目次
1 エイズをコントロールする驚異の「エリートコントローラー」
2 エリートコントローラーはただの幸運の持ち主ではない
3 エリートの中のエリートは病状コントロールの必要のない自然治癒者だった
4 自然治癒者の力を全ての患者に届ける
エイズに対する耐性は個人によりまちまちだが、一部の人はエイズになってもずっと健康でいられる/Credit:depositphotos
コロナウイルスと同じように、エイズウイルスに感染した人間の症状は様々です。
運悪く数年で発症して亡くなってしまう人もいれば、10年・20年と力強く免疫能力を保ったまま暮らす人もいます。
これらエイズに対する生存率の違いは、抗ウイルス薬の服用の有無だけでは説明がつかず、バックグラウンドに存在する、個人の免疫能力の差のためだと考えられています。
そしてこれらエイズの病状をよくコントロールしている人々(感染者のうち0.5%)は、エリートコントローラー(以下、EC)と呼ばれるようになっていました。
そこで今回、アメリカ、ラゴン研究所の研究者たちはECと一般の患者で何が違うか調べることにしました
ECの秘密を解き明かすことで、新たなエイズ治療薬の開発に繋がる可能性もあるからです
エリートコントローラーはただの幸運の持ち主ではない
エイズに耐性がある人は感染してもエイズウイルスがほとんど生産されない/Credit:Nature
秘密を探るにあたって、研究者たちは64人のECと41人の通常の感染者の協力を仰ぎ、彼らから細胞の供与を受けました。
エイズは1本鎖RNAの遺伝子を持つレトロウイルスであり、感染すると自身の遺伝子をDNAに変換して人間の遺伝子の中に組み込み、継続的に自己複製を行うようになります。
一方、現在流行しているコロナウイルスは細胞に感染しても、人間の遺伝子の中に自分の遺伝子を入り込ませることはありません。
研究者たちは最初、ECに感染したエイズは一種の「弱毒化」したものだと考えていました。
ですが、結果は予想とは異なりました。
驚くべきことに、
ECの遺伝子内部には、完全な形のエイズ遺伝子が一般患者と同じように挿入されていたのです。しかし1つ大きな違いがありました。
ECの場合、ウイルス遺伝子が挿入された場所の多くが「遺伝子砂漠(ヘテロクロマチン)」と呼ばれるほとんど活動がない領域だったのです。
エイズウイルスの自己複製は人間の細胞の遺伝活性に依存しているため、不活発な地域に差し込まれたエイズ遺伝子もまた、活動することができなかったのです。
ではECは幸運がもたらした産物でしかないのでしょうか?
その疑問は、ある女性患者「
エリートコントローラー2(
以下、EC2)」
の出現によって否定されました。
エリートの中のエリートは病状コントロールの必要のない自然治癒者だった
Credit: National Maritime Museum in Haifa
ECの遺伝分析を続ける中、研究者たちは驚きの事実に遭遇します。
彼女は
24年に渡りエイズ治療薬を飲まずに健康体を維持しており、彼女の細胞には、まともな配列を維持したエイズウイルスの遺伝子が存在していなかったことが判明したのです。
ECの体に感染していたエイズの遺伝子は欠損し、不完全な残骸のような姿になり果てていました。
エイズウイルスと言えども、遺伝子がズタズタの状態では自己複製はできません。
このことはつまり、EC2がエイズから自然治癒を成し遂げていたことを意味します。
EC2の体内では、まともなエイズの遺伝子を組み込まれていた感染細胞が、その超免疫によって全て排除されていたのです。
このことから研究者は、EC2ほどではないにしても、ECたちの体内でも類似の反応が起き、活発な遺伝子区域にエイズ遺伝子が入り込んでしまった細胞もまた強い免疫により排除されたのだろうと予測しました。
ECの体内で、エイズ遺伝子が不活発な遺伝子区域にだけみられたのは、活発な遺伝子区域にエイズ遺伝子を持っていた感染細胞が強い免疫によって排除されていた結果だというのです。
自然治癒者の力を全ての患者に届ける
EC2は女性だという/Credit:depositphotos
今回の研究により、免疫機能によってエイズ遺伝子の活動を封じ込めたり、遺伝子そのものを使い物にならないほどまで破壊できることがわかりました。
鍵となるのは、エイズの遺伝子を取り込んだ感染細胞を、いかに効率よく排除できるかになります。
もし自然治癒者「EC2」の持つ超免疫を治療薬に組み込むことができれば、感染細胞を根絶し、エイズの遺伝子を体内から消し去ることも可能になります。
そうなれば、パートナーと避妊具なしの性行為を行い、子供を作ることも可能になるでしょう。
世界に蔓延るエイズが、たった一人の超免疫によって駆逐される日は近いのかもしれませんね。
以下、不思議netコメント欄の反応
1: 不思議な名無しさん 2020-08-31 17:27:00
人体の不思議.net
2: 不思議な名無しさん 2020-08-31 17:30:52
特定の人の免疫細胞は、エイズウイルスの遺伝子情報を破壊するはたらきを持ってるってこと?
凄いけどそれって自己の情報も傷つけて癌発生リスクあがりそうな…。
10: 不思議な名無しさん 2020-08-31 17:55:02
>>2
エイズウイルスは健康な細胞を書き換えて増える、普通の人の免疫はこの擬態を見破れないがECの免疫ならエイズウイルスを感染した細胞ごと破壊する
エイズウイルスはDNA転写を利用しているので通常の癌細胞みたいにエラーが出る、これがズタズタの遺伝子
つまり本来すり抜けてしまうような高度な擬態の細胞に対しても、通常の働きをするエリート免疫ってこと
17: 不思議な名無しさん 2020-08-31 18:28:45
>>2
パッと流し見た感じ弊害も少しありそう
移植手術とか大丈夫なのかな
中には免疫力が少し過剰に働きすぎてそうなっちゃい気味な人もいそう
これを他の人に注入したら免疫起こちゃってその人の持ってる細胞を全部ズタズタに...なんてことにならないかな
33: 不思議な名無しさん 2020-08-31 19:31:00
>>17
よく考えたら免疫は人によって違いがあるだろうし、輸血に使ったらアレルギー起こりやすい血液とか拒否反応が起こりやすい臓器なんかもありそうやね。
まあ自分の身体の中だけなら頼もしい存在だけど。
3: 不思議な名無しさん 2020-08-31 17:31:44
超人類の誕生や
5: 不思議な名無しさん 2020-08-31 17:35:09
スゲー!!
6: 不思議な名無しさん 2020-08-31 17:40:23
人の免疫って本当に凄いなぁ
7: 不思議な名無しさん 2020-08-31 17:49:04
昔こち亀に、「両ちゃんならエイズにかかっても治りそうね」、というギャグがあったのを思い出した
19: 不思議な名無しさん 2020-08-31 18:29:31
>>7
両さんの免疫はガン細胞食いだすから
52: 不思議な名無しさん 2020-09-01 04:33:49
>>7
またこち亀が未来予知してしまったか
8: 不思議な名無しさん 2020-08-31 17:51:58
つまりその人はリョーツGPXを持っていたって事?
47: 不思議な名無しさん 2020-08-31 22:33:23
エイズだけに強い感じ?
ほかの恐ろしいウイルスが相手でもエリートっぷりが発揮されるのだろうか
たしかにこち亀の両さんおもいだすw
12: 不思議な名無しさん 2020-08-31 17:56:23
遺伝子砂漠……
16: 不思議な名無しさん 2020-08-31 18:12:40
こいつに新型コロナ打ち込んでさらにエリートコントローラーやらにしようぜ
20: 不思議な名無しさん 2020-08-31 18:30:04
すげーけど、別の新種ウイルスでコロっといく可能性もある
免疫なんてそんなもんイタチごっこだから
22: 不思議な名無しさん 2020-08-31 18:33:16
こういう免疫の持ち主って研究対象になることでお金を貰えたりしないんだろうか
24: 不思議な名無しさん 2020-08-31 18:35:46
実は結構居そう気がする
25: 不思議な名無しさん 2020-08-31 18:39:11
いつの日か全ての人間がワニレベルの免疫を獲得する日が来るのだろうか
26: 不思議な名無しさん 2020-08-31 18:44:23
まさに進化だ。
31: 不思議な名無しさん 2020-08-31 19:15:08
宇宙から生物が出来て人間になった
いわば人間も宇宙の一つ
なら進化くらいするよ
32: 不思議な名無しさん 2020-08-31 19:25:45
ロマンあるなあ、これが実用化されれば人類は病気に対してかなり大きな抵抗を得るね
37: 不思議な名無しさん 2020-08-31 20:16:55
俺の免疫ちゃんは犬猫やらスギナらに過剰反応する困ったちゃんや
何か嫌な事でもあったんだろか
38: 不思議な名無しさん 2020-08-31 20:30:46
俺が小学生の頃エイズが社会問題で、連日エイズ感染者の人数や亡くなった方の人数をニュースで報道してて当初は感染したら1週間~1ヶ月くらいで亡くなる恐怖の感染症だったのに。
今じゃ潜伏期間が数年から数十年の病気になってエイズで死んだって話も全然聞かないし話題にもならない。エイズ陰謀論を手放しで信じてる訳じゃないけど少し疑ってしまう
39: 不思議な名無しさん 2020-08-31 20:31:47
人間の体って不思議だな
いずれエイズは結核のように治る病気になっていくんだろうな
今回の発見がそれを早めればいいね
44: 不思議な名無しさん 2020-08-31 21:39:56
この記事が現実ならば、恐らくは、エイズには強いが他には弱いと思う。
総ての病気に強いなんて言うモノハ存在しないと思う。存在してはいけないのではないかと思う。人種と同じで黒人が皮膚病に強いようにある特定の病気に強いだけだと思う
51: 不思議な名無しさん 2020-09-01 04:30:38
これ、90年ごろからアフリカの土着民でHIVが効かない免疫持ってるのは知られてたぞ
詳しい事は忘れたけど
53: 不思議な名無しさん 2020-09-01 05:15:08
>>51
以前に白人男性でも発症しない人がいた。その人は研究にどうぞ自分の体を使ってくれって進んで研究に参加してた。
56: 不思議な名無しさん 2020-09-01 06:53:45
>>51
パートナーがエイズ患者なのに何故か感染しない人達もいると言う記事もみた事あるな。
55: 不思議な名無しさん 2020-09-01 06:48:28
俺はHIV陽性患者で一時期エイズも発症してた。
HIV患者を身体障害者扱いで更新しなくてよい身体障害者手帳貰えるんだが(一生治らないから)将来この研究が進んで治るようになったらどうなるんだろう?
あと結構皆勘違いしているが、エイズというのは状態であって、エイズという病気は無い。
HIV陽性患者が23個の日和見疾患のどれかに羅患した状態をエイズといい、日和見疾患が完治すればエイズ状態じゃなくなります。
57: 不思議な名無しさん 2020-09-01 06:54:18
あとu=u(ユーイコールズユー)でぐぐって欲しいんだが、HIV陽性者が投薬をして半年以上の期間ウイルス量が基準値以下であれば、他人に移す事が無い事が医学的に証明されてる事もあまり知られて無い。
28: 不思議な名無しさん 2020-08-31 19:04:06
すごい……けど超免疫持ちの人間が何かの組織に狙われて物語が始まりそう