他フィッシャリーナでやったエンジンメンテ↓
エンジンオイルの購入
Vベルト交換
インペラっていう冷却水関連の部品のパッキン的な部分の交換
kさんによると厚い紙があれば代わりが作れるということだったから、名刺を使ってkさんに教わりながら制作
こんなに薄くて弱いものがエンジン部品の一つとして役に立つのは中々不思議
74: 1◆0sA8GVLJwJ07 19/11/07(木)10:19:42 ID:7AL
朝、先がギザギザになっている円形のドリルで穴を開け、チェーンブロックを使ってエンジンを吊るし、パーツを取り出す
↓
一日でも早く出港できるよう、今回はパーツ交換ではなく溶接で対応することになり、社長がパーツを溶接してくれた
交換と違って、溶接だと溶接部の上下がまた割れてしまう可能性もあるらしいけど、まあそれは今気にしても仕方ないので、なった時に考えることにした
作業自体は予定よりかなり簡単に終わったようで、修理費も2万円程度だった
修理後にエンジンをかけてみる
…と、静岡出港時と同等かそれ以上の静音で、振動も完全に無くなっていた!!
奥の支えの部分は割れたままだから油断はできないけど、とにかく明日出航できそうだ!
その後、餞別…かはわからないけど、kさんが縦長のアミとアジやベラ、サザエをくれた
アミは、底と上部に円形の針金などを仕込めばスカリという魚を生かせる道具になる
停泊中はこのアミを海に沈めておけば、ブクブクなど不要で魚を活かせるから、非常食の扱いが楽になる
明日出航前に、ワタルのブクブクの予備がコンビニに届くよう注文したから、航海中は魚たちはバケツに入れて予備のブクブクでエアレーションをしておけば大丈夫だろう
…さあ、いよいよ明日から冒険再開!!
出航だ!!
76: 名無しさん@おーぷん 19/11/07(木)12:10:59 ID:1ZS
>>74
先がギザギザになっている円形のドリルってホールソーじゃね?
78: 1◆0sA8GVLJwJ07 19/11/07(木)16:23:27 ID:7AL
>>76
それだ!!
へー、あれホールソーっていうのか!
77: 1◆0sA8GVLJwJ07 19/11/07(木)16:06:47 ID:7AL
予備のブクブクを受け取り、出港
…が、なんとおととい届いたばかりのブクブクがこのタイミングで壊れてしまったので、
結局予備をメイン使用することになり、昨日もらった魚たちを生かすことができなくなってしまった
乱暴に扱った訳でもないのに充電端子が機械の内側に落ちて給電できなくなったから、初期不良だろう
今日は晴れていて風もあったから干物を作ることに決定!
海水に漬けてからしっかり拭いて、乾かす
あとはサザエがいるけど、航海中はバケツの中に入れて時々水を変えていれば、次のブクブクが届くまでは生きてくれるかもしれない
そして夕方
ほぼ干物は出来上がっていたけど、まだ少し水分がありそうだったから、明日も少し日に当てて干した方が良さそうだ
日没直前、佐賀関へ寄港
この前何日も滞在した場所なので薄暗い中でも係留場所を見つけることができた
【リアルRPG 海賊編50】フィッシャリーナの方々に相談に乗っていただいて、今後の方針が決まりました【愛媛県(西予フィッシャリーナ)】
https://youtu.be/HHe76BZBGRY
80: 1◆0sA8GVLJwJ07 19/11/08(金)12:23:18 ID:cq6
次の日、朝4時40分頃出港
今日はできるだけたくさん移動しないと、明日の関門海峡超えに支障が出るだろうな
と、できる限り急いで航海していると海上に大きな白い物体を発見!
静岡からここまで、ずっと探していたものだ!!
急いで船を旋回させて、両手を広げ覆いかぶさるようにして持ち上げて回収!
言ってしまえばゴミではあるんだけど、これは船の横を守る為のフェンダーとして利用できるものだ
実はこのヨットに元々付いていたフェンダーは細く不十分で、岸壁の端を利用してうまく斜めに係留しないと船体が壁に当たってどんどん傷ついていくという有様だった
この発泡スチロールがあれば、岸壁にそのまま横付けすることができるし、係留可能な場所がぐっと広がる!
さらに、大きさを測ってみた所、この発泡スチロールが海中に完全に沈んだ時にはおよそ61kgの物を持ち上げる浮力があることが分かった
丁度おれの体重くらいだから、いざという時にしがみつく浮きとしては十分すぎるスペックだ
この発泡スチロールがどこの国から流れてきたものかはわからないけど、少なくともこれを血眼で探して航海しているような人はいないだろうから、船や自分を守る為のものとしてありがたく使わせてもらうことにした
という訳で、フェンダー兼救命ボートの発泡スチロールゲット!
さて、瀬戸内海のように潮流が複雑な場所だと、流される分傾いた角度で風を受ける(風向と潮流のベクトル合成)
状況によるけど無理に逆らおうとせずに少し遠回りの航路にした方が最終的に早いパターンもあるから、今後の潮流や風も計算に入れて判断していかないと大きく時間ロスしてしまう
どう判断してどこを通るかは完全におれ一人に委ねられているから、ワクワクする
そして辺りが薄暗くなってきた中、港に到着
係留する時に、親切で気さくな方が誘導してくれて、軽油を入れて、一久という山口県のとんこつラーメンへ連れて行ってもらえた
そのまま成り行きで風呂も借りることができたから、明日は万全の状態で関門海峡に挑めそうだ!
翌日は朝出航して、土砂降りで霧がかっている中、関門海峡越え
雨で視界はかなり悪いながら、以前通ったときにも見かけた警戒船が巡回してくれているから安心だ
そして雨の中、4ノットというそこそこに強い潮流がありながらも関門海峡を突破!
…しかし残念ながら、関門海峡を越えたあたりでおれは暗い気持ちにならざるを得なかった
操舵スペース真下にある、プロペラシャフトのあたりから鈍い音が響くようになったからだ
プロペラシャフトに負担がかかってる…?
嫌な予感がしつつ、エンジン室内のフット部を確認
あぁ…
この前溶接したばかりのフットパーツの溶接部すぐ下が割れてしまっていた…
すぐにエンジンを止めて、帆走に切り替える
この状態のままエンジンを使っていたらそのうちプロペラシャフトが折れるか曲がるかして浸水が止まらなくなるだろう
【リアルRPG 海賊編51】保存食と、ボーナスアイテムゲット!…からのゲームオーバー【愛媛県(西予フィッシャリーナ)~関門海峡付近の海上】
https://youtu.be/Cndg9C-1qxw
82: 1◆0sA8GVLJwJ07 19/11/08(金)22:43:39 ID:cq6
サブエンジンなら…振動もあまりないから使ってもいいよな…?
そう考えてサブエンジンを少しだけ使い、最寄りの港を目指す
溶接部の上下が割れてしまうことは起こりうることで、仕方がない
フィッシャリーナの社長さんもあり得る事態だと言っていたし、この場合は部品そのものを交換すれば強度が上がると聞いていた
早速、海上でヤンマーのマリンエンジン部署に電話をかける
岸が見えているくらい近い時は普通に4G回線が使えるからIP電話が可能だ
電話に出た方にエンジンの型番を伝えて、代わりの部品が取り寄せ可能か確認する
そしてなんと、この船の古いエンジンに合ったフットパーツは在庫があったようで、今おれがいるこの下関にはパーツを各地に発送する大元の部署があるらしい
今回はおれに住所がなく受け取れなかったから、その部署で直接パーツを受け取れることになった
よし…ひとまずこれで直せるかもしれない…!!
電話を終えると少し風が出てきているのに気付いたから、サブエンジンをほとんど使わずに帆走で港へ
山口県下関市の吉見漁港に漂着
夜は台風5号が接近している影響で海が荒れまくっていたけど、デカ発泡スチロールのお陰で船体は傷付かずに済んだ
やっぱりこれは関門海峡を越えたことによるボーナスアイテムだったのかもしれない
そしてその2日後、パーツが届いたとのことで取りに下関市街地へ
交換パーツゲット!!
すぐにでも交換したいところだったけど、風が強くて雨も降っていたので交換は明日やることにした
83: 1◆0sA8GVLJwJ07 19/11/08(金)23:24:23 ID:cq6
翌日、雨が止んでいるタイミングを見計らって、フットパーツの交換をする
今のままではエンジンが傾いていてパーツの穴にボルトが通らないから、まずはエンジン自体を吊り上げる必要がある
当然ながらメカニックさんはいないから一人でやるしかない
…お前がメカニックさんになるんだよ!!
フィッシャリーナでは傾いたエンジンを吊り上げるのにチェーンブロックを使っていたけど、そんなものは積んでいない
というわけで、困ったときのパラコード!
パラコードというのは200kgまで引っ張りに耐えられる頑丈な紐で、今までの冒険で圧倒的に一番役立ったアイテムだ
輸送結びと呼ばれる滑車の原理が使える結び方を使って体重をかけてエンジンを引き上げる
…と、支えにしている船室天井からミシ…ミシシ…と音がした
いい感じだ!
フィッシャリーナでチェーンブロックで時もこの音はしていたから、ちょうどいい位の力で吊り上げられているはずだ
船室天井が決壊する恐れはあるけど、前は大丈夫だったから、たぶん、大丈夫…
引っ張ったまま状態の紐を船に付いているクリートという留め部に結んで動かないようにしてからエンジン室へ
フットパーツのナットの上は燃料パイプが通っていて邪魔だったから、一時的に外してパーツを交換
この前のフィッシャリーナでは、ここでエンジン隔壁の下に穴を空ける必要があったけど、今回は既に空いているから道具を入れてナットを外すことができる
パイプを戻したあとはネジを緩めて燃料フィードポンプを何度か押せばエア抜きが完了して、エンジンがかかるはずだ
さぁ、エンジン始動!
ほぼ振動はなく、新しいフットパーツはばっちり動作しているようだった
よぉし!!直った!!
【リアルRPG 海賊編52】ミッション:チェーンブロック無しでエンジンを吊り上げろ!【山口県(下関)】
https://youtu.be/THO9G8NmJcwさあ、今度こそ、日本海へ!!
一時はどうなることかと悩みっぱなしだったけど、船は何とか直って、わたるという仲間も増えたし、ますます楽しく冒険ができそうだ
いよいよ日本海、そしてその後は三陸沿岸を航海して静岡県でゴールだ!
【つづく】
84: 1◆0sA8GVLJwJ07 19/11/08(金)23:26:56 ID:cq6
今回はここまで!
質問があれば答える!
ちなみにこのヨットの話はあと2スレほどで終わって、次はほんとはキルギスの続編が4万文字くらいあるんだけど、それ飛ばして更に次の話のスレ立てることにした!
リアルタイム性重視で、次は砂漠の話!
87: 名無しさん@おーぷん 19/11/09(土)07:42:12 ID:80R
修理できるのがすごいね
88: 1◆0sA8GVLJwJ07 19/11/09(土)10:59:53 ID:IX2
>>87
この頃はディーゼルエンジンの事もヨットの事もかなり分かってきてたしな
メカニックさんの修理を間近で見てきたおかげで工具の使いどころも知ってたし
エンジンオイルの色すら分からないようなおれはもう居ない!笑
89: 名無しさん@おーぷん 19/11/10(日)08:14:33 ID:YKC
一番おいしかった魚は?
90: 1◆0sA8GVLJwJ07 19/11/10(日)10:56:35 ID:6ko
>>89
やっぱ自分で釣ったアジだな
85: 名無しさん@おーぷん 19/11/09(土)00:10:06 ID:psC
今砂漠に居るん?
86: 1◆0sA8GVLJwJ07 19/11/09(土)02:04:31 ID:JG0
>>85
砂漠は明日から!
でも今回は準備に時間かけるからしばらくは野宿せずに宿で暮らすと思う