このように、名称や固有名詞を作家が作ることは多々ある。妖怪とUMAに限って話せば、今はすっかり
スカイフィッシュという名前で定着している空を移動するUMAも、元々は「ロッズ」と英語圏で呼ばれていた。
これを並木伸一郎先生が日本に翻訳し、紹介する時に「スカイフィッシュ」という名前に変えたのである。このネーミングセンスは素晴らしく、
海外のUMAマニアの間でも今ではスカイフィッシュという言葉が通用するぐらいである。
(画像はyoutubeより)
他にもオカルト三銃士の一角で業界の重鎮である飛鳥昭雄先生はキルギスのイシク・クル湖の怪物を
「キルギスドン」と名づけた。この怪物は角を持つドラゴンに似た怪物であり、怪獣らしいネーミングが見事にマッチしている。漫画家である飛鳥昭雄先生らしい名前の付け方だ。
かの妖怪漫画家である
水木しげる先生も数多くの妖怪にネーミングを施している。平安時代に現れた
人間を押しつぶす板の鬼に関しては、「板鬼」と名づけている。蕪村妖怪絵巻にある、
おしりに目のある妖怪を水木先生は「尻目」と名づけており、水木しげるらしいユーモアセンスに溢れた名前となっている。
また、葛飾北斎一門が使った手習い帳には、百目とまったくデザインが同じ構図が存在しており、名前は掲載されていなかった。それに水木先生が「百目」という名前をかぶせたものだと思われる。
また、UMA研究家の天野ミチヒロ氏はフロリダに現れたという巨大なペンギンのことを
「フロリダ・ペギラ」と名づけた。これは言うまでもなく
ウルトラQへのリスペクトが含まれている。怪獣愛好家でもある天野ミチヒロらしいセンスの有るネーミングだ。
また、富士五湖の西湖に姿を現すサイポゴも天野氏のネーミングによるものである。これは北米大陸の湖に出る
人気UMAオゴポゴをリスペクトしており、なんともユーモラスなネーミングとなっている。
(オゴポゴ:画像はyoutubeより)
「ゴム人間」
かくいう筆者も何匹か命名している。
的場浩司氏が目撃したゴムのような体を持つ男「ゴム男(お)」に似た怪人が明治神宮で撮影された時、東スポオリジナルのネーミングを付けたいという記者の申し出もあって
「ゴム人間」という名前をつけさせていただいた。
他にも漫画家の
箱ミネコ女史が
群馬の伊香保温泉近郊で撮影した奇妙な足跡の持ち主に対して「伊香保温泉獣人」と名づけた。
また、筆者の後輩である
作家でUMA研究家の中沢健くんはやたらとUMAに名前をつけたがる傾向にある。茨城に現れた
翼竜にぶら下がった人のようなものに対しては「翼竜忍者」と名づけ、大阪に現れた
髪の毛のような浮遊物体は「スカイヘアー」と名づけている。
他にも
牛久沼に現れた怪物に関しては「ウシジナー」と名づけており(飛鳥昭雄先生は同一の怪物をウッシーと呼んでいる)、相模原に現れた鼻のような飛行物体には
「台風人間」、湖畔に現れた恐竜好きの美女には
「ミス・ネス子」と名づけている。
一般人が名づけ、広まった妖怪
他にも一般人が名づけた妖怪の名前が20年後に広まった事例も偶然見かけたことがある。具体的に述べると、
「妖怪ち○毛散らし」だ。筆者がまだ30代前半の頃、渋谷で開催された音楽と妖怪のジョイントイベントに出たことがある。
この時共演した音楽をやっていた若者たちが、自分が考えた妖怪に名前をつけて発表していた。例えば寝る時に寝ながら電気が消せる長いひもがふわふわして取れないことを妖怪と呼んだりしていたのだが、一番ばかうけしたのは「なんでこんなところにち○毛があるのか」という「妖怪ち○毛散らし」だった。
コロコロで家の中を掃除しまくっていると、
なんでこんな所にち○毛が、というのは男子ならよくある現象である。そのことを妖怪の仕業として「
妖怪ち○毛散らし」として表現していた。
当時筆者はライブの余興と捉え爆笑して帰ったのだが、その後もたびたび宴席でこの話をしていた。すると近年、ケンドーコバヤシ氏がテレビで「ち○毛散らし」の話をしており、この妖怪もあっという間にメジャーになってしまった。妖怪ち○毛散らしがネーミングされた時から見ている筆者としては可愛い後輩が売れっ子作家になったような気分である。
未確認情報によると、筆者と親交のある
お笑い芸人シンデレラエキスプレスの渡辺さんがつくったネタ妖怪が生前水木先生の耳に入り、水木先生が絵にしたという話がある。これも現在確認中だが、真相が判明したら読者の皆様にお知らせしようと思う。
このようにUMAや妖怪は作家や漫画家、研究家が名付け親になることで多くの人々に愛される存在になるのである。
文:
山口敏太郎
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