856: 添い寝 2007/03/29(木) 15:31:23 ID:RJO9BJ3Y0
「今では、何かの祟りじゃないかと、その区画の人は全員といってもいいくらい怯えている。
クレームも多くなってきてね。で、何やら怪しげな話が好きなお前に相談しようと思ったわ
けだ」
確かに俺は怖い話は好きだけど、霊が分かるわけじゃないし、ましてやお祓いや除霊の類は
できない。でも興味があったから、一応一通りのことは聞いてみた。
「その分譲地に何か曰くはなかったのか?」「詳しくは分からないが無かったと思う」
「地鎮祭はやったのか?」「もちろんやった」
「そのとき神主は何も言わなかったのか?」「その場にいなかったので分からない」
「死亡が相次いでいるのはそこの区画だけなのか」「その通り」
「前の地主は何も言っていなかったのか」「俺は特に何も聞いていない」
「亡くなった人の共通性は?」「今は分からない」
「おまえの親父さんが亡くなったのは偶然か?」「それは全く分からない」
アキバの親父さんは1年ちょっと前に癌で亡くなっている。まだ60歳前で、現代なら十分
若死の部類に入るだろう。
その区画を分譲したのは、まだ親父さんが社長をやっているときで、分譲が終わってから
程なくして亡くなった。
それまでは普通だったが、ある日突然立てなくなり、病院に行ったところ頭に大きな腫瘍が
発見され、その後三月と持たずに亡くなってしまった。既に癌が体中に広がっていたのだと
いう。もちろん俺も葬式には参列している。
その後、親父さんの後を継いだのが彼であるが、その区画を分譲しているときは、他の物件
を扱っていて、そのときの様子はよく分からないのだそうだ。
857: 添い寝 2007/03/29(木) 15:32:36 ID:RJO9BJ3Y0
俺よりも地鎮祭をやった神主に相談したほうがよっぽど頼りになるんじゃないか、と言ったが
「その神主、死んでしまっている」
なんだそりゃ、と思わず突っ込んだが、冷静に考えるとかなり怖い。
「でも神主、かなりの歳だったからな。それで、うちが檀家になっている寺に頼もうかと思っ
たんだけど、そこの住職、どうも胡散臭いし、俺とも折が会わなくてね。誰かお祓いできる
人知らないか?」
「“自称”霊能者ってやつは俺も知っているんだけど、そいつもかなり胡散臭くてね…」
「それでもいい、紹介してくれ」
そんなやりとりがあって、“自称”霊能者である人間を紹介することに。
(彼を仮に「オオツカ氏」とします)
そして数日後、アキバ、俺、オオツカ氏の3人で現地に。
到着して、界隈を一通り歩いたあと、オオツカ氏が言う。
「確かに何か感じます。しかし、何か違うというか、何かおかしいというか…」
やっぱり、こいつ怪しいなと思う。誰だってそのくらいのこと言えるだろ、と心で突っ込みを
入れてアキバの顔を見ると、彼も胡散臭いものを見ているような目つきをしている。
「対処できそうですか?」アキバが恐る恐る聞く。
「うーん、、」と首をひねったあと、オオツカ氏は「無理そうです」と一言。
まあね、できないのにやった振りをしちゃうよりは良心的かな、と思ったりする。
しかし、それからオオツカ氏はある人物を紹介してくれた。
その人物は近くの市に住む50代の女性で、オオツカ氏とは長い付き合いとのことだった。
ただ、その人に会う前にまた死者がでた。ある家の高校生の息子が急性アルコール中毒で死ん
だ。引越しを検討している一家も少なくないとの噂もでてきた。
858: 添い寝 2007/03/29(木) 15:33:38 ID:RJO9BJ3Y0
さらに数日後、その女性(ウエノさんとします)を含め4人で再び現地へ。
件の区画を歩いたあと、「近くの土地も見てみましょう」と区画から外へ足を向ける。
あいにくの小雨模様だったが、傘もささずに早足で歩きだした。後を追う。
ウエノさんは隣の区画を回ったあと、今度は反対に向かった、そこにはとても小さな公園があり、
その向こうは荒地となっている。さらにその荒地に隣接して、また別の区画があった。
荒地の前まできて、ウエノさんは足を止めた。
「ここみたいだね」
「ここ、ですか?」アキバが怪訝な顔で聞く。
「そうよ。ここがおかしい。あなたも何か感じる?」
振られたオオツカ氏も「確かに感じますね」と呟く。相変わらず胡散臭い感じではあったが。
「しかし、ここが原因ならば、あそこの区画より、ここにすぐ隣接している場所のほうに影響が
でるのではないですか?」と俺が聞く。
「まあ、そうなんですが。そこは私もおかしいと思ってます。調べる必要がありそうですね」
「この土地の持ち主はわかりますか?」ウエノさんがアキバに聞く。
「調べれば分かるとは思いますが」
「至急調べて、地主を見つけてください」
「分かりました。で、不躾ですが、対処はできますでしょうか?」
「まずは、ここの因果関係が分からないと何とも言えませんね。それを知るためにも地主さん
に話が聞きたいのです」
職業柄、土地の所有者を探すのは不動産屋にとってはお手の物。その日のうちに地主を割り出し
たが、その地主、今は隣県に住んでいるという。
さっそくアポをとってみたところ、日曜日なら会えそうだとのこと。
早速日曜日に地主宅を伺った。
地主は還暦を過ぎたばかりの男性であった。(地主をカンダ氏とします)
もっとも、俺は仕事のため行けず、ウエノさんとアキバの2人で行った。
後から聞いたことはこんなことだった。
859: 添い寝 2007/03/29(木) 15:34:42 ID:RJO9BJ3Y0
簡単な挨拶の後、ウエノさんが用件を切り出す。
「新Q地区にカンダさんが所有している土地についてのことなんですが」
「はあ」
「それで、あの土地についてご存知のことを教えて欲しいのです」
「いや、私はただ土地を持っているだけですが」
最初、カンダ氏は不信感、敵対心がありありだったという。もっとも、見ず知らずの人間が尋ね
てきて、いきなり土地のことを聞けば無理はないのかもしれない。
さらに少しやりとりがあったあと、ウエノさんが努めて穏やかに言った。
「私どもは、カンダさんに金銭的なことを含めて何か要求したり、責任を追及する気はありません。
ただ、俄かには信じられないかもしれませんが、あの土地が原因で人の命が奪われている可能性が
あります。ですから、何でもいいので昔からの謂れを知っていたら教えて欲しいのです。決して、
それを悪用したり、むやみに人に漏らしたりはしないとお約束しますので。どうかお願いします」
そのとき、ひとりの老婆が部屋に入ってきた。カンダ氏のお袋さんである。80を優に超えてはい
るがしっかりした人である。
「その子(カンダ氏のこと)はあまり知らないから、私がお話しましょう」
「是非お願いします」
「あそこは忌み地なんですよ」カンダ婆さんはそう話し始めた。まとめると、次のようなことで
ある。
いつの時代かははっきりしないが、かなりの昔からその土地に「不幸な出来事」に関連するもの、
「穢れた」ものなどを捨てる(埋める?)ようになった。
それは物質的なものだけではなく、気持ち的なもの、所謂「怨念」や「憎悪」などを代々捨てて
きたという。
ただし、カンダ婆さんがカンダ家に嫁にくる頃には、その風習はほとんど廃れており、実際にど
のようにやっていたかは分からない。しかし、舅や旦那(亡くなっている)から概要を聞かされ
ており、そこには無闇に入ってはならないこと、また子供を近づけてはならないなどと注意を受
けていた。
そして、その土地を「ごうち」と呼んでいた。なぜ「ごうち」と呼ぶのか、またどんな漢字が
あてはまるのかは分からない。
860: 添い寝 2007/03/29(木) 15:35:53 ID:RJO9BJ3Y0
その土地はカンダ家の所有ではあるが、管理は集落で行っていて、そういったことは集落全体で
共有していた。
ただ風習はなくなっても、「ごうち」は集落の主に年寄りたちによって管理されつづけ、その
集落一帯が新Q地区となって再開発されるまで行われていた。
もともとカンダ家は集落一の地主であったのだが、農地解放で落ちぶれた。ただし落ちぶれたと
はいっても、かなりの土地は残り、バブルと再開発の影響で土地は高騰、しかし土地を手放すこ
とに抵抗していたカンダ婆さんの旦那(カンダ家先代)が亡くなると、カンダ氏は土地を売り、
それを元手に事業に手を出した。そのうちバブルも崩壊して、事業もだめになり、今はここに
いる。
「ごうち」であるが、そこだけはカンダ婆さんが売却にはかなりの難色を示し、周辺の家々か
らも売らないでくれと懇願されたので、そこと周辺の一部はわずかな土地ではあるし残した。
「そう言われてみれば」とカンダ氏も言った。「そう言われてみれば、子供のころは“ごうち”
の周りにあった雑木林で遊んだときは親父に酷く怒られたっけ。あと、“ごうち”の端を流れ
る水路でも絶対に遊ぶなと、何度も言われたな…」
「心配だったんですよ」とカンダ婆さんは話の最後に呟いた。
ウエノさんは帰りの車の中で「私にはちょっと手に負えないかも。アキバさん今日はお時間
取れます?」と聞いてきた。
アキバは大丈夫だと答える。
「それならW市に行って欲しいのですが」
W市とはQ町近辺の市町の中心的役割を果たす市である。
丁度よいことにカンダ氏宅からQ町に戻る途中に通ることもあり、寄り道するには好都合だった。
ウエノさんからW市で紹介されたのは、オオサキ氏という男性であった。
ちなみに、次から次へと霊能者を紹介されて、ぼられるんじゃないかとアキバは心配したそう
だが、そのときに、ウエノさんとオオサキ氏からきちんと説明を受けて安心したとのことだ。
861: 添い寝 2007/03/29(木) 15:37:36 ID:RJO9BJ3Y0
結局その日は時間が遅いこともあって、翌日改めて現地へ向かうことになった。
そのときは俺も参加した。というより、させて貰った。
オオサキ氏は30そこそこで、背が高く端正な顔立ち、礼儀も正しく好印象であったが、それだ
けに全然霊能者らしくない。
彼はアキバの親父さんが分譲した区画と、ウエノさんが目星をつけた荒地(つまり、ごうち)を
見て回わった。見歩いている最中はまったく無言であったが、一通りめぐると口を開いた。
「社長(アキバのこと)、ちょっと協力していただきたいのですが」
「できることなら、なんでも」
「この土地と周辺の昔の形を調べられないですか?できれば戦前、少なくともニュータウンが
計画される前の状態が知りたいのです」
「できると思います」
「それなら、お願いします。ただし時間がない。急がせて申し訳ありませんが、至急お願いします」
その後、彼はウエノさんに言った。
「ここ、結界が張られていますね。分かりますか?」
「ええ、分かります。でも複雑な形に張られているようですね」
「どういうことでしょう?」と俺はふたりに聞いた。
「いえ、今ははっきりと答えられません。社長が昔のここ周辺の状態を調べていただければ、分
かってくると思いますので少しお待ちください」
とオオサキ氏は答えた。「それでは社長、分かりましたら至急連絡をいただけませんか。夜中で
もかまいませんので」
翌日、アキバはオオサキ氏に依頼されたことを早速調べ上げ、彼に連絡した。
そして、資料をファックスで送って欲しいというので送った。
結論が出ましたら、こちらから連絡いたします、とのことで、実際に連絡が来たのは5日後で
あった。
その間、オオサキ氏は彼なりに郷土史を調べたり、カンダ婆さんに会いに行ったり、新Q地区に
古くから住む人に話を聞いたりしていたという。
その間、幸運にも例の区画から死者は出なかった。
862: 添い寝 2007/03/29(木) 15:38:37 ID:RJO9BJ3Y0
その日の夕刻、オオサキ氏、ウエノさん、アキバ、俺、なぜかオオツカ氏、そしてシブヤさん
という70歳くらいの男性がアキバの事務所に集まった。
このシブヤさん、オオサキ氏が連れてきたのだが、新Q地区の古くからの住人である。
オオサキ氏が語りだす。
「まず“ごうち”とはどんな意味であるか、どんな字を書くかですが、一般的に“ごうち”と
読ませるのは“郷地”或いは状況を鑑みて“業地”などが思い浮かびます。
時間がなかったので詳しく調べたとは言えませんが、私の推測では“児地”だろうと思いま
す。読んでその通り小さな子供を意味します。
これが訛って“ごうち”となったのでしょう。或いは…可能性としては高いのですが、わざ
と訛らせたのかも知れません」
オオサキ氏はシブヤ氏に「それではお話していただけませんか」と促した。
「みなさんは知っていらっしゃるようだが、あの土地には忌みごとを捨ててきた、で、何でそ
うなったのかと言えば、これは言い伝えだから本当かどうかは分からんが“村八分”ってのを
知ってるでしょう?」
863: 添い寝 2007/03/29(木) 15:40:20 ID:RJO9BJ3Y0
シブヤ氏の話をまとめると、
少なくとも明治より昔、あの地区で村八分を受けた家があった。その折は天災続きで、村八分
を受けた家はとても生きていけなくなった。そこで村人に許しを請うのだが、村八分というの
はされた側に問題がある。それなら、心を入れ替えた誠意を見せろ、ということになった。
そこで、村八分の家では子供をひとり人柱に建てることにした。それがどちら側の提案である
かは今となっては分からないが、一番小さい子供に白羽の矢が立った。
名主であったカンダ家が土地を提供し、人柱は建てられた。
そのおかげかどうかは分からないが、天災は収束し、その家も村八分を解かれた。
しかし、人柱を建てたその土地は農地やその他実用なことには使えない。
祠を建てて、子供を慰めようかという案もあったが、それでは人柱が記憶に残り、子供を生贄
にした罪悪感が引き継がれる。
そうして、土地はそのままにされたのだが、曰くつきの土地であり、いつの頃からか穢れた物
や忌みごとを捨てる地となった。
シブヤ氏が子供の頃は“ごっち”という人もいたが、シブヤ氏がそのように言うと、罰が当た
ると親に怒られた。ある程度の年齢になったとき、“ごうち”とは子供のことを意味すると教
えられた。
“ごうち”を丁重に管理しなければならないことは、集落の各家に伝えられているはずだが、
その謂れは、親の判断によって伝えられたり伝えられなかったりしているようだ。話したがり
とそうでない人がいるように、親がそうでないときは、詳しい話は伝えられない。初めのうち
は、祟りなどを恐れて詳細に語り継がれていたのだろうが、それにも限度がある。
だから、土地の持ち主であるカンダ婆さんもこのことを知らなくても不思議ではない。
「俺らも、あそこで死人が立て続けにでているので、たぶん“ごうち”に関係があるのだろう
と気を揉んでいた。俺らはもう歳だからいいとしても、そのうち子供や孫に害が及ぶんじゃな
いかと。自分勝手な考えだが」
864: 添い寝 2007/03/29(木) 15:41:40 ID:RJO9BJ3Y0
「ありがとうございました」とオオサキ氏が礼を言って、再び話しだす。
「いろいろな地方で、例えば道祖神などにそういったことを肩代わりしてもらうといったことが
ありますが、これもそのひとつの形態といっていいでしょう。ただ、この“ごうち”の場合は
成り立ちが極めて特殊ですが。
それで、そうしたことをするためには、何か“代”が必要になるわけですが、土地自体が強力
な“代”となりえます。
しかし、昔あの辺りに住んでいた人々は、それをさらに強力なものにしようとしました。と言
うより、強力なものにしてしまったといったほうが正確かもしれません」
彼は、ここで1枚の地図を取り出した。アキバが調べた「ごうち」とその周辺の昔の地図である。
「これを見てください。これが“ごうち”本来の形です」
地図には赤鉛筆で線が引かれていた。
865: 添い寝 2007/03/29(木) 15:42:26 ID:RJO9BJ3Y0
「以前にあった雑木林との境、水路との境、隣地との境界を線引きすると、この通り、人の
形になります。しかも頭の大きな幼児の形です。恐らくこれは偶然ではなくて、当時の人が
意識的に形を作ったのでしょう。
祠など、目に見えるものを残すのは嫌だが、それでも罪悪感は残る。それで、せめてもの
標しに土地を子供の形に模った。
その後、この地が忌み的な場所となってしまったので、災いが起こらないように-或いは
すでに何らかの災いが起こり-能力のある人物の助言を得て土地を改造し、結界を張った。
人型も人形がそうであるように“代”としては優秀なものです。つまり土地を人型に囲い、
その上で結界を張り、かなり強力な“代”としたのです。いや「なってしまった」と言うべ
きでしょうか。
これならば、ここに捨てられた念や不幸は外に漏れる心配がない。
ただし、人型は“代”としては優れている反面、ややもすれば閉じもめた念を増幅させて、
それが一人歩きしかねないといった欠点もあります。いわば諸刃の剣といったところです。
だから、これでは篭った念が強くなりすぎて、ある日突然狂ったように暴れだす、というこ
とにもなりかねません。
そこで、巧妙な仕掛けを作った。この仕掛けこそが、誰だかは分かりませんが、能力のある
人物のアドバイスによって作られたものでしょう。
それがこの水路です。
この水路は幼児の頭にあたる部分を通っていますが、ここの結界をわざと弱くした。その
ため、飽和した念や恨み、穢れといったものはここから水路に流れ込みます。そしてこの水路
は近くを流れるE川につながっています。こぼれ出た念を水に封じ込め、そのまま水やその他
自然の力によって弱めながら海まで運ばれ、拡散される。実にうまい仕組みだと思いますよ」
867: 添い寝 2007/03/29(木) 15:43:04 ID:RJO9BJ3Y0
「俺もそれは知らなかった。気づかなかった」とシブヤ氏。
「“ごうち”を見たとき複雑な結界が感じられたので、地形を調べようと思ったのです。こう
いった言い方は不謹慎かもしれませんが、私にとっても思わぬ収穫でした」オオサキ氏が言う。
「で、今回の出来事は、土地開発によってそれが壊されたから起こったのですか?」とアキバ
が聞く。
「まったくその通りです」
「それにしてもおかしい。それなら“ごうち”により近い区画や、隣接部分の多い区画に、より
酷い災いが起こってもおかしくないわけですが、あそこだけに集中している」
「はい、それでは、これをご覧ください」
彼は、また1枚の地図を出した。
「これはアキバ社長のお父上が分譲した区画図ですが、これもどことなく人型に見えるでしょう?」
確かに、トイレを示すマークをいくらか崩したような形に見える。
「そして“ごうち”とこの区画の位置関係は、このようになります」
また地図を出す。それには2つの土地が赤鉛筆で囲ってあった。
「これ、肩の部分にあたるところが隣接しているでしょう。
母親、もしくは父親が子供に“添い寝”をしているように見えませんか?」
「あっ!」と声があがる。
確かにそう見えた。病気の子供をいたわって、親が添い寝している情景が浮ぶ。
「管理がおろそかになって、結界も弱くなり、所々綻びもでているのでしょう。さらに今は念を
逃がす水路は存在しません。
だから、その負の念は、隣の添い寝している人型へ移っている。
人型から人型へ、他に流れ込むより自然だとは思いますよ。
分譲地が人型になったのは偶然でしょう。しかしその結果、分譲地も“代”としての役割を受け
持つことになってしまった。人型の分譲地に住む人たちも、人間である以上、負の気持ちはある
はずで、忌みごとや昔でいう穢れももっているでしょう。そうしたことが、念を増幅させてしまい、
その偶然が今回の不幸なことを招いてしまったみたいですね」
868: 添い寝 2007/03/29(木) 15:44:07 ID:RJO9BJ3Y0
「・・・・」俺もアキバも言葉が出ない。
「ことは緊急を要します。すでに10人が亡くなっている。明日にでも応急処置にしかなりませ
んが、簡単なお祓いをいたします。
それから、これは私が強制できることではありませんが、“ごうち”を昔の状態に復旧した
ほうがいいと思います。」
オオサキ氏によると、アキバの親父さんの死はこれとは関係がないとのこと。人型の区画に
長時間住んではじめて影響があるのであって、短期間入ったくらいでは命まで失うことはない
だろう、おそらく医者嫌いだったのが原因ではないだろうかと。
しかし、神主はそうかも知れないと。強力な念が流れ込む土地にたいして型どおりの儀式を
行ったとしたら逆効果で、地鎮祭を見たわけではないから断定はできないが、影響はあったの
ではないかと言っていた。
869: 添い寝 2007/03/29(木) 15:44:41 ID:RJO9BJ3Y0
その後。
アキバはオオサキ氏に正式なお祓いを依頼したが、彼いわく、
「依頼をされればやるが、それは一時凌ぎにすぎないし。報酬ももらわなければならない。
それより、一日も早く土地を元に近いように復旧して、根本的に解決させることが重要。
今では昔の風習が無くなっているのですから、元の仕組みを復活させれば“ごうち”はその
役割を終えて普通の土地に戻るはず。それなりの年月は必要だとは思いますが」
結果的に、土地を改良するといっても、役所の認可など様々な手続きがあるうえ、工事にも
時間がかかるので、アキバはお祓いを頼み、その後根本的な対処を行うことになった。
また、お祓いを頼んだのはオオサキ・ウエノ両氏へのお礼の意味でもあった。
お祓いは、オオサキ氏が主導して、ウエノさんが補佐という形で行われた。なぜかオオツカ氏
も「お手伝い」として参加している。役に立ったのだろうか…?
また、ギャラリーにはカンダ婆さんも現れた。そして、その後の土地改良計画を聞いて、
「これで私も安心して死ねる」と笑った。
蛇足ではあるが、この後、オオツカ氏がオオサキ氏に弟子入りを願い出て、オオサキ氏は断る
のに難儀したらしい。
土地の改良は、町とも相談した結果、アキバ、カンダ婆さん、シブヤ氏をはじめとする地元の
古くからの住人の一部が出資し、水路を戻し、木を植え、小さな公園と合わせて親水公園のよ
うなものとして、それを町に寄付する形になった。
水路は多くの部分が暗渠となったが、オオサキ氏によればさほど問題はないだろうとのこと。
ただし「ごうち」であった部分はビオトープのようなものにして、自然保護を理由に立ち入り
禁止とした。
それは、その後1年のうちに行われた。
そして、それから約2年が過ぎましたが、人型の分譲区画で自然死以外での死亡は
発生していません。偶然といってしまえばそれまでですが、やはり怖かった・・・
(なお、人物はすべて仮名です。分かった方もいるとは思いますが、山手線の駅名から
拝借しました。またアルファベットも頭文字や関係のある文字ではありません)
888: 本当にあった怖い名無し 2007/03/29(木) 16:20:54 ID:W58DXeey0
>>869
乙カレーション
今読み終えた
なかなか面白かった
908: 本当にあった怖い名無し 2007/03/29(木) 17:07:24 ID:Tg0qlqUz0
>>869
乙。引き込まれるように読みました。
15: ◆9BseuZTcX. 2007/03/31(土) 22:04:33 ID:6k4uq4xb0
【人を呪わば穴2つ】
人を呪わば穴2つ、という言葉がありますよね。
呪いを返されれば、自分もそれなりの覚悟をしなくてはいけません。
例え、自覚がなくても。
これは私の母の話。
母の実家は福岡にあります。
その昔は福岡県を流れる某川沿いで、運搬業の方を対象とした宿を経営していました。
母が生まれた頃には既に宿の経営はしておらず、お客さんを泊める棟に祖父母(私から見た曾祖父母)、母屋の半分を母一家で使用していました。
そして、母屋のもう半分は安価で貸していました。
母が中学生の頃、ある母子家庭がそこを借りたそうです。
子供は母と同じか1つ上くらいで、大人しい男の子だったそうです。
元々母と叔父(母の兄)は人見知りだったこともあり、あまり親しくはしていなかったらしいです。
16: ◆9BseuZTcX. 2007/03/31(土) 22:05:47 ID:6k4uq4xb0
隣人が住み始めてから少し経ったある日、学校から帰ってきた叔父が洗面器から溢れる程の鼻血を出して倒れました。
救急車で病院に運ばれて検査を受けた結果、胃に癌と思われる影があるということでした。
ただ、色々と不審な点も多いので、叔父はそのまま検査を兼ねて入院。
また、その数週間後、学校でテストを受けていた母が気分を悪くして早退しました。
その晩のうちに激しい嘔吐を繰り返し、高熱を出して倒れ、病院に運ばれました。
検査の結果は不明でしたが、しばらくは自宅で安静にするようにと言われたらしいです。
私の祖母は、「これは何かある」と思ったらしく、以前から頼っていた祈祷師さん(石鎚さんみたいな)のところへ母を連れて行きました。
祈祷師さんは母を見るなり、「大変なことになりましたね」と言ったそうです。
話によると、これは呪いだということでした。
ある人が祖母を妬んで呪っているのだと。
呪いというものはその対象の一番大切にしている人に向かい易いらしく、祖母の子供へと向かったのだそうです。
その祈祷師さんは言いました。
「呪いを返しますか」と。
祖母は、もちろん返して欲しいと言ったそうです。
祈祷師さんは、
「昔から人を呪わば穴2つと言います。人を強く妬んだり、恨んだり、不幸になればいいと念じれば、本人が呪った意識がなくても呪いになるのです。」
「呪いを返せば、やはりその人の一番大切なものに降りかかります。それも、より強く。」
と言うと、祭壇の蝋燭に火をつけました。
母はその言葉を未だにしっかりと覚えているそうです。
祈祷師さんがお経を唱え始めてすぐに、母の体を包んでいた倦怠感や吐き気が消えたらしく、帰る頃にはいつもより元気な様子だったそうです。
17: ◆9BseuZTcX. 2007/03/31(土) 22:06:25 ID:6k4uq4xb0
その翌日、叔父のレントゲンからは癌だと思われていた影が消え、退院。
兄妹揃ってすぐに学校へ行けるようになったそうです。
ところで、皆さんはもう気付いていらっしゃると思います。
祖母に呪いをかけた人物のことを。
それから数週間後、隣人の母息子は福岡市内へと引っ越していきました。
息子さんの胃に大きな癌ができた為、入院したそうです。
隣人と祖母はあまり関わりがなかったそうですが、何か些細なことで隣人に妬まれてしまったのだと思います。
126: 本当にあった怖い名無し 2007/05/03(木) 11:12:11 ID:gqyY+9Bj0
【「お兄ちゃん、駄目」】
この話は、地元では心霊スポットとして有名なトンネルに行った時の話しです
随分前ですが、高校生の頃に友人と共にそのトンネルを通りました
心霊スポットとは言うものの、別に距離もないし、一応電気も付いている、そして
何人か通っていたので別に怖くはありませんでした
しかし半分ほど進んだところでしょうか…… 一人で立っている女の子を見つけました
見たところは中学生でしょうか…… セーラー服に赤いかばんを持っていました
その子からは別に気味が悪いとかいった感じは無く、むしろ懐かしいような感じがしたと思います
そのまま出口へ向かった時、目の前に茶色い服を着た男を見かけ、何故か
(ああ…… この人は生きていないな……)と僕は思いました
その人からはオーラというか霊気がにじみ出ていて、ともかく気持ちの悪い人でした
といっても顔は見えません 雰囲気が気持ち悪いのです
その人を通り越したところで、何故か凄く後ろを見たくなりました
(見てはいけない…… だめだ…) そう思うのに何故か気になるのです
127: 本当にあった怖い名無し 2007/05/03(木) 11:22:29 ID:gqyY+9Bj0
堪え切れずに後ろを見ようとした時、急に腕を引っ張られました
ふと横を見ると、いつの間に来ていたのか、途中で見かけたあの女の子がいたのです
とても深刻そうな表情で僕の顔を見ています
「お兄ちゃん、駄目」 何故かその言葉が頭の中に響き渡りました
その後は、あの男を見たいという気持ちは微塵も起こらなくなりました
そしてトンネルを出るまで一緒に歩いてくれました
どうやら、女の子は友達には見えていなかったようです
友達が寄ってきましたが僕は何も言えませんでした …そして女の子の姿は消えていました
(…トンネルに帰ったのかな) 僕はそう思いました
128: 本当にあった怖い名無し 2007/05/03(木) 11:39:54 ID:gqyY+9Bj0
その後は近くでバスに乗り込み、帰りました
その時、前の席に座っていた特別霊感の強い友達が「今、ここにいられるのは
彼女のお陰だぞ… 良かったな」 と言ったのです
更に「あの子も一緒に帰らせてあげたかったがいいと言ったよ…… もう何年いるのかは分からんが
お前のような奴を何人も助けてやっているんだろうな …そしてこれからも助けるんだろう」
「……誰から聞いたんだ?」 僕はなんとなく分かっていましたが聞きました
「あの薄気味悪い男からだよ …お前を連れて行きたかったんだと」
「……なっ……」僕は絶句しました
霊感の強い彼には見えていたらしいのです 恐ろしい形相をした男が、僕の後ろへついていたのが…
しかし暫くするとトンネルの方へ引き返し、消えていったそうです
あの二人が何者だったかは、調べようとも思いませんし、調べる事もできません
そして2度と会うことはありませんでした
男はともかく、女の子にもう一度会いたいです …会ってお礼が言いたい
これが僕の唯一の心霊体験です
169: 1/4 2007/05/11(金) 12:18:07 ID:pqoA4Mbb0
【赤い服の人】
ある時、3人で沢登りに行ったが、15メートル
ほどの滝が、状態が悪くどうにも直登できなかった。
やむを得ず、滝の左側の斜面を大きく回りこみ
滝の頂上に出ようとした時、先頭を行く友人(A)が
突然落下した。
滝つぼには岩が突き出ており、Aはその岩に顔面を
ぶつけたように見えた。
苦労してよじ登った斜面を別の友人Bとふたりで
転がるように駆け下りたが、その時、俺の耳に
甲高い笑い声が響いた。
そして眼前に哄笑する男性の顔。
その顔に構わず突っ込んだ刹那、足がもつれて
俺は転んでしまった。
170: 2/4 2007/05/11(金) 12:18:50 ID:pqoA4Mbb0
とにかく、そんな事は気にせず起き上がり、下まで
降りると、先に下りたBがAを滝つぼから引き摺り
揚げている所だった。
Aの顔は腫れ、膨れ、鼻と目から出血していた。
鼻といっても完全に潰れて顔の中に埋まっている。
のっぺらぼうというのは、あのような顔の事を
言うのかもしれん。
麓のキャンプ場で救急車を呼び、救急隊員が滝に
到着し、Aを担架に固定した。
滝までは獣道があるだけなので、救急隊員と俺とBの
4人が交替で担架を持ったが、顔面からの出血が
ひどく、その血が流れてくるので、担架を持つ手が
何度も滑り、その都度担架は大きく揺れ、Aは
痛みを訴え続けた。
171: 3/4 2007/05/11(金) 12:19:30 ID:pqoA4Mbb0
ようやく救急車にAを乗せ、Bは病院まで同行する
事になった。
俺はもう一度滝まで引き返し、散乱している荷物を
回収し、麓まで戻った。
Aの車で出かけた為、仕方なくヒッチハイクしたが
あちこちに血をつけた俺を良く乗せてくれたもんだと
妙な感心をしている。
172: 4/4 2007/05/11(金) 12:20:02 ID:pqoA4Mbb0
退院後、Aは落ちる直前に滝の上に赤い服を着た
釣り人の姿を見たと言い、それから後の事は
良く覚えていないらしかった。
病院に担ぎ込まれた直後、赤い服を着た人が居るとか
その人を滝で見たとか、大騒ぎしたらしいが、それも
本人にすればうわごとで、一切覚えていないとの事。
Aはかなりの手術の末に一命を取り止め、結婚し
子供にも恵まれた。
そして2年ほど前
仕事中の事故で高所から落下し、死亡した。
330: 1 2007/05/12(土) 09:21:46 ID:eQadIqCRO
【別荘A】
小学生の頃の体験話
当時母方の祖父母は温泉地で有名な某所で別荘の管理人をしていた。
観光の美観を損わないようにと高いビルなんかなかった地域だった。(今は知らないけど、とにかく田舎だった)
山中で車なんて滅多に通らない、そんな場所に別荘はありました。
他に別荘なんて行ったことないからわからないけど、そこの別荘地は個人所有よりも会社所有で建てている物が殆どでした。
蛇口をひねれば温泉が出る!自然に囲まれ今思えば素晴らしい環境でした。
じいちゃんは昔はこわい人だったらしいけど呆け気味で俺の記憶ではいつも「ヘヘヘ…」と笑ってるかわいいじいちゃんだった。
だから別荘の管理は殆ど、ばあちゃんがやってた。(叔父さんも一緒に住んでたけど別の仕事してた)
俺は長期休みになると毎年泊まりに行ってた。でも遊ぶ場所なんてなかったからばあちゃんが別荘の掃除に行く時はついていってた。
前置きが長くなったけど、ばあちゃんと別荘Aに行った時の話です。
331: 2 2007/05/12(土) 09:23:46 ID:eQadIqCRO
俺の記憶では一番でっかいのが別荘Aだった。玄関を入ると広いリビング、左に行けば長い廊下に左右に寝室が8部屋位あったと思う。
地下に中浴場?男女別で風呂があったのは別荘Aだけだった。
坂下にあり木々に囲まれているせいか雰囲気が暗いちょっと怖いイメージの建物だった。
ばあちゃんが風呂の掃除に行き俺はリビングにいたんだけど
「ガタッ」
突然寝室の方から音がして、ビビリな俺はビクゥゥッ!としたが、そういえば……
以前なぜか猫が別荘に入り込んでいたって話を聞いた事を思い出した。
猫がいるのかもしれない!俺はワクワクしながら寝室の廊下へと向かいました。
「ニャー」俺は猫が返事してくれないかなと思いながら「ニャー」もう一度呼掛けてみた。…静まりかえっている。
廊下の半分位まで歩いて急に怖くなった。窓は雨戸が閉めてあり昼間といっても暗かった。
ばあちゃんを呼んでこよう!引き返そうと思ったその時
「ガタッ」
また音がした。一番奥の部屋から聞こえた気がした。怖いけど猫がいるなら出してあげなきゃ!
勇気を出して足を踏み出す…猫タンが待っている!怖いせいか足が前に進まない。
急に空気が変わった気がした。とても嫌な感じだった。やっぱりばあちゃんを呼んで来よう…
「ガタガタガタガタガタ」奥の右部屋の扉が激しく揺れだした。もぉガグブルです。猫じゃない!逃げなきゃ!!
332: 3 2007/05/12(土) 09:25:30 ID:eQadIqCRO
ヤバイ!早く逃げなきゃ。背筋がゾクゾクした。でも後ろを振り向くのも怖い!(俺の頭の中はホラー映画のワンシーンを想像していました)
その場で固まっていると、音がピタリと止みました。(寝室の扉は旅館にあるような木製タイプ)
もぅ扉に目が釘づけです。助けを呼ぼうにも喉がカラカラで声が出ない。
はっ!やっと気がつきました。怖くて振り返れないなら後ずさりすればいいじゃん!
一歩…二歩…足は動いてくれました。よし!このままリビングまで逃げれば何とかなるぞ!
すると扉が少し開いたように見えました。気のせいだ!自分に言いきかせ三歩目の後ずさりをしようとした時
スーと扉が開いていくのがわかりました。(正直チビリました)気のせいじゃない!
振り向くのが怖いなんて状況じゃないじゃん俺!そこでまた、はっ!気がつきました。
目瞑って走って逃げりゃいいじゃん!なんでこんな簡単なこと気がつかなかったんだ…
扉は半分近く開いていました。目を瞑り方向転換しようとした時チラッと黒い影が見えた気がしました。
「うわあああぁぁぁ」出ないと思っていた声が廊下に響き渡り叫びながら俺はリビング方向へダッシュ!
「バタンッ」音と共に衝撃が!
「あらあら、どうしたの?」ばあちゃんの声がしました。
俺は目を開けると自分の状況を理解しました。リビングと廊下の間には三段程の階段があり俺は真っ直ぐ走って来れたものの、
見事に階段に足を取られズッコケていたのです。
「鼻血が出てる!」ばあちゃんが俺の顔を見てビックリして言いました。
ティッシュを取りに行こうとするばあちゃんに俺は泣きながら抱きついてました。
ばあちゃんのエプロンで鼻血を拭いてもらいながら説明したけど
「気のせいだよ。怖いと思うから幻覚を見たんだよ。怖がりなのにホラー映画は好きだからねぇ」
と、ばあちゃんは信じてくれませんでした。
333: 4 2007/05/12(土) 09:26:42 ID:eQadIqCRO
それまで別荘Aには何度か行ったことはあったんだけど、いつもばあちゃんについてまわってたからか怖い体験はしたことなかった。
ちなみにその後ばあちゃんが寝室の掃除に行くと何故かあの部屋だけ扉が開いていたそうです。
俺は怖くてダッシュでばあちゃんちに戻りました。あれから別荘Aには行ってません。
零感のハズだからばあちゃんの言う通り幻覚だったのかもしれないけどあんな怖い体験は初めてでした。
中1の時に祖父母は管理人の仕事を辞めたのであの土地に行くことも無くなりました。
ばあちゃんは方言がきついので標準語?で書きました。長文失礼しました。
日経ナショナルジオグラフィック社
2020-03-16
391: 本当にあった怖い名無し 2007/05/12(土) 22:48:21 ID:4uDqq4M40
【裏山】
うちの実家のほうにあった、名もない低い山の話。
幼稚園、小学校の裏手にあるその山は「裏山」って呼ばれていて、山頂に児童公園が
作られてた。昼休みなんかに、こぞって小学生が遊びにいくような場所。
でも、この山、山頂に続く道の途中に、戦争の慰霊碑、小学校とちょっと離れたところに
お寺、そしてまたちょっと離れたところに神社(しかも時々自殺する方がいる)があるという
ちょっと怖そうな場所。
その山での出来事。
392: 本当にあった怖い名無し 2007/05/12(土) 22:48:51 ID:4uDqq4M40
・犬の散歩をするために、夕方(夏の6時ぐらい?)に漏れがその山を上っていたら、慰霊碑
の近くの斜面(道はなく、人が上れないところ)に、真っ青な炎が見えた。
数秒して消えたけれど、「あ、やべぇ」って思って、速攻引き換えした。
いつも散歩してると「もっと歩く」って感じで帰るのを拒否する犬も、この時はふもとまっしぐら。
・同じく犬の散歩をするために、おかんと兄貴が山を登っていた(やっぱ6時ぐらい?)。
すると、またその慰霊碑の近くに来た時、突然、自分達の目の前約10Mほど先に、白い
人の形をした煙が出現。勿論、焚き火の季節じゃないし、他に人もいない。
2人と1匹、やっぱりふもとまっしぐら。
393: 本当にあった怖い名無し 2007/05/12(土) 22:49:25 ID:4uDqq4M40
・中学の時、「見ちゃう」友達、「すごく感じる」友達、「けっこう感じる」友達、「雰囲気を感じる」友達
「全然感じない」友達総勢10人程で、肝試しをかねて花火をすることになり、山頂へ。
すると、空気が違うんだ。生暖かい+ねばーーーっとした空気。んで、山の斜面のほうからは
とてつもなく冷たい空気。
とりあえず花火をしよう!と蝋燭やらバケツを準備したものの。
花火がつかない。
今日の昼に買ってきた花火ゼンブ、火がつかない。
そうこうするうちに、一番「見ちゃう」友達が、バケツの水をばしゃーーっと零して、広げてた花火を
ひっつかむと、「走らず、降りるぞ」と一言。
漏れ自身、見るってことは(上記の青い火以外)ないけど、今まで斜面から感じていた冷たい空気
が、山頂全体に満ち満ちてることに気付いて、一瞬で総毛だった。
みんな一目散に山を降り、結局小学校で花火を再開したんだが、今度はばっちり、火がつくんだよ。
やっぱり、そういう場所ってのは、何かしらあるんだってことを強く認識してからは
遊び半分で(肝試しとか)上るのはやめようって思った。
あんまり怖くないかな。
398: 本当にあった怖い名無し 2007/05/13(日) 00:03:10 ID:c9Ev+hZ20
【ある携帯の番号】
皆さんは番号のゴロ合わせに縁起を担いだりしますか?
今から15年前の話になりますが当時私は小学5年生の甘えん坊で、
何かにつけて母ちゃんにくっついて行動してました。
ちょうど3月の春休みだったと思います。その日は大好きだったジブリシリーズのラピュタが
テレビで放映されていました。ウチは3人兄弟で、母ちゃん、妹、兄貴と一緒に興奮しながら居間で
ラピュタを見ていたのですが、夜も9時過ぎになると妹が眠いと言い出し、母親に付き添われて2階の
子供部屋に連れて行かれました。
私はラピュタをコンプリートして見たことがなかったので是が非でも最後まで見てやろうと、兄貴と一緒
に一階の居間のテレビに噛り付いていました。
ちょうど10時くらいでしょうか。いつまでたっても母親が2階から降りてこないので、マザコンだった
私は「妹と一緒に寝てしまったのかな?」と少しつまらない思いをしていました。
ですが、ラピュタは天空の城を発見し突入するところだったので、すぐに意識はそちらに釘付けになりました。
そしてさらに30分くらい経った時、親父が会社から帰宅したのです。
「ピンポン ピンポーン」 当時、親父の帰宅合図として、家のチャイムを2階鳴らすのがお決まりに
なっていたのですが、当然出迎えるはずの母親が2階から降りてきません。
「これは、いよいよ妹と一緒に寝ちゃったな。」と思い、兄貴が小走りで玄関の鍵を開けに行きました。
親父は金曜日ということもあってか、幾分飲んできたような感じでしたが、母親が2階にいることを兄貴から聞くと
トントンと階段を上がり様子を見に行きました。
399: 本当にあった怖い名無し 2007/05/13(日) 00:04:31 ID:3AlGYTbN0
続き
俺と兄貴は相変わらずラピュタに夢中で、場面はいよいよ終盤のクライマックスに近づいてきました。
その時です。ドタドタドタッと階段を駆け下りる音がしたと思うと、親父が血相を変えて居間に飛び込んで
きました。
「圭一!(兄貴の名前)救急車呼んでくれ!母ちゃんが吐いたまま倒れてる!」
なぜか私は状況が読み込めないまま、頭が空っぽのままテレビを凝視しておりました。
そしてしばらくすると兄貴が、
「父ちゃん、電話が救急車に繋がったんだけど、こっちの声が向こうの人に聞こえないみたいなんだよ!」
親父は、居間で薬箱をひっくり返して何かの薬を見つけると、母親に飲ませようとしてたみたいですが
何度飲ましてもゲエゲエと吐いてしまうようでした。
親父も兄貴もパニックになっていて、兄貴は壊れた電話に向かって叫んでいました。父親はやっとの事で
「電話繋がったか!? もう母ちゃん気絶しちゃってる!夜中だから酒屋さんとこの公衆電話までいって
救急車呼んでこい! 誠司(私)は外出て救急車が家わかるように立って手を振ってろ!」
と指示を出しました。家は田舎にあり、夜も遅いことから、家から一番近い公衆電話まで行くしかありません。
酒屋さんの公衆電話は走って10分もかかります。
やっとのことで救急車が到着して、母親が担架に乗せられると「ウーウゥーッ」と苦しそうに唸っています。
400: 本当にあった怖い名無し 2007/05/13(日) 00:05:31 ID:c9Ev+hZ20
続き(ラスト)
脳内出血。それが母親の病名でした。病院に運ばれた時にはすでに300cc(うる覚え)以上出血しており
助かる見込みは少ないとの事でした。
2週間程、集中治療室に入院しましたがあっけなく死んでしまいました。
もっと早く母親の異変に気づいていれば、あの時テレビに夢中になっていなければ、救急車を早く呼んで
いればと今でも後悔しています。
あの時なぜか繋がらなかった電話。
家の電話番号は「****-64-4255」。ゴロ合わせで「****-無視-死にゴーゴー」
まさかそんな言葉遊びで、人の生死が左右されるとは思いませんが、親父は母親の葬式が終わった後
真っ先に電話を買い替え、番号を変更しました。
もし、この様な不吉な電話番号をお持ちの方がいらしたら、直ぐに変えることを勧めます。
長文失礼いたしました。
456: 本当にあった怖い名無し 2007/05/14(月) 18:32:47 ID:ovlR3cyf0
【霊を見る方法】
私は十歳のころから霊らしき物を見ることが出来た。
過去形にしたのは、最近になって酷く曖昧になってしまったからである。
頭のない犬。人間のような表情をして笑うネコ。能面のような顔をしながら、風呂場の天井でこちらを見下ろしている髪の長い女。
そして、今私がパソコンを触っている部屋で走り回っている和服の少女。
よくテレビや本で見る「幽霊」や「おばけ」そのものだった。
しかし、それが本当に幽霊であったかというと、少し疑わしい。今になって思えば、麻薬に嵌った人が見るような幻覚のようなものだったかもしれない。
では本題に移ろうと思う。
私が丁度、十歳の誕生日を迎える前の日のことである。学校ではある噂話が飛び交っていた。
その内容は「霊を見る方法」当時、田舎の学校だったため、私のクラスは八人しか居なかった。当然、そういう噂話は嫌でも私の耳にも飛び込んできた。
そして、その日の放課後。私の親友のT君が「一緒にやってみぃへん?」と話を持ちかけてきたのだ。
私は出された宿題のことを気にしながらも、渋々頷いた。今にして思うと、これが私にとっての最初の間違えだったのだろう。
457: 本当にあった怖い名無し 2007/05/14(月) 18:34:36 ID:ovlR3cyf0
霊を見る方法を簡単に説明すると
まず笹餅を腰に下げ河原に行って、黄金色になって首を垂れているススキをうちの村に伝わる童歌を歌いながら、一本ずつ折っていくのである。
手が一杯になったら、次にその束を川の水に浸し、それで注連縄を作り、山を登り奉ってある地蔵の前に置く。という、簡素なもの。
そして、それを実行するのは九歳までの子供という縛りも付け加えられていた。
T君は二月ほど前に誕生日は終えているため、これをすることは出来ない。
仕方がないので、T君に実家の笹餅を拝借して貰い、私が一人でススキを折ることにした。
とは言え、石の上で待ってくれているT君が何度も声をかけてくれていたので、不安感はそれほど無かった。
「もし、本当にユーレイ見えたら皆に自慢しよか」
「俺もユーレイ見えたりしたら、どうしよ」
まあ、そんな他愛の無い話をしているうちに、いつの間にか手いっぱいになっていた。
次は水に浸して注連縄なのだが、祖父には少ししか教えて貰っていなかったため、不恰好なものになってしまった。
「まあ、ええんと違う? どうせ、噂やし」
そういって笑うT君の顔は、夕焼けで真っ赤に染まって不気味だったのを今でも覚えている。
だが、私も流石に夜になるまでには、家に帰りたかった。というより、叱られるのが怖かったのだろう。
458: 本当にあった怖い名無し 2007/05/14(月) 18:35:19 ID:ovlR3cyf0
私はT君と別れ、急いで件の山に登り、そこに奉ってある地蔵が奉ってある祠の前に、不恰好な注連縄を置いた。
何処からか、聞いたことの無い歌が聞こえ、そちらに足を進めた。
ここで私の記憶は途切れ、次に目を覚ましたときには、病院の個室だった。
後で知った話では、その後に私の両親が夜になっても帰ってこない私のことが気になり、警察に電話をしたそうだ。
そして、五日後になってようやく、その山の中の洞窟の中で眠っている私を見つけたらしい。
だが、その時に父が暴れた私に腕を噛まれ、凄い力で肉を裂かれたという。
ちなみにわたしの持っていた注連縄も無く、腰に下げていた笹餅も無くなっていたらしい。
ところで、私がひとつ気になっていることがある。T君の事だ。
後日、T君の話を聞いたところ、彼はその日は休んでいて一日中、家で寝ていたらしい。
他のクラスメートも口をそろえて、そう言っていた。では、あの日のT君はいったい誰だったのだろう?
私の祖母が言うには、ススキで作った注連縄を身に付けるというのは、山の神様に身を捧げるときの儀式だという。
私が聞いた歌は“山ヌシ”が宴をするときの歌で、あの時のT君は山の神様の使いなのだ、と。きっと、お前と波長があったのだろうと、そういって微笑んだ。
今でも、その歌のメロディーだけは覚えているため、よく口ずさんでいたりするのだが、不思議と心が安らぐ。
ともあれ、あの日から私の目には、徐々に奇妙なものが映るようになった。
その第一号が、和服の少女である。彼女には何度も助けられたり、奇跡的な腐れ縁を貰ったのだが、それはまた別の機会に話したい。