4: 以下、5ちゃんねるからVIPがお送りします 2020/09/13(日) 18:14:09.509 ID:0KR+IOIk0
ガタンゴトン… ガタンゴトン…
悪人「いてて……」
手下A「大丈夫ですか?」
手下B「鼻血出てますよ。ハンカチどうぞ」
悪人「また負けた……」
手下A「仕方ないですよ、ヒーローは強いですもん」
手下B「また別の手を考えて、出直しましょう」
悪人「そうだな……」
5: 以下、5ちゃんねるからVIPがお送りします 2020/09/13(日) 18:17:11.183 ID:0KR+IOIk0
会社員A「……」ペラ…
会社員B「ふむふむ……」
悪人「それにしても……」
手下A「?」
悪人「今のサラリーマンはよく本を読んでいるな。面白い小説でも出たのか?」
手下A「ああ、あれはビジネス書ですよ」
悪人「ビジネス書?」
6: 以下、5ちゃんねるからVIPがお送りします 2020/09/13(日) 18:21:18.981 ID:0KR+IOIk0
手下A「例えば“仕事の効率的なやり方”とか“出世したかったらこうしろ”とかそういうのが書いてある本です」
手下B「ビジネスマン向けのマニュアルといったところですか」
悪人「ほう……少し興味が沸いた。帰りに本屋に寄ってみるか」
本屋――
悪人「こんなに出てるのか」
悪人「しかし……どれもこれもタイトルは強烈だが、中身は薄っぺらいな」ペラ…
手下A「まあ、そんなもんですよ。ビジネス書なんて」
手下B「通勤途中とかにサクッと読むものですから」
悪人(これなら俺にだって書けそうだ……)
7: 以下、5ちゃんねるからVIPがお送りします 2020/09/13(日) 18:24:09.071 ID:0KR+IOIk0
悪人「そうだ!」
手下A「どうしました?」
悪人「この国を衰退させるいい方法を思いついたぞ」
手下B「いったいどんな……?」
悪人「まず……クソみたいなビジネス書を出版しまくるのだ」
悪人「間違ったことがいっぱい書いてあるようなやつをな」
8: 以下、5ちゃんねるからVIPがお送りします 2020/09/13(日) 18:28:06.920 ID:0KR+IOIk0
手下A「そんなもの出版してどうするんです?」
悪人「それを買った者は当然それを参考にするだろう。するとどうなる?」
悪人「皆が間違ったことをするんだから、当然、ビジネス社会はどんどんおかしな方向に進んでいく」
悪人「やがて経済は衰退していき、日本全体が弱り切る」
悪人「その時こそ……日本を我が手に収めるチャンスというわけだ!」
手下A「なるほど!」
手下B「いい作戦ですね!」
悪人「次の作戦は決まった。アジトに戻り、ビジネス書の内容を考えるぞ!」
9: 以下、5ちゃんねるからVIPがお送りします 2020/09/13(日) 18:30:24.424 ID:BborO62Dr
恐ろしい作戦だ…
10: 以下、5ちゃんねるからVIPがお送りします 2020/09/13(日) 18:32:08.870 ID:0KR+IOIk0
アジト――
手下A「ボス、こういうのはどうでしょう?」
悪人「タイトルは?」
『時間を守るな ~5分後行動で出世する~』
悪人「ほう……」
手下B「タイトル自体はホントにあっても違和感ないな」
11: 以下、5ちゃんねるからVIPがお送りします 2020/09/13(日) 18:35:36.067 ID:0KR+IOIk0
悪人「5分後行動というのは?」
手下A「ようするに、“5分前行動”の逆バージョンですね」
手下A「始業時刻の5分後に出社したり、待ち合わせ時間の5分後に来たり、会議には5分遅れたり」
悪人「ただの遅刻常習犯じゃないか」
手下A「そこを、『相手をわざと待たせることで、自分の価値を高めることができる』とか書いて」
手下A「説得力を持たせるわけです」
悪人「ふむ……真に受ける間抜けなビジネスマンは多そうだな」
12: 以下、5ちゃんねるからVIPがお送りします 2020/09/13(日) 18:38:19.999 ID:0KR+IOIk0
手下B「次は私です」
『名刺は持つな!』
悪人「これまた……一般的なビジネス習慣の逆張りといった感じだな」
手下B「『名刺を持つと、人はそれに頼ってしまい、自分の売り込み方を工夫しなくなる』みたいな理屈で」
手下B「名刺不所持を徹底的に訴えるビジネス書です」
悪人「なかなかそれっぽくてよいではないか」
13: 以下、5ちゃんねるからVIPがお送りします 2020/09/13(日) 18:41:23.831 ID:0KR+IOIk0
悪人「では俺だ。俺が考えたクソビジネス書は――」
『一時間睡眠のススメ』
手下A「一時間睡眠!?」
手下B「私は6時間は寝ないとダメですね」
悪人「ショートスリーパーの体験談などをでっちあげて、一時間睡眠の有用性をアピールする」
悪人「これを読んだ者はみな、睡眠不足になること間違いなしだ!」
15: 以下、5ちゃんねるからVIPがお送りします 2020/09/13(日) 18:45:21.998 ID:0KR+IOIk0
手下A「これはどうでしょう?」
『取引先に嫌われろ!』
手下A「『好きの反対は無関心』理論で、取引先に嫌われるメリットや方法を紹介するビジネス書です」
悪人「実際には取引先に嫌われたら、そこで関係切られるだけだよな」
手下B「好きから嫌いになることはあっても、嫌いから好きにはなかなかなりませんもんね」
悪人「ラブコメだったらよくあるんだけどな」
16: 以下、5ちゃんねるからVIPがお送りします 2020/09/13(日) 18:48:13.240 ID:0KR+IOIk0
手下B「お次は私です」
『上司にはタメ口でいこう』
悪人「これまた分かりやすいタイトルだな」
手下B「上司へのタメ口を推奨することで、無礼な部下を増やせると思います」
悪人「試しに、ちょっとタメ口してみ?」
手下B「おう、ボス。いつもヒーローに負けてだらしねえな!」
ゴンッ!
悪人「実際やるとこうなる」
手下A「ですよねー」
手下B「いだい……」
17: 以下、5ちゃんねるからVIPがお送りします 2020/09/13(日) 18:51:24.598 ID:0KR+IOIk0
悪人「俺の番だな」
『ミスは人のせいにしろ』
悪人「いかに責任を他人になすりつけるか、を説いたビジネス書だ」
手下A「タイトルからして最悪ですね」
手下B「とはいえ、これが上手い人ほどホントに出世してたりするのが困ります」
18: 以下、5ちゃんねるからVIPがお送りします 2020/09/13(日) 18:54:47.920 ID:0KR+IOIk0
手下A「こんなのを思いつきました」
『クレーマーには拳で語れ ~炸裂10ヒットコンボ~』
悪人「どういう内容だ?」
手下A「タイトル通り、クレーマーはボコボコにしろという意味です。口ではなく拳で」
手下B「コンビニやスーパーの店員が参考にしたら、世紀末みたいな世になりそうだ……」
19: 以下、5ちゃんねるからVIPがお送りします 2020/09/13(日) 18:57:37.605 ID:0KR+IOIk0
手下B「これはどうです?」
『叱られてる時こそスマホをいじれ』
悪人「いじっちゃダメだろ……」
手下B「『あえてスマホをいじることで“将来大物になる”と評価される』なんて理屈をでっちあげます」
手下A「大物というより色物だな……」
20: 以下、5ちゃんねるからVIPがお送りします 2020/09/13(日) 19:01:07.236 ID:0KR+IOIk0
悪人「一冊思いついたぞ」
『電車に飛び込む勇気』
手下A「ただの自殺じゃないですか!」
手下B「しかもめちゃくちゃ迷惑かかるやつ!」
悪人「電車が遅延すれば、経済も当然遅延するというわけだ……!」
21: 以下、5ちゃんねるからVIPがお送りします 2020/09/13(日) 19:05:36.913 ID:0KR+IOIk0
他にも――
『歩きスマホが出世を呼ぶ』
『上司の贔屓球団をけなせ』
『他人の足を引っぱれ!』
『否定から入る会話術』
『勢いだけで退職しろ』
『パンツは洗うな』
『歯は磨くな』
悪人「フハハハ、クソみたいなビジネス書案がどんどん出てくるぞ!」
手下A「一度コツを掴むと、あれよあれよと思いつきますね!」
手下B「書けそうなものから、執筆していきましょう!」
23: 以下、5ちゃんねるからVIPがお送りします 2020/09/13(日) 19:09:01.447 ID:0KR+IOIk0
悪人「執筆完了!」
悪人「さあ、いよいよ本格的に販売だ!」
手下A「これが売れて、世のサラリーマンが真に受ければ……日本経済は衰退する!」
手下B「上手くいくといいですね!」
――――
――
24: 以下、5ちゃんねるからVIPがお送りします 2020/09/13(日) 19:12:53.443 ID:0KR+IOIk0
悪人「ビジネス書の売れ行きはどうだ?」
手下A「はい、どれも売れています」
手下B「あんなの買う奴いるんですね~」
悪人「タイトルに釣られているんだろう。現代人の浅はかさというものがよく分かるな」
悪人「種は撒き、芽も出た! あとは……花が咲くのを待つだけだ」
悪人「“日本経済の衰退”という花をな!」
手下二人「はいっ!」
25: 以下、5ちゃんねるからVIPがお送りします 2020/09/13(日) 19:15:17.180 ID:0KR+IOIk0
悪人「あれから……景気はどうなってる?」
手下A「それが……景気は上向きになっているんです!」
悪人「!?」
悪人「なぜだ!? 我らのビジネス書で、サラリーマンはみんなおかしな行動を取るようになったはず……」
手下B「いえ、世のサラリーマンはみんな模範的な行動を取っていて……」
手下B「我らのビジネス書のまさに逆をやっているのです!」
悪人「それじゃ、景気が上向くのも当たり前だ! 間違ったことの逆をしてるのだから!」
悪人「なぜだ! なぜこんなことになった! またしても計画は失敗か……!」
26: 以下、5ちゃんねるからVIPがお送りします 2020/09/13(日) 19:18:42.485 ID:0KR+IOIk0
――
――
ヒーロー「やれやれ、危ないところだった」
ヒーロー「悪人たちの計画を事前にキャッチして――」
『ビジネス書の逆をやれ』
ヒーロー「いち早くこのビジネス書を執筆・出版してなかったら」
ヒーロー「今頃、世のサラリーマンは奴らの本に書いてあることを、その通り実行してたかもしれない」
女「よく思いついたわね、こんな作戦」
27: 以下、5ちゃんねるからVIPがお送りします 2020/09/13(日) 19:20:21.097 ID:0KR+IOIk0
ヒーロー「それというのもこのビジネス書を読んでたおかげさ!」
『ライバルの手口をいち早く掴め ~情報がビジネスを制する~』
女「……ビジネス書って案外バカにできないものなのかも」
― 完 ―
30: 以下、5ちゃんねるからVIPがお送りします 2020/09/13(日) 19:26:09.315 ID:A9MJf4Z60
ビジネスマンになろう
31: 以下、5ちゃんねるからVIPがお送りします 2020/09/13(日) 19:36:50.984 ID:dRR7+sKja
本を次々出すとは悪人たちは教養あるなあ
28: 以下、5ちゃんねるからVIPがお送りします 2020/09/13(日) 19:24:03.207 ID:cETQ5g4Er
乙
ちょっとビジネス書買ってくる